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• 製薬会社と医師のいびつな関係に、一石を投じる取り組みが始まった
• 製薬会社から医師への、高額謝礼などの営業が当たり前になっているという
• 関係是正に向け、複数の製薬会社を交え、症例を検討する会が組織された
いわゆる“アゴアシ”付きの露骨な接待こそ少なくなったものの、食事やホテル宿泊付きのセミナーや、そこで講師として招いた医師への高額な謝礼など、製薬会社による医師への積極的な「営業活動」は今も当たり前だ。
しかし、降圧剤ディオバンの臨床研究をめぐるデータ操作事件などで、医師と個別の製薬会社とのいびつな関係が改めて問題化。薬剤選択が企業側の思惑に影響されがちな現状に一石を投じようと、京都の若手医師らが新たな取り組みを始めた。本当に患者の役に立つ薬を選ぶために医療現場はどうあるべきなのか。試行錯誤に注目が集まる。
■公開の場で症例を検討
複数の製薬会社に対して医師側が事前に症例を提示し、各社がデータや論文を持ち寄ってどの薬剤が良いかを医師も交えて議論する「合同症例検討会」を立ち上げたのは、京都市内の民間病院に勤める精神科医、東徹(ひがし・とおる)さん(34)たちだ。
「患者は50歳の女性。47歳で離婚後に大鬱病と診断され、焦燥感を伴った抑鬱気分から自殺企図のおそれがあり…」
2月に京都市内で開催された第4回検討会では、司会の東さんが今回の検討課題となる架空の症例を説明し、続いて製薬会社の医薬情報担当者(MR)が順次、プレゼンテーションを行った。
「この症例については参考になる学術論文があります」「費用や副作用を総合的に考えると…」
MRらは、根拠を挙げながら何の薬をどう投与すればよいかを説明。医師側からは「もっと別のデータはないか」「海外での事例を知りたい」などと、活発に質問が飛んだ。学術的な議論は、座長を務める東さんの先輩医師、杉原玄一さんがリードした。
この日は、若手を中心とする医師や看護師、薬剤師など約20人が集まり、製薬会社側は大手7社から約15人が出席した。
参加した京都大付属病院の男性医師は「普段、MRから提供される情報は形式ばった耳当たりの良い話ばかり。具体的な症例について検討できる機会は少ないので、今後も定期的に開催してほしい」と評価する。
■薬剤選択の“不自由”
東さんらが検討会を立ち上げたのは一昨年の11月。大学卒業後、複数の病院に勤務するうち、薬剤選択の実態に疑問を感じたのがきっかけだった。
製薬会社のMRたちは熱心に医師を訪ねて回るが、自社に都合の良い情報だけを提供する傾向が強い。それも、統計的なデータに基づいた論文から、「この薬は高名な先生が推奨している」といった耳打ち情報まで、玉石混交だ。
「最近では、あからさまな接待はほとんどないが、代わりに盛んになったのは製薬会社が主催する医師向けのセミナーや勉強会でした」。医師の交通費や食事代は主催する特定の企業が負担し、講師を務めれば高額の謝礼も支払われる。その場では主催企業の製品だけが取り上げられる。
■捜査のメス
スイスに本社を置く大手製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤ディオバンをめぐっても、そうしたセミナーなどが宣伝に利用されていたことが明らかになった。
しかも、その宣伝の根拠になったとされる臨床研究では、不正なデータ操作が相次いで発覚。ノ社元社員が身分を隠して研究に参加したことも問題となった。
京都府立医大と東京慈恵医大の研究論文は、血圧を下げる以外に脳卒中などを減らす効果があるとしたが撤回され、滋賀医大でも論文に使ったデータとカルテの数値に不一致が判明した。
臨床研究はほかに千葉大、名古屋大で行われ、これら5大学にはノ社が総額11億3290万円の奨学寄付金を提供していたことも批判された。
一連のデータ操作問題では、薬事法違反(誇大広告)容疑での東京地検の捜査が続いている。
さらに、ノ社を巡っては、東京大付属病院など全国の22医療機関が参加した白血病治療薬「タシグナ」の副作用を調べる臨床研究に、ノ社の社員が不適切に関わっていた問題も浮上。
同社は4月3日、日本法人(東京都港区)の二之宮義泰社長が引責辞任し、スイス本社のダーク・コッシャ氏=ドイツ国籍=が新社長に就任すると発表した。
来日したスイス本社のデビッド・エプスタイン社長は都内で会見し「(降圧剤ディオバンの臨床研究データ操作事件を受け)営業部門が研究に関与しないなどの社員研修を行ったにもかかわらず、社風は変わらなかった」と指摘した。
しかし、多くの医療関係者が、こうした実態は決してノ社1社だけの問題ではないと指摘する。
■製薬会社側からも評価の声
合同症例検討会を主宰する東さんは「医師と製薬会社の不透明な関係を断ち切りたい。公平かつ客観的に、きちんとした根拠に基づいて薬剤を選択するべきです」と強調する。
しかし、医師による症例検討会に製薬会社が参加することは少なく、まして複数の企業が同席しての議論はこれまでほとんど行われてこなかった。
それだけに、製薬会社側は当初、「前例がない」と難色を示し、尻込みする企業も多かったが、東さんらが粘り強く趣旨を説明し、協力を取りつけることができた。会場代などは医師側が負担しており、企業側から費用面での支援は受けていない。
検討会に出席した大手製薬会社の男性社員は「会社の方針があるので、普段は医師の先生方のニーズに応えられないこともある」とした上で、「初めて参加したが、個人的にはこうした機会があっていいと思う」と話す。
東さんは「MRには薬について豊富な知識を持つ優秀な方が多い。そうした知識をきちんと活用するのも目的のひとつなんです」とつけ加えた。
これまで半年に1回程度開催しており、口コミやインターネットを通じて京都や滋賀、大阪などから毎回20人ほどの医療関係者が集まる。
東さんは「今はまだ小さな取り組みにすぎませんが、こうした考え方が大きく広がり、最も適切な薬が患者に届くようになってほしい」と訴える。
東さんらは、取り上げる疾患の種類を増やすなど、今後さらに活動の幅を広げる予定だ。
京都大大学院医学研究科の中山健夫教授(健康情報学)は「特定の製薬会社にかたよらない情報交換の場として意味のある試みだ。科学的な研究の結果に基づく建設的な議論が期待できる」と、こうした取り組みを評価している。
http://news.livedoor.com/article/detail/8805340/
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