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[創論]広がる遺伝子検査:がん予防切除には利点:ビジネスの先走り懸念
http://www.asyura2.com/09/iryo03/msg/895.html
投稿者 あっしら 日時 2014 年 5 月 02 日 16:52:39: Mo7ApAlflbQ6s
 


[創論]広がる遺伝子検査


がん予防切除には利点
 理化学研究所プログラムディレクター 林崎良英氏

 唾液などから遺伝情報を読み取り、病気になるリスクや運動能力などを判定するサービスが広がっている。最新技術で何がわかるのか、遺伝情報と上手につきあうにはどんなルールが必要か。解析研究を長年率いてきた理化学研究所の林崎良英プログラムディレクターと、病院で遺伝医学関連の患者相談にものる京都大大学院の小杉真司教授に聞いた。

 ――遺伝子検査の結果を受けて米国の女優が両乳腺を切除し話題になりました。

 「遺伝性の乳がんになるリスクが87%と診断され、切除を決めた女優アンジェリーナ・ジョリーさんを手術した主治医に会った。リスクは5%に下がったとされる。乳がんを予防するためのこうした手術はしょっちゅうで、特別のことをした意識はないようだった。遺伝子という言葉を聞くと一歩引いてしまい、慎重になりがちな日本とは文化が違うと痛感した」

 ――患者のメリットは大きいですか。

 「もしがんになれば、まず抗がん剤で治療してから手術で乳房を切除するのが一般的だ。副作用の吐き気を抑えるための制吐剤なども必要になる。体に負担になるだけでなく、費用もかかる。抗がん剤が期待通りの効果を示すとは限らず、がんが大きくなったり転移したりして手術のタイミングを逃す恐れもある。ジョリーさんのようにリスクが高い場合、予防的な切除は意味がある」

 ――日本でも乳がんは増えていますね。

 「日本では毎年約6万5千人が新たに乳がんになる。ジョリーさんと同じような遺伝性の割合は研究報告によってばらつくが、4割弱との推定もある。食生活の欧米化などの影響で、発症者が増えているとも言われる。乳がん患者のうち末期ではない約95%が抗がん剤や放射線、手術による治療の対象になりうる。治療しても年間約8000人が転移や再発に苦しむ。乳腺の切除による予防に関する問い合わせは日本の病院でも増えていると聞く」

 ――治療コストもばかになりません。

 「日本の乳がんの治療費の合計は年間約3000億円に達する。患者の2割程度が予防的切除に踏み切ると仮定すると、単純計算で600億円ほど浮く。検査や切除の費用は必要だが、乳腺を取り除く方ががんになってから切除するよりも範囲が狭く、小さな手術で済む」

 ――ほかのがんでも遺伝子検査は役立ちますか。

 「がんの引き金になるとされる変異遺伝子は約140種類知られる。米企業などが健康な人を対象に実施しているがんの遺伝子検査はこれらのいくつかを調べているが、変異があっても必ずしもがんになるわけではない。どんな変異を持つ人がどの病気になるリスクが高いかという日本人のデータは、まだ蓄積しつつある段階だ」

 ――遺伝子と生活習慣病などとの関係は、はっきりしているのですか。

 「ある番組の取材を受けたときに、女性アナウンサーから、肥満と関係があるとされる3つの遺伝子を調べてほしいと頼まれた。解析結果によると、2つは太っている人に多いタイプだったが、アナウンサーは実際にはすらっとしていた。同じ遺伝子を持っていても食べる量が違えば太り具合も異なるわけで、こうした遺伝子診断はあまりあてにならない」

 ――解析技術が急速に進歩し、得られる情報も増えています。

 「ゲノム(全遺伝情報)を高速で解読できる装置、次世代シーケンサーが急速に進歩し、人間1人のゲノムをわずか24時間のうちに、10万円程度のコストで読めるようになった。遺伝子本体のDNAだけでなく、遺伝情報を読み取ってたんぱく質を作る場所に運ぶRNAの働きも詳しく分析できる。細胞内の遺伝子がどのように関係しあって働くかというネットワークが明らかになり、がん関連の重要な遺伝子を働かせるスイッチの『オン』『オフ』などを見分けることができる」

 ――医療の現場はどう変わっていきますか。

 「コストをさらに下げる必要はあるが、病院のベッドサイドに遺伝子解析装置を置いて、日々の治療に生かせるようになるだろう。がん関連のある変異遺伝子が『オン』なら発がんや転移、再発の可能性が高いなどと判断し、その場で治療方針を決められるようになる。再発しやすいタイプなのに気付かなかった、といったケースを減らせる」

 ――日本は米欧の後じんを拝していますか。

 「ゲノム解読の優れた技術を生かせず、次世代シーケンサーでは後れを取った。しかしRNAやネットワークの解析では世界の先頭を行く。10〜20年先を見据え、遺伝情報の有効活用を考えていく必要がある」

 はやしざき・よしひで 大阪大で医学博士取得。遺伝子解析の第一人者。13年から理研の予防医療・診断技術開発を率いる。57歳。

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ビジネスの先走り懸念
京都大大学院教授 小杉真司氏

 ――遺伝子検査ビジネスが急速に広がっています。

 「人々の意識のなかで、遺伝子やDNAは少しずつ特別なものではなくなってきている。検査の(心理的、コスト的な)ハードルが下がり、面白そうだからと気軽に試す人も結構いるようだ。しかし、得られるデータの意味や、自分の遺伝情報が外に漏れたらどうなるかなどをどこまで考えているのか気になる」

 ――どんな問題がありますか。

 「検査で調べる遺伝子データと病気、体質などとの関係が科学的に十分に検証されないまま、検査ビジネスの利用が増えている。遺伝子の特徴は人種や民族で異なるのに、日本で検査を手掛ける外資系企業には日本人のデータを持っていないところもある。米欧のデータをそのままあてはめると、検査結果の解釈が異なってくる。集めた遺伝情報をどのように保護し、取り扱うかも課題だ」

 ――経済産業省の研究会では何が議論になりましたか。

 「遺伝子検査を実施する前のサービス内容に関する情報と、検査結果を解釈するための情報を、ともにわかりやすく利用者に説明するのが重要だという点では認識が一致した。しかし、外資系企業からは日本人のデータがなくても、それを公表してサービスを提供すれば問題ないという意見が根強い。規制を厳しくしすぎても、ネットを使って国外のサービスを利用する人が増えるだけだという意見もあった。ドイツでは実際にそうしたことが起きている」

 ――ルール作りは進みそうですか。

 「2005年に個人情報保護法が全面施行されたのに伴い、遺伝子検査や遺伝情報の扱いについて官民でガイドライン作りが進んだ。NPO法人・個人遺伝情報取扱協議会が作成した自主基準は今後のルール作りのたたき台になるのではないか。新規参入事業者や研究者の意見も反映させ、(サービス多様化の)実態に合わせられればと思う。国が直接規制するよりも、たとえば自主基準を満たす事業者を第三者機関が認証する仕組みにし、経産省が何らかの形で支援するのが現実的だ」

 ――先行する米国の現状は。

 「特定の遺伝子だけではなく、ゲノム(全遺伝情報)や(たんぱく質を作る)エクソームと呼ばれる部分をすべて解析し、患者の治療方針を決めるのに役立てる方法が広がっている。ゲノム解読装置の次世代シーケンサーにより、全エクソーム解析が5000ドル(約50万円)もあればできるようになったと聞く。ここ1、2年の間にこうした新しい検査は保険の対象にもなり始めた」

 ――規制はどうですか。

 「病気診断などのために遺伝子検査を実施し、結果を患者に戻す検査機関は公的機関による認証の取得が法的に義務付けられている。データの品質をチェックするシステムもある。また、遺伝情報を理由にした医療保険や雇用における差別を禁じる法が08年に施行されている」

 ――米23アンドミー(カリフォルニア州)は99ドルで遺伝子を調べ、病気のリスクを分析するサービスの停止を当局に命じられました。

 「米食品医薬品局(FDA)は同社のサービスが医療であり、検査キットは承認対象になると判断した。厳しいように見えるが、今後普及が見込まれる機器を承認した例もある。米遺伝子解析大手イルミナの次世代シーケンサーと関連試薬は、医療診断用としてFDAの承認を受けた。将来は診察券のチップに、患者のゲノムが組み込まれるようにもなるだろう。日本もそんな時代を見越して、制度の整備や情報の取り扱い方を考えておく必要がある」

 ――遺伝カウンセラーの役割も重要です。

 「日本カウンセリング学会と日本人類遺伝学会が共同で遺伝カウンセラーを認定している。京大にも2人いる。遺伝的な病気を持つ人が子どもへの影響を気にして相談に来たり、病気のリスク判定を受けた人がデータの解釈を知りたいとやってきたりする。カウンセラーは全国に151人。米国の約3000人に比べはるかに少ないが、1人ずつ実習が必要で一度にたくさんは育成できない。治療・予防法のない病気を知ってしまったらどうするか。一生向き合わなければならない問題を抱えた人を十分に支援できる体制を築きたい」

 こすぎ・しんじ 京都大で医学博士取得。遺伝カウンセリングなどが専門。経産省遺伝子検査ビジネスに関する研究会座長。56歳。


[日経新聞4月27日朝刊P.9]

 

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