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製薬会社:72社4827億円提供 医師らへ−−12年度
毎日新聞 2014年04月06日 東京朝刊
2013年度に業界団体「日本製薬工業協会」に加盟していた70社と加盟社の子会社2社が、12年度に医師や医療機関に提供した資金の総額が4827億円に上ったことが分かった。国の医療分野の研究開発関連予算1955億円の2・5倍にも上る。降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑で問題になった奨学寄付金は346億円だった。各社が製薬協の新ルールに従って順次公開した金額を毎日新聞が集計した。製薬業界から医師に流れた資金の全体像が明らかになったのは初めて。
4827億円の内訳は、新薬開発のための臨床試験費用など研究・開発費2471億円▽研究室への奨学寄付金や学会への寄付金など学術研究助成費540億円▽医師個人への講師謝礼や原稿執筆料など270億円▽医師を集めての講演会や説明会の開催費など情報提供関連費1428億円▽接遇費など115億円。
医師が企業から受け取った資金については、国や学会が情報開示を促してきた。製薬業界でも透明化の必要性を認める声が強まり、昨年度から公開が始まった。【河内敏康、八田浩輔】
http://mainichi.jp/shimen/news/20140406ddm001040159000c.html
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製薬会社:72社、資金提供公開 問われる「薬とカネ」
毎日新聞 2014年04月06日 東京朝刊
日本製薬工業協会(製薬協)加盟社の情報公開によって、医学界に巨額の資金が流れている実態が浮き彫りになった。降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験の疑惑を深めることになった「奨学寄付金」については、「寄付金と呼んでも実質的には賄賂ではないか」との指摘もある。情報公開の進展と並行して、製薬業界と医学界では長く続いてきた慣行を見直す動きが出ている。【河内敏康、八田浩輔】
◇米の報告厳格化に押され
製薬業界から医学界に流れる資金の全体像は「ブラックボックス」となってきたが、毎年、前年度分を自社ホームページで公開すべきだとする製薬協の新しいルールが昨年施行された。これを受け、2012年度分について、昨年7月に外資大手ファイザーが初めて開示。今年2月までに子会社2社を含む72社が開示を終えた。13年度の加盟社すべてがルールに従った。
透明化の論議に大きな影響を与えたのが米国の動きだった。薬と金の問題が後を絶たないことから、10年3月に製薬会社から医師への金を白日の下にさらす「サンシャイン条項」を盛り込んだ法律が成立。製薬会社は、どんな名目であっても医師に10ドル以上の金・サービスを提供した場合は政府に報告しなければならなくなった。
日本では1990年代、香川医大病院(当時)の医師や名古屋大医学部教授らが、製薬会社に便宜を図った見返りに金品を受け取ったとして逮捕される事件が起きた。00年代後半には、抗がん剤「イレッサ」やインフルエンザ治療薬「タミフル」などを巡り、薬の承認を審査したり副作用を調べたりした医師らに製薬会社から資金が提供されていたことが判明し、「薬とカネ」の問題が批判された。製薬業界のグローバル化が進展する中、日本も透明化の流れに逆らうことはできなくなっていた。
各社が開示した情報を毎日新聞が集計すると、「奨学寄付金」は346億円だった。ある国立大教授は「私が研究室を発足させた10年ほど前は、製薬会社から1年間に約1000万円もらえた。透明化の流れで最近は製薬会社が出し渋るようになってきた」と話す。
「医療関係者に最新の医学・薬学情報を提供するため」との理由で、大学教授らを講師に招いてホテルなどで開催する講演会は約15万件あり、「講演会費」は891億円だった。病院や医局ごとに開く小規模の「説明会」にも約140万件、332億円が投じられていた。高級弁当が出されることが多い。
業界団体の規約で、12年春から講演後の慰労の飲食は2万円までなどと、医師らへの一定額以上の接待を自粛することになった。業界関係者によると、医師と接触する機会を求め、講演会や説明会が増えているという。
情報公開の仕方にも課題が残る。個々の医師に支払った講演料や原稿執筆料の金額も対象にしようとしたが、医師側の反発で公開は1年先送りされた。これに対し、外資大手グラクソ・スミスクラインは講演料をやめる方針を打ち出している。
◇「奨学寄付金」日本特有の慣行 「ひも付き」「薬使用の見返り」
「奨学寄付金は明らかに日本独自の慣行だ。国際的に認められるのか検討しなければならない」。3日、ノバルティスファーマ日本法人の持ち株会社社長に新たに就任したマイケル・フェリス氏は、臨床試験疑惑を収束させられない日本人幹部の更迭が発表された記者会見でこう述べた。
奨学寄付金は、研究や教育の振興のために提供する建前で大学などの組織に支出するが、会社は贈り先の研究室を指定できる「ひも付き」だ。日本法人は、バルサルタンの臨床試験を引き受けた研究室に向け、5大学に11億円超を「寄付」していた。
別の使い道もある。業界団体は薬の販売目的で提供することを禁じているが、ある会社の営業担当者は「自社の薬を使ってもらう見返りとして」と内情を明かす。ある国立大教授も「寄付が多い会社の薬を使いがちになる」と打ち明ける。
ノ社の社外調査委員会は「一部の医療機関から露骨な寄付金の要求がある」と指摘する。ある検察OBは「寄付金と呼んでも、医師が公務員で、便宜を図ってもらう見返りであれば、賄賂と見なすこともできる」と話す。
資金の公開が進むのと並行して、製薬業界は奨学寄付金の見直しを始めている。外資系を中心に、医師に臨床試験をしてもらう必要があれば、奨学寄付金を提供するのではなく、正式に委託契約を結んだうえで費用を負担するケースが増えている。
医師側では、研究発表する際、関係企業からの資金の存在を明示することがルールとなっている。さらに踏み込み、製薬会社の「ひも」を切り離し、各社から集めた寄付金を医師側が再配分するという、思い切った改革案も検討され始めた。日本学術会議の分科会は先月、多額の費用が必要な大規模臨床試験は、業界から募った寄付金をプールしておき、第三者組織が公募で選んだ医師に配分することを政府などに提言した。
分科会の山本正幸委員長(東京大名誉教授)は「既に薬害に対する被害の救済には製薬企業が拠出し合った資金が使われている。製薬企業には社会的責務を認識してもらい、影響が大きな臨床試験はこれに似た形で行われることが望ましい」と話している。
http://mainichi.jp/shimen/news/20140406ddm002040055000c.html
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