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60代の1〜2人がキャリア/(C)日刊ゲンダイ
毎年2万人超が発症、2000人死亡 日本は「結核中進国」
http://gendai.net/articles/view/life/147091
2014年1月8日 日刊ゲンダイ
結核を「過去の病気」と思っていたら大間違いだ。毎年2万人以上が新規患者として報告され、約2000人が死亡している。罹患(りかん)率は先進国の中で高く、米国の4.5倍。日本の結核の状況は米国の1970年ごろの水準で、「結核中進国」という位置づけだ。
「1999年に厚労省が出した『結核緊急事態宣言』は、いまだに取り消されていません。現在も決して注意を怠ってはいけない病気なのです」
こう言うのは、結核高度専門施設である複十字病院呼吸器内科診療主幹・佐々木結花医師だ。詳しく聞いた。
なぜ、日本で結核はすたれないのか? それは、第2次世界大戦前後、結核患者が多かった時代に感染したけど発症しなかった人が、今になって発症しているからだ。
「60代は10人に1〜2人が感染していると推計されています。結核は感染しても必ず発症するわけではありません。ただ、発症しなくても結核菌は体内に存在し続けます。その方たちが年を取ったり、糖尿病やがんなどで免疫力が低下した時に結核菌が暴れだし、発症するのです」
発症してすぐ治療が開始されれば、“不幸中の幸い”でまだ済む。ところが、そうはいかない。
「結核の5大症状は、咳(せき)、痰(たん)、血痰、発熱、胸痛です。これらはありふれた症状のため、見逃されやすい。咳や痰などの症状はほとんどなく、だるさや食欲不振だけでは、高齢者の場合は〈年のせい〉と思われてしまうこともあります」
結核の発症を知らずにこれまで通りの生活を続けると、本人の病状が悪化していくのは当然として、もっと怖いのは、結核菌の周囲への感染だ。
「結核を発症した高齢者から家族、介護従事者、医療従事者などに感染します。彼らの中に感染から発症に至った人がいて、それに気が付かなければ、彼らの職場、交通機関、コンビニや漫画喫茶といった公共の場で不特定多数の人にうつしていくことになる。それこそ、結核菌のバトンタッチが次々に行われるのです」
結果、結核がすたれない。さらに、結核に詳しい呼吸器内科医が激減していることも問題だ。
「〈ワシントン条約の保護職種にしてほしい〉とよく冗談で言うのですが、結核が専門の医師は多くありません。結核患者を30年近くも診ている私ですら、胸のレントゲンだけでは診断に迷うケースが多く、喀痰(かくたん)検査が必要です。専門外の医師では、症状から結核に考えが及ばないことが珍しくありません」
■「ただの風邪」そして放置されるケースも
営業職のAさん(33)は咳が続くので近所のクリニックを受診したところ、風邪という診断。数日薬を飲んでも症状は改善されず、別の病院を受診。やはり風邪という診断だった。
熱と下痢が続き、体がだるいので大学病院を受診。結核と診断され、すぐに入院となった。幸い、家族、同僚、上司、友人らに感染者はいなかったが、「だれか分からない人にうつしている可能性はある」とAさんは言う。
佐々木医師は次の点を強調する。
「咳やだるさ、熱、食欲不振などが2週間以上続くなら、呼吸器内科を受診すべきです。市販の風邪薬などを飲むと症状がいったん治まることも多い。でも、1週間くらいすればぶり返します。その場合も病院で検査を受けてください」
発症して日が浅ければ、結核菌を体外へ排出していないこともある。周囲への感染の可能性はないと判断されれば、外来での治療が可能だ。
親は、自分は、子供は、どうだろう。
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