★阿修羅♪ > 医療崩壊3 > 772.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
がん医療の今
http://www.asyura2.com/09/iryo03/msg/772.html
投稿者 あっしら 日時 2013 年 12 月 15 日 19:08:45: Mo7ApAlflbQ6s
 

がん医療の今[日経新聞]

(上)年1.3兆円の損失 仕事と両立 社会が支援

日本人の2人に1人が一度はかかる「がん」。治療成績の向上で、死に至る病から長く付き合う病に変貌しつつあり、仕事との両立など社会の支えも求められる。患者ごとのオーダーメード治療も進み、がん医療は今、その姿を変えている。

残業・出張なく

 今年前半、咽頭がんの放射線治療や大腸がんの手術を受け、9月にカード大手、クレディセゾン営業推進部長に復帰した田中竜太さん(46)。残業はせず、月1回は半日休み通院するものの、営業担当者約1000人を束ねる重責を担う。

 同社は5年前、社員ががんを患った際に産業医が面談したり、残業や出張をなくし勤務時間を短くしたりできるよう制度を変えた。すでに約30人が利用。「がんと分かった直後は死を恐れ、家族の心配もした」田中さんだが、「制度の利用者を思い出し、隠さず言った方が会社や同僚が応援してくれると思った」。

 今も後遺症や転移の不安はあるが「仕事を辞めずに検査や体調に合わせて勤務できて安心」と話す。武田雅子・戦略人事部長は「会社にとっても貴重な人材を失わずに済む」と指摘する。
 働く世代のがんは増えている。国立がん研究センターの推計では2008年にがんになった75万人近くのうち生産年齢15〜64歳は約23万人(前年比4%増)。仮にがんになった人が全員働かなくなれば労働損失は年1.3兆円超との推計もある。就労の継続は患者個人の問題にとどまらない。
 だがクレディセゾンのような企業ばかりではない。厚生労働省研究班の12年の調査では、がんと診断後に37%が退職または部署を異動、約半数は収入が減った。退職・異動のうち4割は「会社の指示」だ。国立国際医療研究センターの和田耕治医師は「企業側は仕事ができないと決めつけず、患者と十分な意思疎通をするのが重要」と話す。
 一方、日本人の死因1位ではあるが、10年弱前にがんと診断された人の5年後の生存率は種類によっては9割超、全体でも6割弱。厚労省の推計で診断5年後に生きている人は15年に308万人と、99年のほぼ2倍だ。
人生の選択左右
 「がん=死」と捉えて本人への告知や病名の公表を控えた時代から、後遺症や再発でがんと長く向き合う時代へ。がんとの共生は仕事のみならず人生の選択も左右する。
 40代以下の若い世代の発症率が他のがんに比べ高い乳がんは、5年後の生存率は9割近い半面、10年以上経て再発することもあり、なおさらだ。
 3年前に乳がんを手術した千葉市の会社員、鈴木恵さん(仮名、44)は手術後、副作用で不妊となる可能性がある抗がん剤治療に備え、卵子を凍結保存した。昨年末、骨に転移。相手の負担を考えると結婚に踏み切れず、妊娠のメドも立たない中、治療を続ける。
 転移が見つかる前、失った胸の膨らみを取り戻す乳房再建の手術に自己負担で踏み切った。乳房がないと好みの服も着られず自分に自信が持てない。長い人生を考え100万円の出費を決めた。
 一部の方法に保険が使える乳房再建は、保険適用の範囲が徐々に広がり、乳がんの「治療の一環」になりつつある。
 政府は昨年6月策定の「がん対策推進基本計画」に就労支援の必要性を初めて明記。小児や高齢者のがんでライフステージに着目した研究にも乗り出す。治療技術による入院期間の短縮や、通院で抗がん剤治療をする病院の増加も追い風になる。
 がんになった後も安心して過ごすには、仕事との両立や人生の選択に配慮した治療や社会の支援が欠かせない。

[日経新聞12月10日朝刊P.1]


(下)既製よりオーダー 効果大きく負担も軽減

 「まるでSF映画だった」。食道から肺に転移したがんの放射線治療を都立駒込病院(東京・文京)で3月から始めた会社員の佐藤康宏さん(仮名、56)は振り返る。

寸分ズレなく

 コンピューター画面を使った事前説明で、自分の肺の立体像に赤や黄、青色のビームが突き刺さった。がんの場所や形状、呼吸による肺の動きにも応じたオーダーメードの照射計画の模擬実演。医学物理士が照射角度などを綿密に設計した。
 実際の治療では自分の体に合わせて作られた型枠に横たわると、画像と連動して計画と1ミリもズレなく体が固定される。ドーナツ型の大型装置に入って1回30分。痛くもかゆくもなく副作用もほとんどなかった。
 従来の技術では、がん周囲の正常部分にも照射されやすく、オーダーメードに十分対応できず副作用も出やすかった。唐沢克之・放射線診療科部長は「今は動く臓器にあるがんにも正確に当たるため、副作用が減り、期待通りがんを小さくできている」と話す。
 2010年ごろから普及してきたこの治療は肺以外のがんにも拡大。日本で放射線治療を受けるがん患者は全体の25%程度と、6割という欧米に比べ少ないが、日本放射線腫瘍学会は15年に約40%に増えると見込む。
 同じ臓器のがんなら一律に標準的な、いわば既製の治療を模索するのが一般的だが、技術や研究の進歩で、同じがんでも患者ごとの特性に合わせたオーダーメードの対応も可能になってきた。
 「イレッサが使えて本当にありがたかった」。肺などに複数のがんがあり、治療の手立てがなかった自営業の井村敏さん(仮名、34)は検査結果に安堵した。進行した肺がんに使う抗がん剤イレッサは半年から数年延命できるとされるが、肺がん患者の4人に1人にしか効かないからだ。
 日本人の肺がんの約半分は遺伝子レベルで異なる7タイプがあると分かってきた。タイプごとに効く「分子標的薬」と呼ぶ新しい抗がん剤が研究されており、イレッサは実用化された一つ。
 「分子標的薬は効くタイプの患者に使えば、標準的な一律の抗がん剤投与より確実に効果的で、無駄な投与による副作用も減る」(萩原弘一・埼玉医科大学教授)。10月から服用した井村さんの肺のがんはほぼ消えた。

医療費の削減も

 がん分野の分子標的薬は国内で30種ほど使われ、さらに開発が進む。医薬産業政策研究所は09年に約4000億円だった関連の世界市場が10年後は4倍強になると分析。乳がんの分子標的薬の一つを対象患者だけに使うことで、乳がん患者1人当たり年280万円の医療費を削減すると試算する。年間3兆1千億円に上る日本のがん医療費の削減も期待される。
 究極の個別化は、遺伝的になりやすい人のがんの予防だ。すでに乳がんで普及している米国で、人気女優が遺伝子診断し発症リスクが高いと乳房切除し話題になった。
 日本ではがん研有明病院(東京・江東)が乳房の予防的切除の臨床試験を計画中。早期発見が難しい膵(すい)がんでも5〜10%を占める遺伝による患者の早期診断や予防を目指し、日本膵臓学会が遺伝による膵がん患者の登録を来春始める。
 堀田知光・国立がん研究センター理事長は指摘する。「患者のがんの状態に合わせた治療法や薬を選ぶ流れは、患者にとって効果最大で負担最小という医療の目標に一歩ずつ近づいている」

 西村絵、山本優、高田倫志、塩崎健太郎、岩井淳哉が担当しました。

[日経新聞12月11日朝刊P.1]


 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト

▲上へ      ★阿修羅♪ > 医療崩壊3掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧