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難病のクリオピリン周期熱症候群を患い、高熱や歩行困難に悩まされる戸根川貴理ちゃん(左)と母の理登さん(右)。高額な希少薬を使ってからは運動会で徒競走にも出られるようになった=横浜市(鴨川一也撮影)(写真:産経新聞)
難病の現実 注射1本130万円…小さな体に重すぎる負担
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131128-00000504-san-soci
産経新聞 11月28日(木)8時0分配信
患者数が極度に少なく、これまで支援の手が届かなかった難病患者を救おうと、厚労省は27年1月の導入に向け、新制度の法制化を急いでいる。難病患者の現実を追った。
朝起きるとまず最初にすることは、まだ3歳にもならないわが子に注射を打つことだった。夫婦で手足を押さえつけて皮下注射をする。薬はドロリと粘りがあり、激痛が走る。
免疫を抑える効果がある関節リウマチ薬「アナキンラ」。国の承認がなく、個人輸入すれば月10万〜20万円もする希少薬だ。横浜市の小学3年、戸根川貴理(きり)ちゃん(8)は小さい頃から、この薬がなければ自分の力で立つことすらできなかった。
母の理登(りと)さん(41)はいう。「薬が手に入らなくなったら、効かなくなったらどうしようといつも不安だった。この子の痛みをどうやって消せばいいのだろう」と。
貴理ちゃんが抱えるのは「クリオピリン周期熱症候群(CAPS)」。乳幼児期に発症し、激しい高熱や炎症を繰り返す。患者は全国でも50人ほど。本来ならウイルスや細菌に対抗すべき免疫が過剰に働いて自分を攻撃し、弱視や難聴、歩行困難に陥る。
◆効果てきめん
貴理ちゃんはこれを1歳になってまもなく発症した。母乳すら飲めず、鼻からチューブを入れて栄養をとった。「この子はこのまま消えちゃうんじゃないか」。入院先の病室でわが子を抱え、涙が止まらなくなったこともあるという。
治療法はおろか、病名も分からないまま病院を転々とし、2歳になったころ、炎症でひざが腫れ上がる特有の症状が出てCAPSと分かり、アナキンラの存在を知った。本来は関節リウマチの薬で国内では未承認だったが、症状を抑える効果があると聞き、医師を通じて海外から取り寄せた。
効果はてきめんだった。投薬から3日後。面会に行くと、それまでぐったりしたまま動けなかった貴理ちゃんが、ベッドの柵につかまり立ちしていた。
「医師も看護師も、病院中が『立った』と大騒ぎになった」。2歳8カ月。貴理ちゃんが生まれて初めて立った瞬間だった。
◆治療を断念も
「症状を抑える薬があるのに、お金の問題であきらめてしまう。これほど残酷なことはない」と理登さんは訴える。平成23年には別の治療薬「イラリス」が国内で承認を受けた。1日1回の投与が必要だったアナキンラに対し、イラリスはおおむね1カ月に1回で済む。ただ、患者が少なく薬の希少性が高いため、1回の注射にかかる費用は約130万円。高額療養費制度が使えるとはいえ、定期的な接種が与える負担は小さくない。
親子でCAPSを患う京都府の患者は、30代の息子に薬を与えるため、50代の父が治療をあきらめてしまった。症状が悪化し、いまは相当の難聴が進んでいるという。
貴理ちゃんの父、聡さん(42)は20年に患者・家族会を立ち上げ、CAPSを難病に指定し、医療費の助成をしてくれるよう厚生労働省への陳情を繰り返してきた。しかし答えは「ノー」。「いまは制度の見直し中なので、もう少し待ってほしい」と繰り返された。
国が難病とする56疾患については、重症者の医療費の自己負担分が無料になるなど手厚い支援があった。だが、そこから漏れたCAPS患者への支援はない。不公平感を感じた。
「患者が少なく、重篤で治療法がなく、一生涯にわたって症状が続く。同じ難病の条件は満たしているのになぜ認められないのか。お金の問題だけではない。困っているのに支援を受けられない。そのことが悲しい」と聡さんはいう。
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