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〔PHOTO〕gettyimages
転移した末期がんにも効く 世紀の発明! がんの特効薬(FAS阻害薬)これで本当にがんが消える
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36368
2013年07月12日(金) 週刊現代 :現代ビジネス
NHK SPで大反響 ジョンズ・ホプキンス大 ロネット博士 独占インタビュー
がんと人類の闘いは3000年にも及ぶ。どんなに医療が進歩しても、がんを克服することはできなかった。だが、ついにがんの万能薬が生まれようとしている。最新研究をレポートする。
■まったく新しい治療法
ついに「がんの克服」が現実のものになろうとしている。あらゆるがんに効果のある「特効薬」が誕生しようとしているのだ。
5月に放送されたNHKスペシャル「がん~人類進化が生んだ病~」。そこで紹介されたがんの新薬が注目を集めている。
その名は、「FAS阻害薬」。まさにこの薬が、がんの特効薬となる可能性を秘めているのだという。
「この薬は、がん細胞だけに大きなダメージを与えることができるまったく新しい治療法です。私たちは、これが画期的ながんの治療薬になることを期待しています」
このFAS阻害薬の開発をした米ジョンズ・ホプキンス大学のガブリエル・ロネット博士は、力強くこう話す。
現在、この"特効薬"の実用化へ向けて鋭意研究が進められており、数々の特許を申請・取得しているという。そのため、「機密情報が多く、研究の詳細について紹介することはできない」と言うが、その一部について、特別に明かしてくれた。
そもそも、この薬の名前にもついている「FAS」とは何なのだろうか。
「FASはFatty Acid Synthaseの略で、脂肪酸合成酵素のことです。これは、誰しもが肝臓など体内の特定の臓器に持っているもので、その名のとおり脂肪酸を合成する働きがあります。細胞には、体がエネルギーを必要としているときに使えるように、脂肪を蓄えておくシステムがありますが、脂肪の貯蔵にはFASが必要不可欠。このFASの働きを抑制するものが、我々が開発しているFAS阻害薬なのです」(以下、表記がない限りはロネット博士)
■ナゾが解けた
このFASとがんの間に、どのような関係があるのか。これが研究され始めたきっかけは、'90年代にさかのぼる。彼女の研究チームの一人が、がん細胞の中でFASが大量に生産されていることを発見したのだ。
「この事実が確認されたとき、我々は非常に驚きました。なぜなら、がん細胞は通常、脂肪を蓄積する性質はないので、なぜ脂肪を貯蔵する働きのFASががん細胞に大量に存在しているのか、大きなミステリーだったのです」
正常な細胞は、ある程度分裂を繰り返したり、分裂の段階でDNAのコピーにミスが生じたとき、自ら死に至るアポトーシス(細胞死)という性質が組み込まれている。一方、がん細胞は、そのアポトーシスの仕組みが失われており、栄養分と酸素さえあれば無限に分裂・増殖を繰り返していくため、細胞内に脂肪を貯蔵できるはずがない。
それなのに、脂肪を貯蔵する働きのFASががん細胞内に大量に存在していたことは、ロネット博士をはじめとする研究者の大きな疑問だったのだ。
「その疑問を解決するために、研究をスタートさせました。この発見が、FASががん細胞にどのような影響を与えているのかを調査するきっかけになったのです。
そうして、がん細胞とFASの関係が徐々に明らかになってきました。がん細胞は、FASをエネルギーを貯蓄するために使うのではなく、まったく別の利用の仕方をしていた。FASが作る脂肪酸を分裂の際のエネルギーとして使っていたのです。がんの増殖にFASは欠かせない物質で、この物質こそががんに旺盛な増殖力をもたらしていたことを突き止めました。
だとすれば、もしもFASの働きを抑える薬が作れたら、がんの増殖を防ぐことができるのではないか。そう信じて、研究を続けてきました」
がん細胞の分裂にFASが必要ということは、それを阻害すると、がんは増殖することができなくなり、いわば飢餓状態になって死んでいく。つまり、この薬を投与することで、無限に増殖していくがん細胞を餓死させることができるというわけだ。
■副作用がない
「この阻害薬が形になるまで、およそ20年の歳月がかかりました。ここに至るまでに、作った試薬は数百種類に及びます。その中で、FASを阻害させる効果が認められたのは、我々が『C-31』と番号をつけたFAS阻害薬だったのです」
見た目は、ただの白い粉のようにだが、それこそが、がんの特効薬の可能性を秘めているのである。
実際、ロネット博士らの研究チームは、試験管内でがん細胞を培養して、その細胞を殺すテストに成功。その後、マウスに人間のがん細胞を埋め込み、FAS阻害薬ががん細胞の増殖を抑制する効果も証明している。投与後1日経過しただけで、がん細胞が破壊され、大幅にその数が減ることがわかっている。
じつはこのFASを阻害してがんを叩くメカニズムは、世界中のさまざまな研究者から注目を集めている。放射線医学総合研究所分子イメージング研究センターの研究員、吉井幸恵氏もその一人だ。
「私たちの研究チームでは、福井大学、宮崎大学、アメリカのスローンケタリング記念がんセンターとの共同で、3年前からこのFASの研究に取り組んでいます。FASは、悪性度の高いがんでより多量に生産されることが分かっていて、その特性に着目した治療法が期待されている。私たちは、その治療をより効率よく行うための方法の開発に取り組んでいます。がんに対して、かなりいい薬になる可能性はあると思っています」(吉井氏)
しかし、これまでに数々のがん治療についての研究が行われてきているが、なぜこのFAS阻害薬がこれほど注目を集めているのだろうか。
まず一つ目の理由としては、これまでの治療法ではクリアできなかったがんの性質を、克服する可能性が秘められているからだ。
北海道大学大学院医学研究科特任准教授の西原広史医師は、人類がどんな知恵を集結させてもがんを克服できなかった理由をこう分析する。
「それは、『がんは、自己の組織から発生する病気だ』という点につきます。がんは、当初は自分自身の一部、つまりは"味方"だったわけなので、体内の免疫系はがんが敵なのか味方なのか区別が難しい状態なのです。
たとえば、今流行している風疹は、風疹ウイルスという敵が体内に侵入することで発症するので、ワクチンを打てば、確実にターゲットを絞って発症を抑えることができます。
がんの場合は、それができない。一般的な抗がん剤は、がん細胞が正常細胞よりも早く増殖することに着目し、細胞が分裂するときにがん細胞内に入り込んでがんを叩く、という仕組みです。しかし、そうすると当然、人の体ではあらゆるところで盛んに細胞分裂が行われているので、正常な細胞にも影響を及ぼし、副作用が出てしまうのです」
だがFAS阻害薬の場合、がん細胞に特有な物質FASだけに作用するので、こうした副作用が出る恐れがない。
ロネット博士も、「正常な細胞には影響を与えないので、従来の抗がん剤のような副作用は見つかっていない」と説明する。
二つ目の理由は、転移や浸潤したがんにも効果が期待できるという点だ。
正常細胞であれば、ある組織を作っている細胞が自分の居場所を離れるとすぐに死んでしまうのだが、がん細胞はもといた組織を離れても生き続けることができる。組織を離れ、リンパ管や血管の中に入り込み、全身に回っていく。そうしてがんが別の臓器に到達すると、そこで新たに増殖を始めてしまう。
「この無秩序な増殖ががんの厄介なところですね。周囲の組織に広がって浸潤し、転移して増殖を続けていくので、手術しても目に見えないレベルのがん細胞が少しでも残っていたら、どこかで再発してしまう。がん細胞をすべて取りきれれば再発はしないのですが、進行期になればなるほどそれはなかなか難しいのです」(弘前大学医学部腫瘍内科教授の佐藤温医師)
細胞レベルの小さながんだと、外科手術で取りきることができないうえに、放射線治療も難しい。がんにピンポイントで照射できる重粒子線や陽子線治療でも、目に見えない大きさのがんを叩くことは不可能に近い。だが、FAS阻害薬は、がん細胞一つ一つが抱える酵素をターゲットにするため、目に見えない大きさのがんにも高い効果が期待できるのだ。
■あと数年で実用化
前出の吉井氏は、「細胞レベルで増殖や浸潤を抑える効果があるので、転移や再発を抑える予防的な治療薬になる可能性はあるでしょう」という。
「全身に転移が広がった末期がんにも、治療効果が出ることを期待しています」(ロネット博士)
そして、FAS阻害薬が注目される三つ目の理由は、がんの多様性への対応だ。ひとくちにがんと言っても、できる臓器や個人差で、さまざまな性質を持っている。アメリカ国立がん研究所の定義では、「がんとは異常細胞が増殖する過程で生じる100種類以上の病気の総称」。同じ大腸にできるがんでも、人によって性質は異なる。開発が進んでいる分子標的薬も、がんの種類が違えば、効く薬も異なってくる。
だが、FASは種類に関係なくさまざまながん細胞に存在していることが確認されており、「多くの種類のがんに対して、治療効果が認められそうだ」(ロネット博士)というので、この点に関しても、見通しは明るい。
では実際に、がんの特効薬として実用化することはできるのだろうか。
「今は、臨床研究を一緒に行える製薬会社とパートナーを組もうと動いているところです。もし実際に臨床研究が決まれば、前試験を1年、その後1年以内に実験的にヒト用の新薬を作りだします。いまの段階では、点滴投与なのか、経口投与がいいのか、ということもまだ決まっていません。まずは、安全性を確認するテストを通過することが最重要課題です」(ロネット博士)
長年人類を苦しめてきたがんを薬一つで治すことも可能になるかもしれない。
「週刊現代」2013年7月13日号より
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