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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130711-00000091-mai-soci
毎日新聞 7月11日(木)21時39分配信
◇ノバルティスファーマ元社員がデータ解析
降圧剤バルサルタンに血圧を下げる以外の効果もあるとした臨床試験疑惑で、京都府立医大(吉川敏一学長)は11日、同大の研究チームによる臨床試験について「医師が入力した患者データと、解析に使ったデータが一致せず、バルサルタンに効果が出るよう解析データが操作されていた」として、論文不正があったと発表した。販売元の製薬会社ノバルティスファーマ(東京)の元社員がデータを解析していたことも確認した。製薬社員が関与した論文が、薬の売れ行きに有利になる形で操作されており、日本の医薬研究への信頼を根底から損なわせる重大事態に発展した。今後はノ社の不正への関与が焦点となる。事態を重く見た厚生労働省は、文部科学省と連携して再発防止策を協議する方針。
府立医大は、学長らの給与を自主返納する。吉川学長は「深くおわびし、再発防止に努めたい。申し訳ございません」と謝罪した。関係者の処分も検討する。
論文の責任者は松原弘明元教授(56)。研究チームは、2000年のバルサルタン発売後、府立医大病院とその関連病院で臨床試験を実施した。高血圧患者約3000人を、バルサルタン服用の約1500人と別の降圧剤服用の約1500人とに分けて、経過を比較。「バルサルタンには他の降圧剤に比べて、脳卒中を45%、狭心症を49%減らす効果がある」などと結論付け、09年に欧州心臓病学会誌で発表した。
この日の発表によると、府立医大は、患者約3000人分のデータのうち、患者のカルテ調査ができた223人分を調べた。その結果、解析に使ったデータには、カルテに記載のない脳卒中や狭心症などの症例があったり、カルテに記載のある患者の症例がなかったりする例が計34件存在した。これらはいずれも同種の降圧剤に比べてバルサルタンの効果を強調する方向で操作されていた。
バルサルタンを服用したグループと、服用しなかったグループで、試験終了時に血圧が一致していた点も「不自然だ」と指摘されてきた。この点については、問題はなかったとした。
大学の聞き取りに対し、松原元教授は「意図的なデータ操作はしていない」と説明したという。元教授の代理人弁護士は「現時点では詳細についてコメントを差し控える」と話した。
ノ社は5月、社員の試験への関与を認めたが、「社員による意図的なデータの改ざんはなかった」と説明。だが、社内調査結果によると、ノ社の社員が患者のデータを自宅のコンピューターにコピーして解析し、「例示」と称して研究チームに結果を提供していた。
バルサルタンの臨床試験は、府立医、慈恵医、滋賀医、千葉、名古屋の5大学が実施した。昨年、名古屋を除く4大学の論文について、専門家が医学誌上で科学的な疑問点があると指摘していた。日本循環器学会が府立医大に調査を要請し、大学が3月に検証チームを設置していた。
ノ社は、2月の定例記者会見で「医師主導で行われた試験であり、会社は関与していない」と説明していた。3月以降、毎日新聞の報道で、社員が統計解析などを手伝っていたことや、ノ社が府立医大側に1億円余の奨学寄付金を提供していたことが判明したが、論文上はこうした事実が伏せられていた。批判の高まりを受け、ノ社は5月、役員の減給を発表した。【河内敏康、八田浩輔】
ノバルティスファーマの話 大学や患者に心配をかけて申し訳ない。ただし、大学の報告だけでは、恣意(しい)的なデータ操作があったとは確認できない。解析に使う患者データは、試験の第三者委員会の判定に従って変更されるのが一般的で、まず委員会の記録を確認すべきだ。
◇ことば【バルサルタン】
ノバルティスファーマが商品名「ディオバン」で、2000年に国内販売を始めた高血圧治療薬。12年度の国内売上額は約1083億円。世界約100カ国でも承認されている。京都府立医大と東京慈恵会医大が各3000人を対象にした大規模臨床試験では、血圧を下げるだけでなく、脳卒中や狭心症のリスクも小さくする効果があり、同種の別の薬より優れているとの結論が出た。
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