http://www.asyura2.com/09/iryo03/msg/699.html
Tweet |
医者に聞いても分からない「治るがん」と「治らないがん」「死ぬがん」と「死なないがん」ここが分かれ目です
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36154
2013年06月23日(日) 週刊現代 :現代ビジネス
進行がんで発見されても完治する人もいれば、早期に発見されたのに死に至る人もいる。がんの大きさだけでは分からない境界線はどこにあるのか。医者はなぜ真実を語ってくれないのだろうか。
■結果は最初から決まっている
毎年70万人が新たにがんにかかり、35万人ががんで死んでいる。治療技術は日々進歩し、新薬や新たな治療法が開発されているものの、人類ががんを克服するには程遠い。
そもそも、最新治療を尽くしたのに亡くなってしまう人が大勢いる一方で、治療を拒否したのに生き続ける人もいる。いったい、なぜそのようなことが起こるのか。じつは、これには患者が知らない「がんの特性」が関わっているという。
「治るか治らないかは、発見されたときの大きさには必ずしも関係なく、発生したときから持っているがん細胞の性質で決まっているのです」
そう話すのは、元消化器外科医で現在は日の出ヶ丘病院のホスピス医である小野寺時夫医師だ。これまでに5000人以上のがん患者を治療し、2500人以上のがん死に接する中で、このような結論に至ったという。小野寺医師が続ける。
「ゆっくりと大きくなるが、周囲の組織に浸潤することも転移することもない"のんびり型"と、小さいうちから浸潤や転移をする"せっかち型"があるのです。のんびり型は放置しても症状も出にくく、命とりにもならないのですが、せっかち型は、早い時期から浸潤や転移を起こしているので治療をしても治癒することがなく、残念ながら長生きもできない。
さらに言えば、せっかち型を手術するとより悪性度が高まって、急速に再発進行して命とりになることがある。これは、私自身、外科医時代に何度も経験しています。1cmほどのすい臓がんを発見された患者さんがいました。私がそれを切除し、長生きすることを期待していたのですが、再発し、9ヵ月後に亡くなってしまったのです。手術をしなければ、もう少し長く生きられたかもしれません。
手術をして完治するのは、のんびり型がほとんどなのです。これは極端な例ですが、70歳の女性で乳がんが見つかった方がいました。外科医からは手術を勧められたのですが、『もうこの年だし、手術はしません』と決断された。その後、少しずつがんは大きくなっていったのですが、結局、何も治療はせずに92歳まで生きて、彼女は老衰で亡くなったのです」
■患者には説明しない
最初から治るか治らないか決まっているのであれば説明してほしいし、逆に手術で悪化してしまうのであれば無駄な治療はしてほしくない。でも、医者からはそんな話、聞いたこともない―そう憤る人も多いだろう。しかし、残念ながらいまのところ、がんの性質を最初に調べる術がなく、医者にもそれが「のんびり型」か「せっかち型」かすぐには分からないのだという。
「のんびり型かせっかち型かを見分けるには、数ヵ月から何年か、経過を見るしかないのです。放っておいて、あまり大きくならず転移もしなければのんびり型で、浸潤や転移を起こせばせっかち型ということ。結果論で判断するしかないのです。
さらにやっかいなことに、最初はのんびり型でも、5~20年経過したあとに何らかの影響で急にせっかち型に変質することもある。急いで手術する必要のないがんも切除していると思いますが、医者も経過してみないと分からないから、患者さんには説明できないのです」(小野寺医師)
患者にとっても、がんが身体の中にあると分かっている状態で、「のんびり型かもしれないからしばらく放置しよう」と思うか、転移を恐れてすぐに手術を希望するかは分かれるところだろう。
一般にがんの進行度は、がんの大きさや転移の状態をもとにした「ステージ」で表される。T~Wの大きく4段階あり、Ąは早期、Ľに近づくほど進行がんとなる。たとえばステージTの胃がんの場合、5年生存率は約99%。がんの場合、例外はあるが治療後5年再発しなければ治ったとみなされることが多いので、ほとんどの人が助かることになる。
■数字を信じてはいけない
この「ステージ」によって「治るがん、治らないがん」「死ぬがん、死なないがん」がある程度見極められるようにも思うが、ことはそう単純でもない。
5年生存率というのは、同じ病状の患者が発症5年後にどの程度生存しているかの統計を取って示したもので、患者一人ひとりを見た場合、自分が99%の確率で治るというものではないからだ。
「医者は、5年生存率の数字を出して患者さんに説明することが多いですが、実際はその医者の経験によっても予後は大きく異なってきます。一般的に言われている数値だけで決められるものではない。医者の経験によって、見立ても変わってくるのです」
都立駒込病院名誉院長の森武生医師はこう話す。たとえば、ステージVbの直腸がんの場合、5年生存率は欧米では30%程度。だが、これまでに5000例以上の手術を受け持ってきた森医師の実績だと、5年生存率は60%を超える。逆に考えると、経験が浅い医者が手術を行えば、5年生存率はさらに下がる可能性ももちろんあるというわけだ。
患者は提示される数字にとらわれてしまいがちだが、治るか治らないかの分かれ目は医者の「経験」と「腕」にも大きく左右される。
また、ステージだけでは表せないがんの「悪性度」というものが存在する。自治医科大学附属病院病理診断部部長の福嶋敬宜医師が解説する。
「よく『がんの顔つき』と言いますが、がん細胞を調べることで、そのがんの悪性度を知ることができます。組織の乱れ具合やほかの組織への浸潤状況、増殖のスピードなどを予測できる。評価方法はがんの種類によっても異なっており、非常に複雑なのですが、悪性度を知ることで、そのがんの予後を予測することができるのです」
スキルス性胃がん、小細胞肺がんなどは、一般的に悪性度の高いがんとして知られるが、がんができた臓器や場所などによっても治る可能性は異なってくる。
「がんと一口に言っても、さまざまな種類がありますから、ステージの分類だけ見ていてもだめなのです。がん治療に携わる医者にも多様な知識が必要となっているのが現状です」(化学療法研究所附属病院副院長・小中千守医師)
医者にとっても複雑ながんの性質。それをたとえば医学知識のない高齢患者に、すべて説明して理解を求めるかといえば、そうする医者は多くはいないだろう。その場合、医者は経験上、完治せずに亡くなる確率がかなり高いと知りながら、「全力で治療に当たります」としか言わないということも起きる。
患者に説明するかどうかは別として、医者たちには治るか治らないかを判断する場合に目安にしている基準がある。「他の臓器に転移をしているか」「多数のリンパ節転移があるか」「周辺の組織に深く浸潤しているか」という3つだ。
「他の臓器に転移があっても、転移ががんのそばのリンパ節だけに限られている場合は、手術をして治るケースもあります。しかし、この3つのどれかがあるがんは、原則的にはどんな治療をしようと治ることはありません」(前出・小野寺医師)
このように「治る、治らない」の傾向が分かっていても、患者にはそれをハッキリと告げられない理由がある。日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授の勝俣範之医師はこう言う。
「医療というものに『絶対』はないんです。『治る』というと聞こえはいいですが、100%治るがんなんて一つもない。ステージTだって術後に再発して全身転移で亡くなってしまうこともあれば、どんなに進行したがんの患者さんであっても、自然治癒で治ることもあるのですから」
治らないだろうという予測が外れて治るのであれば喜ばしいが、治ると思っていたのに治らなかった場合は、裁判にも発展しかねない。患者が医者を訴える事例も増えているため、患者よりも自らの保身に走る医者も増えている。前出の森医師が言う。
「生存率が97%という状態の患者さんを手術する場合でも、最近ではわざわざ『手術をしても3%の確率で死にます』という医者が増えました。
その患者さんが3%に入るかは誰にも分かりません。それなのに医者はその数字を言い、手術をするかしないかを患者さんに選んでもらうようになっています。医者が責任を回避するような状況が生まれている。そこに、医者と患者との信頼関係は全く存在していないのです」
■医者はなぜウソをつくのか
すい臓がんを患っている山本雅則さん(仮名・61歳)も、医者に騙されたという感情を抱いている。
「昨年の7月に、人間ドックですい臓がんが見つかりました。すでに肝臓に転移しており、ステージはWbだと医者から淡々と説明を受けた。そして、『精密検査の必要があります。検査は、ご自宅近くの病院でやったほうがいいでしょう』と言われたのです。
自分の病状はどれほどなのか、家に帰って調べてみたら、すい臓がんのステージWbは、余命半年程度だと知ったんです。頭をハンマーで殴られたような衝撃でした」
他の病院で検査をしたほうがいいと医者が言ったのにはわけがある。治癒が困難だと分かった患者は、病院にとっては"厄介者"になることもあるからだ。
「大病院は、治せる患者がほしいというのが本音なのです。診察を待っている患者が多く、早くケリをつけたい、完治の見込めない難しい病状の患者さんは来てほしくないのです。
患者に向かって、『あなたはもう治りません。緩和医療の施設を紹介します』と告げる医者もいます。これは要するに、自分の手には負えないから施設を替えてほしいということを暗に言っているわけです」(日本医療コーディネーター協会代表理事で看護師の嵯峨崎泰子氏)
もちろん、そんな医者ばかりではないし、治る見込みがどれだけ少なくても何とか患者を救おうと全力を尽くす医者も多い。ただ、そんな医者たちも、厳しい現状を患者にどう伝えるか頭を悩ませている。
「患者さんにとって、どう話すのが適切なのか、そこに正解はありません。一律にするのではなく、個別対応が必要です。自分の病気についてすべてを知っておきたいという人には、細かい病状、再発の可能性などをきちんと話したほうが良いですが、不安が強い人には、慎重にするべきです」
こう言う前出・勝俣医師も、日々、試行錯誤しながら患者と向き合っている。
「『治らないことは分かっているけど、まだ死にたくないから先生には治ると言ってほしいんです。絶対に治してね』そうおっしゃる患者さんがいます。そこで『大丈夫です』とは言えないから苦しい。
患者さんには、『最善を期待し、最悪に備えましょう』、そうお話しするようにしています」
2人に1人ががんになる時代、過度に医者に頼り切ってしまうのも、最初から医者を不信の目で見るのも誤りだろう。患者自らががんを克服するという強い意志を持つこと。それが「治る、治らない」「死ぬ、死なない」の分かれ目になるのかもしれない。
「週刊現代」2013年6月22日号より
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。