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20歳未満の患者に対するCT検査は、検査回数依存的に癌リスクを上昇させることが、大規模なコホート研究の結果、示された。オーストラリアMelbourne大学のJohn D Mathews氏らが、BMJ誌電子版に2013年5月21日に報告した。
著者らは、0〜19歳の住民を対象に、診断目的のCT検査による低線量電離放射線曝露から約10年間の癌リスクを評価するため、住民ベースのコホート研究を、データリンケージ手法を用いてオーストラリアで実施した。
調査は、オーストラリアのメディケア医療記録から1985年1月1日に0〜19歳だった、もしくは85年1月1日から05年12月31日までに誕生した1093万9680人のうち、85〜05年の間にCT検査歴がある患者68万211人(6.2%、曝露群)を対象とした。このうち、複数回のCT検査を受けていたのは18%、5回以上の検査を受けていた患者も0.8%存在した。
CT検査の標的部位は、脳が59.4%、顔面骨が13.1%、四肢が9.5%、脊椎または首が8.6%、腹部または骨盤が5.0%などだった。癌罹患に関する追跡は、同国の癌登録を利用して07年12月31日まで行った。
主要転帰評価指標は、CT検査から1年超経過後に癌と診断された患者の割合に設定し、CT検査歴を受けていない対照群(非曝露群)と比較した。
追跡期間の平均は、曝露群が9.5年、非曝露群は17.3年で、曝露群では3150人、非曝露群では5万7524人(合計6万674人)が癌の診断を受けていた。
全体として癌罹患率は、非曝露群に比べて曝露群で24%高かった。年齢、性別、出生年で調整した罹患率比は1.24(95%信頼区間1.20-1.29、P<0.001)だった。07年12月31日時点における、曝露群の全ての癌の絶対過剰罹患率は10万人年当たり9.38で、CT検査により癌罹患者は608人増えたと推定された。内訳は、脳腫瘍が147人、他の固形癌が356人で、白血病または骨髄形成異常が48人、その他のリンパ系腫瘍が57人だった。
CT曝露と癌罹患の間には用量反応関係が見られた。CTスキャンを1回受けるごとに罹患率比は0.16(0.13-0.19)上昇していた。
曝露から1年超ではなく5年超経過後の癌罹患を非曝露群と比較したところ、罹患率比は1.21(1.16-1.26、P<0.001)になり、10年超経過後の癌罹患を比較しても1.18(1.11-1.24、P<0.001)と有意差が見られた。
癌罹患率比は、より低年齢で曝露した患者で大きかった(傾向性のP=0.009)。初回曝露が1〜4歳、5〜9歳、10〜14歳、15歳以上だったグループの罹患率比はそれぞれ、1.35(1.25-1.45)、1.25(1.17-1.34)、1.14(1.06-1.22)、1.24(1.14-1.34)だった。
癌のタイプ別にCT曝露による罹患リスク上昇を分析したところ、消化器、軟部組織、女性器、尿路、脳、甲状腺、メラノーマといった固形癌と、ホジキンリンパ腫、白血病、骨髄形成異常、その他のリンパ系腫瘍の罹患率比が有意に上昇していた。最も罹患リスク上昇が大きかったのは脳腫瘍で、脳のCT検査後の脳腫瘍の罹患率比は2.44(2.12-2.81)、それ以外の場所を対象とするCT検査後の脳腫瘍の罹患率比は1.51(1.19-1.91)だった。
また、検査の対象となった部位によって、癌の罹患率比は異なっていた。あらゆる癌の罹患率比が高かったのは胸部の検査(1.62、1.22-2.14)と腹部/骨盤の検査(1.61、1.38-1.88)だった。胸部の検査で最もリスクが上昇したのは軟部組織の癌(4.64、1.74-12.4)で、腹部/骨盤への照射で最もリスクが上昇したのは、白血病と骨髄形成異常(3.24、2.17-4.84)だった。
あらゆる臓器に対するスキャン1回当たりの実効線量の平均は4.5mSvと推定された。
小児にCT検査が行われる理由として最も多いのが頭部の外傷で、CT検査を依頼する医師の多くは放射線科医ではない。「85〜05年の当時、使用されていた放射線量よりも、現在のCT検査で必要な線量は低い。しかし、リスクがあることは確かなので、CT検査は、検査の必要性が明らかな症例に対し、診断に有用な画像を提供できる最低の線量を用いて行うべきであり、患者やその家族の協力も得て、利益がリスクを確実に上回るような活用を目指す必要がある」と著者らは述べている。
原題は「Cancer risk in 680 000 people exposed to computed tomography scans in childhood or adolescence: data linkage study of 11 million Australians」、全文は、BMJ誌のWebサイトで閲覧できる。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/bmj/201306/530940.html
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