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大研究 病院で殺されないために知っておくべきこと「検査」のウソ――病人はこうして作られる
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35513
2013年05月03日(金)週刊現代 :現代ビジネス
第1部 これでは病人が増えるだけなぜ「基準値」はこんなにいい加減なのか
あなたはなぜ健康診断を受けるのですか? 「元気で長生きするため」そう即答したあなたは要注意。かえって、寿命を縮めているかもしれません。健康でいるための「本当の秘訣」、お教えします。
昨年発表された最新の数値は7・8%。過去最低記録だったという。この数字、何を表しているのか。
「人間ドックで『異常がなかった人』の割合です。日本人間ドック学会がこの数値を発表しています。つまり、検査を受けた人の92・2%は、身体に何らかの異常を抱えているということ。そんなに日本人は不健康なんでしょうか」
医学博士の中原英臣医師はこう嘆く。
実際、健診や人間ドックを受けて「要注意」「要再検査」と書かれた診断書を見て青ざめた経験がある人も多いのではないだろうか。
医療技術が進歩し、「早期発見、早期治療」が叫ばれるいま、日本人はどんどん健康になっているはず―が、現実はそうではない。「病人」がどんどん増加しているのだ。そこには、知られざる落とし穴が数々潜んでいるという。
まず知っておくべきことは、検査の「基準値」が病院によって違うということだ。その値から外れると、健康に異常があるとされる基準値。誰にも当てはまる科学的根拠のあるデータをもとに割り出された数字と思いがちだが、ある病院で検査を受けたら「異常あり」、別の病院で受けたら「問題なし」と判定されることが珍しくないのである。
なぜ、そんなことが起きるのか。慶応大学医学部放射線科の近藤誠医師が言う。
「慶応大学病院の場合、健康な職員を採血し、彼らの数値を高い方から低い方へと並べて、上下各2・5%の値を切り取ったものが基準値です。この方式はどこの医療機関でも同じです」
つまり、各病院や検査機関が「健康な人」と認めた被験者の95%が入る数値が基準値として設定される。被験者が違えば、当然、基準値が異なってくる。言ってみれば「基準値」とは、検査機関ごとのローカルルールにすぎない。
ここで疑問を抱くのは、被験者となる「健康な人」をどう探すかということだ。言い換えると「健康」の定義そのものは何なのか。じつはこれがあいまいなのだ。
新潟大学名誉教授で、水野記念病院理事の岡田正彦医師が実態を語る。
「健康な人というのは、各検査機関が、アンケートで過去の重病の有無を尋ねたり、薬を飲んでいるか、妊娠していないかなどを尋ね、該当者をすべて外した残りの人のことを言っています。そうした人を『健康』と見なし、採血してデータを出しているのです。その人が『自分は健康だ』と自己申告しても、明日、突然亡くなってしまう可能性は誰にもわからない。
健康かどうかは検査しなければわからないのだけれど、検査した数字を判断するためには、本当に健康だと裏付けられた人のデータが必要になる。でもそれがないから堂々巡りになっているのです。この状況から逃れる方法は、ほぼないでしょう」
これだからこそ、検査の基準は混乱を極める。ちなみに、以前は基準値のことを「正常値」と言っていたという。呼び方が変わったのも、うなずける。
最終ページに記したのは、首都圏にある総合病院の26年前と現在の基準値の推移だ。この表からもわかるとおり、同じ病院であってもその時期によって被験者が異なるため、基準値が上がったり下がったりしている。たとえば血糖値が110mg/dlだった人は、'87年の時点では「異常なし」だったのに、現在は「要注意」と判定が出てしまうわけだ。
■このままでは全国民が病人に
現在では、基準値を統一する動きもあり、どの医療機関でも、大きなばらつきはなくなってきたというが、まだ完璧ではない。
さらにもう一つ、押さえておくべきなのは、検査機関ごとに統計をとって決める右の基準値のほかに、各学会が示したガイドラインに基づく基準値があるということだ。その中には、健康か病気予備軍かを測るモノサシとして使われている数値も多い。が、これも頭から信じていたら危ない。
たとえば血圧。
「1960年代、私が医学生だった頃に広く使われていた『内科診断学』(七版)という教科書には、血圧の基準値は、最高血圧が150mmHg、最低血圧が100mmHg(以下150/100のように表記)とされていました」(前出・中原医師)
ところが'70年代に世界保健機関(WHO)が160/95の基準値を出すと、日本もそれに合わせ、さらに、2000年には、日本高血圧学会は140/90と基準を厳しくした。
「この基準値の変更によって、今まで健康だとされていた人が、高血圧と診断され、治療を受けることになった。新規の患者数は2100万人です。これまでの患者を合わせると、3700万もの人数になります」(前出・近藤医師)
糖尿病のチェックに欠かせない血糖値も、140mg/dlだった基準値が'99年に126に、その後も110から100に引き下げられている。これにより、患者数は劇的に増加する。前出の岡田医師によると、「血糖値の基準値を10下げると、そこからはみ出る人が2・5倍増える」という。現在の糖尿病患者数は270万人と言われているが、もしここで基準値が10厳しくなったら、一気に675万人に増えるのだから恐ろしい。
同じく糖尿病と密接な関係のあるグリコヘモグロビン(HbA1c/過去1~2ヵ月の平均的な血糖値を示す)の基準値も、根拠なく改定された過去がある。
「日本糖尿病学会は5・8%までは異常ではないと言い続けていたのに、いわゆるメタボ(メタボリックシンドローム)健診が始まった途端、根拠がないにもかかわらず、5・2%を超えると異常であるように基準値を変えてしまいました。それだけで何百万人もの人が『病人』にされてしまったのです」(関東医療クリニック院長・松本光正医師)
生活が不規則になりがちなサラリーマンには特に気になるコレステロールの値も同様だ。
血中コレステロールの基準値が登場するのは、1976年出版の『内科診断学』(八版)という医学教科書。そこでは、130~250mg/dlとされていた。ところが'90年代から150~220に変更された。さらに現在では、総コレステロールだけを検査するのは意味がないとされ、LDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロールに分けて検査されている。そもそも、検査の方法さえもが移り変わっているのだ。
■「医は算術」なのか
だいたい新たな検査を始めれば、それだけ「病人」の数が増えるのは自明の理。'08年に日本でメタボ健診がスタートしてから、健康診断では必ず腹囲が測られるようになったことは、記憶に新しい。生活習慣を改め、病気が発症する前に予防して「医療費を削減する」ことを目標にスタートしたものだったが、現実はその逆を行くものだった。
「メタボ健診にあわせて、糖尿病、血圧などの各学会が新たに厳しい基準を出してきました。それによって、過剰医療が生まれてしまったのです」(前出・岡田医師)
その検査に根拠はあるのか、そもそもメタボは悪いことなのか、という議論も散々巻き起こり、検査自体意味がないのではと批判も噴出した。現在、厚労省は新たな健診プログラムを検討中だというが、このメタボ健診にかけた税金は実に500億円に上っている。
メタボ健診だけではなく、最終ページ下に記したような、新たな検査方法が次々と出てくることによって、弊害も生まれている。もちろん、早期発見による恩恵は大きい。だが一方で、30年前では見つけられなかったような病気の兆候が見つかることで、その後、薬を飲み続けなければならなくなるような事態も起きてくる。
最近普及しつつある脳ドックでは、脳の動脈瘤や血管が詰まった部分を見つけるためにMRAやMRIの検査が行われ、これまでには見つからなかったごく小さな腫瘍などが見つけられる。これにより、手術をするほどではないが、経過観察が必要な「病人」となり、ずっと病院と付き合っていかなくてはならなくなるのだ。
そもそも、検査は詳しくやればやるほど「異常」が増える仕組みになっている。
「たとえば健康診断の場合、1項目検査すれば95%の確率で基準値内に収まりますが、検査項目を増やせば増やすほど『異常』も増えます。確率論でいえば、20項目検査するとすべてが基準値内で収まる人は35・8%しかいなくなる。30項目の検査なら21・5%です。検査項目が多ければ多いほど、何かしらひっかかるようにできている」(前出・近藤医師)
このようなシステムをつくりだしてメリットがあるのは誰なのか。
「罪深いことですが、医療も"産業"です。今は人口は減っているが、医者の数は年々増えています。この状況で儲けるには、全体のパイを増やす必要がある。そのために健診と人間ドックがあるのです。その際、普通にやっていても患者は増えないので、基準値を下げて患者を増やす。顕著なのが血圧やコレステロールでした。
アメリカやフィンランドなどでは、健康診断は意味がない、寿命が延びないというしっかりしたデータがすでに出ており、日本の医師たちも知っています。知っていて知らないふりをしている。医師たちが学問の道を踏み外して"商売"に励み、患者がその被害者になっているのです」(前出・近藤医師)
日本の基準値のおかしさは、男女の性差を無視している点にも表れている。
たとえば、女性ホルモンのエストロゲンはコレステロールを下げる作用があるため、女性は閉経して女性ホルモンが減少すると、当然コレステロール値は上がる。そのため、現行の基準値220を閉経後の女性に当てはめると、50歳過ぎの女性の55%が「異常」に分類されてしまう。そこでアメリカでは、該当年齢の女性の基準値は265未満となっているのだが(この基準だと異常は5%)、日本はこの性差を無視してしまっているのだ。
清風荘病院特別顧問の天野恵子医師が憤る。
「昨年、日本でもガイドラインが改定されて、診断上の性差の問題は解消されましたが、実際はまだほとんど浸透していません。本来、日本動脈硬化学会の医師たちがこのことを声を大にして言ってくれないとだめなんです。講演会などがあっても彼らは言わない。製薬会社がスポンサーだからでしょう。これが一番の問題だと私は思っています」
すべての医師が、カネ儲け主義であるわけでは決してない。現場の医師たちは、そこまで考えて行動する暇がないというのが現状だろう。だが、病気を予防したい、早期発見をして治してあげたいと、患者に向き合う医師がいる一方で、医療政策や製薬会社も含めた大きな規模での動きが、病人を増やしてしまっていることは否めない。
前出の松本医師は、ちょっとした異常であたかも「病気」のように名前をつけて扱うことに問題があると指摘する。
「高血圧も高脂血症も高尿酸血症もそうですが、これらは高血圧状態、高脂血状態、高尿酸血状態と言うべきであって、『症』ではない。病気ではないんです。にもかかわらず、いかにも病気らしい名前をつけ、基準値を厳しくすることで、患者を増やしてしまっています。
血圧について言えば、そもそも人間は老化につれて動脈硬化を起こすものですし、血管壁も硬くなる。そのため、血圧を上げて血液を循環させることは、生命維持に必要なことでしょう。60歳頃から最高血圧が220あったけれど、95歳で大往生した患者さんもいました。年齢とともに、数値が上がっていくのは、病気ではなく自然なことなのです」
検査結果の数値だけに惑わされて、病人になる必要などない。
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「週刊現代」2013年4月20日号より
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