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寄生虫の研究者として有名な藤田紘一郎先生、『免疫力をアップする科学』と言う本をだされた。また楽しく読ませていただいた。
腸内細菌は善玉、悪玉、日和見に分けられており、人の健康を大きく左右する。医学の進歩により、多くの命が救われて、医学の進歩には万民が恩恵を受けている。その反面、先進諸国では衛生や清潔の概念が行き過ぎている。ほんの数十年昔、「不衛生」の人には発現しにくかった花粉症やアトピーなどのアレルギー症状が多くの人に見られるようになった。また体内では、大腸菌の一種であるO157などの深刻な感染症が見られるようになってしまった。
長い間、人類はいまに較べるとはるかに「不潔」な環境の中で暮らした。過酷な状況を生き抜いた人達が生命をつないできた。その重要な役割を担ってきたのが免疫である。人類を含め、生まれたばかりの動物の赤ちゃんは、無菌状態である。母親の胎内で有害な菌やウイルスに感染しないように守られている。しかし、体外に出た瞬間から、生き抜くための多くの試練に耐えねばならない。例えば他の動物が食さない笹やユーカリを食べて生きるパンダやコアラは笹やユーカリを消化する酵素や無毒化するには、腸内細菌がもつ酵素の助けを借りなければならない。その為に赤ちゃんは土壌菌などを体内に摂取して、腸内の細菌を増やしたのだそうだ。
人間も例外ではなく、野菜のセルロースを分解するには生まれた後に摂取する腸内細菌の酵素の力を借りなければならない。宿主は生きる場所を提供し、寄生者は宿主にない酵素を提供する、共生である。赤ちゃんが何でも舐めようとするのは、土壌菌等を体内に取入れて腸内細菌を増やすためでもあるそうだ。人間などの生物も大腸菌との共生なしには生きていけない。著者は今でも様々な土壌菌をカプセルに入れて毎日飲んでいるそうだ。
発生学的には脳より腸の消化器官の方が先に出てきた。食物が体に良いか悪いかは腸の活動で決まる。その腸は多くの腸内細菌のバランスによって左右される。単純に言えば、下痢や便秘するのは、食べ物が悪いのかあるいは腸内細菌の働きがよくないのかのどちらかである。その腸内細菌の働きやメカニズム、免疫力への影響などが分かりやすく書かれている。肥満や偏食などの障害は脳が腸に優先して指令を出すものだそうだ。
健康の秘訣はこの腸内細菌をバランスよく存在させることがポイントなのである。腸内細菌は、ヨーグルトや納豆、味噌などの発酵食品を多く食し、腸内善玉菌を増やすことにある。人類はその長い歴史の中で、食物繊維の多いものを食べてきた。そして、繊維の多い食べ物は腸内細菌が居着きやすい食物でもある。発酵食品、食物繊維の多い野菜、動物性・植物性(豆類)たんぱく質の多い食品をバランスよく摂ればいい。
要は日本人の伝統的な食生活を続けることが、健康にいちばんよいのである。肉類は控えめに、代表的な発酵食品、味噌、しょうゆ、漬物、納豆、(発酵を続けている)醸造酒類、日本以外のものではキムチ、チーズ、ヨーグルトなどである。ただし、防腐剤や保存料が多すぎる物は害になることが多い。また、よく噛んで食べる食品の方が優れている。できるだけ昔の食生活に戻った方がよいということである。
著者の健康についての著述はストレスが原因の「うつ」の症状の解消や、癌治療・予防の範囲まで及び、適度に愉快に笑うことがNK細胞を活発にし、人間の生活の改善に大きく寄与すると、分かりやすい色図解入りで説明されている。癌細胞の発生は生物の宿命のようなもので、健康な人の体でもDNAの複写エラーや化学物質や放射線により、毎日5千から1万個も発現するのだそうだ。NK細胞は、この異物を攻撃して死滅させる役割を担うのである。
著者の持論として、腸内細菌の善玉、悪玉、日和見にはそれぞれに役割があり、単純に善玉と悪玉に一概に分けるのは正しくないとの意見を持たれている。悪いものであれば、体外に排除される筈だからである。環境や状況によってこれらの菌は様々な腸の中でいろいろな役割を持っており、善玉や悪玉はたまたまその時に見せる顔であり、日和見菌も状況によっては善玉を演じたり、悪玉に変わったりしてその役割を果たす。まるで人間の社会を見るようである。
矢津陌生ブログ http://yazumichio.blog.fc2.com/blog-entry-203.html より転載
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