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救急搬送の現状とこれから
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投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 21 日 02:43:14: cT5Wxjlo3Xe3.
 

救急搬送の現状とこれから
2012年11月20日 社会政策コンサルティング部 山本 眞理
1日平均およそ1万5,000件。これは、2010年の全国1日当りの救急車出動件数である。5.8秒に1回の割合で出動している計算になる。救急需要は、ほぼ一貫して増大しており、この12年間で約30%増となった(*1)。こうした背景には、高齢者人口や一人暮らし世帯の増加によって、急な受診ニーズや通院までの手助けを必要とする利用者が増えていることが指摘されている。
ところが、救急需要増に反して、供給体制(救急隊員数)は、同期間で6%程度しか増えていない。その結果、救急車が傷病者を医療機関へ搬送し終えるまでに要する時間が延びたり、救急隊員から搬送先候補の病院に受け入れを打診しても、運び先がなかなか決定しないといった問題も多発している(*2)。
本稿では、逼迫している救急搬送需要への対応策について検討してみた。
救急搬送の現状
2010年には、全国で546万3,682件の救急車の出動があった(*3)。救急車の利用者にはどのような特徴があるのだろうか。利用目的は、「急病人」「交通事故」や「一般負傷」である。一方、「転院搬送」も約1割ある。年齢は、約6割を65歳以上の高齢者で占める。利用者の重症度をみると、約5割が“軽症”(*4)であるという。乳幼児、少年の軽症者割合は約8割にのぼる。結果的に軽症であっても、診療時間外に症状が出たり、怪我をした場合には、いつ何時、現在の症状が急変するのかがわからないため、本人や家族等は、大変不安な気持ちになる。予後の観点から、すぐに医療にかかっておく意義は大きい。
しかしながら、軽症者の割合は、都道府県間でかなりのばらつきが見られる(*5)。地域の医療機関へのアクセス状況、通院の助けが得られにくい一人暮らしの増加等といった要因も、軽症利用を増やす原因になっていると推測される。限られた救急資源の半分以上を、軽症者で埋めている現状は、本来、助けることができる命を守ることができないかもしれないという、社会的リスクともいえる。
対応策(1):緊急度判定を行なう仕組みづくり
増加する救急搬送需要に対し、諸外国ではどのような対策をとっているのであろうか。
イギリスやドイツ等の一部の地域では、日本でいう119番通報を受ける救急指令センターの中で、緊急度判定(トリアージ)を行なっている。これは、通報者との電話のやりとりをもとに、指令員が専用端末等を利用しながら、通報者の緊急度を判定するものである(*6)。“緊急度”とは、通報者の状態や訴え等が、生命の危機に直結するような状態であるのか、また医療機関にすぐにかかるべきかという度合いを指している。
これらの国では、通報を受けた後、利用者の緊急度に応じて、搬送手段(重装備の救急車から、小型の搬送専用車まである)と、対応する人員(医師、看護師、救急救命士などの職種、人数)を選択している。つまり、利用者の緊急度に従って、資源配分のマッチングを行なっているのである。日本では、東京や横浜市等の一部の地域を除き、119番通報に対してほぼ全件、同じ体制で救急車が出動しており、地域によって実態はかなり異なる。
緊急度判定を組み込むことによって、緊急度の高い通報者に対して、より迅速に救急車を回し、医療につなげることで、より高い治療効果が得られることが期待される。
対応策(2):“軽症”者のニーズに対する新しいサービスづくり
一方で、状態の安定した患者の転院搬送や、通院の手助けが得られにくい高齢者の受診支援などは、救急車以外の資材と人員による、新たなサービスを作ることも必要であると考える。実際、ドイツ・フランクフルトでは、前述の緊急度判定の結果と連動して、搬送車が出動している。こうした搬送サービスは、民間事業者が提供体制の主力となっている(大手は、キリスト教系の団体を母体とする、互助組織から発生した事業者)。
まとめ
将来の救急車出動件数の推計をみると、2010年以降、日本の総人口は減少に転じるものの、高齢化率の上昇等の要因により2030年まで増加し、600万件を超過するという(*7)。今後は、さらなる需要増を念頭に、効率的な資源配分を行なう体制づくりが必要であると考える。そのためには、民間組織も活用しながら、地域ごとに新たな実施体制を模索していくことも必要であろう。さらに、日頃から私たちも、緊急度判定の考え方について学び、119番通報をする時や医療機関受診時に、自分の状態を的確に伝える方法・知識を身につけておくことも重要であると考える。これは、今後の医療提供体制の1つの柱として推し進められている「在宅医療」を実現していくうえでも、必須の仕組みであると考える。
*1平成17年版、平成23年版「救急・救助の現況」(総務省消防庁)
*2こうした状況を受け、2009年10月30日に「消防法の一部を改正する法律」 が施行され、都道府県が救急搬送・受入れの実施基準を作り、公表する こととなった。実施基準には、傷病者の状況に応じた適切な医療の提供 が行われる医療機関のリストを作り公表すること、リストの中から搬送 先医療機関を選定するための基準を作ること等が定められた。今後、実 施基準に基づく取り組みによって得られた救急搬送の成果に関する報告 が期待されるところである。
*3平成23年版「救急・救助の現況」(総務省消防庁)
*4平成23年版「救急・救助の現況」(総務省消防庁)では、軽症とは、入院加療を必要としない、つまり外来受診で治療が終了した状態と定義している。
*5平成23年版「救急・救助の現況」(総務省消防庁)では、軽症者の割合が高い県は、大阪、京都、滋賀、三重、愛知で約6割、低い県は宮城、長崎で33%となっている。
*6総務省消防庁は、2012年度に緊急度判定(トリアージ)のあり方についての検討会を開催し、報告書を公表している。
(PDF/2,422KB)
http://www.fdma.go.jp/neuter/about/shingi_kento/h23/shakai_triage_arikata/houkokusyo/honbun.pdf
*7平成22年度救急業務高度化推進検討会報告書「第8章 救急搬送の将来推計」(総務省消防庁)http://www.fdma.go.jp/html/intro/form/kinkyugyoumu_h22_houkoku.html
http://www.mizuho-ir.co.jp/publication/column/2012/1120.html  

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コメント
 
01. 2012年11月30日 18:35:27 : Vc8ROHMAY2
軽症だった場合の救急車の利用は金を取ればいいんだよ。
実際1回何万円かかかるらしいし。外国では取ってるところの方が多いんだし。
入院したら無料にするとか。

夜間の救急外来でも金取ったらコンビニ的な利用は減ったそうだしね。


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