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混合診療のおかげで私は死の淵から蘇った    日本が禁止する本当の理由 
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投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 06 日 07:38:02: cT5Wxjlo3Xe3.
 


JBpress>リーダーズライフ>本 [本]
混合診療のおかげで私は死の淵から蘇った
日本が禁止する本当の理由〜清郷伸人氏・著者インタビュー
2012年11月06日(Tue) 川嶋 諭
 清郷伸人さんは、腎臓にがんが見つかり、その後転移して、抗がん剤は効かないし手術は危険、治すのが非常に難しいと主治医に宣告された。しかし、転移の進んだ難しいがんから見事に立ち直る。いまでは闘病生活から離れて生き生きとした生活を送っている。

 清郷さんに“奇跡”を起こしたのは混合診療と呼ばれるものだ。簡単に言えば、保険の利く治療は保険治療を行い、保険の適用外の高度治療は全額患者負担で行う診療方法である。

腕のいい医師に患者が集まるのを恐れる医師会

 とても合理的な方法と思えるが、いまの日本では認められていない。保険診療と同じ医療機関で保険適用外の治療を受けると健康保険を取り消され、保険が利く治療が含まれていても全額自己負担になる。

 その理由はこのあとのインタビュー記事で詳しく触れているので繰り返さないが、一言で言えば医師会と厚生労働省の既得権益を守りたいがためである。患者のためと言いながら、実は患者のことは後回しになってしまっている。

 混合診療を入れたくない最大の理由は、保険と非保険治療を組み合わせて最も効果の高い治療方法を工夫した医師に患者が集まり、そうでない医師が困ってしまうということだろう。しかし、競争のない世界には成長もない。

 もちろん日本の健康保険制度は素晴らしい。しかし、どんなに素晴らしい制度も必ず制度疲労を起こすことは歴史の教訓である。少子高齢化が進み、国民の医療費負担は日本が抱える最大のテーマと言っていい。

 ここで、日本は世界最先端の医療システムを構築できるのか、あるいは旧来のシステムのまま疲弊していくかは、医療界のみならず日本全体の大問題でもある。

 今回は知られているようで知られていない混合診療の問題を追った。ここには「赤信号みんなで渡れば怖くない」式の発想しかできない大メディアの問題も含まれている。

混合診療を週刊誌に暴露され、治療継続が不可能に


『官僚国家vsがん患者 患者本位の医療制度を求めて』(清郷伸人著、蕗書房、1429円・税別)
川嶋 清郷さんが、がんに罹患されたのはいつですか。

清郷 2000年10月に職場の検診で左腎臓にがんが見つかり、翌年1月に神奈川県立がんセンターで摘出手術を受けました。しかしその6カ月後に、頭と首の骨に転移していることが分かりました。

 当時53歳で、主治医にはいい治療方法がないと言われました。腎臓がんに抗がん剤は効かないし、頭の手術は非常に危険で難しいと。

それで免疫治療をやりますかと勧められたんです。それまで保険診療でインターフェロン療法を受けていたんですが、それと併用することにしました。

川嶋 その免疫治療というのはどういうものですか。

清郷 活性化自己リンパ球移入(LAK)療法といい、自分の血液50ccからリンパ球を取り出し、インターロイキン2という薬剤とともに培養して増殖、活性化させ、それをまた体内に戻すというものです。自分の血液ですから安全です。

 ところが、4年後の2005年10月に中止せざるを得なくなりました。週刊誌に、これは厚労省が禁止している混合診療だと暴露されてしまったからです。

川嶋 「週刊朝日」ですよね。何が問題だったわけですか。

清郷 その時まで私は知らなかったんですが、LAK療法は健康保険の利かない自由診療だったんです。日本では同じ医療機関で保険診療と自由診療の併用を受ける、いわゆる混合診療は禁止されています。私が受けていた治療は混合診療だったわけです。

川嶋 法律に違反するとはいえ、悪質なものじゃないですよね。「週刊朝日」は混合診療を認めたくないわけですね。

清郷 私も編集部に抗議文を送りましたが、向こうの言い分は、そうはいっても健康保険制度を破壊する行為だからということでした。つまり国と医師会の主張に沿った姿勢です。行政べったりで、朝日のすることかと思いましたけどね。

 あとで分かったんですが、当時、LAK療法は特定療養として厚生労働省も認めていて、保険診療との併用(混合診療)も可能だったんです。つまり、LAK療法の有効性と安全性を認めていた。

 ただし実施できるのは、総合病院であるという要件を満たした特定承認保険医療機関だけでした。神奈川がんセンターは小児科がないので総合病院ではなく、特定承認保険医療機関ではなかった。

川嶋 しかし本来、がんセンターというがん治療の総本山でやってほしい治療ですよね。

清郷 まったくその通りです。それでも病院の研究費を使って、私たち患者を治療してくれていたんです。

 週刊誌に暴露された後、病院側はLAK療法を続けるなら他の医療機関を紹介すると言ってくれました。しかし、自己負担が月50万円するというので、家計を考えて断念しました。

川嶋 それでも清郷さんの場合、インターフェロンとLAK療法との併用が功を奏したわけですね。

清郷 そうです。主治医からは当初、予後は厳しいと言われていましたが、こうやって元気に生きていられるのは、治療の効果としか思えません。今もがんが治ったわけではないですが、悪くなっていません。

がん患者を経済的窮地に追い込む制度の理不尽さを訴える

川嶋 その後、国を相手取って訴訟を起こされたわけですが。

清郷 だってがん患者が助かるかもしれないんですよ。現に私もこうして今、普通に暮らせています。それに、限られた特定承認保険医療機関以外の保険医療機関で自由診療や保険外併用療養としての評価療養を行うと、その病院の保険指定が取り消される(最長5年)。

 加えて、保険診療に支払われた保険(通常医療費の7割)の返還を命じられます。しかも、給付された保険の返還は患者の負担になる可能性があるというんです。たった1つの自由診療を受けただけで医療費が全額自己負担になるなんて制度は、あまりに理不尽じゃないですか。

 混合診療を禁止するというのは、厚労省と国による間接的な殺人じゃないかと、未必の故意による殺人じゃないかと、著書の中では激しい言葉を使いましたが。それはこれだけ多くの人ががんで死んでいるからです。

 例えば、海外で認められている標準治療だけれど、日本では認められていないという治療法がたくさんあります。抗がん剤の場合、海外で普通に使われているもののうち3割くらいは日本では使えません。

 隣の患者さんが肺がんで受けているすごくよく効く抗がん剤があり、卵巣がんにも効くと言われているけれども、日本では卵巣がんには使えない。卵巣がんの患者さんが主治医に使ってほしいと頼んでも、日本ではそのための認可がないからと。

 そういうジレンマや苦しみを、患者も良心的な医師も持っているわけです。厚労省はもっと医師と患者を信頼して、患者が医師から十分なインフォームドコンセントを受けて決めた治療に対して介入しないでほしいんです。

川嶋 裁判は結果的に、1審では勝訴しましたが、2審と最高裁では敗訴しました。

清郷 1審の裁判官は、保険給付を定めた健康保険法を純粋に精査して、現状と法律の矛盾や違法性を認めました。行政の意向などはいっさい考慮せずに、法律の条文と現状の規制が合致していない、法的根拠はないから違法であると。純粋に法律的な判決なんです。

 2審以降は、現状の制度を追認した上で、そういう法律があるから認められないんだよと。私は、その法律そのものが違憲じゃないかと問うてるんですが・・・。必要性があるからそういう法律がある。だからいいんだよと、行政追認の裁判でした。

 2審以降は明らかに政治的な判決です。

川嶋 司法も現状を維持したいということですね。

既得権益を守るために厚労省と医師会が結託

川嶋 患者にとっては保険医療で自分を診てくれるお医者さんに自由診療もやってもらう方が安心で便利ですよね。混合診療の方が合理的なのに、厚労省はなぜ認めないんですかね。

清郷 私見ですが、省益とか官僚益にすぎません。厚労省がその規制を手放さないのは、どの医療をどの病院ができて、どの病院ではできないというのを自分たちですべて決めたいんです。

川嶋 医者が勝手にいろんなことをやられては困ると。

清郷 確かに医療の安全性とか質を担保するには、規制は必要だと思います。

 しかし、それが行きすぎて、科学的根拠のある先端治療があるにもかかわらず、あるいは効く薬があるにもかかわらず、混合診療はいっさいダメだという。仮にやったとすればあまりにも重いペナルティーを科す。

川嶋 今までやってきた行政を変えることは、自分を否定することだから認めないということですね。

清郷 官僚の特徴というのは結局、自己保身ですよね。よく前例主義と言いますが、厚労省が金科玉条のように言うのは、一部の悪徳医がいて、自由にさせたら患者が被害を受けると。

 自由診療で高い治療をやったり、安全性が認められていない治療をやったりということの危惧を言うわけです。

 それは確かにゼロではないですが、想像上の一部の悪徳医のために、大部分の良心的な医師や難病に苦しむ患者を犠牲にしている。ごく一部の部分利益、官僚の省益のために国益全体を損なっています。

 それともう1つ、官僚は現在の既得権側につくんですね。医療に関するステークホルダーの中で、最大のステークホルダーは国民なんです。しかし国民、患者は置いておいて、既得権側つまり医師会や医療産業などの方に軸足を置いて行政を行っている。

川嶋 医師会も混合診療には反対しているわけですね。

清郷 そうです。個々の医師は必ずしもそうじゃないんですけが、よく言われるように個人と組織は違う。医師会は基本的に開業医の団体ですから、混合診療が可能になると医療の競争が始まるので、開業医はイヤがるんです。

川嶋 競争が起きるというのは患者にとってはいいことですよね。

清郷 その通りです。情報が開示されて、どこの医療機関は優れているというような判断材料があれば患者は助かる。しかし、それを一番恐れているのは医師会です。

 旧態依然たる保険診療だけで、極端に言うと二千数百万円の年収と、開業医の世襲率9割が守られている。安易な楽園です。混合診療に関しては厚労省と医師会は完全に結託しています。

ホンネとタテマエの健康保険制度。混合診療は隠れて行われている

清郷 厚労省も最高裁の判決もそうでしたが、医療は平等でなければならないとか、安全性や有効性が担保されなければならないと言うわけです。

 しかし、平等についていうと、受ける医療は一人残らず決められた医療以外を受けてはならないというのが厚労省のタテマエですが、実際には自由診療がある。それはおカネ持ちしか受けられない。それのどこが平等なのか。

川嶋 清郷さんが受けていたLAK療法も自由診療であれば可能なわけですよね。

清郷 そうです。自由診療ならばやれます。しかし、月に何十万円もかかるので普通の人では難しい。

 先ほども言いましたが、患者が主治医の病院とは別の医療機関に行って、自由診療の治療を受けることはできるんです。けれども、同じ病院で同じ医師がやるのはダメなんです。これは非常に矛盾しています。

 それでも実際には良心的なお医者さんは私の場合がそうだったように、研究費を使って自由診療を併用している場合があります。

川嶋 制度に抜け道があって、現実には混合診療を受けている患者はけっこういると。

清郷 そうです。カルテを改竄したり、病名を変えたり、いろんな工夫をしてやっているんです。保険当局もおそらく把握しているけれども、悪質でなければ見逃しているんだと思います。つまり実体は矛盾している制度なんです。

 逆に言うと、だから危険なんです。自由診療に特化している医療機関の中には、カネ儲け主義のところもある。そういうところで治療を受ける方が危ない。保険医療機関で併用した方が安全性が高いんです。

 そういう実態があるのに、目をつぶって、怪しげな治療はダメだの一点張りなんですね。安全性が損なわれると。逆に禁止しているから安全性が損なわれるんですけどね。

 また、厚労省が混合診療を認めない理由として、自由診療で病状が悪化した場合に、それを保険診療で治すというのは国の予算のムダ遣いだと言うんです。それならば自由診療そのものをすべてなくすしかない。だって世の中にはいくらでも自由診療があって、マジナイみたいなものだってある。サプリメントもそうです。

 厚労省の理屈は、それらをすべて取り締まってこそ初めて言える話ですが、そんなことができるわけがない。つまり論理矛盾なんです。

川嶋 要するに今の保険制度は、現実には徐々に崩れつつあるわけですか。

清郷 ホンネとタテマエの世界で、法律というタテマエはしっかりしている。しかし、ホンネの部分の医療現場は矛盾だらけです。ですから、それを是正して患者にとって最良のやり方が堂々と普通に行われるべきなんです。

保険財政の破綻は目の前、医療制度を考え直すとき

清郷 これからは、ある程度の貯金があり、保険もかけていた普通の国民が、がんになってなかなか治らない時に、日本の保険では認められていないけど海外では普通に使われている薬や治療を、しっかりとした保険医療機関で受けられるようにすべきだと思うんです。

 保険と保険外のものを併用する、つまり混合診療の制度を設けるのはごく普通のことだと思うんです。他の先進国では普通にやっているわけですから。

清郷 ただし誤解していただきたくないのは、私は何でもかんでも解禁せよと主張しているわけではありません。先端医療に保険を使えとも言いません。

 しかし、CT検査や血液検査には健康保険が使えるのが当たり前じゃないですか。混合診療をしたからという理由でそれらすべてに保険が利かないとなれば、家計は破産ですよ。破産するか、治療をやめて死ぬか。

 また、混合診療をどの医療機関でやっていいとも思っていません。ある程度の実績のあるしっかりとした病院のみでできるようにすれば、それだけでも大きな進歩です。がんセンターや大学病院など大きな医療機関だけでも開放すれば、ぜんぜん違うと思います。

 日本の国民皆保険はいい制度です。しかし、それを守るためと称して、人の自由を奪い、難病の人たちを見捨てている。そんなことをしなくても皆保険は守れます。日本の医療技術は高くても、医療制度はガラパゴスですよ。

川嶋 不思議なのは、これだけ悩んでいる人がいて、治療を求めている人がいて、なぜ清郷さんのような声が大きなうねりにはならないんですかね。

清郷 がんなどの重い病気や難病以外、普通の病気は保険診療だけで治りますから。大多数の人は困っていないということだと思います。

 また、私の場合は週刊誌に暴露されたこともあり、失うものがなかったので声を上げることができましたが、さっき話したように、表に出ないようにやっている場合は自分に不利になってしまうので大っぴらにできないんです。

 そこで私は本人訴訟で東京地裁に訴えを起したのですが、結局裁判では制度を変えることは不可能でしたから、あとは政治家ですね。立法府です。

川嶋 しかし政治家は医師会の献金などで身動きが取れないわけですよね。

清郷 そういう政治だと絶望的ですね。

 この問題でもう1つ重要な点は、保険財政がもうもたないということです。なぜなら、先端医療は高額だからです。2人に1人ががんになる時代に、それらを保険に入れていったら医療費はどんどん増えます。

 そうすると今のようにすべてを保険で賄うのはムリになる。ですから、ある程度おカネがある人は、先端医療は10割自己負担で、同時に今まで認められてきた医療に関しては保険を使う。そういう方向で政治が動かないとダメだと思います。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36307  

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コメント
 
01. 中川隆 2012年11月07日 10:14:21 : 3bF/xW6Ehzs4I : HNPlrBDYLM

2012-11-06 死の淵から蘇ったのは混合診療のおかげ?


■[医学]死の淵から蘇ったのは混合診療のおかげ?


JB pressに
■混合診療のおかげで私は死の淵から蘇った 日本が禁止する本当の理由〜清郷伸人氏・著者インタビュー


という記事が載った。日本で混合診療が原則禁止されているのは「医師会と厚生労働省の既得権益を守りたいがため」であり、激しい言葉で言えば、「混合診療を禁止するというのは、厚労省と国による間接的な殺人じゃないか」という主張である。

なるほど、混合診療禁止にはデメリットはある。しかしながら、混合診療解禁にもデメリットがあり、その点についてはほとんど触れられていない、あまりにも一面的な記事であった。混合診療解禁のメリットとデメリットについてはすでに述べたが、デメリットのうちの一つ、混合診療が解禁されれば質の低い医療が行われる点、および、そのデメリットを回避する方法について今回はやや詳しく述べようと思う。


混合診療のおかげで死の淵から蘇ったわけではない

「混合診療のおかげで私は死の淵から蘇った」という患者さんからの訴えは心に強く響くが故にJB pressの記事に説得力を感じた読者もいるのではないか。なるほど、「海外で認められている標準治療だけれど、日本では認められていないという治療法」を併用したおかげで助かったという患者さんも探せばいるであろう。しかしながら、混合診療解禁によって不利益を被る患者さんもおり、混合診療解禁の是非はメリットとデメリットを勘案すべきである。

さらに言うなら、JB pressで述べられている清郷さんのケースにおいては、「混合診療のおかげ」で死の淵から蘇ったわけではないと思われる強い証拠がある。清郷さんは腎癌摘出後に頭と首の骨に転移していることが判明し、保険診療であるインターフェロン治療に併用して、免疫療法の一種である活性化自己リンパ球移入(LAK)療法を受けた。

活性化自己リンパ球移入(LAK)療法は保険適応外であるので、同時にインターフェロン治療を受けると混合診療となる。ルールに従えば全額自費となるが、それを不服として清郷さんは国を相手取って訴訟を起こしたわけである。現在のところ、「治ったわけではないが悪くなってはいない」ということで、「インターフェロンとLAK療法との併用が功を奏した」と、清郷さんは認識している。

日本において主に自費診療クリニックで行われている免疫療法については、非常に高額な対価を取るにも関わらず、効く証拠はほとんどない。LAK療法についても同様である。「効く証拠がない」どころか、「効かない」という報告もある。たとえば1995年にCancerに掲載された、進行腎細胞癌を対象にIL-2(インターロイキン2)単独療法とIL-2+LAK療法を比較した無作為化試験*1によれば、反応、生存ともに両者に有意差なしであった(肺毒性pulmonary toxicityはLAK療法群に多かった)。

私が探した範囲内では、進行腎細胞癌に限らず、癌に対してLAK療法が効果があるという良いエビデンスは存在しない。清郷さんのケースは、別にLAK療法を受けなくても、保険診療であるインターフェロン治療だけでも同様の効果が得られていただろうと私は考える。そうだとしても、清郷さんや、あるいは医療について詳しくない川嶋諭氏*2が、「インターフェロンとLAK療法との併用が功を奏した」と思い込んでしまうのは無理もない。患者さんは治療を受けた後ですら、その治療の質を評価するのは困難である。


混合診療全面解禁で質の悪い医療がはびこる

もし仮に混合診療が全面解禁となったとしよう。なるほど「海外で認められている標準治療だけれど、日本では認められていないという治療法」がやりやすくなるというメリットはある。だが、そのような治療を行えるのは大学病院などの一握りの医療機関に限られる。しかし、知識のない医師であってもLAK療法のような高価であるが効果のあやふやな「最新治療」なら可能だ。

これまで保険診療のみを行ってきた医療機関の中には、儲けるために混合診療に手を出すところが出てくるだろう。また、これまで全額自費で診療を行ってきたクリニックも、検査や入院を保険診療で行うところが出てくるだろう。効果の無い治療を行うような医療機関は競争に負けて淘汰されるであろうか?もしそうなら、現行の自由診療クリニックであっても淘汰されているはずであるが、実際には逆である。川嶋諭氏は、

 混合診療を入れたくない最大の理由は、保険と非保険治療を組み合わせて最も効果の高い治療方法を工夫した医師に患者が集まり、そうでない医師が困ってしまうということだろう。しかし、競争のない世界には成長もない。

と述べた。確かに競争は起こる。勝つのは、最も効果の高い治療方法を工夫した医師ではなく、いかにも効きそうと患者に思わせることができた医師である。医学文献を引いて「LAK療法にはエビデンスが無い」なんてほとんどの患者は調べることはできない。このあたりのことは■医療と自由競争で詳しく述べた。


混合診療は部分的に解禁すべきだし、既に部分的に解禁されている
混合診療を全面解禁すると質の悪い医療がはびこるとしても「全面」でなければいいのではないか。清郷氏はこう述べる。

 また、混合診療をどの医療機関でやっていいとも思っていません。ある程度の実績のあるしっかりとした病院のみでできるようにすれば、それだけでも大きな進歩です。がんセンターや大学病院など大きな医療機関だけでも開放すれば、ぜんぜん違うと思います。

その通りである。というか、既に似たような制度はある。清郷氏も知っているはずだ。「評価療養」と言って「先進医療(高度医療を含む)」「医薬品の治験に係る診療」「薬事法承認後で保険収載前の医薬品の使用」などについては、「療養全体にかかる費用のうち基礎的部分については保険給付をし、特別料金部分については全額自己負担とする」ことが認められている*3。要するにこの部分においては混合診療は解禁されている。

何でもかんでも解禁というわけではなく、「有効性、安全性、効率性、社会的妥当性、将来の保険導入の必要性等の観点から検討」「安全に実施できるよう、施設基準を設定」された上で保険診療との併用が可能になる*4。「混合診療解禁で質の悪い医療がはびこる」ことは避けられるし、「将来の保険導入の必要性等」を検討することが明示されていることにより将来において保険診療が縮小されるおそれも最小限にできる。

むろん、現状が理想的というわけではけっしてなく、海外で標準医療となっているのに評価療養に入っていないものはたくさんある。真に患者の利益を考えるのであれば、科学的根拠がありそうな治療法についてはどんどん評価療養に入れて検討するべきだと思う。しかし、私の知る限り、混合診療解禁派でかような主張をしている人はあまりいない。この方法だと、保険診療が縮小されるどころか、拡大するからだと思う。

当たり前だが、厚生労働省も日本医師会も、評価療養の範囲内での混合診療には反対していない。一方、保険診療が拡大すると不利益を被る人たち、具体的には財務省や経団連は、保険診療が縮小されるかたちで混合診療が解禁されるのが望ましいと考えるだろう。混合診療のデメリットや評価療養の制度について無知な人に「混合診療解禁に反対する連中は既得権益を守っているだけだ」と思い込ませることができれば、さぞや彼らの利益となるであろう。


効かない治療であれば混合診療の対象から外すべき

現在では「評価療養」とされている制度は、以前は特定療養費制度と呼ばれていた。実は、LAK療法はこの特定療養費制度の対象であった。JB pressの記事にも触れられているが、「要件を満たした特定承認保険医療機関」であれば混合診療可能であったのだ。どうしても混合診療にてLAK療法を受けたければ「ある程度の実績のあるしっかりとした病院」なら可能だったのである。

JB pressの記事には厚生労働省は「LAK療法の有効性と安全性を認めていた」とあるが、そうだとしても2006年までの話である。LAK療法は2006年4月、「有効性が明らかでないとして」高度先進医療に係る療養の範囲から除外された*5。旧特定療養費制度が機能していたという証左であろう。結局は効かないとされたことについてJB pressの記事が触れないのはアンフェアだと思う。自由診療においては現在でも高価な対価をとってLAK療法が行われている点も指摘しておこう。個人的にはLAK療法に費やされるお金はドブに捨てているようなものだと思う。混合診療が解禁されたらドブに捨てられる金が増えるであろう。そんなお金があればもっと有効性が明確な治療に回したい。あるいは高額な医療費に苦しむ人の負担を減らしたい。

一方、もしLAK療法の有効性が認められていたら、今頃は保険適応となり、混合診療分を払えない経済的余裕の無い人でもLAK療法を受けることができるようになっていた。現在運用されている混合診療を部分的に解禁する制度は、混合診療を全面解禁するよりはずっとましな制度だと私には思える。議論すべきは混合診療を解禁すべきかどうかではなく、どの範囲まで解禁するかである。
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20121106#p1

混合診療のメリットとデメリット

■[医学]混合診療のメリットとデメリット 20

最近、TPP関連で混合診療がよく話題にあがる。混合診療の問題は複雑である。「混合診療に反対している連中は既得権益を守っているだけ。がん難民のためにも今すぐ混合診療は全面解禁するべき」という意見も、「混合診療を解禁してしまうと、マイケル・ムーアの『SiCKO』のような、貧乏人がまともな医療を受けることができなくなる酷い制度になってしまう。絶対反対」という意見も、どちらも極端である。この両極端の意見の間のどこかに妥協点を見つけるのがいいだろうと私は考える。


混合診療とは何か?

混合診療とは、保険診療と自由診療(保険外診療)の医療を併用することを言う。現在の日本では、混合診療は原則として禁止されている。たとえば、医療費が20万円の保険診療を受けると、自己負担割合が3割の人は、6万円のみ支払えばいい。14万円は保険者が支払うことになる。さらに、10万円の自由診療を同一の医療機関で受けたとする。混合診療が禁止されていなければ、患者の自己負担は、20万円×3割負担+10万円=16万円である。しかし、混合診療は禁止されているので、保険診療の部分も全額自己負担となり、合計30万円の自己負担となる。


混合診療が解禁で患者の自己負担はどれぐらい変わるか(一例)


混合診療禁止のデメリットは?

自由診療を受けたい患者の選択肢が狭まることがデメリットである。上記の例では、16万円ならなんとか出せても、30万円は出せないという患者は、自由診療分の医療を受ける選択肢はあきらめざるを得ない。

これまで混合診療が問題になったケースの多くは癌である。現在は固形癌に対する化学療法が進歩し、保険診療内でもそれなりの治療を受けることが可能であるが、それでも「保険診療内で可能な治療はもうありません。対症療法のみ行いましょう」というケースが生じうる。海外で十分なエビデンスが得られている治療法があれば、保険適応が通ってなくても試してみたいと患者や医療者が思うのは当然である。しかし、混合診療が禁止されているため、保険適応が通っていない治療を受けるには、併用する治療や検査費用、入院費用もすべて全額自費となる。


混合診療解禁のデメリットは?

複数ある。たとえば、質の低い医療が行われかねないこと、保険給付範囲内の医療が狭まりうること、結果的に医療格差が広がること。


混合診療解禁によって行われる質の低い医療とは具体的にどのようなものか?
現在でも自由診療にて、エビデンスが十分に得られていない医療が行われているが、混合診療を全面解禁にすることで、これが広がりうる。たとえば、入院中に保険診療外の代替医療を行えば、現行の制度では入院費も全額自己負担にするか、代替医療部分は無料にするかしかない。しかし、混合診療が全面解禁になれば、入院費の部分は3割負担でよい。これまでは癌に対する自由診療は外来のみのクリニックが主流であったが、仮に混合診療が全面解禁されれば検査を兼ねた1泊入院で行うところが出てくると私は予想する。

他にも、通常の外来での保険診療に加え、オプションの自由診療部分を付加価値として提供できるようになる。風邪にビタミン注射は効果がないため、現在では保険診療内でむやみにビタミン注射を行えば、保険者から査定される。つまり、保険者から医療機関に対して7割分の医療費が支払われない。しかし、混合診療枠でビタミン注射を行えば、保険者による査定を気にしなくてもすむ(参考:■ビタミン注射もいかが?混合診療解禁問題)。現在でも、「点滴バー」などと称してビタミン注射を自由診療枠で行う医療機関もあるが、混合診療解禁によって、病気で受診した患者にビタミン注射を勧めることが可能になる。


自由診療枠が増えれば競争原理によって医療の質は高まるのではないか?
医療においては情報の非対称性があるので、競争原理だけでは質は高まらない(参考:

■医療と自由競争)。混合診療解禁によって、患者満足度は上がるかもしれないが、コストに見合うほどの医療の質の向上は起こらないだろう。基本的には、保険適応となっている医療はエビデンスがあるものであり、また、医療費の7割以上を支払っている保険者からの監視は、医療者が適正な医療を行う動機となる(参考:

■国民皆保険制度がわりとうまくいっていた理由)。日本の医療はコストパフォーマンスに優れ、その要因の一つに国民皆保険制度があるとされている。医療の質を保つには自由競争以外のなんらかの仕組みが必要と思われる。


混合診療解禁によって保険給付範囲内の医療が狭まりうるとはどういうことか?
混合診療を解禁しても、直ちに保険給付範囲内の医療が縮小されることにはならない。しかし、将来において、本来は保険適応とすべき新しい有用な医療が保険適応されなくなることが危惧される。混合診療解禁を推進する立場の規制改革・民間開放推進会議は、保険診療が縮小された制度を「本来目指すべき制度」としている

(参考:■混合診療解禁で保険診療が縮小されるのはガチ)。また、製薬会社も、保険適応をとるインセンティブが小さくなる。混合診療が禁止されていれば、日本で薬を売ろうとするならばなんとかして保険適応を取らなければならない。しかし、混合診療が解禁されて一定の売り上げが見込めるのであれば、無理に保険診療を取らなくてもいい、取りにいかないほうがいいと判断されることもあるだろう。ただし、混合診療を解禁しても、これまで通り有用な医療が保険適応とされる何らかの仕組みがあれば、この点においてはデメリットとならない。


混合診療解禁で格差は広がるのか?

将来はおそらく格差は広がる。現在でも、大金持ちは自由診療で好きな医療を受けられる一方、混合診療が禁止されているので保険内診療しか受けられない層がある。混合診療を解禁した直後であれば、ある程度の余裕のある人たち(最初の例で言えば「16万円ならなんとか出せても、30万円は出せない」ような人)が、自由診療枠の医療を受けられるようになるだけで、必ずしも格差が広がるとは言えない。しかし、将来、保険診療が縮小すれば、「混合診療ならば何とか可能」という層と、「混合診療でも無理。16万円も出せない。保険診療枠の医療しか受けられない」という層の間での医療格差は広がる。(保険料が払えず健康保険に加入できなかったり、加入者であっても自己負担分を支払うのが困難という層については、混合診療が解禁されようとされまいと変わらない。これは混合診療解禁とは別に考慮されなければならない問題である。対象となる人数は相対的には少ないが、混合診療よりも重要な問題である。)


混合診療解禁で公的保険財政は改善するか?

保険診療が縮小されれば、公的保険財政は改善する(ただし、1泊入院+代替医療のような混合診療が増えると、入院費の7割は保険者から支払われることになるので、その点では保険財政にマイナスになる)。保険診療縮小による公的保険財政改善がメリットとなるのは、保険者(政府・組合など)である。多くの被保険者(患者)にとっては、公的保険が無くなるぐらいであればまだ混合診療解禁のほうがマシではあるが、税金や保険料を上げて公的保険を支えるほうがメリットがあると私は考える。ビタミン注射や代替医療に費やされるであろう医療費を、再分配して保険診療に使うほうが、全体からみたら効率的だろう。(有用であるが高価な新しい治療についても、その分を再分配したほうが全体からみたら効率的であるかもしれない。)


混合診療解禁によって質の低い医療が行われるようになるというが、現状でも自由診療で質の低い医療が行われているのでは?
その通りである。このブログは、医師の資格を持つ人であっても問題のある医療を行う例があることを、何度か取り上げた。ただ、現状でも質の低い自由診療が行われているからといって、混合診療を解禁しても良い理由にはならない。混合診療を解禁すれば、さらに質の低い医療がはびこるであろう。
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20111115


02. 中川隆 2012年11月07日 10:17:59 : 3bF/xW6Ehzs4I : HNPlrBDYLM

読んでね

肺癌の本当の原因は? _ 戦後肺癌が増えた理由
http://www.gankeijiban.com/bbs/read/minkan/1340407324/l50

性交渉での「HPV感染」が子宮頸がんを招く (週刊朝日)
のコメント 『がん検診はしない方がいい。』 
http://www.asyura2.com/09/health15/msg/548.html

癌掲示板は見てはいけない
http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/332.html


03. 2013年7月23日 01:17:51 : 1dTBCvI9nU
混合診療解禁により、新しい医療が有効かどうかきちんと検証されて保険に導入されることを放棄することになる、ということが理解できるかどうかに尽きるんですよ。
このまま、アメリカが理想と掲げた日本の保険制度が壊れて行ってしまうんでしょうね。

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