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なぜ患者が病院に殺されるのか:米国入院患者のうち年間10万人が予防可能な医療ミスで落命:告発すれば「見せしめ」も
http://www.asyura2.com/09/iryo03/msg/591.html
投稿者 あっしら 日時 2012 年 10 月 18 日 01:32:26: Mo7ApAlflbQ6s
 


「ニューズウイーク日本版10・10号」

P.38〜41
『なぜ患者が病院に殺されるのか

医療機関:病院ごとの成績データが患者に知らされないままでは誤診や手術ミスは減らず危険な治療が行われ続ける

マーティー・マカリー(ジョンズ・ホプキンズ大学病院医師、同大学准教授)

 医学生の頃、現代医学は精密で素晴らしいだけでなく、危険で不誠実なのではないかと思い始めた。その思いが強い確信に変わったのは、担当していた1人の老婦人が亡くなつたときだった。
 バンクス夫人は、CTスキャンで進行性の卵巣癌と診断されていた。ここまで痛が進むと、手術をしても回復の見込みは小さいが、子宮、子宮頚部、卵管、卵巣を取り除くのが一般的な治療法だ。そしてその前には、腫瘍の一部を摘出して病理検査を行い(生検と呼ばれる)、本当に癌かどうかを確定診断しなくてはならない。
 打ち解けると、夫人は私に思いを語り始めた。生検も治療も受けたくないという。残された日々を家族と一緒に過ごし、死ぬ前にあといくつかのことができればいいのだ、と。そう育っ夫人に私は、手術すれば可能性は乏しくても回復の可能性があるのだと説明した。

 一方、病院の会議では、私は生検も治療も受けたくないという夫人の意向を伝えた。しかし徹底的に言い負かされ、揚げ句の果ては無視されただけだった。医師たちは生検のメリットを過大に、そしてリスクを過小に説明し、とうとう夫人を説き伏せて生検を受けさせた。

 その措置の途中で、太い血管に誤って針が刺さってしまった。これが原因で、夫人は6週間も長く入院生活を送る羽目になった。輸血を受け、CTスキャンの検査を複数回受けた。ほとんど食事を取れなかったので、栄養失調に苦しめられた。こうして、夫人は人生最後の9週間のうちの6週間、悪夢のような日々を過ごした。

 病院の落ち度は明らかに思えたが、この問題が院内で議論されたり、審査されたりすることはなかった。私が外科の主治医に事の経緯を説明し、夫人が生検を希望していなかったことを話すと、こう言われた―息者は自分が何を望んでいるか分かつていないときもある。だから、医師が代わりに決めてあげないといけないんだ、と。

 最近の多くの研究によれば、アメリカの病院で行われている投薬や検査、処置の約5件に1件は本来不要なものである可能性がある。

 米医学研究所(IOM)の所長で、ハーバード大学公衆衛生学大学院前学長のハーベイ・ファインバーグによれば、事態はもっと深刻だ。アメリカの医療費支出の30〜40%は、不要な医療に支払われているという。一流の病院でも膚頼できるとは限らない。ある全米規模の共同研究で外科手術の術中・術後の合併症発生数を調べたところ、一流病院のいくつかは、その発生頻度がほかの病院の4、5倍に達した。


入院患者の25%が被害に

 問題は、病院の医療成績に関するデータが公開されていないことだ。そのため患者は、ある病院が優秀かどうか、医療が適切かどうか、それ以前に安全かどうかを的確に判断できない。
 医療ミスや不適切な判断をしても責任が問われにくいので、医療の世界には過剰な投薬や医療行為が横行し、リスクが増し、医菅膨らんでいる。医療費支出を減らし、医療の質を高めるために必要なのは、不要で危険な5件に1件の医療措置にメスを入れることだ。

 市民は、病院の医書の開示を求めるべきである。自動車を買うときは、車種ごとの安全性データを参考にできるのに、病院にかかるときは、いわば目隠し状態で病院を選ばされているのが現状なのだから。

 昔、ハーバード大学公衆衛生学大学院のルシアン・リープ教授が学会の基調講演の冒東で、聴衆の何千人もの医師たちに問い掛けた。「あなたの同僚医師の中に、危険なので医師を辞めたほうがいい人がいますか。いれば、挙手してください」
 すると、会場にいた医師全員の手が挙がった。私も医師の前で講演するとき、同様の問いを投げ掛けるようにしているが、聴衆の反応は同じだ。

 アメリカの100万人の医師の2%が深刻な能力不足、もしくは詐欺的な人物だと仮定しよう(2%は控えめ過ぎると、大半の専門家は言うはずだが)。そうすると、問題のある医師が2万人も医療の現場にいることになる。この2万人が平均で年問500人の患者を診ているとすると、毎年1000万人の息者が問題のある医師にかかっている計算になる。

 10年に有力医学誌のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンに掲載された研究によると、アメリカの入院患者の25%は予防可能な医療ミスの被害に遭っている。その種のミスで命を落とす患者は、年間10万人に達するという。この数字は、アメリカ人の死亡原因の第6位に相当する。

 私の同僚の1人は医療ミスで父親を、また別の同僚は投薬ミスで妹を亡くした。親友の母親は、3期の乳癌と誤診されて、不要な乳房切除を受けた。私の祖父は、必要のない手術を受けた後、予防可能な感染症にかかり、60歳で死んだ。

 病院によって医療の質に大きな差があることは、医療関係者の間では常識だ。私は病院で働く人たちを対象に実施した06年の調査で、「あなたは自分の勤務先の病院の科で、安心して治療を受けられますか」と尋ねた。この問いに、職員の99%がイエスと答えた病院もあるにはあったが、半分以上の病院では過半数の職員がノーと答えた。
 また、「あなたの病院は常に患者にとって最善の治療法を追求しているか」という問いに対しても、半分以上の病院で過半数の職員がノーと答えた。つまり医療関係者なら誰でもこうした問題について知っているが、口にする人間はほとんどいないということだ。

 私の友人はある有名な心臓病専門病院の麻酔医だ。彼の話ではその病院には心臓外科医が4人いて、うち1人はごくありふれたバイパス手術で6回続けて患者を死なせた。患者が死ななかった場合でも、直近の手術10回のうち半数が標準より数時間長引き、多くの場合、一旦は外した人工心肺を再び接続する羽目になった。


告発すれば「見せしめ」も

 この外科医の件を誰かに報告しようと思ったことはないのかと開くと、友人は「例えば誰に?」と笑った。この若い外科医は病院経営陣のお気に入りで稼ぎ頭なのだという。上司の休日出勤を引き受け、先輩外科医のやりたがらないことを進んでやるので、上司も彼をかばう。
 医師の医療行為の質を検討する院内会議でも、みんなこの外科医に非常に甘く、死因は患者側にあると主張する。出席した外科医たちはありとあらゆる言い訳を口にした。麻酔医として毎日彼らと仕事をせざるを得ない友人は、黙っていようと心に決めた。

 黙っていない医師や看護師は医療界全体への見せしめとして解雇されることもある。ウィスコンシン州初の女性循環器内科医の1人であるキーラン・セイガー(65)は心エコー図の診断方法を大勢の医師に伝授してきた。セイガーがミルウォーキーにある自分の勤務先の病院で心エコー検査の診断精度を調べたところ、誤診率が29%に達していることが分かった。
 セイガーは調査結果をアメリカの循環器学会で発表した上で精度管理を捷案した。その結果、彼女は解雇された(病院側は表向きは「さまざまな理由で契約を打ち切ったが、調査とは一切無関係」だとしている)。

 現在、病院の治療実績に関する情報収集に革命が起きている。史上初めてコンピューター同士がやりとりし、再入院した患者の入院歴が分かるようになつた。以前はA病院を退院した患者がB病院に入院しても、A病院による合併症は考慮されなかった。今ではこうした患者はすべてデータベースで管理され、症状別に各病院の再入院率が分かる。
 病院の良し悪しを判断するにはスタッフの考え方を見るのが一番だ。そこで私はデューク大学のI・ブライアン・セクストン医師と共に「安全文化」調査を実施。看護師や医師らスタッフ全員に「安全面で気掛かりなことを口にしやすいか」「協力して患者に合った治療ができる環境か」といった質問をした。

 60の病院が参加した調査の結果は驚くべきものだった。3分の1の病院でほとんどのスタッフがチームワークは悪いと回答。病院側もチームワークの悪さが感染率や病状の悪化に関連していると言いだした。改善するためにどうすべきかは分かっていても、医師たちは経営陣と医療現場で働くスタッフとの溝が広がっていると感じ、無力感にさいなまれていた。


ニューヨーク州の荒療治

 しかし何より重要なのは、60の病院すべてが調査結果を公表する条件として、病院名は出さないよう要求した点かもしれない。「最高機密」というわけだ。
 そのため病院の治療実範を評価するためのデータは病院側には豊富にあるが、一般には公開されていない。入院前に病状別の治療実溝や90日以内の再入院率、自分と同じ病状の患者の平均入院日数などを調べたくても、調べようがない。手術を検討していて複数の病院の合併症発生率を見たいと思っても、すぐに諦めざるを得ない。

 例えば米厚生省の全米医師データバンク(全米の医師の「ブラックリスト」とも呼ばれる)に一般市民はアクセスできない。リストを検索できるのは州の医療当局か、病院の人事当局が経歴をチェックする場合のみだ。性犯罪の前歴者の場合は引っ越し先の近隣住民に氏名が公表される。だが医師の場合は患者との性的不品行が原因でその州の医師免許を取り消されても、再取得したり別の州に移って医療行為を続ければ、データベース上は匿名扱いだ。

 それでも打開策はある。医師のブラックリストや医療スタッフに対する安全調査の結果や病院の再入院率などの情報が1つでも包み隠さず公表されれば、効果は医療制度全体に及ぶはずだ。全体的に医療ミスが減り、患者の満足度が増すだろう。そう言えるのは前例があるからだ。

 90年代前半、ニューヨーク州の保健当局は、州内の一部の心臓専門病院について耳にしていたお粗末過ぎる治療実績の改善に乗り出した。92年に同州の衛生局長に就任したマーク・チャシンは生ぬるい処分をよしとせず、心臓外科手術の死亡率公表という荒療治に打って出た。

 死亡率の高かった心臓専門病院は大慌てで改善に取り組んだ。病院の経営陣は外科医や看護師や技師を集めて、質と安全性の向上のために何をすべきか話し合った。ある病院では1人の外科医が「手術に不適格」と報告された。その外科医が執刀した手術は死亡率が非常に高く、病院全体の平均をつり上げていた。病院側はその外科医に心臓手術をするなと言い渡した。

 死亡率を公表した結果、ニューヨーク州全体の死亡率が大幅に改善した。毎年データが公表されるたびに州の平均死亡率は低下。死亡率が18%(イラク戦争で負傷した兵士の死亡率を上回る)と同州最悪だったエリー郡医療センターでも3年足らずで7%に低下し、その後l・7%まで下がっている。
 風通しが良くなって、医療関係者もようやく社会に対する説明責任に目覚めたようだ。』


 

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