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たとえば、午前0時に白血球の体内生産が最大値になることを示す。最小値はその約12時間後となる(吉山友ニ『くすりはいつ飲めば効く?』より 一部改変)
NHKで特集 大反響! もっと知りたい「時間治療」 ご存知ですか がん、リウマチ、高血圧、高脂血症などに効果
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32647
2012年07月18日(水)週刊現代 :現代ビジネス
「時間治療」という言葉を聞いたことがあるだろうか。最新の薬や特殊な機械を使うわけではない。「時間」を意識するだけで、治療効果が上がったり、ダイエットすることもできるというのだが---。
■夜中の抗がん剤治療
大腸がんが肝臓に転移し、手術もできない状態だった30代の男性が「時間治療」を受けたところ、転移がんが縮小。手術が可能になり普通の生活を取り戻すことができた---。
こんな実話がNHK『あさイチ』や『クローズアップ現代』で紹介され、話題になっている。がんだけではない。リウマチや生活習慣病など、多くの病気に効果を発揮しているという「時間治療」とは何か。
北里大学薬学部教授の吉山友二氏が説明する。
「人間の身体には生体リズムがあり、同じ薬で同じ量を投与しても、効果が大きい時間とそれほどでもない時間が存在します。その生体リズムや病気の特性に合わせて投薬することで、効果も高く、副作用も軽減できるのが時間治療です」
冒頭の肝臓に転移したがんの場合、通常は昼間に投与する抗がん剤を、夜中寝ているときに投与し、劇的な効果を上げている。
しくみは次のとおりだ。正常な肝臓の細胞には抗がん剤を分解する作用があるのだが、この働きは昼に低く、夜中にもっとも作用が高まることが発見された。つまり、夜中に抗がん剤を投与したことで、正常細胞が抗がん剤の影響を受けにくくなり、副作用が軽減されるのだ。治療を受けた冒頭の男性は「髪の毛も抜けなかった」と証言している。
また、時間治療学の研究を続ける自治医科大学臨床薬理学教授の藤村昭夫氏は、こう説明する。
「抗がん剤を投与する時間によって、血中の薬物濃度や正常組織の傷害の程度が異なることが明らかになっています。正常細胞の種類によってもその傾向は異なりますが、たとえば直腸の粘膜細胞にも抗がん剤の影響を受けやすい時間帯と受けにくい時間帯があります。
大腸がん患者を対象として、ある種の抗がん剤を一定量、24時間にわたって一定の速度で投与し続けた場合と、明け方の4時および夕方16時の2回に集中的に投与した場合では、後者のほうが副作用の出現頻度が約5分の1に、さらに抗がん剤の効果は2倍になったという報告もあるのです」
抗がん剤治療は、がん化した細胞だけでなく正常細胞も一緒に攻撃してしまうため、脱毛や吐き気、下痢などの副作用を伴う。個人差もあるが、人によってはひどい副作用に耐えられず、投薬量を減少したり、やむなく治療を中断する場合もある。そうなれば、治療効果が見込めないことは言うまでもない。逆に、副作用が出なければ投薬量を増やせるので、治療効果もより高められるというわけだ。
時間治療は、がん以外にもさまざまな病気に効果を発揮することが明らかになりつつある。その理由を知るには、まず人間の身体の「生体リズム」というものを理解しておく必要があるだろう。そのメカニズムを、藤村氏が説明する。
「人間の脳内にある視交叉上核という部分が、体内時計をつかさどっていることがわかっています。朝、太陽の光刺激が目から入ってくると、この視交叉上核にある中枢時計≠ェ刺激を受け、朝だと認識する。ここで体内時計がリセットされます。これが生体リズムを作るために重要な役割を果たしています。すると、中枢時計は体中の臓器にある末梢時計≠ノ指令を与えます。その指令を受けて、臓器はそれぞれの状況に応じながら、時を刻んでいっているのです」
それぞれの動きが合わさって、生体リズムを作り上げているのだ。たとえば、夜が明ければ、日常生活を活発に行うために生命身体機能である心拍数や血圧は徐々に高まってくる。右表に記したように、成長ホルモンの生産量は深夜3時頃に、胃酸の分泌量は20時頃に最大となるなど、体の機能にも1日のリズムがあるのだ。
こうした生体リズムは、病気の傾向にも密接に関係してくるという。
「私は魔の時間≠ニ呼んでいるのですが、生体リズムによって、病気が起こりやすい時間が明らかになってきているのです。
たとえば心筋梗塞は、午前中がもっとも多い。これは、目覚めとともに血圧が著しく上昇することや、血液が固まりやすい時間と関係していると考えられます(注・表中の「線溶能(血栓を溶かす能力)」のピークが19時頃なので、その約12時間前がもっとも血栓が固まりやすいと言える)。また、消化性潰瘍は胃酸分泌が増える夜間に起きやすい、といった具合です」(前出・吉山氏)
■3ヵ月でリウマチが改善
このほか、アトピー性皮膚炎の炎症は夜間に起きやすい、脳出血は朝7時と夕方の17時頃に発症しやすい2つのピークがある、といった傾向もある。また、1日のリズムだけでなく、女性だと月経周期と共に情緒不安定になる月のリズムや、春や秋にうつが発症しやすいという季節性うつといった年のリズムも存在している。
こうしたリズムが解明されてきたことで、病気になりやすいタイミングに効き目が最大になるように「時間治療」を行えば、治療や予防に大きな効果を発揮するというわけである。
時間治療が効果を発揮する病気を具体的に見ていこう。関節リウマチは朝、痛みがひどくなるケースが多い。関節がこわばって、全く動かせないという人もいる。こうした場合、夜に薬を飲むと効果的なことがある。佐世保中央病院院長の植木幸孝氏が言う。
「リウマチの原因物質といわれている炎症性サイトカインなどが、午前3時頃に発生がピークになることがわかってきています。症状が重くなる明け方に薬の効果が最大に現れるように、21時頃に飲めば、関節のこわばりや痛みがより軽減するのです」
植木氏が診察している70歳の女性患者は、関節リウマチが原因で手首や両手の指の関節が腫れ上がり、関節破壊が起こっていた。が、これまで朝晩と分けて飲んでいた薬を、寝る前に飲むようにした結果、3ヵ月で劇的な改善がみられた。指関節の腫れやこわばりがひいて、痛みや炎症も治まったのだ。植木氏らの臨床研究では、薬の飲み方を変えることで、40人の患者のうち約4割に症状の改善がみられたという。
ただし、個人によって、症状や薬の効果はさまざまなので注意が必要だ。植木氏はこう警告する。
「リウマチは早期にどんどん進行していく場合がありますから、最低限の治療でより効果的な時間治療を、などと悠長なことを言っていられない患者さんもいます。それぞれの病状に応じて、より適切な治療法を選ぶことが必要です」
■時間ダイエット法
高血圧でも、薬の投与時間が重要な役割を果たす。
「高血圧の時間治療には、まず24時間の血圧変動を把握する必要があります。腕にバンドを巻いておけば20~30分おきに血圧を自動で測定できる『24時間自由行動下血圧測定法(ABPM)』を行います。
夜間の血圧が昼間に比べてどれだけ下がっているかがポイント。夜間の血圧があまり下がらず、昼と同じ程度の患者さんは、動脈硬化が進行しやすい。それを改善するには、通常朝と昼に飲むように言われる降圧剤を、寝る前に飲むようにする。すると、夜間の血圧を十分に下げられるのです。このタイプの人は、逆に朝に薬を飲んでしまうと、昼間の血圧が下がって夜間の血圧の下がり具合が悪くなり、動脈硬化の進行を十分に抑えられないと考えられます」(前出・藤村氏)
藤村氏が診た患者の中でも、降圧剤を夜に飲むようにしたことで、劇的に血圧をコントロールできるようになった患者も多いという。
また、喘息の薬も夜寝る前に飲んだほうがいいケースが多い。これは、明け方に発作が出やすいからだ。
「気管支の径の太さの日内変動を計ってみると、健常人でも、昼間に比べて夜間のほうが径が細くなる。夜寝ている時には交感神経よりも副交感神経が優位になるためにそうなるのですが、喘息の患者さんの場合、気管支の径の細くなり方が極端です。そのため、明け方に発作が出やすい。
喘息の治療に用いるテオフィリンという薬では、喘息発作が明け方に起こる患者さんに対しては、薬を夜飲んだほうが、有効性も安全性も高いという結果が出ています」(前出・藤村氏)
このほか、コレステロールの合成は夜間に高まるため、高脂血症薬は夕方服用すると高い効果が得られるといったこともわかっている。藤村氏によると、脳梗塞や心筋梗塞、狭心症、骨粗しょう症、アレルギー性鼻炎などについても時間治療が行われるようになってきたという。
時間治療の研究は専門家によって進められているものの、まだ研究段階のものも多く、すべての患者に一様に応用できるものではない。自己判断で薬の服用時間を変えると、思わぬ副作用が生じて症状が悪化する可能性もあるので、必ず主治医に相談したほうがいい。また、冒頭で紹介したがんの時間治療事例は、横浜市立大学附属病院で実施されたものだが、大腸がんの肝臓転移で手術ができないケースなど、治療を受けられる条件は限られている。
一方で、生体リズムを利用して、自身の健康管理につなげることもできる。時間治療ならぬ、時間ダイエットができるというのだ。
栄養学を生体リズムの観点から研究している女子栄養大学副学長の香川靖雄氏は「食べる量や内容だけでなく、食べる時間が大切」と言う。脂肪を溜め込む働きにも1日のリズムがあり、15時にもっとも弱く、深夜になるほどその働きが強くなる。つまり、同じものを食べても、昼間に食べるより夜中に食べたほうが太りやすくなるのだ。
さらに香川氏は、朝食の重要性を説く。人間の生体リズムは、朝日を浴びることだけでなく、朝食を摂ることでもリセットされるからだ。「朝食を摂らない人は太りやすい」とも指摘するが、その理由は次のとおり。
・人間の身体は睡眠中、消費するエネルギーをなるべく少なくするために節約モードになるが、朝食を摂らないとそれが起床後も続き、全身のエネルギー代謝が低下する。
・血糖値が低下し、足りない血糖を補うために筋肉が削られる。筋肉の減少が体力低下と安静時のエネルギー消費の低下を招き、太りやすくなる。
・血糖値低下で食欲が増し、昼食、夕食を多く摂るようになる。そのため急激に血糖値が上昇して、これを脂肪に変えるインシュリンが過剰に分泌されて肥満が起こる。
・朝食を抜くと脳が飢餓の危険を感じて、心身の活動を極力抑え、脂肪の合成を促進する。
朝食抜きはいいことがないのだ。理想の食事は、朝、昼、夕のバランスが3:3:4という。できれば毎日決まった時間に食事を摂り、夜は20時までに食べるのが理想。遅くなってしまう場合は、脂肪を溜め込む働きが高まる前の夕方に何か口にしておき、夜食を減らすことだ。
■体内時計の異常でがんに
「同じ摂取カロリーでも、食べる時間に気をつければ、それだけで体重は落ち、太りにくく健康的な生活が送れるのです。さらに言えば、ゆっくり食べること、血糖値の急激な上昇を抑えるために米やパンではなく野菜から食べるという順序も考えれば、効果は上がります」(香川氏)
このように、朝の日光だけでなく食事にも気をつけて生体リズムを整えることが健康への近道にもなる。
逆に考えれば、生体リズムが乱れれば体調を崩し、病気のリスクが高まるということだ。藤村氏が言う。
「体内時計異常によると思われる疾患が多くなってきています。24時間ずっと明るいところで過ごす人が増えていることが原因ではないかと考えられています。例えば、夜勤がある看護師には乳がんが多いというデータがある。本来、寝るべき時に寝ないことで、がん細胞の効果を抑制する効果があるメラトニンという成分が体内に出ないせいだと言われています。海外を行き来するパイロットに大腸がんが多いというデータもあります。生体リズムが乱れるような職業に一定期間ついている人には、がんや糖尿病になりやすいという相関関係がみられるのです」
24時間営業のコンビニの増加と、糖尿病の発症数の増加傾向に関係があるという研究もあるのだという。
まず、自分の生活リズムを整えることが、健康への近道かもしれない。
「時間治療という考え方はまだ始まったばかりですが、すべての体の機能や病気で、時間に左右されていないものはない、もし時間に左右されていない機能が見つかったらノーベル賞ものだとも言われています。つまり、今後研究が進めばあらゆる分野に応用ができ、将来の可能性は無限にあると考えられます」(吉山氏)
時間治療の今後に期待したい。
「週刊現代」2012年6月2日号より
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