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食事は15分、睡眠は2時間、40人の看護に奔走――。 “平成の姥捨て山”で燃え尽きる看護師の異常な日々
http://www.asyura2.com/09/iryo03/msg/533.html
投稿者 MR 日時 2012 年 5 月 25 日 02:50:03: cT5Wxjlo3Xe3.
 

http://diamond.jp/articles/-/19043
高齢患者急増で過労死寸前! 看護師の「悲惨な職場」を救え 【第1回】 2012年5月25日
小林美希 [労働経済ジャーナリスト]
 

【新連載】
食事は15分、睡眠は2時間、40人の看護に奔走――。
“平成の姥捨て山”で燃え尽きる看護師の異常な日々


まるで高齢者の「姥捨て山」のよう
家族に見捨てられた患者で溢れる病院

「高齢者が次々に入院し、まるで姥捨て山のように置いていかれる」――。

 看護師らがため息をつく。これは地方や過疎地で、医療機関や介護施設などが少ない地域に住む“医療難民”や“介護難民”の話ではない。病院などがひしめく東京で起こっている現実なのだ。

 筆者が取材した看護師によれば、彼女が勤める病院には、高齢者が寝たきりになり、肺炎などを患って繰り返し入院してくるという。しかし入院中、家族は見舞いにも来ない。止むなく退院間際に看護師が家族に電話をかけても、「もうしばらく入院できないか」と、迎えにも来ないケースが目立っている。

 都内のある民間病院では、「退院しても、状態が悪化して再入院すると家族がホッとしているようなフシがある」と明かす。同じく、都内のある自治体病院でも、「退院が決まっても、家で看られない家族から、患者の入院引き伸ばし作戦に遭う」と話す。

 70〜80代夫婦による老々介護・看護で止むを得えない場合もあれば、子どもがいても働いているため世話をできないケースもある。転院や施設への入所が必要な場合でも、家族は「あの病院は家から遠い」「あの施設は汚い」など難癖をつけ、なかなか患者を引き取らないというのだ。「この病院にもっと置いてくれないか」という相談が後を絶たず、なかには、連絡がつかなくなった家族もいるという。

 団塊世代が一斉に後期高齢者になり、人口全体の5人に1人が75歳以上となる、いわゆる「2025年問題」が迫っており、高齢世代をどうやって支えるかが火急の課題となっている。戦後1947〜49年生まれの団塊世代のボリュームは、約660万人と膨大だ。彼らが後期高齢者となれば、当然、医療を頼りにするケースも増えるだろう。

 しかし、その子ども世代となる団塊ジュニアやそれ以降の層は、就職氷河期のなかで社会人のスタートを切り、自身の生計を立てるだけで精一杯の生活。一方で頼みの病院では、急増する高齢患者に対して人手が不足していることから“医療崩壊”が始まり、病床削減も起こっている。

次のページ>> 心身ともに燃え尽きた――。寝不足で医療ミス寸前の看護師たち


高齢者が激増するのに、人手不足の上、病床数は減少傾向にあるというサバイバル状態のなかで、すでに「パイの奪い合い」が始まっている。行き場をなくした高齢者が「平成の姥捨て山」に捨てられる時代が、すぐそこまで忍び寄っているのだ。

もう、心身ともに燃え尽きた――。
寝不足で医療ミス寸前の看護師たち

 こうした混沌の医療現場で、急増する高齢患者を相手に過酷な労働を強いられている医師たちの疲弊ぶりが社会的問題化し、国民的な議論となっているのは、ご存知の通りだ。最近では、医師不足による医療崩壊も社会問題化しており、地方や過疎地に医師が集まらずに診療所や病院が閉院するなど、その影響は住民の目にはっきりと見える形で表れている。

 その一方で、医師と共に働く看護師たちの労働実態については、これまであまり報道されてこなかった感がある。実は、看護師たちもまた、医師たちの陰に隠れるようにして、負けず劣らずひどい激務に喘いでいるのだ。まさに「二重の医療崩壊」が始まっている。

 そもそも全国の就労看護職(保健師、助産師、看護師、准看護師)は、2010年で約147万人。実は、働く女性の20人に1人、全国民の100人に1人が看護職という身近な存在だ。看護職数は毎年、わずかながらも増加しているが、過酷な職場に「もう限界だ」と音を上げ、毎年12万人以上が辞めている。

 そのため、免許を持ちながら看護職として働いていない「潜在看護職」が約60万人にも上っており、高齢化や医療技術の高度化に伴う業務の増加に追いつかない。実際、看護師が働く現場はどのような状況なのか。関係者の日常を追ってみよう。

 都内にある某病院の内科系病棟で働く看護師の木下葉子さん(仮名、36歳)は、「夜勤と残業が多く、心身ともに燃え尽きた」と、退職を考えている。24時間365日、患者の命を守る病院では、交代制勤務がとられており、葉子さんの病院では3交代で夜勤が組まれている。

次のページ>> 「2025年問題」が訪れるとき、60万人もの看護職が足りなくなる

 日勤は朝8時30分から夕方17時30分、準夜勤は夕方16時30分から翌日深夜1時30分、そして深夜勤は深夜0時30分から朝8時30分までとなり、その組み合わせで月のシフトがつくられる。日勤の翌日に深夜勤が組まれる「日勤―深夜」や、準夜勤の直後に日勤が組まれる「準夜―日勤」というシフトは、看護師にとって辛い。

 葉子さんもそうしたシフトが月に何度も組まれる。日勤では受け持つ患者の状態や検査、処置の準備について「情報収集」するために始業前から無賃出勤し、朝から患者の検温、状態観察、入退院の手続きなどに追われ、昼食は15分程度で弁当やおにぎりをかき込むのが常。トイレに行く暇も水を飲む余裕もなく、あっという間に時間は過ぎ、19〜20時まで残業が続く。それから一旦帰宅し、家に着いて2時間も経たないうちに、深夜勤のためにまた出勤する。

 ほとんど寝ずの状態で夜勤に入り、たった2人で40人の患者を担当する。患者は夜だからといって眠ってばかりはいない。ナースコールは鳴りやまず、認知症の患者が暴れ回る、徘徊してしまうなど危険も多い。

 寝たきりの患者は2〜3時間おきに体位交換をして褥瘡(床ずれ)ができないようにケア。病棟を走り回るため、夜勤で万歩計が1万5000歩を指すこともしばしば。徹夜のような状況でふらふらになりながら、眠い目をこすって点滴の調整をしていると、点滴を落とすスピードを間違いそうになる。「あまりの激務で毎日が医療ミスと隣り合わせ」と危機を感じる葉子さんは、まさしくバーン・アウト寸前だ。

高齢化の「2025年問題」が訪れるとき
60万人もの看護職人員が足りなくなる

 過労から離職する看護師は多い。日本医療労働組合連合会の「看護職員の労働実態調査」(10年、回答数は約2万7500)では、看護師の約8割が「仕事を辞めたいと思っている」と回答している。

 その理由のトップが「人手不足で仕事がきつい」(46.1%)だ。医療事故の原因(上位2択)でも、約9割が「慢性的な人手不足による医療現場の忙しさ」を挙げている。また、約9割が「この3年間にミスやニアミスを起こしたことがある」と答えている状況だ。

次のページ>> 激務に耐えられず退職する看護師続出。背景に医療報酬問題も

 ところが前述したように、高齢化社会のなかで看護師の役割は増していく一方だ。国の試算によると、「2025年問題」が訪れるとき、必要な看護職の人員は約200万人とされている。しかし、今のままでは約60万人が足りず、必要人員を達成するには高校生の10人に1人が看護師にならなければならない計算となる。いかに看護師不足が深刻であるかが、わかるだろう。

激務に耐えられず退職する看護師が続出
高齢患者急増の背景には診療報酬問題も

 看護師不足による「姥捨て山」現象も深刻だが、国がつくる制度が高齢者を「姥捨て山」に追い込む側面もある。原因は、「診療報酬」という制度的な問題だ。

 病院の収入は、国が決める診療報酬のなかで医師による治療や検査、入院などの保険点数が定められ、それによって企業で言うところの「売上」が立っている。看護師が保険点数と関係するのは、内科や外科病棟など一般病棟の入院基本料についている看護師の配置基準となる。

 具体的には、患者7人に対して看護師1人となる「7対1」の看護配置基準の入院基本料が最高で、1万5600円、「10対1」で1万3110円、「13対1」で1万1030円、「15対1」で9450円――。たとえば、300床規模の病院で「7対1」と「10対1」を比べると、1日当たり76万5000円もの収入差が生じる。病院経営にとっては、「7対1」は、喉から手が出るほど欲しい水準であり、「7対1」が導入された2006年から、有名病院や大病院を中心に看護師確保に躍起になってきた。

 ところが、看護師数が十分でないため、看護師争奪戦が起こり、「7対1」をとりたい病院の全てが看護師を確保できるわけではなかった。この争奪戦の余波は今なお続いており、中小病院も「7対1」をとるために必死になっている。

 すると病院は、患者、つまり病床数の分母と看護師数の分子を調整してでも、できるだけ保険点数が高い配置基準を維持しようとするため、看護師が不足すれば分母の病床数を削減することになる。となれば、受け入れられる患者数が減るため、患者の行き場がなくなり、締め出されてしまうというわけだ。

 こうした状況もあり、看護師不足によって病棟閉鎖や病床削減に追い込まれる病院が相次ぎ、地域によっては病院が閉院される深刻な事態に陥っている。

次のページ>> 医療費削減を目指して高齢者を追い出す国、ワリを食う病院

 看護師不足を原因とした病床削減や病棟閉鎖を示す公の統計データはないが、日本自治体労働組合総連合(自治労連)が08年4月に行なった「全国自治体病院アンケート」(組合傘下の約1000病院に配布)によると、「看護師不足による影響」について「病床削減」が11.8%、「病棟閉鎖」が7.5%、「救急中止・休止」が3.7%となっている。

医療費削減で高齢者を追い出す国
ワリを食うのは受け入れ病院の看護師

 また、全日本自治団体労働組合(自治労)が2010年12月〜11年1月に行った全国736の自治体病院を調査でも、回答した250病院のうち33病院が病棟を閉鎖していた。

 国は膨れ上がる医療費を削減するため、少しでも入院期間を減らそうと、診療報酬で患者の在院日数が短いほど保険点数を高くしている。そのため、利益を上げたい病院は、患者が治りきらないうちにでも退院・転院させる傾向があり、“採算が合わない”患者の追い出し・たらい回しが起こっている。


白衣をまとった看護師らによる、横浜中華街近くでの署名活動。過剰労働によって妊娠異常を起こす看護師も多く、早急な対策が求められている。
 ワリを食うのは、そうした患者を引き受ける良心的な病院で働く、前出の葉子さんのような看護師だ。このような構造問題が存在するなかで、白衣の天使たちは患者のためにと必死に闘っているのだが、あまりの激務にその羽は折れる寸前だ。看護師の労働問題は、患者の命を危険に晒すことをも意味する。

 5月12日は、フローレンス・ナイチンゲールの生誕にちなんだ「看護の日」ということもあり、毎年、看護の日を中心に、全国各地で看護や介護に関する集会が開かれている。

 たとえば、今年、日本看護協会は「忘れられない看護エピソード」を募集し、表彰式が行なわれた。日本医療労働組合連合会では、同組織が中心となって関係他団体と一緒に労働環境の整備や増員を求める「ナースウエーブ」と称するイベントを、1989年から開催しており、現在では47都道府県で看護や介護についてのシンポジウムや街頭での署名活動、健康チェックなどを行なっている。

次のページ>> 仮眠中に死亡した24歳の女性も。看護師を悲惨な職場から救え

仮眠中に帰らぬ人となった24歳の女性
看護師を「悲惨な職場」から救え!

 筆者は今年、看護の日に神奈川県のナースウエーブで『新たな「いのち」希望の光』をテーマに、看護師に過酷な労働による流産などの妊娠異常が多い実態などについて講演した。講演後、白衣をまとった看護師らによる横浜中華街近くでの署名活動では、1時間で159筆が集まった。母の日を前に娘と連れだっていた親子は、「おばあちゃんがいるので、身近な問題」と署名用紙に名を連ねた。

 また初老の男性は、「病院に行けば看護師が忙しそうで、なかなか声をかけられず、看護師不足を感じる」と筆をとりながら話した。制服姿の高校生や20代の介護福祉士、赤ちゃんを連れた若い夫婦など、多くの年代の関心が寄せられた。

 同日、連合や自治労などの共催で「安心と信頼の医療と介護」2012中央集会が実施された。同集会には全国から組合員が集まり、東京・有楽町の駅前で街宣活動が行なわれた。自治労も看護職200万人体制に向けた署名活動に今年初めて取り組み始め、医療の労働現場から職場環境の改善や看護師の増員を求める声が多く挙がっている。

 看護師の過労問題は深刻だ。2007年5月には、東京都済生会中央病院(東京都港区)のオペ室に勤務していた当直明けの看護師・高橋愛依さん(当時24歳)が、患者の移動に使うストレッチャー(車輪付きの簡易ベッド)で仮眠中に意識不明となり、帰らぬ人となった。

 月80時間近くの残業をしていたことから、東京・三田労働基準監督署は2008年9月に彼女を過労死と認めた。亡くなってから1年での労災認定は異例であり、当時大きな話題となった。

 これを受け、日本看護協会は2008年に「時間外勤務、夜勤・交代制勤務等緊急実態調査」を実施。すると、交代制勤務で働いている約23人に1人が月60時間を超える時間外勤務を行なっており、過労死危険レベルの看護職員が全国で約2万人に上ると推計された。1病棟に1人は過労死の危険のある看護師がいることになる。

 そろそろ、看護師の働き方そのものが見直されるべき時期にさしかかっているのではないか。患者の立場からしても、果たして疲れ切っている看護師に看てもらいたいだろうか。

 そして、一般人が改めて看護師の労働実態を知ることこそが、国民の命を守るより良い医療の実現につながるのではないだろうか。以降4回にわたり、看護師の「悲惨な職場」をルポルタージュすることで、問題を提起していく。


質問1 あなたは看護師の労働実態を知っていた?
よく知っていた
ある程度は知っていた
あまり知らなかった
ほとんど知らなかった
その他  

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コメント
 
01. 2012年6月08日 09:16:58 : 3CNLte9sGM
http://diamond.jp/articles/-/19748
高齢患者急増で過労死寸前! 看護師の「悲惨な職場」を救え 小林美希
【第3回】 2012年6月8日小林美希 [労働経済ジャーナリスト]
看護師の心身を蝕む過酷な“夜勤”の無限ループ「命のガイドライン」を巡る利害関係者の綱引き

過酷な夜勤にはもう耐えられない――。
病院から姿を消した看護師の日常生活
「あまりに過酷な夜勤に耐えられなくなった」
 都内の有名民間病院で働く看護師の大木智子さん(仮名・29歳)は、夜勤の多さに心身のバランスを崩し、こう言い残して病院から姿を消した。
 高齢患者で溢れる病院で、看護師たちは恒常的に多くの夜勤をこなしている。企業戦士のなかにも「徹夜は当たり前」という人はいるだろうが、看護の現場における夜勤のきつさは、おそらくその比ではなかろう。過酷な「夜勤の無限ループ」のなかで、体を壊す看護師が続出しており、病院を辞める者も少なくない。それがさらなる人手不足と夜勤の増加を招くという悪循環を生み出している。
 その1人である智子さんは、勤務先の病院から去らざるを得なくなるまで、いったいどんな日常生活を送っていたのだろうか。
 智子さんの看護師としてのスタートは、内科と外科の患者が混在する病棟への配属だった。当初の月給は額面で17万円。業務に慣れない新人は最初の半年は夜勤に入ることができず、しばらく基本給のみの収入が続いた。
 病院の寮に住んでいたからこそ、やっていけた。勤務帯は3交代制で、日勤(8時30分〜17時30分)、準夜勤(16時30分〜1時)、深夜勤(0時〜翌8時30分)のシフトの組み合わせ。入職して半年後、夜勤に入るようになった。
 夜勤では、看護師たった2人で40人を看る。寝たきりの患者や外科の重症患者がベッドから起き上がって転倒すれば骨折してしまい、頭を強く打てば死亡事故につながりかねないため、気が抜けない。
 転倒予防のため、患者の足もとには「待った君」「転倒虫」などと呼ばれるセンサー付きのマットレスが敷かれ、患者の体重がかかると大きなブザーが鳴る。
 夜中はあちこちでブザーが鳴るため、その度に看護師は走って駆けつける。その間に、オムツ交換、点滴のチェックなど患者のケアをしていくため、仮眠はほとんどとれない。救急搬送で入院患者が来れば、1人はその準備や手続きに回り、夜勤は事実上1人ということもある。
 そうしたなかでナースコールが鳴り、患者に呼び止められても「ちょっと待ってね」と言ったきり、なかなかベッドサイドに行くことができない。
次のページ>> 月12〜13回にも上る過酷な夜勤で、朦朧とする意識
 智子さんは「眠れないと訴える患者に、本当なら足浴やマッサージをしてあげたいが、そのような余裕はない。止むなく医師に相談して睡眠薬を処方してもらう。看護ケアというより、業務をこなす毎日。これで看護と言えるのか」と疑問を感じているが、理想と現実は違った。夜勤中、万歩計をつけると1万5000〜2万歩という忙しさだ。
 内科や外科など、様々な専門知識を勉強しながら処置に当たった。担当の患者については、ぞれぞれの点滴の種類と打つ時間、既往歴、薬の種類など全て頭に入れておかなければならない。
 夜勤の日は朝8時30分に申し送りをして終わるはずが、ナースコールがひっきりなしに鳴るため、業務が終わらない。昼頃まで看護記録をつけたり、入退院する患者の書類をまとめたりと、残業は続く。
月12〜13回にも上る過酷な夜勤
実質24時間激務に朦朧とする意識
 夜勤は平均月10回。ひどい時には12〜13回に及んだ。そもそも夜勤は、看護師確保法(1992年施行)の指針によって、3交代で月8回以内という努力義務がうたわれているため、明らかに異常な回数だ。
 休みの日も、安心はできない。病院の隣に寮があり、夜間、救急搬送の受け入れなどで人手が足りなくなれば、いつでも呼び出される。休日にも勉強会や委員会などがあり、休みはほぼ1年中とれない。
 同僚の看護師が妊娠しても、出産ギリギリまで夜勤は免除されず、若手は次々に辞めるため、師長などを除けば看護師歴7〜8目で“古株”と呼ばれ、滅多にいない40代は“生き残り”と言われる。過労から心身の不調を訴える看護師が、各科で1人はいる状況だ。
 シフトは「日勤―深夜」や「準夜―日勤」が度々組まれ、智子さんは悲鳴を上げた。「日勤―深夜」では、始業1時間前の朝7時30分に出勤して患者の情報収集にあたり、残業が夜8〜9時まで。
 いったん寮に帰るものの、3時間後には深夜勤に入る。頭が朦朧としながら夜勤に入り、「24時間連続勤務」と言っても過言ではない。残業は師長に申告できず、ほぼサービス残業だ。
 1年ほど前から病棟が2交代になった。「日勤―深夜」「準夜―日勤」のような働き方があまりに過酷で、夜勤が16時30分から翌8時30分までの2交代を真理子さんや同僚は希望した。
次のページ>> 看護師のサーカディアンを狂わせる「逆循環」のリスク
 しかし、実際に2交代になってみると、拘束時間は16時間だが、定時終業時刻に終わることがない。「ろくな休憩もとれず、ふらふらになりながら、やっとの思いで朝を迎え、帰るのは昼近く。毎回、徹夜だと思ってこなしている」と、かえって疲労困憊した。
 そのうち、すれ違いの生活で恋人とも別れてしまった。智子さんはバーンアウト(燃え尽き)し、「このままでは過労死してしまう」と、退職を決めたのである。
専門家も指摘する過剰夜勤のリスク
「逆循環」がサーカディアンを狂わせる
 智子さんのようなケースは、探せば枚挙に暇がない。夜間、本来は人が眠る時刻に過剰に働くことは、健康被害が大きく、最悪のケースでは死に至ることもある。実際に、人が過剰な夜勤を続けるリスクははどのくらい高いのか。専門家や労働組合などに聞くと、その影響は小さくないことがわかる。
 たとえば、看護師の夜勤問題について詳しい労働科学研究所の佐々木司・慢性疲労研究センター長は、こう解説する。
「もともと人間は『時間』で動くものではなく、『時刻』に左右される存在です。『日勤―深夜』の組み合わせは、時刻で生きる人間のサイクルに最も適さないシフト。『日勤―深夜』や『準夜―日勤』のようなシフトは概日リズム(サーカディアンリズム)を狂わせ、人間のリズムに対して逆循環となります。
 日勤終了後、普段は眠らないような夜間の早い時刻に寝ようと思っても、なかなか眠れない。ちょうど日勤と深夜の間の午後7時頃は、『睡眠禁止帯』が出るため、日勤が終わって疲れた看護師が、さあ寝ようと思っても十分に眠れず、疲労が回復しなません。そのまま深夜勤に入るため、『日勤―深夜』が辛い、つまり3交代が辛いと思ってしまうのです」
 つまり、『日勤―深夜―準夜』といった始業時刻が早まるシフトは逆循環。『日勤―準夜―深夜』というように始業時刻を遅くずらしていくようなシフトが正循環となり、身体を新しいリズムに乗りやすくするというのだ。たとえば普段、22時に眠る人が23時に眠ることは容易だが、21時や20時という普段より早い時刻に眠るのが難しいことと同じ原理だ。
次のページ>> 「準夜勤」と「深夜勤」を繰り返す「2交代」の悲惨
 この「逆循環」がいかに危険か。海外の研究機関が老齢ラットで行なった「リズムのずれと生存率の実験」では、リズムを崩さないラットの8週間後の生存率が83%に対し、正循環で6時間ずらした場合は同68%、逆循環では同47%という差が出たという。つまり、逆循環ではラットの半数が死んでしまうことになる。あくまで動物実験だが、人の過労死問題を考える上では、無視できないデータではある。
 また、夜間の労働には乳がんや前立腺がんになるリスクがあるとも言われており、デンマークは09年3月に夜勤と乳がんの関係を認めて、元看護師に労災認定を行なっている。
 さらに、長時間夜勤は患者の安全も脅かす。前出の労働科学研究所の佐々木氏は、「真夜中から明け方にかけての夜勤中は、作業能力が酒気帯びと同じレベルまで落ち込むことになり、長時間の夜勤は危険です」と指摘する。長時間夜勤で仮眠もままならい状況では、「ヒヤリ・ハット」(重大な事故につながる一歩手前の状況)の医療ミスも増える。
「準夜勤」と「深夜勤」がひとくくり
16時間以上拘束の「2交代」が9割近くに
 このように、過剰な夜勤のリスクは大きいにもかかわらず、病院の現場では激務に拍車をかけるかのように2交代夜勤が広がっているのだ。労働組合などの統計を見ると、夜勤の実態は想像以上に深刻だ。
 日本医療労働組合連合会の『2011年度夜勤実態調査』によれば、2交代の比率は2005年に8.3%だったものが、11年には23.7%に増加した。2交代のうち、16時間以上の拘束となる夜勤は6割を超えている。組合活動によって長時間夜勤を食い止めているケースもあるため、小さ目の数字といえるが、それでも増えている。
 日本看護協会の『看護職員需給調査』でも、08年時点でも2交代制のみ(変則2交代を含む)が44.5%に上り、3交代か2交代かを選択できる病棟などを含めると、合計60.2%に上っている。
 また、同協会の『2010年病院看護職の夜勤・交代制勤務等実態調査』でも、2交代で16時間以上の拘束時間が87.7%となっており、いかに長時間労働の2交代が増えているかがわかる。ちなみに、10年の日本看護協会の調べでは、3交代の夜勤は2人に1人が月9回以上、4人に1人が月10回以上となり、2交代では5割以上が月5回以上という多さだ。
次のページ>> 残業代やタクシー代が浮く2交代は「おいしい仕組み」
残業代やタクシー代が浮く2交代は
病院側にとって「おいしい仕組み」
 一方で経営側にとっては、準夜勤と深夜勤がひとくくりになる2交代のメリットは大きい。なぜなら、準夜勤で発生する残業代がなくなり、深夜のタクシー代などの交通費が浮く。人員配置も少なくて済み、日本医労連の調査では、3交代と2交代の病棟で比べると2交代は2.6人少ない配置となっている。
 そうしたことから、病院によっては年間の人件費が数千万円単位で削減されるため、看護師の健康リスクや患者の医療安全と引き換えにするように、2交代が広がっているのだ。
 労働科学研究所の佐々木氏は、「米国での看護師の生活時間調査では、16時間のシフトは全体の1.4%というほど珍しいもので、イレギュラーな勤務とされている。欧米では、12時間労働でも問題にされてきた。16時間もの夜勤を放置しているのは、国際的に見ても日本くらいであり、これは恥ずべきことだ」と強調する。
「健康や安全を守るには、夜勤は3交代の8時間で、最低でも2時間は仮眠しなければならない」(佐々木氏)という。
 また同氏は、「看護師には、3つの不規則性がある」と指摘する。それは、デスクワークとは違い、(1)患者の「生き死に」に常に直面する、(2)勤務時間が不規則、(3)一緒に働く相手が不規則――ということが、もともと看護師にとって大きな負担となっている。
 そのうえ、夜眠らずに徘徊する患者を管理するなど、労働負荷が高い。夜勤1回の疲労から回復するには2日かかるため、勤務間隔は48時間以上ないといけないという。
 夜勤は看護師だけの問題ではない。24時間何かが動いていれば、その背後には労働者がいる。システムエンジニア、スーパー、コンビニ、飲食、航空業界など、様々だ。今年4月に起こった、金沢と東京ディズニーランドを結ぶ高速バスでの居眠り運転事故を思えば、夜間労働のリスクは明らか。
 佐々木氏は「いわゆる夜勤でなくても、深夜までの残業や早朝出勤など、夜勤帯に重なるようにして働く人は大勢いるため、他人事ではない」と警鐘を鳴らす。こうした過酷な夜勤の影響で、毎年12万人以上の看護師が現場を去っているのだ。
 足もとでは、こうした状況を改善しようとする動きも出始めた。しかし、立場が違う関係者の思惑が入り混じり、目下のところ、その歩みは一進一退だ。
次のページ>> 「命のガイドライン」を巡る省庁や業界団体の動き
 これまで筆者の取材に対し、厚生労働省医政局看護課は「看護師は法で守られている。これ以上の保護は必要ない」「看護師の労働実態については、新聞で知るくらい。こちらが教えて欲しいくらい」「労働問題は経営者の問題では」などと、正面から看護師の労働問題について取り組む姿勢を見せなかった。数年前には20代の看護師の過労死が労災認定され、それを受けた日本看護協会の調査では、過労死レベルの看護職が全国に2万人も存在しているというのに、だ。
事態の深刻化に腰を上げた厚労省
「命のガイドライン」を巡る動き
 しかし、事態を深刻に受け止めた厚労省は、ようやく重い腰を上げた。昨年6月に関係5局の医政局、労働基準局、職業安定局、雇用均等・児童家庭局、保健局長が都道府県に対し、連名で「看護師等の『雇用の質』の向上のための取り組みについて」という通知を出したのだ。労働環境を整備するため、現状や問題点を細かくまとめ、労働時間のあり方についてのコンサルタントによる支援を、行政として実施することなどを決めた。
 もともと国際労働機関(ILO)第149号条約の『看護職員の雇用、労働条件および生活状況に関する条約』では、看護職の働き方について、(1)1日の労働時間は8時間以内(超過勤務を含め12時間以内)、(2)週休は継続する36時間以上、(3)交代制は間に12時間以上継続した休息を入れる、などを規定している。
 かねて日本医療労働組合連合会は、ILO看護条約にならった方針を提唱してきており、自治労や連合もILO看護条約を参考にした労働条件の改善や、診療報酬上でも夜勤の月の上限を短縮すべき旨を指摘し、それぞれの立場でほぼ一致した対策を求めている。
 特に日本医労連が1989年から行なっている看護師闘争「ナースウエーブ」という運動では、それまで病院のなかでしか見られなかった白衣姿のナースが街頭に出て夜勤の辛さや激務を訴え、増員を求める署名活動などを継続的に行なっている。
 開始当時、ナースウエーブが注目を浴び、看護師問題とは縁遠いイメージがある『週刊プレイボーイ』が取り上げるなど、社会問題化。看護師の労働を守らなければならないという気運が高まり、92年の看護師確保法の施行にこぎつけ、指針で夜勤回数の制限が努力義務化した背景があり、現在は長時間夜勤に歯止めをかける活動が行なわれている。
 ここへきて、看護師の職能団体である日本看護協会も、『看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン』をまとめている最中で、この秋にも完成する予定。トップダウンの強い看護の世界において、各病院の看護部長などの管理職に影響力を持つと言われる日本看護協会が方針を出すことの意義は、決して小さくない。
次のページ>> 看護不足の現場では、どだい正常シフトは無理?
 同ガイドラインでは、健康、安全、生活の3つのリスクなどについて説明。ガイドラインのなかで、夜勤の勤務編成について対策を提案している。現段階の具体案は、(1)勤務間隔を11時間以上空ける、(2)拘束時間は残業も含めて13時間以内とする、(3)3交代の夜勤は月8回以内を基本とする、(4)連続の夜勤は2回までとする、(5)連続勤務日数は5日以内とする、(6)正循環の交代周期にする、など11項目に及ぶ。
 ガイドラインの趣旨について、日本看護協会の小川忍・常任理事はこう説明する。
「私たちには、自分たちの健康を守って、安全な医療を提供する責務があります。病院は夜勤が不可欠。だからこそ、ガイドラインをつくることによって、夜勤と健康、安全、生活のリスクの関係について、正しく理解して欲しいと思います。ガイドラインにある全てをすぐに実現しようとするのではなく、職場の事情を見ながらできることから取り組んでいただきたい。
 このガイドラインは、人員を増やすことなく、勤務のシフトを組み替えることで対応できるはず。働きやすいシフトが組まれ、離職が1%でも減れば、単純計算でも約9000人の人材が現場に留まる計算となり、その効果は大きい」
看護不足の現場で正常シフトは無理?
ガイドラインに難色を示す病院経営者
 しかし、病院の経営者側からは反対の声が上がっている。日本精神科病院協会はガイドラインについて、次のような声明を出した。
(1)7割が2交代で最大拘束時間を13時間までとすると、傘下の病院の8割以上が達成不可能。
(2)「夜勤回数を月8回以内にすることは、4割の病院で達成できない。
(3)このガイドラインが実施されると、日精協1病院あたり平均23名の看護師を増員する必要があり、日精協全体では2万7800人も不足することになる。
 他の経営者団体も、「看護師がよほど余っていなければ実現不可能」と言う。とはいえ、労働基準法を大きく逸脱する無法地帯のような環境では、患者の安全は守れない。逆に病院側も、国や社会に対して看護師の増員を訴えるほうが理にかなうのではないだろうか。
 その点について、現役の看護師であり、東京都庁病院支部書記長を務める大利英昭氏は、こう意見を述べる。
「看護協会がガイドラインを作成していることは、職場改善へつながる第一歩。ただ、2交代の夜勤を12時間に制限するには、それまで16時間あった4時間分を誰かがカバーしないとならず、日勤をそれまでの8時間から12時間にする必要が出てしまいます。しかし、12時間の『ロング日勤』が行なわれると現場は疲弊する。ガイドラインに沿うなら、日勤と夜勤の間の『中勤』をつくるなど、各病棟で少なくとも3人の増員が必要となるでしょう」
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 また同氏は、夜勤を伴う看護職が、正循環のシフトで勤務できるようになるには、欧州にならって週労働時間を短縮する必要があるとして、週32時間労働を提言している。自身が務める病院で、実態を調査しているところだ。
「現状では、少ない人員で看護の質を保つために相当な努力をしており、それがシャドー・ワークとなっています。まずは、看護師がどの程度、いわゆるサービス残業を行なっているか、正確な労働時間を把握することが必要」(大利氏)
流れに逆行する診療報酬規程の変更
夜勤専従者の負担はさらに重くなる?
 こうして議論が紛糾しながらも、環境改善への意識が高まりつつある一方、新たな火種も生まれている。今年度、病院が収入源とする診療報酬の規定について、夜勤制限に逆行するかのような変更点があったのだ。
 これまでは、診療報酬で最高点の「7対1」看護配置基準(患者7人に看護師1人)をとるには、一般病棟における要件として、「看護師の夜勤時間が月72時間以内」「夜勤専従者の所定内労働時間についてはその2倍以内」という規定があったが、それが削除されたのだ。
 看護師が不足するなか、子育て中の看護師の夜勤を免除するなど、離職防止を図ろうと思えば、その分の夜勤を誰かが代行せざるを得ない。そのため、夜勤専従者を置く病院が増えているが、この変更により、夜勤専従者への負担がより増える危険がある。
 自治労衛生医療評議会の鈴木崇文事務局長は、「診療報酬で夜勤専従者の労働時間の上限が月144時間から緩和されたことは、本来あるべき姿と逆行しており、大問題」と訴える。
「そもそも、『7対1』看護などに設けられた『夜勤制限72時間』というルール自体を規制すべきです。看護師確保法などに照らせば、8時間の夜勤が月8回となるのだから、診療報酬でも月64時間以内に制限しなければいけません」
 看護師の夜勤問題は、まさに問題が山積みである。後期高齢者が増加する2025年を迎えるにあたり、看護師が60代になっても働き続けられる労働環境の整備は不可欠だ。現在、定年延長で働く60代の看護師にも夜勤が強いられ、離職者が増えているため、せっかくのベテランの存在が失われつつある。どの世代にとっても、夜勤の問題は深刻だ。
 24時間365日、病院のなかで患者の命を安全に守るためには、交代制勤務の中で、看護師が残業することなく、次のシフトへとスムーズにバトンタッチできる体制が理想的だ。
 そうした「交替」制勤務を実現するためにも、きちんとしたルールづくりと現場の状況に応じた看護師数の充足は、不可欠である。紆余曲折はあるものの、その努力に向けた一歩が、ようやく踏み出されようとしている。
質問1 あなたは「深夜残業」を、毎月どのくらいのペースでする?
http://diamond.jp/articles/-/19748/votes


02. あかあたなあ 2013年12月11日 15:45:22 : jmTeD7jpY/3Hs : DwLAenZlpA
関東だけど、そもそも看護師増やす気ないだろ。学校法人の既得権益にぶら下がった学校ばっかり。バカじゃないの。看護師の質だとかなんだとか言う前に教育見直せよ

3. 2017年11月15日 08:44:36 : LY52bYZiZQ : i3tnm@WgHAM[-3633]
2017年11月14日(火)
夜勤改善運動で成果
2交代 16時間以上勤務は減少
日本医労連が調査 運動さらに

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-11-14/2017111405_01_1.jpg
(写真)会見する森田委員長(右端)ら=13日、東京都内

 日本医療労働組合連合会(日本医労連)は13日、看護職員などの夜勤実態調査結果を発表しました。8時間以上の長時間夜勤となる2交代夜勤で、16時間未満夜勤が56・9%(昨年度44・9%)と増加し、16時間以上が43・1%(同55・1%)に減少しました。夜勤改善に取り組んできた運動の成果のあらわれだとしています。

 2交代病棟の割合は37・2%(同38・4%)で微減しました。

 勤務と勤務の間隔では、「8時間未満」が49%(同48%)で、極端に短い勤務間隔が半数に達しました。「12時間未満」は15・7%、「16時間未満」31・8%でした。

 看護師確保法・基本指針で3交代の夜勤回数は月8日とされていますが、月9日以上(2交代では月4・5回以上)の夜勤をした人の割合は、3交代で23・9%、2交代で31・8%に達しました。とりわけ集中治療室(ICU)では、3交代で39・4%、2交代で54・8%と回数オーバーが多くなっています。平均夜勤日数は、3交代で7・69日(昨年度7・63日)、2交代で4・01日(昨年度4・04日)です。

 東京都内で会見した森田しのぶ委員長は、「2交代病棟は、過去最高だった昨年度より減ったが、極端に減っているわけではない」と指摘。大幅増員・夜勤改善にむけて運動を強化すると語りました。あわせて、夜勤制限にむけて看護師確保法の実効性を高めるとともに、国際基準にてらした水準にする必要があると強調しました。

 調査は、6月の勤務実績にもとづくもの。全国402施設、3045職場、看護職員・要員11万8368人の回答を集約しました。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-11-14/2017111405_01_1b.jpg
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-11-14/2017111405_01_1.html


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