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人体で増殖するカビの存在として、皮膚など体の表面にとりつく水虫(白癬菌)がよく知られています。しかし驚いたことに、体の表面にとりつくだけにとどまらず、なんと体のなかに入り込んで悪さをするカビもいるようです。
「肺にカビが生える、という症例がけっこうあります。なかでも『アスペルギルス』という種類は、日本を含めて世界中で感染例が多いカビで、胞子が肺で成長・増殖すると発熱、せき、血痰などの症状が出ます。また、吸い込むだけでなく、このカビの仲間が作りだす毒『アフラトキシン』を食品から摂取するのも非常に危険なんですよ。毒性はフグ毒より強く、短期的には急性肝炎の原因に、長期的には肝臓ガンの原因になります。インドでは一度に肝炎で100人以上の死者を出したこともありますね。輸入ナッツ類から検出されることが多いので、検疫では非常に厳しいチェックを受けているようです」
そう教えてくれたのは、千葉大学真菌医学研究センターの渡辺哲博士。しかし、恐ろしいカビもいるもんですね。
「ほかにも『カンジダ』などが臓器に感染することが知られています。ただ、これら体内に巣くうカビはガンの化学療法を受けている人や白血病の人、つまり免疫力が非常に低い状態の人にしか感染しないんですよ」
健康体でいるうちは内臓がカビにやられるなんてことはないんですね。
「ただし、例外もありますよ。日本で健康な人も感染しうる唯一のカビに『クリプトコッカス・ネオフォルマンス』というものがいます。ハトの糞に存在することの多いカビで、まず胞子を吸い込んだ人の肺にとりつき肺炎を起こし、さらに3〜5割の確率で脳に入り込み、マヒ、震え、痛みなど髄膜炎や脳炎の症状を起こす恐れもあります」
え、脳みそがカビに侵される…。カビもハトも怖すぎます!
「ただ、糞にこのカビの胞子が入っているのはわかっているものの、吸い込んだからといって、必ずしも感染、発症するわけではないんです。感染例もそれほど多いわけでもありませんし、ハトに接する機会が多いほど感染の危険が増すというデータもありません。例えばレース用などハトを飼育している方は全国にたくさんいますが、その人たちの感染率が特に高いわけでもない。実はこの例に限らず、カビによる感染症に関してはまだまだわからないことだらけなんですよ」
専門家の先生にわからないことだらけ、なんて聞くとまた怖さも倍増ですが、研究は鋭意進められている模様。ハトを目の敵にするようなマネは性急なのでしょうけれど、注意するに越したことはないようです。
(宇都宮 雅之)
(R25編集部)
※コラムの内容は、フリーマガジンR25およびweb R25から一部抜粋したものです
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