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知らないと損する!医療費の裏ワザと落とし穴
【第10回】 2011年6月23日
著者・コラム紹介バックナンバー
早川幸子 [フリーライター]
健康保険料が払えない、医療費が払えない…困ったら
無料・低額診療をしている病院を探そう
前回は、失業したときの健康保険の手続きについて紹介した。
失業時の健康保険は、@家族が加入している健康保険の扶養家族に入る、A元の勤務先の健康保険を継続する(任意継続被保険者)、A国民健康保険に新たに加入する、の3つから選ぶのが原則だ(本コラム「第9回」参照)。
健康保険に加入していれば、病気やケガをしたときにも安心だが、当然、保険料の納付義務も発生する。暮らしに困らないだけの収入があれば、保険料の支払いは問題ないだろう。
しかし、失業期間が長引くなどで保険料が払えなくなることもある。長引く不況で雇用情勢が安定しない中で、このところ実質的に無保険状態の人がジワジワと増えている。
「払いたくても、お金がなくて払えない」
無保険の背景にある失業と貧困
会社員の間は当たり前に備わっている健康保険。しかし、「無保険」への転落は、案外、あっけないものだ。
元の勤務先の健康保険に任意継続で加入した場合、納付期日までに保険料を支払わないと、その月から被保険者資格が剥奪されてしまう。そもそも、協会けんぽや組合健保は会社員が加入するものなので、失業して無職の人が次に健康保険に加入するなら、市区町村の国民健康保険(国保)への加入手続きが必要だ。
ここで、国保への加入手続きをとっておかないと、「無保険」になってしまい、ケガや病気をしたときの保障が何もなくなってしまう。健康保険に加入していれば、自己負担するのは医療費の3割(70歳未満)でいいが、無保険になると全額自己負担しなければならない。会社都合で解雇されたり、雇い止めにあった派遣社員の人なら、国保は保険料の減免をしてくれたり、支払い期日を猶予してもらうなどの相談にものってもらえるのでしっかり手続きをしておこう。
ただし、国保でも、保険料を1年間滞納すると健康保険証を返還しなければならず、代わりに「資格証明書」というものが発行される。
通常、医療機関の窓口で健康保険証を見せれば、かかった医療費の3割(70歳未満)を自己負担すれば治療を受けられる。しかし、資格証明書で受診した場合は、いったん医療費の全額(10割)を負担しなければならない。本来なら、病院が健康保険に請求する7割分は、患者が自ら市区町村に出向いて還付してもらうことになる。
さらに、1年半以上保険料を滞納していると、患者が支払った医療費から滞納分の保険料を差し引いたものが払い戻されることもある。
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こうした措置を取る目的のひとつは、保険料を払ってもらうために加入者との話し合いの機会をもつためだという。2009年度の国民健康保険の収納率は88.01%で、長引く不況で年々下がっており、その一因に「お金があるのに払わない」という悪質なケースがあるのは事実だ。しかし、保険料を滞納している人の多くは「払いたくても、お金がないから払えない」というもので、背景に失業や貧困があることは見逃せない。
そもそも、お金がないから保険料を滞納しているわけなので、そうした人が病院や診療所で医療費の全額を支払うことは、まずもって無理な話だ。そのため、資格証明書が交付されている人の多くは、病気やケガをしても医療機関を受診できず、実質的には無保険状態になっている。
2010年度は、保険料を滞納している436.4万世帯のうち、30.7万世帯に資格証明書が交付されている。こうした世帯の人の中には、からだの不調を自覚しながらも病院や診療所にかかれずに死亡するケースもあるという。以下は、今年3月に全日本民主医療機関連合会(民医連)が報告した手遅れ事例だ。
●資格証明書の自営業
自営業のAさん(当時44歳・男性・北海道)は、半年前から腹痛・体重減少を自覚し、1カ月前からは呼吸困難・嘔吐などを繰り返していた。しかし、収入が不安定で健康保険料も払っていなかったため、もっていたのは資格証明書。仕事を休むと収入もなくなるため医療機関を受診できずにいた。しかし、我慢ができなくなり、無料で診察を行っている病院を紹介されて2010年5月7日に受診。ここで進行した胃がんのほか、リンパ節などへの転移が見つかった。即日、入院をしたが、6月3日に死亡した。
●無保険の元会社員
Bさん(当時42歳・男性・山形県)は、2009年12月に体調を崩し、会社を無断欠勤したことを理由に解雇される。その後、健康保険の加入手続きはとらず、無保険に。自分の車で寝泊りしながら転々としていたが、最後の1カ月間は水分のみを摂取。2010年9月1日に警察に保護され、同日に入院。歩行困難、意識のムラが認められ、9月7日に急性心不全で死亡した。
手遅れ事例は、このような資格証明書や無保険によるものだけではない。国民健康保険や協会けんぽに加入して保険料を払っていたにもかかわらず、病院や診療所での自己負担分が支払えないために受診を控え、死亡に至ったケースもあるという。こうした手遅れ事例は、民医連が把握しているだけでも、昨年1年間で71件もある。しかし、事務局次長の湯浅健夫氏は「この71件は氷山の一角。失業や貧困などを理由に医療にかかれずに亡くなったケースは、まだまだあるはず」だという。
次のページ>> 社会保障の網の目からこぼれた患者を救う無料低額診療
社会保障の網の目からこぼれた患者を救う
無料低額診療を行う医療機関がある
前出のAさんやBさんのように、所持金もほとんどなく、からだを壊して収入を得るすべがなくなった場合、本来は生活保護の対象になる。
生活保護には「医療扶助」という制度があり、市区町村の福祉窓口で保護が認められれば、健康保険料や医療費の自己負担なしで健康保険と同じ内容の医療を受けられる。
以前は、受給要件にあてはまるケースでも、生活保護の窓口では申請を受け付けない「水際作戦」というものが取られることがあったが、湯浅誠氏が代表を勤める「反・貧困ネットワーク」などの取り組みによって改善されてきている。ソーシャル・ワーカーなどに相談すれば、生活保護の申請は受け付けてもらいやすいので、ひとりで悩まずに相談をしてみよう。
とはいえ、生活保護を受けられるのは、家族からの仕送り、行政からの福祉手当、預貯金や自宅などの資産の合計が、国が決めた最低生活費を下回る場合だ。失業期間が長引いたからといって、すぐに生活保護が受けられるわけではない。そのため、生活保護は受けられないけれど、家賃や食費で精一杯で医療費まで手が回らないという人が無保険となり、医療にかかれない実態を作り出しているのだ。
このように社会保障の網の目からこぼれ落ちた人を救っているのが「無料低額診療事業」だ。戦後の混乱期の1951年に始まったもので、通常なら3割(70歳未満)かかる医療費の自己負担分を、経済力に応じて減額、または免除してもらうことができる。
対象となるのは、低所得者、ホームレスの人、ドメスティックバイオレンス(DV)被害者など。たとえば、健康保険証をもっていない無保険の人、短期保険証や資格証明書を交付されている人、失業して収入がない人、家族のDV被害から逃れるために住民票を取れずに健康保険証を入手できない人などがそれに当たる。
無料低額診療を行うには都道府県への届出が必要で、すべての医療機関でこの事業を行っているわけではないが、医療生協や民医連の関連施設が実施していることが多いようだ。受付などに「無料低額診療を行っています」「医療費でお困りの方はご相談ください」などと書かれた張り紙があったり、パンフレットなどが置いてあるので注意して見てみよう。
実際に無料低額診療を受けるためには、福祉事務所や事業を実施している医療機関で経済状況などを相談する必要があるが、減免措置が認められると無料診療券、低額診療券が発行され、受診時にはそれをもって受診する。有効期限は1カ月〜6カ月程度だが、状況に応じて継続してもらうことも可能だ。
ちなみに、無料低額診療で免除・減免された患者の医療費は、事業を行っている医療機関の持ち出しだ。患者が健康保険に加入していれば、持ち出しするのは患者負担分だけでよいが、無保険の場合は医療費の全額を医療機関がカバーすることになる。無料低額診療の適用事業所は固定資産税などの優遇は受けられるものの、診療報酬の削減で厳しい経営を迫られている今、決して楽なことではない。無料低額診療事業は、「目の前の患者を見捨てることはできない」という医療者の良心によって支えられている側面も大きい。
しかし、経済的理由で困窮している国民の医療費は、本来、国や行政が面倒をみるべきものではないだろうか。そもそも、国民健康保険法第44条には、生活困窮者の一部負担金は減額、免除することができると定めており、仙台市など一部の自治体では失業などで生活に困っている市民の医療費の自己負担額を減額・免除しているところもある。
未曾有の被害をもたらした東日本大震災は、今後しばらく雇用情勢に暗い影を投げかけそうだ。安心して暮らしていくために不可欠な医療保障が整っていなければ、国民が力を合わせて復興を成し遂げることもできない。社会保障の網の目からこぼれて医療を受けられずに手遅れとなるようは悲しい事例をなくすために、政府は新しいセーフティネットの形を構築する必要があるのではないだろうか。
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