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坂田和江(薬害肝炎訴訟原告・薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための薬事行政のあり方検討委員会委員
私は、薬害肝炎訴訟の原告の一人です。私たちの薬害肝炎訴訟は、2008年1月の薬害肝炎救済法の成立、及び原告団と厚生労働省との基本合意により、解決へと進みました、
私は、「二度と薬害の被害者も加害者も出したくない」との思いで、2008年に薬害肝炎の基本合意に基づいて設立された「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」(検証・再発防止委員会)の委員に就きました。
私たち20名の検証・再発防止委員会委員は「二度と薬害を起こさせない」との気持ちで2年間の討議の末、昨年4月に最終提言書を完成させました。現在、厚生労働省は、この提言を実現するため様々な課題に取り組んでいるところです。
しかし、その取り組みを進めている中で、薬害イレッサ訴訟の和解勧告をアストラゼネカ社が拒否し、国も対応に迷っていること(本日、政府は和解勧告拒否を表明した:ダイナモ)は提言の実現の流れに逆行するものであり、薬事行政の第三者監視・評価組織の設置や、安全性対策の改善によって提言が目指した理念の実現が果たせなくなるのではないかと大変懸念しています。
この事件の問題は、一言で言えば「分かっていた情報がきちんと伝えられなかった」というシンプルなものです。国や企業は患者や現場の医師にきちんとリスク情報を伝えていたとは到底思えません。
イレッサは、医師にとっても患者にとっても渇望されていた「副作用の少ない夢の新薬」として売り出されました。ですが、承認前から把握されていた致命的な副作用である間質性肺炎について、情報が現場に十分に提供されていなかったと考えられます。実際に、承認直後にあれだけの大規模な被害が出てしまったことが、そのことを証明するのではないでしょうか。
しかし、東京、大阪両地裁から出された和解勧告を受けて、国はその事実を歪曲し、問題をすりかえたコメントを出しました。「薬事行政の根幹を揺るがす」などです。私はこのコメントを見たとき、薬害肝炎訴訟の時と同じ言葉を使っていることにとてもショックを受けました。私たちの訴訟が解決した後、もちろん薬事行政に混乱など起きませんでした。むしろ、検証・再発防止委員会を通して薬事行政の改革に向けた重要な一歩が踏み出されています。
この声明の趣旨は、「医療において不可避の副作用を認めなくなれば、全ての医療は困難になる」というものです。しかし、和解勧告が言っていることは、医療現場に副作用を知らせなさいということです。患者は不可避の副作用があるなら、それを知った上で納得して、治療を受けたいのです。和解が目指すものは決して癌医療を頓挫させたり、医療や薬事行政を混乱させるものではないと思います。また、そもそも、これだけの被害を発生させたことについて、医療界として反省すべき点はないのでしょうか。自らの反省点に触れない医療界の声明からは、当事者意識の欠如を感じます。
私は、検証・再発防止委員会に並行して設置された「薬害肝炎の検証及び再発防止に関する研究」の研究班(平成20年度、平成21年度厚生労働科学研究費補助金による研究班、研究代表者:堀内龍也)の分担研究者として、「なぜ、私たちは被害者にならなくてはいけなかったか」を知りたくて、薬害肝炎事件の検証を担当いたしました。
10名の元厚生省の官僚の方々や厚生労働省の官僚の方々、そしてミドリ十字の当時の職員3名のヒアリングを担当しましたが、安全性に対する対応の甘さなど、薬害イレッサ事件でも同じことが繰り返されていると感じています。
私は、薬害イレッサ訴訟を一刻も早く解決し、徹底的な検証をするべきだと思っています。是非学会の先生方も含め当事者の方々が自己検証を行っていただき、事実を素直に受け入れることが、私たちの願いである薬害のない社会の実現と、安全で安心な医療の構築に欠かせないと確信しています。
最後に、一日も早く、企業、国共に自分達の非を認めて、和解のテーブルにつくことが亡くなられた被害者の方々の魂に応えるものだと思います。薬害エイズ事件の解決に大きな功績を残された菅直人首相の決断によって、薬害イレッサ訴訟の全面解決が実現することを強く期待しています。
参考:薬害イレッサ弁護団 http://iressabengodan.com/
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