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砂糖玉をなめれば、病気が治るという民間療法「ホメオパシー」に、日本の頭脳集団、日本学術会議が24日、荒唐無稽(こうとうむけい)と「ノー」を突きつけた。副作用も明らかになっている通常の医療に比べ、「自然だから安心」と、自然派志向の女性たちを中心に広まりつつある。しかし、傾倒するあまり、通常の医療を否定して病院から遠ざかり、命の危険にさらされる人たちも出ている。(長野剛、岡崎明子)
◇ 元利用者「宗教のよう、洗脳されていた」 ◇
「ビーッ、ビーッ」
2008年春、埼玉県内の病室で、血中酸素濃度の危険な低下を示すブザーが鳴った。酸素を充満させたビニールテント内のベッドで、生後8カ月の娘が重い肺炎でせき込む。「このまま死んじゃうの」。母親(40)は青ざめた。風邪をひいて1週間。ホメオパシーの療法家に「薬と併用はだめ」と説かれ、ホメオパシーだけに頼った結果だった。
◇ 症状は日々悪化 ◇
母親は元々、食品添加物などの化学物質を避け、自然な育児を目指していた。インターネットを通じて付き合う「自然派ママ」の間ではやっていたのが、ホメオパシーだった。疑心暗鬼だったが、07年ごろ、腰痛の時に試すと、腰が軽くなったような気がし、効果を信じ始めた。
08年1月、娘が風邪をこじらせ、医師の薬と同時に、ホメオパシーで使う砂糖玉を口に含ませたが、気管支炎に。療法家に相談すると「薬を使うならホメオパシーはやめて」と告げられた。
推進団体は、ホメオパシーが効くと、いったん症状が強まる「好転反応」が起こると説明する。この反応は自然治癒力が上がった証拠で「ありがたいもの」だが、薬と併用すると、この反応を抑えて体の負担になってしまう、と療法家に説かれた。
3月、娘がまた風邪をひいた。ホメオパシーで乗り切ろうとしたが、症状は日々悪化。胸が「ゼーゼー」と鳴る。1週間後、不安に耐えられなくなり、病院行きを決めたという。母親はいま、「娘は入院9日で済んだが、もっと私が洗脳された後なら、危なかった」と振り返る。
◇ 2年間で300万円 ◇
日本学術会議が最も懸念するのは、ホメオパシーが通常の医療から患者を遠ざけてしまう点だ。30代の女性もそんな一人だ。
「ホメオパシーは宗教のようなもので洗脳されていた。どんな症状でも過去のトラウマと結びつけて説得され、泥沼にはまってしまった」
数年前、不眠が続き、精神科で処方された睡眠導入剤や抗うつ薬を飲んでも効かなかった。ある雑誌で興味を持ち、日本ホメオパシー医学協会が主催する講演会に申し込むと、個室に通され、DVDを見せられた。「好転反応」の説明と、アトピー性皮膚炎で真っ赤な赤ちゃんが登場し、由井寅子(ゆい・とらこ)会長が「症状はありがたい」と訴えていた。
観賞後、子どもの頃のトラウマなどを記入するよう求められた。相談料は1万円。ホメオパシーに使う砂糖玉36種類入りのセットや、砂糖玉を電磁波から防ぐ布袋などに約2万円を支払った。
それから毎日、砂糖玉を飲んだ。しかし、不眠は治らない。療法家に相談すると、「症状は、あなたが味わった過去の痛みだから受け入れて。医者に行かないで」と言われた。半年間、毎月約1万5千円を支払い続けた。
女性は、協会が主宰するホメオパシーの専門学校に通うことにした。授業料は2年間で300万円超。授業の録音は禁止された。しかし、人が亡くなってもホメオパシーを正当化する主張に疑問を感じ始め、2年ほどで縁を切った。
自然派志向の女性たちを中心に広まる理由について、代替医療に詳しい埼玉医科大の大野智講師は「通常の医療は、副作用も明らかになっているため『危険』と思ってしまう。一方で、ホメオパシーなどの自然に近いとされるものは『安全』と信じ切って、口コミで広がっているのではないか。リスクが評価されていないだけで、自然イコール安全ではない」と指摘する。
◇ 誤解広まる前に先手 ◇
「この談話で一番重要なのは、ホメオパシーは科学的に否定されているということです」。日本学術会議の唐木英明副会長は記者会見の冒頭、強い口調で言った。
ホメオパシーへの危機感を強めたのは、医学系の学術会議で、ホメオパシー関連商品の展示が増えているのに気づいたのがきっかけ。宣伝本をみると、大学病院や公立病院など約20の医療機関が掲載されており、衝撃を受けた。
さっそく金沢一郎会長に相談。金沢会長は、昨年2月の厚生科学審議会で「(ホメオパシーについて)審議会も把握しておくべきだ」と警告し、その一方で、各国の科学者とも連絡を取った。ドイツでは2004年から、ホメオパシーへの公的医療保険適用をやめた。だが、完全に使用規制するのは難しい状況になっていた。海外の科学者からは「日本もこうした状況になる前に、手を打った方がいい」との助言も受けた。
社会への影響を考え、日本医師会などの団体に水面下で協力を呼びかけた。だが「なぜホメオパシーだけ」といった反対意見もあり、議論はなかなか進まなかった。
長妻昭厚生労働相は今年1月、「統合医療はホメオパシーなど色々ある。その効果も含めた研究に取り組む」と発言。西洋医学に漢方やはりなどの代替医療などを採り入れた統合医療を研究するプロジェクトチームを立ち上げた。厚労省も、医師法や薬事法の観点から情報収集は始めていた。ただ、特定団体が通常医療から患者を遠ざけているとの指摘に、「そうした行為を法律で取り締まるのは難しい」との立場。ホメオパシーについて結論は出ていない。
そんな中、昨年10月に山口市で起きた女児死亡が転換点となった。各団体が「ホメオパシーは危険」との認識で一致、今回の談話につながった。金沢会長は「(ホメオパシーの問題を)厚労相も理解して頂きたい」とくぎを刺した。
◇ 普及団体会長「予防接種、がんを作る」 ◇
「予防接種はがんを作っています。これは、事実です」
今年5月、東京都内の日本ホメオパシー医学協会の施設で開かれた講演会で、由井会長はこう断言した。この講演会の参加者の一人は「涙あり、笑いありの2時間半で、全く飽きなかった。聴講者は熱心にメモを取り、最後は泣き出す人もいた」と話す。
由井会長は「予防接種トンデモ論」などの著書でも、予防接種を「体の中に入る人工毒の代表」として批判している。アトピー性皮膚炎や自閉症、がんなどは予防接種による「医原病」だと指摘。薬に対しても「(病気の)症状を抑え、自然治癒力を弱める」と否定的で、ホメオパシーで使う砂糖玉の役割は、その薬の排泄(はいせつ)反応を起こすこと、と説明している。
日本学術会議の記者会見には、同協会の機関誌記者も出席。「どの程度、調査したのでしょうか。あまり深くないように思うが」と質問する場面もあった。
同協会はこれまでの朝日新聞の取材に対し、「現代医療は否定しておらず、協力する立場」と答えてきた。その一方で、8月13日のメールマガジンでは「一連の報道は、日本の国民により一層広く普及していくために通らなければならないステップのようなものだと思います」と、会員に結束を呼びかけていた。
ホメオパシーを行う団体は他にもある。協会とは一線を画し、患者から必要な治療機会を奪わずにホメオパシー療法を勧める、と主張する。
医師や歯科医師ら約400人の会員を抱える日本ホメオパシー医学会専務理事の板村論子医師は「ホメオパシーのみを信じ、必要な現代医療を受けなかった人々が出たことは残念。ホメオパシーは医療の選択肢の一つとして、医師が行うべきだ」と話す。日本ホメオパシー振興会の永松昌泰代表は「医学協会の活動や言動がいたずらに現代医学に否定的な行動を誘発している。当会は細心の注意を呼びかけている」と説明する。
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