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【転載】医師の提案する【現代・日本の医療の問題点整理】 副島隆彦医療掲示板より http://www.asyura2.com/09/iryo03/msg/300.html
副島隆彦 近代医学・医療掲示板 ーーーーーーーーーー転載開始ーーーーーーーーーーー [1624]現代・日本の医療の問題点整理 投稿者:もう投稿日:2010/05/18(Tue) 23:05:19 皆さんこんにちは、久しぶりに投稿させていただきます「もう」です。一桁台の過去ログでは時々投稿させていただいておりましたが、最近の皆さまの活発な論議に触発され、意見を述べて見たくなりました。 「おじいさん」(失礼)先生をはじめ皆様現代・日本の医療の問題点を適確に把握しておられて素晴らしいと思いました。私も自分なりに医療の問題点を思慮しているつもりでしたが、多くの方の意見を拝見することは視点を広げる意味でも大変勉強になります。 今回は医師として医療を行なう立場で今まで自分なりに考えてきた西洋医学・日本の医療の問題点を整理して述べて見たいと思います。 まず現代西洋医学の現状(問題点を含む)として 1) 急性疾患は治るが慢性疾患は治らない。 といったことがあげられると思います。また上記をふまえて日本における医療の問題点を整理すると 1) 医療費の総額が増加しており、国民皆保険制度の維持が困難になってきている。 ということに集約されるのではないかと思います。 以上のことをふまえて以下私見を述べたいと思います。急性疾患に対する医療の進歩が著しいことは異論がないと思います。診断治療の技術進歩により2−30年前ならば諦めていた病態が完治とはいえないまでも日常生活ができるまでに改善されるようになり、平均寿命も延びてきています。一方で糖尿病や高血圧などの慢性疾患は、見かけの検査値を正常化する薬はありますが、疾患そのものを治す薬はありません。慢性疾患の進行によっておこる合併症は急性疾患ですから、例えば心筋梗塞などはかなり救命率がよくなっていますが、結果として慢性疾患をかかえた患者さんがどんどん増えてゆくことになります。 そこでメタボ検診の普及に象徴されるように慢性疾患にならないための「予防医療」というものが推奨されるようになってきました。「慢性疾患にならないように日常の食生活に気をつけましょう」と言っているうちは良いのですが、おじいさん先生がご指摘になられたように「検査値異常を正常化させるためにこれこれの薬を飲みましょう」という商売になってくることが問題なのですね。 薬によって検査値は確かに正常になります。薬の効き具合は自然科学ですから正規分布に従って効果が出るのだろうと思いますが、「合併症の予防に効果があります」ということになるとかなり詐欺的手法が使われることになります。 例えば1000人に2年間ある薬を飲んでもらい、偽薬(プラセボ)を飲んでもらった人と比較した所(前向きのランダム比較試験と言って客観性を担保する一般的方法)、心筋梗塞の発症が偽薬内服群が20人だったのに薬を飲んだ群が10人だった、とします。するとこの薬は心筋梗塞の発症を50%抑える良い薬だ、という結果になりますね。これを客観的エビデンスに基づく医療(EBM)と言い現在医療を語る上では金科玉条です。しかし考えてみて下さい、効果があったのは100人に一人で残りの99人は無駄に薬を飲んだ上に一人は心筋梗塞にもなっている訳です。本当にこんな薬、金を出して飲む必要があるでしょうか。 今はやりの骨粗鬆症の改善薬も骨粗鬆症が治るのではなく、飲んでいると骨折のリスクが統計的に減るというだけです。予防医療というのはそのようなものだと国民が理解し、納得の上で医療費を払っているのならよいのですが、そのような議論が国会でされたことはないと思います。 また末端の医師や国民が余計な疑問を持つことがないように現在は学会が決めた「治療ガイドライン」とか「標準治療」といったものが花盛りで、これに沿って医療を行っていればどこからも文句がでないようになっています。逆にこれにそっていないと「やぶ」だの「勉強不足」だの下手して合併症でもおころうものなら「行うべき治療をしていなかった」として訴訟問題にまでなります。だから医師は「本当に必要かな?」と疑問を持っても、学会が決めた「推奨グレード」に沿って薬を患者に処方することになります。 薬先行については、例えば過活動膀胱があげられるでしょう。尿意が強くなって失禁してしまうような強い尿意切迫感を伴う頻尿を「過活動膀胱」と言うのですが、これはマスコミでは最近よく取り上げられますが新しい疾患概念であって実は頻尿に効く新しい良い薬剤ができたからそれを効果的に販売するためにイギリスの医師が考えだしたものです。過活動膀胱の病理組織学的定義はなく、解剖生理的状態も見つかっていません。なぜならこれは症状に付けられた名前であって前立腺肥大症のように病態がはっきりと病理的に定義されたものではないからです。それでもこの薬は頻尿に効くことは確かなので悪いことではないのですが、「薬先行」の良い例と私は思います。他にもメタボ関連の薬などどうも薬先行で検査値の正常値を薬が売れるように変更しているのではないかと思わせるようなものがあるのではないかと危惧します。 「神の予想を超えた医療」については以前にも言及しています(またはhttp://blog.goo.ne.jp/rakitarou/e/7c43d4eea8133f73e5014129f9cf8c0c?st=1)ので項を改めます。 急性期医療の進歩によって大抵の急性疾患が治るようになると、治るのが当たり前になってしまい、「治らなかったのは医療ミスだ」という誤った認識ができてしまいました。「血液型を間違えた」とか、「取る臓器を間違えた」というのは誰にでも解る明らかな医療ミス、しかし一生懸命治療したけど悪い結果でした、というのはミスではないでしょう。より経験のあるB医師が治療したら良かったかもしれないけど一生懸命やったが結果が悪かったA医師は医療ミスを犯したとは言えない。しかし小泉内閣の時代アメリカから日本の医療市場を解放しろと年次改革要望書で命令されて「日本の医療を叩いてアメリカ医療を礼賛しろ」と指令を出されたマスコミは読売あたりが中心になって意図的に日本の医療バッシングを行いアメリカ医療の礼賛をしました。最近はオバマの医療改革(何とか可決だが頓挫?)や映画「シッコ」の影響もあってアメリカ医療が最低である(医学は最高ですけど)ことがやっと日本でも理解されるようになりましたが、2000年頃は私が「アメリカ医療など最低だ」と言おうものならあちこちから非難されたものです。 技を体得する修行も大変だし、急性期医療は時間も拘束されるけど高度な医療を患者さんに施せるという自負で病院勤務医達は給与が安いのも我慢して頑張ってきました。しかし結果が悪ければ悪人扱いされ、患者からも「うまくいって当たり前」として感謝もされず、医療費削減のあおりで90%の病院が赤字になり給与はあがらないけど医療収益をあげろと毎日経営のことをうるさく言われるようになって(国立大学病院も独立法人化)しかも若い医師達が3Kの職場を嫌って仕事が楽な科に集中するようになってしまい、若い人たちの分の仕事もやらないといけなくなって「もうやってられない」とばかりに病院勤務の医師達が勤務医を辞めて続々と開業するようになった「立ち去り型サボタージュ」が医師不足の実態なのです。 つまり「安い給料で24時間リスクの高い医療を行う病院勤務医」が不足しているのであって「医師数不足」という訳ではないのです。現に都心の開業医は飽和状態で患者の奪い合いになっています。これに対する政府の解決策が「医学部の定員増加」なのですが、この3年で1,200名つまり医学部を10校位作ったほど医学部の定員が増えたので、大学病院勤務医の負担がますます増加しました。これを見た学生は卒業後大変そうな科には行かず責任が問われそうにない「予防医学」を行う医師がますます増えるのではと懸念されます。 私の病院にも医師2年目以内の初期研修医が20名近くいますが、新研修制度が始まってから私の部長をしている泌尿器科を研修に来た医師は一人もいません。以前なぜ泌尿器科に来ないのかアンケートを取ったことがあるのですが、「大変そうだから」という答え。それは患者も検査も手術も多くて50過ぎた部長が毎週病院に泊まっているような科は研修に行きたくないと思うのも当然かなと思いました。 日本の勤務医不足の解消法は開業医との所得格差(開業医は平均給与2倍です)をなくすこと、一生懸命やった結果が悪くても責任を問わない体制を作ること(情報開示を前提として)、病院に対する診療報酬は手厚くすることに尽きると思います。 日本の外科医の給料を今の4倍にしてアメリカと同等にしろ、などというのは現実問題としては無理でしょう。私は開業医との所得格差をなくす意味ともう一つの大問題である老人介護の問題を解決する意味でも医療従事者は全員公務員にしたらよいと前々から思っています。介護従事者の低賃金は目を覆うものがあります。これでは一生の仕事として若い人たちに勧められないし、今後増え続ける需要にも対応できない。せめて市役所の職員と同じくらいの給与にしてあげるべきです。 医療者を公務員にすると働かない公務員が大量に出来ると心配する向きもあるでしょうが、電気量販店のようにポイント制を設けてそれを給与や待遇に反映させれば良いと思います。患者を診る、手術をする、論文を書く、学生を教える、それぞれに重みの違うポイントを付けて例えば50万点貯まったら有給休暇を2日とらないと次のポイントは貯まらないということにすれば過労死も防げるでしょう。ポイント制は学会の専門医維持のために既に研究や学習分野では導入済みですし、レセプトの電子化で医療行為のポイント化もすぐできます。お金持ちの開業医は抵抗するでしょうが、10年くらい移行期間を作って公務員化した方が医院経営上有利な体制を作ってしまえば病院を出来高からまるめ(DPC)に以降させることに成功したように開業医の公務員化もできるでしょう。なんせ医療経済は診療報酬を国が決める社会主義体制なのですから。 ちなみにアメリカは原則医師全員が開業医であり大学病院に勤務する医師もprivate officeを持っていてopen systemの病院に手術に際して自分の患者を連れてきて手術をし、短期間で退院してまた自分のofficeで診ます。病院では一日15人くらいしか診察しませんから待ち時間などありません。その待ち時間がないことを見て日本の病院はだめだなどと言う阿呆がいますが困ったものです。勿論診察料も高いしドクターフィーも取れます。日本のように誰が診察しても同じ値段などということはあり得ない。患者が入っている保険によって診てもらえる医師も指定されていますし、お金持ちは研究室に寄付もしてくれるので私が留学した先のボスなどもofficeで患者さんを揉み手で接待している所をよく見ました。 英国は医師が全員公務員的に管理されているし、ドイツでは州毎の医師会が医師全員を開業、勤務医かかわらず管理していて自由に開業できないしくみです。一次救急は開業医が診るというのも納得のゆくシステムです。どの国を参考にするにしても現代の日本の医療はそろそろ曲がり角に来ている事は確かです。民主党には見識のある現役勤務医出身の議員もおられます。直接話しをする機会もありましたが、せっかく民主党が政権を取ったのですから拙速でなく将来を見据えた医療改革に取り組んで欲しいと期待しています。長文におつき合いいただき有難うございました。 http://blog.goo.ne.jp/rakitarou
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