03. 2010年11月23日 01:59:16: EId6LHZt7w
最近のニューヨークタイムズ紙の記事もわかりやすいと思います。ちょっと長いですが・・・ NEW YORK TIMES "Side Effects May Include Lawsuits" By DUFF WILSON Published: October 2, 2010 http://www.nytimes.com/2010/10/03/business/03psych.html?pagewanted=1&_r=1 登録が面倒な人はこちらで http://www.nyaprs.org/e-news-bulletins/2010/2010-10-04-NYT-MH-Drug-Side-Effects-May-Include-Lawsuits.cfm 訴訟問題も副作用? 過去数十年の間、抗精神病薬というのはニッチな製品であった。 しかし今日、それらはアメリカのベストセラー医薬品類となり、心臓病を抑えるスタチンのような大ヒット薬の販売すら凌いで年間約146億ドルもの利益を生み出している。 抗精神病薬の有効性については大いに意見が分かれて議論が続くものの、これらの薬がいかに広く使われ、儲かるものであるかについては議論の余地はない。 1990年代、ビッグ・ファーマ(大製薬企業)は、幻覚体験のある統合失調症など、きわめて重篤な精神病の治療に限って使うものであるとそれまで考えられていた抗精神病薬を、より広い用途で患者に使用できるようにと新たに作戦を立て直したことが、これまでのさまざまな裁判で提示されてきた製薬企業の極秘文書から明らかになっている。 エビリファイ(Abilify)やジオドン(Geodon)といった新しい名前に衣替えしたこれらの薬品は、未就学児童から80代の高齢者に至るまで、幅広い患者に処方されるようになっている。 今や抗精神病薬を服用する若者は50万人以上にも上り、老人ホームに入所するお年寄りの優に四分の一は、抗精神病薬を服用している。 しかし最近、高齢者がこうした薬を服用することは命にかかわる危険性もあり、また子供にどのような影響があるかについても分かっていないとする警告が政府から出ている。 さらに、新世代の抗精神病薬は、以前は軍事契約企業の不正行為を取り締まるための連邦法であった虚偽請求取締法(False Claims Act)の最大の標的ともなっている。 抗精神病薬を販売するのはすべての大製薬企業。 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社、イーライ・リリー社、ファイザー社、アストラゼネカ社、およびジョンソン・エンド・ジョンソン社など、どの大手製薬企業も、最近の国家訴訟の解決に何億ドルも支払っており、現在も医療詐欺容疑で調査中の企業もある。 そうした訴訟の中でも、昨年、不法マーケティングで告発された二つの裁判で言い渡された刑事上の罰金は、これまでに企業が支払った最大の額となった。 その1つはイーライ・リリー社の抗精神病薬ジプレキサにかかわるもので、もう1つはファイザー社の鎮痛薬ベクストラ(Bextra)のマーケティングに対する有罪判決である。 ベクストラのケースでは、政府はファイザー社に対し、もうひとつの抗精神病薬、ジオドンの不法マーケティングについても告発していたが、ファイザー社はいかなる罪も認めることなく、3億100万ドルを支払うことで決着をつけた。 FDA(米食品医薬品局)が承認した疾患 - 主に統合失調症および双極性躁病 - の治療薬として、抗精神病薬は安全かつ有効であるとし、薬品販売業務における倫理指針についても「自分たちは厳格に順守している」と、どの製薬企業も口をそろえる。 また、薬の恩恵にあずかれるはずなのに服用したことのない患者も大勢いると製薬会社は言う。 セロクエル (Seroquel:2005年来最も良く売れている抗精神病薬) を販売するアストラゼネカ社は、以前の薬剤よりも副作用の少ないことを開発の理由に挙げる。 「この薬は、様々な適応症における複数の治験で研究されたものである」と同社医務部長のハワード博士。 「薬によってこれらの患者が社会の一員として機能できるようになるということは、健康全般、あるいは自分に対する見方という観点からしても、途方もなく大きなベネフィットをもたらすものであり、そのベネフィットを得るためには、ある程度の副作用を受け入れても構わないと患者側も思っている」と言う。 こうして製薬企業による抗精神病薬の積極的な販売が相変わらず続くなか、人口の約1パーセントのためにFDAが承認した抗精神病薬が、最近のこれだけ厳しい取り締まりにもかかわらず製薬業界のベストセラーであり続けていることに対し、アナリストからは疑問の声が上がっている。 あるアナリストは、その答えは単純だと言う。 「それはお金ですよ」と、ハーバードの医学部教授、ジェローム L. アバロン博士。 「ひとつの薬で年に10億ドルを売り上げるのですから、会社も交通違反で捕まっても信号無視ぐらいしたくなるでしょう。」 今では抗精神病薬として知られるようになった神経遮断薬も、もとは1950年代に麻酔用に開発されたのが始まりで、その後、それまでロボトミー手術の対象であった統合失調症をはじめ、重い精神病障害患者向けの強力な鎮静剤として使われるようになったもの。 ところが、ソラジンやハルドールといった薬剤が、チックをはじめ、体が勝手に動いて落ち着きなく歩き回るなど不随意な体動を起こしたことから、こうした薬を患者が飲まなくなることもしばしばであった。 90年代に入って非定型抗精神病薬と呼ばれる第二世代の薬がそれまでの薬よりも安全であるというふれ込みで登場。医師への販売がそれまでよりも広がったものの、たとえチックがされたとしても、この新しい薬もどうやらさまざまな副作用を引き起こしているらしいことがわかり、監督機関や研究者による調査は今なお続けられている。 新しい薬のほうが優れているという主張は、「ひどく誇張されたものだ」。 そう語るのは、コロンビア大学の精神科部長、ジェフリー A.リーバーマン博士である。 彼は、そのような主張は「新薬の力を信じたい患者や臨床医らの過剰な期待に促されたものである」と言う。 さらに、「同時にこれらの薬の強引な販売手法が、実証的エビデンスもないにもかかわらず有効性があるような認識を広げた」と付け加える。 そうした意見は他でも聞かれる。 「彼らは実際には安全でないものを安全だと吹聴したのです」と、これまで2冊の精神科薬に関する著作のあるジャーナリスト、ロバート・ウィテカー氏は言う。 「彼らは問題を隠ぺいする必要があった。まさに事の始まりから私たちはこのでっち上げられた話を聞かされていたのです」。 製薬会社側は、起こりうる副作用はすべてFDA、医師、および患者に開示されているとする。 眠気、吐き気、体重増加、不本意な身体の動き、そして糖尿病との関連などが副作用としてラベルに記載されている。 製薬会社は、難しい病気の治療薬として全般的には安全性が記録されている薬であるとし、被害を被ったとする何人かの患者との訴訟問題で争っていると言う。 世界の巨大製薬企業の多くに対して起こされたこれまでの民事、刑事裁判では、こうした強力で高価な薬の販売において、製薬会社の役員が疑わしい販売戦術を使っていたことを示す何百もの極秘書類が公開されている。 そうした書類の分析や裁判での文書から、金銭、食事、旅行費の医師への報酬、バイアスのかかった研究、ゴーストライターによる医学誌への投稿、販売促進会議への出席、および医師に薬剤を支持することを薦める卒後医学教育の費用負担などが、製薬企業のマーケッティング戦略に含まれていたことがすでにわかっている。 これらはすべて、FBI 捜査官が言うところの、「リスクをもみ消し、ベネフィットを誇張してオフラベル使用(適応外処方)を促すために製薬企業が使うツール」なのである。 現在アストラゼネカ社を相手取る訴訟中の弁護士によれば、同社の新薬が糖尿病や体重増加を起こすリスクのあることを会社が隠そうとしていたことを示す書類を入手しているという。 有利な研究を誇大に宣伝し、マイナスになる研究は表面に出さないことを示す文書である。 民事訴訟で明らかにされたアストラゼネカ社の社内メールには、1997年、当時の新しい抗精神病薬であるセロクエルのユーザーが1年で体重が11ポンド増加した事を示す研究結果について、『埋められた (まま)』と部長のメールに表現されている一方で、アストラゼネカ社はセロクエルで体重が減少したとする研究を宣伝していたのである。 また、都合の悪い研究に対して、『実に巧妙なトリック』(まま)を使ったとする社内メールもある。 当時のアストラゼネカ社広報部長、ジョン・トゥマスの1999年のメールには、「もっと大きな問題は、われわれの情報隠しに対して外部から批判の声が上がった時にどう対処するかだ」とも書かれていた。 そして「(薬を売るのに)マイナスになるような研究結果に世間の目を向けない方法をさがすことが必要」とも付け加えている。 「しかし、これはあくまで私の意見だが、隠してしまうのは無理だ」 アストラゼネカ社のスポークスマン、トニー・ジュエルが先週語ったところでは、承認審査の一環としてそうした資料はすべてF.D.A.(米食品医薬品局)に引き渡されており、ここ何年かは常にラベルを更新して最新の安全情報を提供しているとする。 かつては製薬企業数社から収入を得て講演活動をしていたものの、のちに政府に対する情報提供者となり、現在は製薬企業を訴える原告側のコンサルタントを務めるハーバート大卒の精神科医、ステファン P.クルシェフスキー博士。 製薬企業側にいた時代は、抗精神病薬の支持者としてファイザー社、グラクソスミスクライン社のための講演活動が仕事。 製薬企業のどれか一つの薬について個々の医師に話をするだけで、一人につき報奨金1,000ドル以上のオファーがあったと彼は言う。 「私が製薬企業のために講演をするようになったのは1980年代後半から90年代前半ですが、その頃は自分が語るべきだと考える科学的に筋の通った話を自由に話すことができたのです」と、振り返る。 「ところがそれがもはや許されない状況になったのです。 スライドを渡されて、『これを30分間話してくれたら1,000ドル払おう』ときたわけです。 私はこう返しました−「そんなこと言えるわけないだろう。事実じゃないじゃないか」と。 「渡された新しい抗精神病薬のスライドは、神経学的副作用はないと主張するものでした。 すべて製薬企業の作り話だったのですよ」と、クルシェフスキー博士。 「そんな事実はどこにもなかったのですから」 多数の大製薬企業には自由裁量が与えられているため、規制に関しても抗精神病薬は緩やかなルートを見つけることができた。 安全性や有効性が立証されていない症状に対して製薬会社側が薬の使用を働きかけることは禁止されているものの、製薬企業から報酬をもらったコンサルタントや研究者、教育者らが口頭でそれを伝えること、また製薬企業の資金で行われる研究で企業の代弁をすることは許されている。 「医者がそれとなく匂わせる、すると人々がそのエサに飛びつくのです」。そう語るのは、エール大医科大学で精神医学と公衆衛生の教授を務め、製薬企業や連邦機関から研究助成を受けた経験もあるロベルト・ローゼンヘック博士。 「精神障害というものは、いかようにも拡大解釈できるようにあえてあいまいに定義されているのですよ」と、彼は言う。 「ですから、どれだけ多くの全く効果のない治療があっても、みなさんは進んでなんでも試されるわけですね」 医師は、たとえそれが対象とする特定の疾患に対して承認されたものでなくとも、承認された薬でさえあれば、自由に処方することができる。 タフツ大学の精神科准教授、ダニエル J. カーラット博士は、「承認されているわけですから、医師が他に選択肢を思いつかない場合は代替薬となります」と言う。 「それが有効か否か、それは未知数です」 目の前に利益がぶら下がり、あいまいな精神疾患、そして規制上の抜け道…とくれば、そこには商売上の不正行為が必ず起こるとアナリストは言う。 「テーブルの上に多額の現金が積まれ、メンタルヘルスの症状に関しては不確実、一方で血液検査も客観的なテストもない−という、誰でも不正に走る好条件がそろっている」。コロンビア大学精神医学教授であり研究者であるマーク・オルフソン博士はそう語る。 最近の裁判や議会調査で提出された文書は、著名な専門医師が製薬企業から多額の資金援助を受けて抗精神病薬を使用することを拡大していたことを示している。 その最もよく知られる例が、ハーバードの医学部教授でありマサチューセッツ総合病院の研究者でもあるジョゼフ・ビーダマン (Joseph Biederman)である。 児童の双極性障害有病率を調査した彼の研究は、その後の医療基準の拡大を助長し、その結果、双極性障害と診断される子供の数が1994年から2003年までの間に40倍にも増加した。 この数字は2007年、総合精神医学文書に報告されたものである。 また彼は2000年から2007の間に、双極性障害と診断される子供に処方される薬を販売する製薬企業を含む数社から、講演料やコンサルタント料として160万ドル(その一部は大学側に開示されていない)を受け取っていたことが2008年の上院調査からわかっている。 ビーダマン博士が所長を務める研究センターは、2002年から2005年までのあいだにジョンソン・エンド・ジョンソン社から70万ドル以上を受け取っていたことが記録に残っているが、同センターが行った研究のいくつかは、ジョンソン・エンド・ジョンソン社の抗精神病薬リスパダールを支持するものであった。 金に影響を受けたことはなく、自分の研究にはほかの薬を支持したものもあると博士は言う。 本紙の質問に対し、彼の弁護人、ピーター・スピバック(Peter Spivack)氏から木曜日に届いたE-メールには、「ビーダマン博士の研究は、特定の診断や治療を促がすものではない」とある。 スピバック氏は、小児の双極性障害の診断が増加しているのは「ビーダマン博士の研究だけを原因ととらえることはできない」とし、「治療の拡大は子供やその家族を救うためであった」とする。 また、ビーダマン博士が大学側に適切に開示しなかった点については、すっかり忘れてしまっていたとし、不注意によるものとした。 ハーバード大学の広報課によれば、現在も調査中である。 一方、政府が行った調査や原告側の弁護人によると、抗精神病薬にまつわるこうした研究の多くは製薬企業のマーケティング部門が思いついたものであり、ゴーストライターが書いたものに高名な医師がサインをして、医師自らが研究をしたかのように見せかけたものであるという。 そうした慣習は今も続いている。 「内容は事前に決められているのです」。そう語るのは、抗精神病薬研究のメディカルライター(医事文筆家)としての経験を持つある医師。 現在もメディカルライターデータとして働くこの医師が、今後の仕事に差し障りがあるからと、匿名を条件に語ったところによれば、こうした研究データは選択的に使用され、製薬企業の利益に都合よく解釈されているもの。 「レビュー記事や元の研究論文には、最初から宣伝メッセージが入っている」と、医師。 「それが研究プランのひとつですから」。 こうして書かれた論文が医学の多方面に影響力を及ぼす。薬の営業担当者(MR)が論文を医師らに見せて回り、のちに行われる研究はそれを踏まえたものになる。 司法省によれば、立証のない抗精神病薬の使い方に筋の通った医学的に懸念される点があっても、製薬企業はそれを反証するようにMRを教育するという。 例えば、イーライリリー社は空前のベストセラー薬となったジプレキサに糖尿病その他の代謝障害を引き起こす可能性を示すエビデンスが存在しながらも、販売促進用に「糖尿病にまつわる神話」と題したビデオを制作したと同省。 また、イーライリリー社のMRは、夜間に興奮する老人を落ち着かせるためにと、夕方5時にジプレキサを5ミリグラム飲ませる"5 at 5"という投薬計画の普及を働きかけていた。 いつからこうしたキャンペーンが行われていたかについては、イーライリリー社のスポークスマンは明かしていない。 しかし2005年には、それまでの15の研究を分析した結果から、FDA(米食品医薬品局)は、高齢者の痴呆患者をおとなしくさせる目的での抗精神病薬の使用は、心不全や肺炎による死亡リスクを高めるとする公衆衛生勧告を発表。 FDAは製薬企業に対し、パッケージにそのことを特別に警告する文言を加えるように要請した。 精神科医の間で薬のリスクに関する知識が広がるにつれ、製薬企業はこの数年、家庭医、小児科医、そして老人病専門医に対する抗精神病薬の売り込みをますます強めている。 去年、国がファイザー社を訴えた裁判では、成人に対してのみ承認されていた抗精神病薬ジオドンの販促活動が、子供には未承認の段階でありながら、すでに250人以上の児童精神科医に対して行われていたことがわかっている。 処方件数の多い医師は、研究費、講演料、贈答品、食事、視察旅行などの形でリベートをもらっているが、それらのいくつかは政府が明らかに違法な「キックバック」とするものである。 同じくアストラゼネカ社を訴えた裁判で国側が提出した資料には、シカゴの精神科医、マイケル・レインスタインに対し、同社は調査費、旅行費、講演料名目で10年間に50万ドル支払っていたとある。 レインスタイン医師はメディケイド(連邦および州政府の財源で低所得者と身体障害者に入院による治療と医療保険が与えられる)による診療を行いながら、自らを「セロクエル(抗精神病薬)の処方件数にかけては世界でも指折りである」と、アストラゼネカ社に語っていた。 レインスタイン医師とアストラゼネカ社は、ともに容疑を全面否認。 4月には、大製薬企業が国の調査に対して支払った解決金としては過去3年間で4番目となる高額な金額をアストラゼネカ社が支払った。国の調査から、アストラゼネカ社は子供、老人、退役軍人、囚人に対し、数々の違法な販売促進活動を行ったことが判明したとされたこの裁判で支払われた金額は、5億2000万ドルにも上った。 それでも、アストラゼネカ社が1997年から2009年までの間にセロクエルの販売で得た利益、216億ドルのわずか2.4パーセントに過ぎない。 去年、イーライリリー社とファイザー社が支払った金額は、刑事上の罰金としては米国史上最高額となった。 政府との和解金として支払われた14億ドルのうち、リリー社が支払った刑事上の罰金は5億1500万ドル。 その後ファイザー社も和解金23億ドルのうち13億ドルを刑事上の罰金として支払っている。 リリー社のケースでは、抗精神病薬ジプレキサだけが問題にされたのに対し、その他の薬剤も問題とされたファイザー社のケースでは、このうち3億100万ドルが抗精神病薬ジオドンの違法マーケッティングに対する罰金となった。 2007年には抗精神病薬エビリファイの児童精神科医や高齢者福祉施設へのマーケッティングに対する連邦および州による捜査が5億1500万ドルで決着。 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社も、アストラゼネカ社同様、いかなる不正行為も否定した。 ジョンソン・エンド・ジョンソン社は現在司法省が調査しており、同省によると、高齢者福祉施設を顧客に持つ全米最大手薬局のオムニケアに対し、高齢者福祉施設に同社製品であるリスパダールの使用を推奨するようキックバックを支払っていたことが申告書類から判明したとする。 オムニケアは去年11月、民事告訴で9800万ドル支払うことで決着。 ジョンソン・エンド・ジョンソン社は現在も国と係争中で、裁判所に提出された書類には同社がリベートを支払っていたとあるが、それが業界団体である米国研究製薬工業協会によって承認されていたことが問題となっている。 こうした製薬企業の職員のなかには、抗精神病薬をはじめとする製品の不法マーケティングを避けるためにすでに組織全体の変化が図られたとするのもいる。 「それは私たちにとって一つの汚点」と、イーライ・リリー社のジョン C. ラチュライター総務部長は取材に答える。 「二度とあっては欲しくない。再発防止として、インテグリティとコンプライアンスを正しく意図するだけでなく、それをサポートするシステム作りが確実に行える方策も導入しています」とする。 ファイザー社の総務部長ジェフリー・B.キンドラーも同様のことばを口にする。 「二度とありません」 「私は非常に深刻にこのことを受け止めています」と、彼は取材に答えた。 現在、キンドラー氏には、ファイザー社としては3度目となる連邦政府との間で合意され5年間の企業説明責任というのがあり、営業活動の是正、従業員の監視、不正行為の連邦政府への開示が求められている。 1度目の2002年は、リピトールの販売でのリベート支払いを公表しなかったことに対して。 2度目の2004年は、抗発作薬ニューロンチンの不法マーケティングに。 そして今回で3度目となった昨年は、鎮痛剤ベクストラの不法マーケティングであった。 最初の2つの事態はワーナーランバート社とパークデイビス社から引き継いだことによるものであるとファイザー社。 「私たちの社員がやったことではない」と、主任薬事監視指導官兼務のファイザー副社長、ダクラス・ランクラー氏。 保健・福祉省総括監察官のルー・モリス主席法律顧問によれば、こうした製薬企業による違法販売を是正し処罰する政府の取り組みは、今後さらに強化させてゆく考えだ。 取材では、「これまで通りはいかないというメッセージを製薬企業に届けたい」と顧問。 これまで製薬企業の職員が知能犯として罪に問われることはほとんどなかったが、間もなくそうではなくなると彼は言う。 そして、「今われわれがターゲットにしているのは、知るべき立場にあったはずの責任者や幹部職員である」と言う。 製薬企業というのはあまりに巨大で、国の契約企業から締め出すことができない。医薬品を必要とする患者の不利益になるからだとモリス氏は言う。 だが現在、氏によれば、こうした詐欺を行った医療関連企業に対し、その子会社を強制的に売却させる案が話し合われているという。 そして、情報を無視する企業重役には、株主による多数の訴訟に直面するという、更なるリスクが待ち受けることになる。 政府は来年中に少なくとも検察官15名、捜査官100名を増員し、こうした医療詐欺の追求にあたる予定。 2年前、米研究製薬工業協会はにマーケティングに関する行為規範をさらに強化して、医師への贈答、食事を禁止しているが、それでもMRが医師のオフィスに食事を届ける行為は後を絶たない。 政府との和解合意による求めに応じ、コンサルタント料や講演料名目の医師への支払いを開示している製薬企業もある。 また、メディカルライティングや卒後教育の関係者らは、製薬企業による影響の開示、もしくはそれを抑えるための一歩を踏み出している。 しかし現在も虚偽請求取締法に問われた訴訟が1,000件以上も行われ、そのほとんどが医療関連であり、さらにその多くが利益の上がる抗精神病薬に集中する。 この問題一つとっても、製薬産業が問題の多い慣行を是正しているとは言い難いとの批判もある。 「製薬会社のリベートは今でも続いている」と、リリー社とアストラゼネカ社の裁判で内部通報者の代理人を務めた弁護士であるスティーブン A. シラー氏は言う。 “And it’s still easy to market these drugs to doctors who are rushed.” 「いろいろとお忙しいお医者様にこうした薬を売り込むのはさらに簡単なことですからね」 (rush=(麻薬・金などによる) 突然の快感、恍惚感という意味を暗に含む。金・クスリ(麻薬)に舞い上がった精神科医への当てこすり?)
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