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「暴走する警察」から「大人の警察」へ、医療者が働きかけを - 【m3、com 医療維新】より http://www.asyura2.com/09/iryo03/msg/291.html
インタビュー 死因究明の科学的鑑定、アドバイスする体制作りが必要 2010年5月6日 聞き手・橋本佳子(m3.com編集長) “医療事故調”をめぐっては、2008年4月に厚生労働省が“医療事故調”の第三次試案、6月に大綱案を公表したが、民主党はこれらを支持しない方針(『「第三次試案」「大綱案」は、もはや厚労省案にあらず』を参照)。ただ、具体的な検討の場は立ち上がっていない。こうした中、先行して今年1月に発足したのが、警察庁の「犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方に関する研究会」。その委員の一人が、千葉大学法医学教授の岩瀬博太郎氏だ。
「司法解剖、法医学者をめぐる環境は厳しい。国は一刻も早く死因究明の体制を検討すべき」と語る、岩瀬博太郎氏。 会議は非公開で行われています。これまで3回(4月16日に4回目の会議を開催)開催され、関係者へのヒアリングなどを行いましたが、現時点では研究会の方向性は見えず、まだ手探りの状況と言えるでしょう。ただ、私の感想ですが、「何とかしなければいけない」という警察庁の意欲は感じています。 ――「何とかしなければいけない」というのは。 「死体三分説」という言葉がありますが、警察は最初の段階では、科学的な検査はせず、状況や外表などで、犯罪死体、変死体、非犯罪死体かを振り分けてきたわけです。この時点で非犯罪死体とされれば、解剖などは行われません。こうしたやり方は以前から疑問視されてきましたが、これまで警察は、「犯罪死の死因究明は適切にやってきた」と言ってきた。ところが、最近になり、「時津風部屋事件」や「パロマ事件」などが起きた。犯罪死かどうかの判断について、今のやり方がおかしいのではないかと警察が思い始めているように見えます。 ――研究会の名称は、「犯罪死」ですが、診療関連死との関連はどうなるのでしょうか。 診療関連死の問題には特に踏み込まないという方向性のようです。私の印象ですが、“医療事故調”ができたり、病院内における調査が推進されるような制度ができても、それに合わせることが可能なように配慮してるのかと思っています。 ――診療関連死については、日本内科学会などによる「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」が今年3月で終了、事業は日本医療安全調査機構『死因究明などを行う「日本医療安全調査機構」が4月に発足』を参照)に引き継がれました。モデル事業をどう評価されていますか。 モデル事業は最初の設計から間違っています。モデル事業の対象となるのは、「遺族が解剖に承諾した事例」のみです。恐らく、死因究明の目的を理解していない、現場感覚がない方が制度を設計したのでしょう。死因究明に当たっては、医療者および遺族という「当事者」から独立した第三者が、強制力を持って解剖の要否を判断する仕組みにしないと意味がありません。例えば、医療事故が生じた場合、まず解剖を行い、徹底的に死因を究明することが必要です。そうしなければ、医療事故などで、実際には正しい行為をした医療者が「加害者」として疑われる場合、その正当性を証明する機会を逸することにもなりかねません。 またモデル事業は、解剖には法医、病理医、臨床医の3人が担当することが求められるなど、医師不足の中、体制的にも無理があります。 さらに事件性のある死亡などを切り離して、診療関連死だけを対象にしているという問題もあります。 ――診療関連死を切り離すか否かについては、議論が分かれるところです。 そもそも診療関連死だけを最初から区別することが可能なのでしょうか。例えば、糖尿病性昏睡で救急搬送され死亡した場合、病死と言い切れるのか。「家族がインスリンを打たなかった」可能性はないのか。くも膜下出血を来して死亡した場合でも、頭部を殴られた可能性があるなど、一見すれば病死だと思える場合でも、事件が隠れている場合があります。 先進諸国を見ても、死因不明な死体を、入り口の部分で診療関連死か否かを分けている国はありません。まず解剖等を行い、様々な観点から死因を検討する。犯罪性があるか否かの検討はその後のことです。 ただし、医療現場における死因不明例については、医師・患者間の信頼関係が構築できているか否かで分けて考える必要があるでしょう。 ――死因不明の場合でも、信頼関係の有無で対応が違うということですか。 患者の死亡原因が不明の場合、良好な医師・患者関係が維持できていれば、まず院内で死因の検討を行う。必要に応じて病理解剖する。それで解決すればいいわけです。ただ問題なのは、院内でこうした死因究明を行う場合、その費用は病院の持ち出しである点です。厚労省は、“医療事故調”関連の予算を付けるなら、まずは院内の死因究明、医療安全の体制に対して報酬を付けるべきでしょう。 院内調査でも死因が不明だったり、遺族の納得が得られないなどの場合は、第三者機関に届け出て、死因究明を行う。 ――その第三者機関では、診療関連死か否かを問わず扱うということですか。 日本において、医療者が、診療関連死を他の事故死等と切り離したいと考えるのは、警察の医療への介入を排除したいとの考えからでしょう。確かに警察にも、解剖、画像診断、薬物検査、DNA鑑定などの科学的鑑定を軽く見る一方、自白を強要し、それを重視するなどの問題があります。だから、警察への不信感、抵抗感がある。しかし、法治国家である以上、警察を排除することはできません。したがって、「暴走の恐れがある警察をどう変容させるか」という発想に切り替えることが必要です。 ――具体的にはどうすればいいのでしょうか。 司法に対して、科学的な鑑定、アドバイスをする体制の確立、それを担う科学者の養成を進めるべきです。言い換えれば、こうした体制が構築できるか、医療者側が問われているとも言えます。 同時に警察の側の改革も必要。医療分野では、「To error is human」という言葉がありますが、これは警察にも当てはまることです。警察も間違えることがあります。間違いを防ぐために、科学的鑑定を重視する。また例えば司法解剖の結果などをできるだけ情報を公開する。遺族にも説明する。医療事故で遺族が告訴することがあります。遺族は警察に解決を期待するわけですが、警察の捜査状況が分からず、遺族の不信感、不満はかえって高まるという悪循環が生じかねません。私は、警察に捜査過程で遺族への説明を求めたことがありますが、それで遺族が納得した例もあります。 故意犯と過失犯は違います。故意犯の場合の情報開示は難しいですが、過失犯の場合、本人は何をしたのか、自覚していない。警察が情報を開示することで、医療者あるいは患者の理解、納得が得られ、医療者に問題がある場合には謝罪するなどすれば、医療事故の不要な刑事事件化を避けられるのではないかと考えています。私は、警察庁の研究会でも、警察の情報開示の重要性を主張していきたいと思います。 こうした「大人の司法」になったところで、診療関連死を交えた議論が可能になるのではないでしょうか。 ――その辺りをもう少し詳しくお教えください。 医療事故に関連した「医師のストレス」をなくすには、(1)医療事故を起こさない、(2)事故が起きても発覚させない、あるいは警察を排除する、(3)司法を適正化する、の3つの選択肢がありますが、(1)と(2)は無理でしょう。 先ほども言いましたが、日本が法治国家である以上、「警察の医療への介入を排除する」ことはできない。排除したいと考えるのは今の警察に抵抗感があるためで、だったら警察、司法の適正化を働きかけ、死因究明の体制を検討する。「大人の司法」になれば、医療者も警察の排除などとは言わなくなるでしょう。 死因究明に関する議論はなかなか進んでいないのが現状です。しかし、法医学者が置かれている環境は厳しく、「明日にでも辞めたい」と考える人は多い。現状の維持すらままならなくなっており、国には早急に死因究明の体制を検討してほしいと思っています。
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