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MRICメルマガから転載
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▽ 事業仕分けへの疑問 ▽
城西大学経営学部
准教授 伊関友伸(行政学)
2009年11月25日 MRIC by 医療ガバナンス学会 http://medg.jp
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現在、行政刷新会議により事業仕分けが行われて、世の中の関心を集めている。筆者は、一部で懸念が示されているように、財務省主導の予算削減の結論ありきの非常に乱暴な政治ショーと感じている。
筆者は、地域医療や自治体病院の経営を中心に研究しているが、以前は、行政評価を研究していた。
行政の質を高めるためには、外部の人間が入り、評価を行うことも必要だ。しかし、外部の人間は、具体的な行政の活動について持っている情報は少ない。
評価という作業は、価値的な作業だ。評価を出来るだけ客観化して数値で表すために、政策の実現による便益を金銭化し、費用と対比して評価する方法(費用便益分析)やその価値を守るためにお金をどれだけ支払って構わないかを金額で評価する方法(仮想評法)などもある。
しかし、全ての行政活動を絶対的に評価する手法はなく、限界がある。絶対的な評価の基準がない中での外部者の評価は、「コストに対する事業効果が出ていない」という決めつけがしやすい。その結果、事業を廃止や予算削減をすべきという結論につながりやすい。
そして、単に「予算削減」をするだけでは、問題の本質的な解決につながらない。問題の本質的な解決のためには、担当者と外部者の議論の中で、問題が起きている本質を深く掘り下げることが必要となる。
特に、診療報酬のあり方というテーマは、一国の社会保障のあり方を議論するもので、様々な要因を複合的に議論すべきであり、予算の支出が少なければ少ないほど良いというわけではない。
今回の事業仕分けの場合、資料が財務省から出され、非常に少ない時間で、悪者=事業を行う官僚、正義の味方=仕分け人という舞台設定の中で、一方的に仕分け人が官僚を叩き、必要な予算まで削減するという構図になっている。
これでは、具体的な事業を行う官僚から、根本的な問題解決の情報が出ることはなく、議論が深まることはない。
実際、今回の事業仕分けでは、「診療報酬の配分」に関し、勤務医と開業医、あるいは診療科間の給与格差を平準化すべきで、「見直し」をすべきとされた。
「医師確保、救急・周産期医療対策の補助金等」についても予算要求の縮減を支持する意見が多数を占め、2010年度予算要求額が半額に縮減された。
財務省は、事業仕分けの結果を踏まえ、今回の診療報酬改定で、診療報酬本体のマイナス改定を求めるようだ。
現場を回れば、開業医も、多くは自民党政権時代の医療費抑制政策の影響で、収入は落ちている。
開業医を悪者にして、大幅に診療報酬を下げれば、最初に、地方の高齢化している開業医が廃業して、地域医療が崩壊するリスクがある。
そういうリスクを想定して、事業仕分けの議論は行われていない。全国各地で医療崩壊が進む中で、本当に、このようなやり方で政策が決定されていくのが良いのか疑問にう。
事業仕分けに見られるように、財政削減第一で、官僚=悪と決めつけ、劇場型で相手を否定するやり方は小泉政権の手法と全く同じである。
「医療費=悪」、「医師=もうけすぎで悪」と悪者を作り、行きすぎた医療予算の削減が行われ、日本の地域医療を崩壊させたことが、また繰り返される危険性が高いように思われる。
このようなやり方がまかりとおるのであれば、「民主党=ネオ小泉政権」と言わざるをえない。
予算のあり方について、公開の場で議論することはあってよい。
しかし、その場合、実際の政策の現場に入って、関係者の話をよく聞き、具体的なデータに基づいて議論を行うことが必要と考える。その場合、議論を掘り下げるために、必要以上に対立を全面に出さず、議論の当事者間の信頼関係と問題の本質を探る深い議論が必要と考える。
今回の国の事業仕分けは、そのようなものから一番遠いところにある。
事業仕分けの手法以上に気になるのが、事業仕分けに喝采を送る多くの国民の姿勢である。
多くの国民が、日本の医療の問題について「人任せ」であり、負担をしたくないから、悪者(今回の事業仕分けの場合の開業医や特定の診療科)を仕立て上げ、そこにしわ寄せを行う民主党政権の事業仕分けを良しとしているのではないか。
事業仕分けで議論されている医療費の抑制の方向性に対して、国民(医師不足に悩む地域の人たちも含め)からの批判は少ない。
そして、何よりも、国民の「人任せ」の姿勢が、現場で献身的に働いておられる医師の方々の心を折ることを心配している。このような全て「人任せ」の国民ばかりの国で、疲弊した医療が果たして再生できるのであろうか。
筆者は、これからの日本の医療の先行きに深い憂慮を感じている。
伊関友伸のブログ
民主党政権の「事業仕分け」への疑問
http://iseki77.blog65.fc2.com/blog-entry-7164.html
民主党政権=ネオ小泉政権か?
http://iseki77.blog65.fc2.com/blog-entry-7165.html
民主党の医療政策の問題点
http://iseki77.blog65.fc2.com/blog-entry-7167.html
事業仕分けと国民の意識
http://iseki77.blog65.fc2.com/blog-entry-7168.html
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