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http://lohasmedical.jp/news/2009/11/20103125.php
ロハスメディカルから転載
診療報酬は破綻している 〜『現場協議会より』
川口恭 (2009年11月20日 10:31)
7日の『現場からの医療改革推進協議会』。昨日ご紹介した松田学氏の講演の前に行われた亀田隆明・鉄蕉会理事長の講演もご紹介しておく。非常に刺激的で、この2つを受けたディスカッションも面白かったので別途ご紹介する予定だ。(川口恭)
時間もあまりないので、診療報酬を中心とした現在の日本の医療はどうなっているのか、どういう問題があるのかという一点だけ話をしたい。
連合のHPを見てみると「労働を中心とする福祉型社会」と書いてある。これを我々はめざしている。
どういうものかと言うと、公正な賃金、労働時間、均等待遇など社会的基準を張り巡らせる。労災や失業、疾病などこういうセーフティーネットが組み込まれて、男女も対等な形で構成員として活躍できる機会を確保する。そして、働くものが正当に報われ、自らの仕事に誇りを持って、次の世代に受け継いでいけるような社会。仕事と生活の調和がとれた、仕事と生活の調和がとれた自らの人生観を大事にできる社会。これをめざしたいということ。そのために一つだけやらなければいけないのは、まず「同一労働、同一賃金」。これが必要。
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さて、7ヵ所ある千葉県立病院の医療収益は270億円、医業費用は370億円。100億円の赤字。赤字比率が何と37.9%。千葉県は過疎地帯がたくさんあるから、きっと赤字なのだろうと東京都を見る。東京都の診療報酬収入は954億円、医業費用は1,380億円で、何と426億円、つまり 44.7%の赤字がある。
これを見ればすぐに分かるように、診療報酬を30%上げても千葉県立病院も都立病院も黒字転換しない。つまり、3割診療報酬を上げて成り立たないというのは診療報酬制度はもうすでに破綻をしている。これをぜひ皆さんに理解をしていただきたい。
これが現状。皆さんHPを見ればどこからでも見られる。これが日本の診療報酬制度の現状だということをまず頭に入れていただきたい。新聞やメディアの方たちに申し上げたいが、千葉県は赤字だけど、東京都は黒字だという見出しが出る。
たしかに一番下の全体収支というところは、千葉県ではあまり税金がたくさん突っ込めないので、93億3,200万円を突っ込んで18億円の赤字と新聞は報道する。東京都はお金持ちだから419億円の我々の税金を投入するので、都立病院は5億8,000万円の黒字と、これだけを書く。全くこれは違う。
現実には、例えば民間病院なら3ヵ月もたない。1ヵ月で潰れる数字。これが現状。
ただ、なぜか多くの人は公立病院は、不採算医療をやるから仕方ないのだと思ってあきらめる。本当にそうなのかどうかは、また後で話をするとして、まず県立病院だとか自治体病院は給料を公務員体系でやっている。公務員給というのは、基本的には一般の事業会社というものを参考にしてごく普通の体系になっているはず。それをそのまま当てはめた時には、先程のような結果になるということだ。
それでは、どうやって民間はやっているのかというと、先程のあれをパッと計算してみれば分かる。例えば30何%の赤字で、医療収益の中で人件費比率を60%と考えてみれば、給料を半額にするとちょうど30%がなくなる。皆さんの給料を半額にすれば何とかやれるかもしれない診療報酬制度だ。
公立病院は不採算医療ばかりやっていて、だから経営が悪いのかという話に戻す。どういうものを不採算医療、どういうものを公的な医療と言うのか。非常に簡単。基幹病院の定義を明確に書いたものはないけれど、たとえば警察署がやる役割、消防署がやる役割のように、病院がやらなければならない本当に公的な役割といったら、「4疾病」「5事業」の中でも、特に救急、それから入院も含めて小児の医療、周産期をきちんとやっているところを公的な病院と言う。
公立病院と公的な病院は全く違う意味だということをこれからお話しする。公的な医療は、病院が公立か民間かということは全く関係ない。
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例を出す。千葉県というのは右の点線が過疎地帯。この広い面積で人口は100万人程度。左側は過密地帯で、この小さなところで500万人位の人口がいる。この過疎地帯の広いところに黒丸の公立病院が10何カ所ある。
いっぱい黒丸がある。しかし、先程申し上げた救急とかお産とか小児とか、そういう公的な医療をやっているのは、何と旭と亀田しかない。あと公立病院は実は救急、小児、お産ゼロ。全部でゼロ。ここにどれだけの我々の税金が投入されているのか。
つまり、公立病院が公的不採算医療を担っているので赤字になるという理論は成り立たない。もちろんそういう部分もゼロではないが、決してそういうことばかりではないということは分かると思う。
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一方で、これが私のちょっと作った資料。最近ちょこちょこ出てきているが、職種別の給与。各項目3つあるデータの中で一番上が自治体病院。面白いのは、自治体病院の場合は看護師の給料が、一番下の民間病院よりも90万円位高いのだが、准看護師を見るとさらに看護師よりも100万円位高い。さらに、事務員を見るともっと高い。
これはどういう順番に高くなっているのか、すぐ分かる。理由は簡単。医師はちょっとおいておくとして、非常にシンプルで公務員給なので、誰が一番長くいたかが分かる。つまり、誰が一番楽か。楽な順に給料は高くなる。つまり、どんなにあれでも看護師はもちろん最初の給料は一番高い。給与体系も一番高い。でも、忙しい。三交代で、何を言ったってやはり大変なので、長く勤められない。したがって給料は安い。ゆっくり構えていれば長く勤められる。したがって、給料も一番上がる。それで、先程みたいな形になっていくわけだ。
そして、日本のいろんなことを考える時に、日本の特殊性をもう一つこれだけは皆さんに分かってもらいたい。ヨーロッパと比べる、アメリカと比べる、どこと比べると色々な評論をする人がいる。混合診療の話も出てくる。キャピタルコストの話も、この後の議論で出ると思う。
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その時に、これだけ分かっていてほしい。日本が世界でとびきり違うところは、日本の病院のほぼ7割が民間病院ということ。しかも、日本のトータルの救急患者受け入れの過半数が実は民間病院。その民間病院には、一般会計からの繰り入れはゼロ。それで何とかこの安い医療費をキープしているのが実態。これを公的医療に変えたら医療費は倍になる。
最後にどうしてほしいか述べる。まず「労働を中心とする福祉型社会」というのを、病院で考えてみると、地域の基幹病院において、自民党政権下では、ハッキリ言うと補助金頼りの病院経営とか要するにバラマキで時々こうやって飴玉を与える形で何とかごまかしごまかしやってきた。このへんてこりんなことから、適正な診療報酬による病院経営への転換が絶対必要であると思う。
民主党のマニフェストが謳っているように、地域医療を守る基幹病院の入院については、診療報酬の大幅な増額を一刻も早く行う必要がある。そうでないと、我々も来年潰れてしまうのでぜひお願いをしたい。
我々は難しいことを言ってないし、大金持ちになろうと誰も思っていない。めざしているのは「労働を中心とする福祉型社会」だ。