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ロハスメディカルから転載
http://lohasmedical.jp/news/2009/11/08132221.php?page=1
「誘導するデータを厚労省は出してはいかん」 ─ 実調めぐり火花
新井裕充 (2009年11月 8日 13:22)
「誘導するようなデータを厚生労働省は出してはいかん」「回収のバイアスがあるのではないかというのが我々の印象」─。新体制の中医協で、厚労省が劣勢に追い込まれている。窮地を救うのは、診療側の西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)か、それとも邉見公雄委員(全国公私病院連盟副会長)だろうか。(新井裕充)
2010年度の診療報酬改定に向けて厚労省は11月6日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)の基本問題小委員会を開催した。
周産期・救急医療に関するヒアリングでは、医療現場の疲弊を訴える声が相次いだ。午前9時の開始から約2時間半が経過して、ようやく同日のメーンテーマである「初・再診料」の審議に入った。
「初・再診料」は、病院と診療所の配分をめぐる議論の核心部分であるため、新体制の中医協がどのような議論を展開するかが注目された。厚労省は、病院勤務医と開業医の平均給与などを盛り込んだ「医療経済実態調査」(実調)を10月30日の中医協で提示。翌日の新聞には、「開業医の年収、勤務医の 1.7倍」などの見出しが躍った。
厚労省と支払側委員、さらに遠藤会長は「勤務医の負担軽減」や「病診格差の是正」を進めるため同調査のデータを診療報酬改定の基礎資料にしたい意向だが、開業医を中心に組織する日本医師会(唐澤祥人会長)は同調査データを利用することに強く反対している。しかし、中医協委員の改選で日医執行部が外れた。
このため、次期改定に向けた初・再診料の審議は実調のデータを前提に進むかに思えたが、新任の嘉山孝正委員(山形大学医学部長)、安達秀樹委員(京都府医師会副会長)が同調査を激しく批判、次回以降に改めて審議することでひとまず"初戦"を終えた。
■ 注目される西澤委員のスタンス
嘉山委員が提出した資料は、日医の「診療所開設者の年収に関する調査結果(2006年分)の抜粋。これは、開業医(個人)の年収が病院勤務医の2 倍であると指摘した財政審(財政制度等審議会)に反論する内容で、「開業医(個人)は収支差額の中から、退職金相当額を留保し、社会保険料、事業にかかわる税金を支払い、借入金の返済も行う。仮に比較するとしても、『手取り年収』で比較すべきである」としている。
嘉山委員は、「国民に正しい情報を提示して議論するのが中医協」と指摘した上で、「厚生労働省は(社会保険料や税金など)こういうものを含めた実態を出していただきたい。こういうことを前提にして、今日の初診料・再診料の議論をするのがいいのではないか」と主張、安達委員もこれに続いた。
従来、こうした資料は日医執行部の委員が提出するのが常だった。嘉山委員が提出した背景には、「パイの奪い合い」によって診療側が分裂することを避けようとした狙いがあるとみられる。新体制の中医協はまだ3回目を迎えたばかりだが、新委員の足並みは揃い始めたといえようか。しかし、新委員と距離を置いているのが西澤・邉見の日病協コンビ。彼らは厚労省と密接につながっているため、今後の動向が興味深い。
11の病院団体でつくる「日本病院団体協議会」(日病協、小山信彌議長)は、団体推薦制が廃止された06年の中医協改革を受け、厚労省と意見調整をするためにつくられた団体。日病協がクビを縦に振れば、「病院団体が賛成した」というお墨付きを得ることができるので、厚労省にとって便利な存在といえるが、「医療安全調査委員会」の設置をめぐる議論では内部で意見が割れた。
来年度の診療報酬改定に向けて日病協は、「入院基本料の引き上げ」など病院団体がすべて賛成できるような"最大公約数"の要望にとどまることが予想されるが、もし、診療報酬の抜本的な見直しにかかわるような大胆な提案が新委員から提案された場合、果たしてどうするか。
西澤委員と邉見委員は今回の中医協人事で外される可能性が高かったが、医療課の強い粘りで巻き返したとの声もある。両者の中医協での発言を聴く限り、邉見委員は新委員と付かず離れず、医療課とも良好な関係を保てる位置をうまくキープしている。
一方、西澤委員は半ば黙秘を決め込んでいる。今後、安達委員が開業医(日医)の立場を代弁し、嘉山委員が特定機能病院(大学病院)の立場で主張した場合、中小病院の意見を誰が代弁するのだろうか。
現在、その役割を新任の鈴木邦彦委員(茨城県医師会理事、日本医療法人協会副会長)が担っており、西澤委員の存在感は薄い。安達・嘉山両委員が攻めの姿勢を見せる中、西澤委員の立ち位置が注目される。
この日、嘉山・安達両委員の追及に対し、支払側の白川修二委員(健保連常務理事)が「診療側の意見はこれだけか」と質問、診療側の切り崩しに入った。これに対し、西澤委員は「2号(診療)側全体で統一はなかなか難しいので、『それぞれ』ということになります」と回答した。
厚労省が中小病院の切り捨てを進める中、全日本病院協会は医療課の支援に回るか、それとも中小病院の存続を守ることができるか─。
■ 「実態と離れている」 ─ 嘉山委員
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
(約10分間の休憩後)はい、それでは委員の皆様、お揃いですので、引き続き(基本問題小委員会の)審議に移りたいと思います。「再診料について」を議題といたします。嘉山委員から関連資料が提出されているので、嘉山委員から説明をお願いしたいと思います。
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
前回(11月4日)、申し上げましたが、国民に正しい情報を提示して議論するのがこの中医協だと思っています。前回、厚生労働省から出てきた(医療経済実態調査の)開業医の先生方の所得についてです。
翌日、日本経済新聞社から「(開業医の年収、勤務医の)1.7倍」という見出しで出ていましたが、あのようなこと(調査)でいろいろな議論をしても、実態と離れている。
▼ 日経の報道では、「開業医の平均月給(2009年6月時点)は208万円で前回調査(07年6月時点)からほぼ横ばい。病院勤務医は 123万円で4.5%増えた」としている。「123万円」という数字は、「医療経済実態調査」の一般病院(集計1)のデータ(区分・全体)で、「208万円」は一般診療所(集計2)のデータ(区分・全体)を使用したものと思われる。
これ(資料)は日本医師会が作ったデータですが、これはもっともなことだと思っています。この表にありますように、(開業医40歳〜44歳の年収)は、退職金とか社会保険料とか税金とか借入金とか、そういうものが引かれていない金額が厚生労働省で出しているので、ちょっと誤解を生むのではないかと思います。
▼ 社会保険料や税金などを除いた「手取り年収」で比較すると、勤務医(40〜44歳)は970万円、開業医(同)1270万円としている。
この会で(年収データを)出すのであれば、厚生労働省としては、(社会保険料や税金など)こういうものを含めた実態を出していただきたいということで、これを出させていただきました。こういうことを前提にして、今日の初診料・再診料の議論をするのがいいのではないかと思って、会長の許可を得て出させていただきました。以上です。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
はい、ありがとうございました。従来より、個人の診療所についての収入、所得の問題というのは、まあ、こういうことが随分議論になっている。今回、そういうことで、診療所につきましても、医療法人を別枠で取ったという経緯があるということだけを申し伝えておきたいと思います。
▼ 医療経済フォーラム・ジャパンが10月10日に開催した公開シンポジウム「診療報酬改定の方向性」で、遠藤会長は「医療法人の診療所と病院を比較すれば診療所と病院の収支率の差が明らかになる」と述べた。詳しくは、こちらを参照)
はい、白川委員、どうぞ。
[白川修二委員(健保連常務理事)]
嘉山委員からの資料を昨日頂戴いたしましたけれども、これは2年前に日本医師会がまとめた資料の一部と理解しております。質問したかったのは......。
この数字自体は日本医師会の発表でございますので、それはいいんですが......。先日発表されました「医療経済実態調査」についての診療側の見解は、これとは別に出ると考えてよろしいですか?
▼ 嘉山委員が日医の主張を代弁したので疑問に思ったのだろう。日病協の2人も足並みを揃えて診療側がまとまったとしたら支払側としてはやりにくいが、まさかそうは思っていないはず。
[安達秀樹委員(京都府医師会副会長)]
会長......(挙手)
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
はい、嘉山......、安達委員、どうぞ。
■ 「日医としては勤務医の給与が低いと思っている」 ─ 安達委員
[安達秀樹委員(京都府医師会副会長)]
嘉山委員と同じ趣旨ですが、今の白川委員のご質問もございますので、時間が押しておりますがほんのしばらくお時間を頂戴して、その件を申し上げたいと思います。
従来ですと、日本医師会の委員がおりましたけれども、今回はおりません。それで、日本医師会の日医総研をはじめとして分析をしたものを昨日、日本医師会は記者会見で発表しております。
日本医師会の意向としては、病院の先生方皆様にも、日本医師会からお送りさせていただくということでございます。また、政務三役にもお届けをするということでございます。
(医療経済実態調査の分析について)まとめだけ、本当に簡単にご紹介します。
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まとめ (医療経済実態調査の分析・P24)
・ 医療経済実態調査は、一部の医療施設を対象にした非定点調査である。このため、医業収益だけ見ても、全国の実態を表わす「メディアス」の傾向とは大きな乖離がある。医療経済実態調査で経年比較を行うべきではない。
・ 医療経済実態調査は、これまで6 月1 か月分の損益等を調査してきた。費用によっては直近事業年の金額の12 分の1の額を記入するものもあり、経営の実態を正確に示すものとは言えなかった。そこで、日本医師会は改定前後の決算データを調査すべきであると主張してきた。その結果、今回、直近1年分の決算データが調査されるに至った。今後は経年比較を可能にすべく、調査対象医療機関に改定前後2年分の決算データを記入していただくようにすべきである。
・ 日本医師会が「TKC 医業経営指標」をもとに、民間病院781 施設、民間診療所3,705 施設を対象に計算したところ、2008 年度の損益分岐点比率は病院94.4%、診療所95.0%であった。医療経済実態調査においても、損益分岐点比率は一般病院105.2%(医療法人は 96.6%)、診療所93.8%である。病院だけではなく、診療所の経営も危機的状態にある。
・国公立病院は赤字である。地域の中核医療やへき地医療を担うなど、経営困難な状況にあることも事実であるが、一方で、国公立病院の看護職員の給与は民間個人病院の1.2〜1.4 倍、事務職員の給与は1.8〜2.0 倍である。国公立病院においても、民間病院と同じような経営努力は不可欠である。
・医療経済実態調査が発表され、経営者である院長(病院長)と病院勤務医の給与に注目が集まっている。しかし、院長には経営責任があることを考慮すべきである。またこれまで日本医師会が主張してきたように、他の職種等と比べて病院勤務医の給与が低いことに注目すべきである。
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従来から申し上げておりますが、「医療経済実態調査」で経年比較は行えないだろう。(厚労省の)「メディアス」(medias、医療費の動向)とも乖離するだろうというのが1点。
それから、2番目は以前から申し上げておりますが、経年比較をやることが必要であることは言うまでもないので、改定年の前年の1年と後の1年、2年の決算データがあるほうが解析はしやすい。(中略)
日本医師会としては基本的に、「勤務医の皆さんの給与が低いと思っている」ということを申し上げておりますので、およそ24ページになるもの(医療経済実態調査の分析)が、それぞれの委員の元に日本医師会から発送されますので、お目通しを願いたいということを申し上げたいと思います。
そのこととは別にですね、今回、私が地域の医師を代表する委員であるという認識でご選定いただいたと思っておりますので、私自身の見解を別に述べさせていただきたいと思います。
■ 「回収のバイアスがあるのではないか」 ─ 安達委員
[安達秀樹委員(京都府医師会副会長)]
京都府医師会は4700の会員がおります。その半数が加入するメーリングリストを立ち上げております。勤務医の皆さんも入っております。病院との連携メーリングリストもあります。
今度の(日医の)発表につきましては、勤務医の皆さんから特にコメントはありませんでしたが、個人診療所の開設者、いわゆる開業医は非常に多数の書き込みをしました。その論調は、たった1つでございます。「この数字はどこの病院の数字なんだ」と、「どこの個人医療機関の数字なんだ」ということでございます。
つまり、我々が理解している地区医師会あるいは市医師会、府全体で実感している数字に比べると、非常に乖離がある。一言で言うと、非常に(収益が)高い数字だろうという認識があるということでございます。
同じように、私は日本臨床内科医会にも加入しておりまして、「社会保険(部医療・)介護保険委員会」の委員長を務めておりますが、そこのメーリングリストも同様の趣旨でございます。
これは、今回に限ったことではございません。「(医療経済)実態調査」というものの数値と、我々の地域で診療している個人医療機関の医師の実感として感じているものとの間に非常に大きな乖離があるということでございます。「それはなぜか」ということを1点、申し上げます。恐らく、今回の実調(医療経済実態調査)の回収率は50%ぐらいだったはずだと思います。
▼ 「一般病院」は917施設(有効回答率56.6%)、「一般診療所」は1047施設(同44.0%)だった。
個人医療機関というのはさまざまでございます。開設してからの年(数)もありますし、個々の医師の能力等もございますが、一般的に言えば、収益がある程度上がるようになってくると、人件費や薬剤、材料等の購入など、非常に経理内容が複雑になってまいりますので、基本的には年収の多い医療機関の大半は経理処理を税理士さんにお願いしています。
今回(の調査から)新たに分類されました法人医療機関も、一般的に言えば、法人化する医療機関のメリットというのは、収益が高くなっているところの部分でございます。当然、ここも税理士さんに会計処理をお願いしていると思います。
実調(医療経済実態調査)の調査票を頂きましたときに、これを、その助けをなくして個人の医師が診療の合間に書くということは大変な労力でございます。ですから、全体の個人医療機関の収益の中で、比較的に高いものだけが回答の中に入っている。そういう「回収のバイアスがあるのではないか」というのが我々の印象でございます。
ただ、印象だけを申し上げましても、一方にこういう数字が出ている。日本医師会の分析というのは、(実調で)出た数字そのものを受け止めて淡々と分析しているわけですが、それ以前にこういう印象がある。
遠藤先生は以前から、「エビデンスに基づいて議論しよう」とおっしゃっている。ならば、それ(バイアスを排除したデータ)を出す方法はあると思います。事務局(保険局医療課)の方、よろしければメモを取ってください。
■ 「平均値より上にたくさんのプロットが落ちるのでは」 ─ 安達委員
[安達秀樹委員(京都府医師会副会長)]
まずは、(調査)客体にバイアスがかかっているかどうか。客体選定そのものにバイアスがかかっているかどうか。それは、客体に選んだ個人医療機関の月間のレセプト枚数を全部調べていただければ分かると思います。
法定の公的な価格の中で診療をやっておりますので、基本的には個人医療機関の収益というのは、レセプト枚数とほぼ相関いたします。だから、その辺の枚数のグループをどんだけ選んだのか、これがまず、選定の所でのバイアスのかかり具合というものを見る指標になると思います。
2番目です。回答を寄せた個人医療機関のいわゆる総診療報酬、6月単月で結構ですが、1か月の総診療報酬。それを、回答を寄せた医療機関ごとのレセプト枚数で割ってください。そうすると、その医療機関のレセプト1枚当たりの点数が出ます。それを、その個人医療機関のそれぞれの標榜診療科のレセプトの平均点数と比べてください。この平均点数は......。
厚労省の指導要綱の中にある高点数指導としての集団的個別指導で、この医療機関を拾い上げるために、各都道府県で、それぞれの都道府県のそれぞれの診療科の1枚のレセプト当たりの平均点数と比べて高い医療機関を選び出して、その上位8%を指導対象にするということになっているわけですから、旧社会保険事務局、現在は地方厚生局に移管していると思いますが、そこに必ず、データはあります。
これをやっていただきたい理由は1つでありまして、バイアスのかかっている特殊な医療機関は当然、統計から外さないと平均値に影響を与えるということでございます。
何を申し上げているかと言いますと、かなり基幹的な役割をしている医療機関で勤務しておられた先生が、高い診療技術を持って開業される。例えば、重症の潰瘍性大腸炎における血漿交換療法等々でございます。そういう所には、必要な患者さんが集中されますし、その技術点数は高いですから、平均に比べて1枚当たりのレセプトの点数がかなり高くなると思う。統計学的な処理によって中央値から大きく外れるものは統計の処理から除外しないと、「正確な実態調査」と言うならば、正確なデータが出ないだろう。
最後です。3点目でございますが、各都道府県の社会保険(診療報酬支払)基金の審査委員会、国保連合会の審査委員会、ここにはその都道府県の個人医療機関の各診療科の1か月の総請求点数というものがデータとしてあるはずです。それがなければ、「メディアス」(medias、医療費の動向)が作れないと思いますので。
もう一方では、それぞれの審査委員会には、それぞれの個人医療機関の診療科ごとの請求をしてきている医療機関総数も分かるはずでございます。各都道府県の個人医療機関のそれぞれの診療科の総請求点数を、請求をしている医療機関の総数で割ってください。平均が出ます。それと、今回(の実調で)回答した 50%の医療機関の収益とを比べてください。プロットしたときには、平均値より上にたくさんのプロットが落ちるのではないか。
「エビデンスを出す」ということは、そういうことでございます。ここまで本当はやらないと、医療機関経済実態調査というのは、「実態調査」ではないのではないか。なぜ、我々の感覚とこんなにズレるのか。これは、今回だけではございません。ずっと以前からそうでございまして、いわば我々、個人医療機関はもう、半ば諦めているというか、また、この、訳の分からない実態と乖離した数字が出たという印象を持ちながら、この発表を常々眺めているわけでございます。
しかしながら、この数字がこれから、特に今日の初・再診料もそうでしょうが、診療報酬点数の配分を決めるときに大きなベースになる可能性がありますので、そうであれば、どれぐらいのバイアスがかかり、実態はどうなのかということが分かるようなデータにしていただかないと議論できないのではないかと思っています。それが、私の見解でございます。
■ 「2号側全体で統一はなかなか難しい」 ─ 西澤委員
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
はい、ありがとうございます。白川委員のご質問に対して......。まず、「日本医師会として医療経済実態調査を分析した結果なのか」というお話ですが、それは文書にしてお送りするということ......。(白川委員がさえぎる)
[白川修二委員(健保連常務理事)]
いえ、私が質問したのはそうではございませんで、前回までは日本医師会が見解を出しておりましたが、今回は、今日、(嘉山委員から)頂いたこれが、診療側の意見......、「これだけですか」、「これ以降はないんですか」ということを......。(遠藤会長がさえぎる)
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
ですから、ですから、ですから、それについては、先ほど安達委員からご発言があったので、それ以降どうされるかというのはまだ......。つまり、2号(診療)側委員としてどうするのかということについては......。
[安達秀樹委員(京都府医師会副会長)]
日本医師会が、これ(医療経済実態調査の分析)を(支払側委員らに)お送りしますので、後の議論の時にこのデータが必要な場合には、私がこれを使って(意見を)申し上げる場合もございますでしょう。
それとは別に、地域の医師の実感として、今の(検証)データの必要性も申し上げました。それについても、やはり、そういう意見を申し上げさせていただくことになると......。(遠藤会長が割り込む)
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
後者の「代表性」の問題については、ちょっとまたやりますので、まず前半として、白川委員のご説明、つまり、それについてどういうふうに2号(診療)側が対応するのかというご質問でありますので......、西澤委員がまずお手を上げましたので、どうぞ。
[西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)]
(白川)先生あの......、今回の(医療経済実態)調査に対するコメントをどうするかということでよろしいですか?
[白川修二委員(健保連常務理事)]
はい。
[西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)]
2号(診療)側全体で統一はなかなか難しいので、「それぞれ」ということになります。私たちのほうでは、(日本)病院団体(協議会)としてまとめて出すことを予定しております。今、相談中でございます。
▼ 診療側の病院団体枠は、11の病院団体でつくる「日本病院団体協議会」(日病協)の選挙で上位2病院のトップから選出される慣例があるが、今回の中医協人事でこれが廃止されそうになった。関係者の間では、日病協の2人枠を死守した殊勲者は医療課であるとの声がある。中医協人事は「日医執行部外し」で難航したのではなく、実は「日病協外し」が原因だったとの見方もある。このため、「医療課に足を向けて寝ることができない」などと言われる日病協推薦の西澤・邉見両委員が、中医協で厚労行政に逆らう意見を述べることは考えにくい。現在、西澤委員は半ば黙秘を決め込んでいる。
今後、安達秀樹委員(京都府医師会副会長)が開業医(日医)の立場を代弁し、嘉山委員が特定機能病院(大学病院)の立場で主張した場合、中小病院の意見を誰が代弁するかが問題となる。現在のところ、その役割を新任の鈴木邦彦委員(茨城県医師会理事、日本医療法人協会副会長)が担っている。そこで、西澤委員は今後どういうスタンスを取るか。
関係者によると、病院団体の間で合併案が浮上している。最大規模の日本病院会(山本修三会長)は、厚労省との密接な関係を維持して強い影響力を持っているとされるが、幹部の高齢化で機動力が低下するなど会員離れで弱体化。これに対して、民間の中小病院が加盟する全日本病院協会は、西澤会長の"政治力"で勢いを増しているとの見方もある。今年8月現在、日本病院会の会員数は2644病院、全日本病院協会は4月現在で2272病院、日本医療法人協会は同 1293法人。もし、全日本病院協会と日本医療法人協会が合併すれば、国内最大規模の病院団体が誕生する。
今回の中医協人事で、日本医療法人協会は副会長の鈴木委員を送り込むことができた。このため、全日病と合併する必要性は乏しいかもしれない。むしろ、存在感のある鈴木委員によって会員数の増加が期待できるのではないか。今回の中医協人事は、病院団体間のパワーバランスに大きな影響を与えたという側面もある。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
ありがとうございます。渡辺委員、どうぞ。(中略)
▼ 日本歯科医師会で分析した結果を提出するとの回答。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
そういう回答で結構でございますか?
[白川修二委員(健保連常務理事)]
はい、結構でございます。
▼ 満足した様子。1号(支払)側としては、2号(診療)側にまとまってもらっては困るだろう。それにしても、全日本病院協会という団体は、一体誰の利益のために動いているのだろう。厚労省に与すればするほど、中小病院の利益を守れないことは明らかだろう。厚労省は中小病院を減らしたいのだから。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
それで、安達委員から別の提案が出されているわけでして、これについて少し皆さんのご意見をお聞きしたい。「医療経済実態調査」について、前回(ママ)は診療所についても、「医療法人」というものを別途集計することにしたわけですが、安達委員の周辺情報からすると、実態と乖離していると。
しかも、医療法人の場合はどちらかと言うと、収益の多い所が医療法人になっている可能性があるので、「代表性に問題があるのではないか」ということで、代表性を見る上でいくつかチェックをしてほしいという提案が出されたというわけです。
それについて、そういう視点で......、これは今後、事務局(保険局医療課)の作業になるかもしれませんが、そういうことをやる必要があるかないかということについて、お諮りしたいと思います。そういう対応でよろしいですね?
[安達秀樹委員(京都府医師会副会長)]
ありがとうございます。それで結構でございます。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
はい、白川委員、どうぞ。
■ 「誘導するようなデータを出してはいかんよ」 ─ 嘉山委員
[白川修二委員(健保連常務理事)]
あの......、口頭の説明でしたので、私も100%理解しているわけでは......、安達委員がおっしゃっていることをですね、100%理解したわけではなんですけど......。
前回のこの場で申し上げました通り、私どもも「医療経済実態調査」の分析をこの場で説明したいと、我々の考え方もご説明したいというふうに思っておりますので、その席で、ただ今、安達委員がご指摘になったことも含めて......。ちょっと、詳細にもう一度ご説明をいただかないと、よく理解でないもんですから......。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
そうですね、分かりました。あの......、突然の......、あれですので......。
[安達秀樹委員(京都府医師会副会長)]
まず、事務局(保険局医療課)が(メモを)控えてられると思うし、私が申し上げていることは分かっていただけると思いますが、私は地域の医師会のメンバーの皆さんの実態の印象を申し上げました。
しかし、これは印象だけでございます。一方、実調(医療経済実態調査)というのは、きちっと計数処理をしたエビデンスとしてのデータでございます。
それについて、私はまずデータ集積のところでバイアスがっかっている可能性が高いのではないかということをご指摘させていただきました。しかし、これも印象でございます。推論でございます。
ですから、それをエビデンスとして出す方法はあるということを今、ご説明したわけでございますので、これをやっていただければ、私が申し上げたことが合っているのかどうかということが出てまいります。
出てきた数字が違っているんなら、私が申し上げていることが間違っているので、そこの所をはっきりさせていただいたほうがいいということを申し上げたわけでございます。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
よろしいですか?
[白川修二委員(健保連常務理事)]
はい。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
そうしましたらですね......。ただ、少し中身について......、趣旨はよく分かったんですが、中身について十分ちょっと理解できない所がありますので、検証の仕方についてですね......。
ということであれば、一度、「こういう考え方をお持ちだ」ということをお聞きしましたので、どういうことをしたいのかを、問題意識も含めてですね、文書にして提出していただいて、それを審議するという形にしたほうがよろしいような気がいたしますが、いかがですか? ご趣旨は分かりました。
[安達秀樹委員(京都府医師会副会長)]
はい。文書にしたほうがよろしいのであれば、次回でもよろしいでしょうか。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
はい。
[安達秀樹委員(京都府医師会副会長)]
出させていただきます。
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
会長......。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
嘉山委員、どうぞ。
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
私は病院協会とか、そういうのでないので、何を言いたかったのかというとですね、外口(保険)局長が医政局長の時に、医師がまだ......。
皆さん、昨年を思い出してください。昨年の5月まで、日本ではまだ、厚生省は「医者が余っている」と言っていたんですよ。どうしてどういう印象が国民にできたかと言えば、こういうデータに基づいてみんな印象付けられたんですよ。
私が言いたいことは、今日これを出したのは、例えば(開業医の年収に含まれていない)「院長退職引当金」というのは全然書いていないので、これは非常にフェアではない。物事を判断する上で。この協議会がですね、間違った判断を下す可能性があるので、これから佐藤課長には、「ちゃんと判断できるようなきちんとしたデータを出してほしい」という趣旨です。
外口局長が医政局長の時に、厚生労働省から出てきた医師の勤労時間は47時間です。今日、出てきたようなあんな数字は出てきていません。ですから、白川委員もこの辺で、もう頭を切り換えて、自分の損得ではなくて、国民のために実態をちゃんと把握して、それで議論するという姿勢を取っていただきたいと思って、こういうデータを出したんです。中身がうんぬん、ではありません。会長、そこはごt理解願いたいと思います。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
そういうご趣旨だということは分かります。ただ、1点だけ申し上げますと、「医療経済実態調査」の中で、「一般診療所・個人」というのがありまして、その中で損益差額の所ですけれども、注釈の中に、「個人立の一般診療所の損益差額からは、開設者の報酬となる部分以外に、建物、設備について、現存物の価値以上の改善を行うための内部資金に充てられることが考えられる」ということが書かれている。それでは十分ではないということですか。
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
退職金が書いてませんね。退職金は書く必要があると常識的に思うんですが。ですから、「何かモノを誘導するようなデータを厚生労働省は出してはいかんよ」ということを言っているんです。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
これについて、何か1号(支払)側、ご意見ありますか。
[白川修二委員(健保連常務理事)]
じゃ、よろしいですか。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
どうぞ。
[白川修二委員(健保連常務理事)]
別に......、私、この(日医の)資料の中身について意見を言うつもりはございません。これは2年前に日本医師会が、「診療所の開業医と(病院)勤務医の所得差というのは医療経済実態調査ほど開いていないんだよ」と言うときに使った資料と承知しております。
ですから、この中身についてうんぬんするというつもりはございません。いろいろなご意見があるでしょうから、それは機会を見て、病院協会、歯科医師会も資料を出されるということですので、我々としても意見を申し上げたい、こう言っているだけの話なんですが。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
はい......、分かりました。この議論、もう延々と続いてきた議論でありますし、これぐらいにしていただいて、そういう意味で、同じような会計基準を採る医療法人を取ったわけですが、先ほど安達委員から「医療法人は診療所を代表していないのではないか」という趣旨の話があって、その検証を要求されている。こういう道筋ですので。今後の議論にしたいと思います......。はい、渡辺委員、どうぞ。
[渡辺三雄委員(日本歯科医師会常務理事)]
今後、それを行うときにですね、できましたら、これはあくまで平均値だけなんですよね。この分布をですね、特に収支差額等もろもろなんですが、その分布を出していただきますと、本当に平均値が代表しているのかどうかという姿が見えてくると思いますので......。(遠藤会長が発言をさえぎる)
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
分布は出していませんが、中央値については、いくつかの指標については出しています。当然、そういうことが議論になるだろうと思いましたので、中央値も出すように指示してありますので、既に計算はある程度進んでいると思います。いずれ、それも出していただくことになります。
えーと......、それではですね、事務局(保険局医療課)から(初・再診料の)資料が出ていますので、それについてもし説明が必要であれば、簡略にお願いしたいと思います。(以下略)
▼ ダラダラした資料説明への批判を受け、かなり簡潔に説明するようになった。しかし、それでも約10分間の説明が続き、その後、初・再診料の議論に入った。
http://lohasmedical.jp/blog/2009/11/post_2156.php#comments
コメント
統計のおさらい
医師の収入を見るときに、普通に診療を行っている医師の所得を見るのでしたら、平均値も中央値も正しくありません。採用すべきは収入を最高から最低まで並べた時に下位1/4に当たる人の所得です。なぜなら社会資源としての医療を守るために最低水準を保証するという意味合いが強いと考えるからです。平均値はデータが標準分布に乗っていない場合は利用価値が著しく低下します。中央値は期待収入を推測する場合には使えますが、この場合は最頻値の方が適切でしょう。ただ、ここで問題としているのは一般的な医療活動を行って、経済的に苦しい思いをするか否か、あるいは他の職業よりも良かったと思うか否かですので、下位1/4を使うべきです。
医院の院長退職引当金まで考えてくれるのでしたら、閉院時の職員退職金や、閉院後の診療録管理費も考慮してほしいですね。うまく誰かに売りつけられれば良いですが、今後地方では閉院=後継医療機関なしという事態が頻発します。その場合も診療録の保存義務は残りますし、従業員に退職金の割り増しも考えてあげないと・・・。
投稿者:ふじたん | 2009年11月08日 23:52 | 114.146.154.104