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♪ギャッギャギャギャッギャ……
あるマンションの一室。足を踏み入れた瞬間、その不可解な音にハッとした。
音の発信源は、DJのターンテーブル。鳴らしていたのは、フリーターのツバサさん(29歳)だ。奥の部屋では、生後4カ月になる娘が、スヤスヤお昼寝中。さすがに音量は絞っていたが、いつ赤ちゃんが起きてしまうかと、こっちがハラハラし通しだった。
いつか売れっ子のDJになるのが、ツバサさんの夢。もっとも、本音では「無理とは思うが、運良くなれるかも」ぐらいに考えているという。気が向いた日は、ターンテーブルを回してスクラッチの練習。一家の生活は、ウェブデザイナーの妻が支えている。「働きマン」を絵に描いたような、売れっ子のデザイナーだ。
「彼女(妻)には、『家事・育児も含めた“総合点”で、オレが幸せにすっから』って、何度も言ってるんで。彼女も納得してますよ」
いわく、妻は「アバウト(いい加減)な性格」だから、自分のほうが家事や育児に向いている、とのこと。なるほど、レディー・ガガ(米国の女性アーティスト)のヒット曲「テレフォン」を口ずさみながら、哺乳瓶を冷ます姿は、それなりに堂に入っている。子守りスタンスの良し悪しはさておき、互いに納得のうえなら、こういう夫婦もアリだろうなと実感した。
ツバサさんのような、いわゆる「専業主夫」は、まだ数としては多くない。私が取材した、前衛的な「ただトモ夫婦(ただの友達のような夫婦)」の世代(20〜30代)でも、全体の約2%。ただ、妻を「フルタイムの正社員」に絞れば、その割合は20組に1組(約5%)と一気に跳ね上がる(2008年 明治安田生活福祉研究所調べ)。
バリキャリ妻と、専業主夫。その組み合わせは、すでに「超レア」なケースでなくなりつつあるわけだ。いったいいつ頃から、こうした夫婦が増えたのか?
「デートの定番は、地元のイオン」
転機は、やはり1990年代半ば〜後半、バブル崩壊後にあった。
このころの「女性の社会進出」を示すうえで、よくマスコミが例にあげるのは2つだ。
一つは、専業主婦世帯と共働き世帯が逆転、外に出て働く既婚女性のほうが多くなったこと。もう一つは、女性の短大と4年制大学の進学率が逆転し、4大卒が増えたこと。
もちろん、どちらも間違ってはいない。結婚・出産後も仕事を持つ女性、あるいは高学歴な女性が増えたことで、いわゆる「バリキャリ(バリバリ仕事をする)女性」が台頭。その直後、99年に労働者派遣法が改正されたことにより、男性の間にも派遣社員が急増した。
結果として、2000年代には、バリキャリとハケン君の姿が顕著に。これと並行して、男女の未婚化と「夫婦のただトモ化」が進行していったのだろう、と予測がつく。
だがもう一つ、見逃せない事実がある。
それは90年代、男女の付き合いそのものが「ただトモ化」していったことだ。
年代 トレンディーなデートスポット
・レジャー
80年代半ば〜後半 ・ディスコ ・カフェバー
・クルーズパーティー
・プリンスホテル系スキー場
・ウォーターフロント ・プールバー
90年代前半〜半ば ・カラオケボックス ・居酒屋
・シブヤ系 ・スノーボ−ド
・アウトレットモール
90年代半ば〜後半 ・クラブ ・外資系コーヒーショップ
・セレクトショップ ・裏原宿
00年代前半〜半ば ・カフェ ・マンガ喫茶(複合カフェ)
・お台場 ・六本木ヒルズ
・ダーツバー
・ロハス&スローフード
00年代半ば〜後半 ・おうち(自宅) ・駅ナカ、駅チカ
・ゴルフバー ・自転車、エコ
左の表を見てほしい。80年代半ば〜現在までのトレンディなデートスポットや当時の出来事などを一覧にしたものだ。
これを見ると、バブル期の定番だったディスコや高級ホテル、湾岸ドライブといったデートが、90年代の不況期にすっかりすたれ、どんどん格安化、巣ごもり化、オンナ化していった様子が見てとれる。
巣ごもり化でいえば、カラオケボックスやマンガ喫茶、ダーツバー、そしておうち。ご存じのとおり、今や20代男女の最もメジャーなデートスポットは「カレ(またはカノジョ)の家」。65%がそう答える時代だ(2006年 電通調べ)
また、オンナ化の象徴は、カフェやセレクトショップ、駅ナカ・駅チカのブーム。
いずれも小ぢんまりした空間に、センスのよい家具や商品が並び、ほっと癒される空間。男女でドキドキしながら恋の駆け引きを楽しむような場とは、対極にあると言っていい。
「バブル期には考えられなかった“おうちでまったり”も、実は99年ごろからデートの定番だった」。先日、評論家の山田五郎さんはそう教えてくれた。
彼がデートマニュアル「Hot-Dog PRESS」(講談社、現在休刊)の編集長だった99年当時、大学生に「デートで行きたい場所は?」と聞くと、1位こそディズニーランド(シー)だが、2位、3位が回転寿司、あるいは焼肉食べ放題といった、カジュアルすぎるスポットばかりあがってきて、「バブル期とのあまりの違いに驚いた」と山田さん。
私が取材しても、20代の男女はよくこんなことを口にする。
「デートの定番は、地元のイオン(ショッピングセンター)」
「初キスは、イトーヨーカドーの駐車場」
……若いのに、なんと所帯じみたデートだろう!
夫婦でワリカンも当たり前
多少語弊はあるが、どうかお許しいただきたい。
私のようにバブル世代の女性なら、「次のデートは、イオンでね」と言われた時点で、「なに言うの?」「私ってその程度の存在?!」と、確実に腹を立てたに違いない。
でも、今の「ただトモ世代」(20〜30代)の男女にとっては、恋愛中から「まったり」「ほっこり」「ご近所で」が、すでにデートの定番だった。しかも、今の20代は交際中から、6割以上が「ワリカン」派。
結婚したからといって、夫が「オレについて来い!」と突然リーダーシップを発揮することはほとんどない。「土日はどこ行く?」と、高級レストランを予約するケースも少ない。
そうなると、主導権を握るのは、むしろご近所のショッピングセンターや店情報に詳しい妻のほう。夫婦でワリカンも当たり前、その行き先も、もっぱら安く手軽に、ストレスフリーで楽しめるスポットになりがちだ。
もちろん20〜30代の未婚・既婚女性が、「まったりデート」に100%満足しているわけではない。
特に20代の未婚女性が言うのは、こんなセリフ。
「男なら、小さくまとまらずに冒険して欲しい」
「結婚相手は、いざというとき頼りになる、肉食系の男性が一番!」
だが、本当にそうだろうか…?
理想の男性は坂本龍馬だけど結婚は別
09年8月28日に放映された、情報バラエティ『たけしのニッポンのミカタ』(テレビ東京系)。「ニッポン男児」をテーマにしたこの回、私もVTR出演させていただいた。
番組では、若い女性ら1000人に「男らしい、理想の男児(男性)とは誰か?」を聞いていた。このとき、ダントツでトップに輝いたのが、坂本龍馬。
なるほど、と納得しかけた次の瞬間、「えっ?」と驚く回答が相次いだのだ。
それは、「龍馬とは絶対に結婚したくない」。
その理由は、「上から目線でものを言いそう」「いつ家に帰ってくるか分からない」「思いやりがない」「自分勝手」と、一様に酷評ばかり。
あれほど「龍馬が理想」と答えた女性たちが、軒並み「ああいう男性とは、結婚したくない」と言い切ったのだ。
高邁な理想をもった龍馬は、確かにカッコイイ。あんなに情熱的な男性と付き合って、ドキドキワクワク、ときにはハラハラしながら、いろんな刺激を受けて自分も成長したい。いまも若い女性の多くは、頭でそうイメージする。
でも現実には、まして結婚となれば、話は別。
恋人時代から、イオンやおうちで「まったりデート」を繰り返してきた、20〜30代のただトモ世代。
肉食系の龍馬夫に、魅力を感じないわけではない。でも現実には、いつ家に帰るか分からず、家事・育児を手伝ってくれない夫は、やっぱり困る。共働きはもちろん、たとえ専業主婦でも、自分の家での苦労をシェアしてくれない夫は、まっぴらごめん。
だからこそ、彼女たちは「お龍(龍馬の妻)」になりたい、とは思わないのだろう。
真に求めるのは、多少稼ぎが少なくても、家事や育児をシェアしてくれる夫。
そう、専業主夫も含めた「ただトモ夫」たちは、イマドキの女性たち自身が望むべくして生まれた夫像でもあったのだ。
そしてもう一つ、やはり90年代を境に、親や上司との関係もどんどん「ただトモ化」していったのだが…これについては、次回に送ろう。
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