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http://sankei.jp.msn.com/sports/martialarts/100926/mrt1009261801003-n1.htm
9月13日まで東京・国立代々木競技場で行われた柔道の世界選手権で、男子100キロ級の穴井隆将(26)=天理大職=が金メダルを勝ち取った。昨年、念願だった全日本王者の座に就きながら、金メダルを義務づけられた前回世界選手権では銅メダル。今年の全日本選手権でも連覇を逃して3位と、下り坂だった男が地に足をつけた「新エース」へと成長した姿をみせた。練習環境、心模様に加え、新しい家族も授かり、公私ともに充実した中で2年後のロンドン五輪へとひた走る。(榊輝朗)
キレと粘りで頂点へ
穴井は9日、金メダルをかけ、決勝でオランダのヘンク・フロルと激突した。足を前に出して敵に向かう姿勢は衰えず、得意の内またなどで攻め立てた。相手の攻めは巧妙にいなし優勢勝ち。世界の頂点に立った。
喜びはひとしお。畳を降りると、脇目もふらずに篠原信一監督のもとへ駆け寄った。抱きつき、互いにガッチリと手を握り合った。「結果だけを求めていた。厳しい練習の毎日でしたんで、うれしいです」。とびきりの笑顔をふりまいた。
戦いぶりは優勝にふさわしかった。2回戦は相手と組んだ直後、最初の技を決めて一本勝ち。わずか5秒で料理した。ゴールデンスコア方式の延長へもつれた準決勝は、息が上がることもなく冷静に制した。キレと粘りは飛び抜けていた。
前回大会のリベンジ
不本意だった前回の悔しさを晴らしたかった。体重無差別で争う全日本選手権を初めて制した穴井は、「日本一強い男」として優勝を義務づけられる中、準決勝で苦杯をなめた。銅メダル。最終日に登場して敗れたため、史上初の男子金メダル「0」の責任を一身に背負い込んだ。
天理大時代から師と仰ぐ篠原監督の初陣でもあった。「申し訳ない」と自分を責めた。篠原監督が「すべての責任はオレにある。おまえたちは次に結果を残すことだけ考えればいい」と話した姿が逆に重かった。
気持ちがうまく切り替えられず、成績も出なかった。全日本王者で世界ランク1位。国内外を問わず、研究し尽くされる宿命にあった。連覇を期した4月の全日本選手権は、優勝した高橋和彦(新日鉄)に準決勝で敗れ、3位に沈んだ。
練習環境を変えて
5月には拠点を東京に移した。所属の天理大は快く送り出してくれた。篠原監督と密に連絡を取り、必死に練習と向きあった。環境を整え、風向きが変わるのを待った。それでも、5、6月の海外遠征はことごとく優勝を逃してしまった。
体に染みこんだ「負け癖」は簡単に抜けない。気持ちの張りは風前のともしびだった。7月のベラルーシ合宿では「正直言って、代表を降ろしてほしいと思って、監督に話そうと思った」ところまで追い込まれた。
察した篠原監督は一喝したという。「苦しいことをやってきたのは、自分のためやろ。誰のためでもなく自分のためにやれ」。日本のため、監督のため、ファンのため…とふくらんだ思いは、目に見えぬ重圧へと姿を変えていた。自分のための柔道を思いだした。
恩師の激励を背に
そんなやりとりがあっただけに、世界柔道の決勝直前、篠原監督から耳打ちされた言葉は胸に響いた。「練習はお前が一番してきたんや。自信持っていけよ」。苦しい1年を見守ってくれた師の力強い声は、背中をグッと押してくれた。
優勝が決まった直後、穴井と握手した篠原監督は主役の登場を待たずに取材を受けるスペースに姿を見せた。「もう話していいでしょう。去年の悔しさがあって執念で勝った。いいところはなかったけどよく戦った」。喜びを隠さなかった。
先月12日、待望の長男が誕生し、妻と3人家族になった。離れて暮らす愛息の顔は携帯電話の待ち受け画面にし、「弱い父親は見せられない」と決意している。全日本、世界選手権で頂点に立った穴井が残すのは五輪の金メダルだけだ。
2012年ロンドン五輪で金メダルに輝けば、日本で8人目の全日本、世界選手権、五輪の「3冠」を達成する。敗れる恐怖、勝つ喜びを知った1年。自分の柔道で結果を残せば周囲も喜ぶことを体に刻み「心技体すべてでレベルアップしていきたい」と、穴井時代の到来を期す。
◆穴井 隆将(あない・たかまさ) 1984年8月5日生まれ、大分県出身。26歳。5歳で柔道を始め、奈良・天理高時代に世界ジュニア選手権優勝。天理大出、天理大職。昨年は全日本選手権で初優勝を果たし、世界選手権ロッテルダム大会で100キロ級銅メダル。今年は全日本選抜体重別選手権で連覇達成。得意技は内また、大外刈り。187センチ。
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