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2009年01月03日
「学力無担保」選抜と低学力の相関
@ 5割を下回る私大の学力選抜者
今回は入学者選抜における“学力無担保"の選抜法と低学力の進学について考えてみます。前者は受け入れ側の大学、後者は送り側の高校に対する問題提起です。
初めに次ページ掲載の 「平成20年度の選抜法に見る国公私立大別入学者数(比率)」 ならびに 「最近の選抜法に見る大学入学者数(比率)の推移」 から実態を確認してください。
実は最近の中央教育審議会の中間答申や教育再生懇談会で検討されている 「高大接続テスト」 は、低学力の大学入学者を憂慮した緊急対策の一つなのです。表からも分かるように、直近の平成20年度の大学入学者選抜法は@学力中心の一般入試,AAO(アドミッション・オフィス)入試、B推薦入試、Cその他(専門学校・総合学科卒業生入試、帰国子女入試等)の4種類に分類できます。それぞれの選抜法による入学者数(比率)は、国公私立の設置者別で差異はありますが、全体としては一般選抜55.9%、AO入試8.0%、 推薦入試35.4%、その他0.8%となっています。これらのデータで注目したいのは、学力保証に欠ける学力無担保(一部で大学入試センター試験利活用)の推薦入試やAO入試が43.4%を占めていること、特に私立大では一般入試が5O%を割り、逆に推薦とAO入試が50%台に突入している点です。しかもこれらの推移が平成12年度以降のデータからも分かるようにかなり加速化していることです。
まずは大学教育崩壊にも連動しかねない、この憂慮すべき選抜実態を看過できません。
A 大学教育に機能不全の低学力進学
一方で黙認できないのは、“ゆとり選抜"による低学力層の進学です。
大学側の“学力無担保選抜”が低学力進学を助長している点については否定できませんが、問題は進学者の多くに指摘されている入学前の学力不足です。最近の大学カリキュラムには、十数年前にはほとんどシステム化されていなかった正規の補習授業(リメディアル、平成18年度実施約61%)や初年次教育(18年度実施約71%)が組まれたり、さらに修業年限別大学卒業率の低下傾向からも推測されます。これは明らかに学力保証欠落の選抜法と、それに甘んじる受験側の進学意識の低下や学力軽視の結果にほかなりません。“学力接続"に見られる機能不全の解消こそ、大学・高校間で解決すべき喫緊の課題です。
合格実績をあげる安易な進学指導が、やがては本人はもとより大学教育に大きな墓穴を掘ることになるこの現実を直視しなくてはなりません。多様化するAOや推薦選抜の拡大策に便乗した、いわゆる競売的“アドミッション・オークション"に惑わされないことです。
やがて大学にも、質的検証のための“大学版PISA"とよばれるOECDによる高等教育学習成果アセスメントの実施が予定されています。おそらくこの点に大学も留意し、入学者選抜法の“チェンジ"に踏み切ることは必至です。この学力到達度チェックを見越した大学は今、高大接続の名の下にさまざまな連携を模索しているのです。
B “魑魅魍魎"はいつまで跋扈する?
実は先日、ある進学研究会の席上で、注目の高校・大学連携(コラボレーション)の乖離を実証するような事例を耳にしました。その危惧すべき内容の一部を紹介します。
大学側のケース: 「こんなことさえ理解できないのか、出身高校はどこかね。君は推薦組かい。もう高校へ戻って基礎から勉強し直すんだな。推薦した先生に来てもらうよ。」
これを卒業生から聞いた高校側のケース: 「入学許可をくれたのは大学だよ。あの大学は学力に配慮した授業やリメディアル授業で支援するから心配無用って約束していたのに。大学の責任転嫁もひどいな。」
ここではあえて高校側への警鐘例としてオープンにしますが、この両者間の齟齬と当該進学者の複雑な心境に対し、進学指導の高校サイドではいったいどのように受け止められるのか。率直な声をお聞きしたいものです。
大学進学のユニバーサル化時代に突入した今、進路指導にとっては一過性の受験指導から入学後の学力を視野にいれた進学支援に留意すべきでしょう。そして大学側には、学びと学力担保のための選抜色を早急に見直すことを提案したいものです。それにしても、学力無担保の選抜法と低学力の進学を漸増させる“魑魅魍魎"は、いったいいつまで受験界に跋扈し続けるのでしょうか。
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