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■数万台が数年で部品切れへ
「エレベーターに『2012年問題』があると聞きました。古い機種で、そのころに部品がなくなってしまうということです。部品がなくなると、どうなるのでしょうか」=東京都港区のマンション管理組合理事長、斎藤明子さん
[フォト]お天気キャスターが「エレベーターガール」に http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/entertainment/celebrity/417108/
h■基幹装置で供給停止
ここ数年、エレベーター製造メーカーが、製造中止からおおむね25年以上経過した機種について「保守部品の供給を停止する」と相次ぎ発表している。供給を止めるとした期限は2012(平成24)年が多く、今年9月に迫っている機種もある。
供給が止まるのは、発電機やモーターなど基幹装置の部品。故障すればエレベーターは使えなくなるが、供給停止で修理の手立てがなくなってしまうわけだ。
「日本エレベータ協会」によると、国内のエレベーター台数は約66万台。把握できない分を含めると70万台を超えるとみられる。供給停止の対象台数は明確でないが、数万台程度が、今後数年で部品切れに陥るようだ。
「製造中止から長い期間が過ぎ、必要な機材や設備、技術者の確保も困難。供給継続は限界に達した」
業界最大手で、最初に供給停止を表明した三菱電機と系列の保守会社、三菱電機ビルテクノサービスは、そう説明する。
各メーカーや系列保守会社は、供給停止を機に、エレベーターをリニューアルするよう、顧客であるビルのオーナーやマンション管理組合などに呼びかけている。
「顧客側が部品切れ後も使用を続ける場合、保守契約を打ち切る」という方針を打ち出しているのは三菱ビルテクノ。「苦渋の決断だが、安全が第一。重要部品が入手できない状態で、無責任な契約はできない」と話す。
エレベーターをめぐっては、平成18年6月に東京都港区のマンションで、男子高校生がカゴと建物の間に挟まれて死亡するなど、事故が相次いだ。
昨年9月には従来の安全装置に加え、扉が開いた状態で動作しないようにする装置の取り付けを義務づけた改正建築基準法施行令が施行。各社が更新を推奨する背景には、そんな事情もある。
■税務上の法定耐用年数は17年
部品が供給停止になった装置だけを入れ替える手段もあるが、必ずうまく動作するとはかぎらない。もしエレベーター全体を買い替えるなら1千万円単位の費用が必要。更新を迫られる側にとって大きな出費だ。
「30年以上、部品交換料を含むフルメンテナンスの代金を保守会社に支払ってきた。今も問題なく使えている。なぜ買い替える必要があるんでしょうか」
不満顔なのは、質問を寄せてくれた斎藤さんだ。「部品がないのはメーカーの責任なのに、弱みにつけこまれている感じ。せめて、もっと早く知らせてくれれば…」と憤る。
エレベーターは、何年くらいで更新すべきなのか。税務上の法定償却耐用年数は17年だが、物理的な耐用年数に決まりはない。
各メーカーは「20〜25年」を目安に掲げており、国交省が20年に策定したマンション長期修繕計画のガイドラインも、おおよその目安として「30年」を示す。実際にはそれ以上の間、安全に稼働しているケースも多く、一概にはいえないようだ。
メーカー系より安い保守代金でシェアを伸ばし、部品の融通などでメーカー系との“不仲”がいわれる独立系保守業者は、どう見ているのか。業界団体「エレベーター保守事業協同組合」は「30年も部品を持ち続けるのは難しい。やむを得ない判断だ」と、供給停止に理解を示す。
一方、マンション管理組合を支援するNPO法人「マンションオーナーズコミュニティー」の吉沢康博事務局長(51)は、30〜35年を目安とする。「30年たてば給排水管など、ほかの大規模修繕の時期にも重なる。今後何年住み続けるのかを考える必要もある。低層なら更新をあきらめるのも一つの考え方。メーカー側と交渉するにも、最も重要なのは住民の合意形成と団結だ」と話す。
昭和40、50年代に急激に増加したマンションが築30年以上を迎え、老朽化や耐震性などが問題化している。エレベーターの部品供給停止は、そうした住宅問題の一側面でもある。
「今回は対象外の機種でも、中古の再生品でしか部品を調達できなくなりつつある。他の機種でも供給停止になるのは時間の問題だろう」。ある業界関係者はそう指摘している。(千葉倫之)
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