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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100719-00000002-aera-soci
決勝は、どちらが勝っても初優勝というフレッシュな対決だった。
ブラジル、ドイツなど、優勝経験のある7カ国が、次々と倒れた。
強国瓦解の背景から、世界サッカーの新しいうねりを読む。──
欧州開催以外で欧州勢の優勝が初なら、欧州と南米が交互に優勝という法則も消滅した。
大国の明暗を分けたキーワードは、「多国籍」だ。
オランダが、旧植民地の移民の血を引く選手を取り入れたのは、1980年代。その後、チーム内に人種の対立が起き、試合後、白人選手が黒人選手との抱擁を拒否する場面もあった。
W杯でも毎回、優勝候補にあげられながら、チームメートや監督への批判が頻発した。ファンマルウェイク監督は規律を重視した戦術を打ち出し、選手選考にも細心の注意を払った。今回、レギュラー選手中、移民組は2人だった。
2大会連続ベスト4のドイツは、その過程をなぞる。2年前の欧州選手権でスペインに敗れたレーウ監督は、スペインに対抗するために技術の高い選手を選考。21歳以下欧州選手権で優勝した若手を重用した。21歳のMFエジルらが台頭した。
背景にあるのが、メンバーの多国籍化だ。1999年にドイツ政府が移民政策の一環として国籍法を改正。移民2世に国籍が与えられるようになった。FWポドルスキはポーランド、エジルはトルコ、MFケディラはチュニジア、DFボアテングはガーナの血を引く。多彩な個性が将来を照らす一方で、純血主義で継承してきた不屈の「ゲルマン魂」が、影を潜めた。スペイン戦で1点を追う反撃は執念が感じられなかった。
■フランスではタブー
大会前、ドイツ元主将で監督のベッケンバウアー氏が、試合前に国歌を歌わない選手たちを、
「われわれの時代はみんなで歌って士気を高めたものだ」
と批判したが、若手選手は、
「特に必要は感じない」
と涼しい顔だった。トルコ人の両親を持つエジルは試合前、イスラム教の経典「コーラン」を唱えて、ピッチに向かった。
前回準優勝のフランスは、1勝もできずに敗退した。
98年大会の優勝は、多国籍の勝利だった。MFジダンの両親はアルジェリア移民。アフリカ系などの有色人選手がメンバーの大半を占めた。それから12年、アーセナルのフランス人監督ベンゲルが指摘した。
「このチームには、高いレベルの相手に勝つ技術がない」
メンバーがアスリート系の黒人に偏り、技術のある選手がいないという指摘はささやかれてきた。ただ、モンペリエの市長が「代表が黒人ばかりなのは、ゆゆしきこと」と発言して所属政党から除名されたように、この問題を指摘するのはタブーだ。
今回の代表でも、MFリベリらの「黒人+イスラムグループ」と、MFグルキュフらの「白人組」の対立があった。グルキュフは、大会時23歳の技巧派でジダンの後継者と言われたが、完全にチームで浮いていた。
大会中には監督に対する黒人FWアネルカの暴言に端を発した練習ボイコットも起きた。フランス政府が事情聴取にまで乗り出したのは、この事件に、社会問題になっている青少年の品性低下を見たからだという。
「学校の授業ボイコットのような子どもレベルの振るまいだった。学校内の生徒の教員に対する暴力や、サッカーの試合中の選手の審判に対する暴力は、近年、フランス全体で大きな問題になっている。郊外で自動車を燃やすなど、問題を起こす若者に有色系、移民系が多いことから、移民を受け入れ過ぎと指摘する声もある」(在フランスのジャーナリスト木村かや子氏)
星占いで先発を決めることもあったドメネクに代わり、98年組の白人ブランが新監督になるが、現在の21歳以下代表も、25人中、白人は5人だけだ。
■カペロ監督「続投」の事情
逆に、イタリアは、「移民選手」への門を閉ざす。
前回優勝のリッピ監督が、DFカンナバロらベテランを残したのが裏目に出て、フランスと同じくグループリーグ最下位。若手にも好選手がいたが、多くは中小クラブ所属で、チャンピオンズリーグなど大舞台の経験が不足していた。欧州王者インテルのスタメンは、ほぼ全員が外国人(EU内の外国人に人数制限はない)。自国選手が育たないという問題が、噴出した。
サッカー連盟は、EU外外国人の新規登録を1人に制限することを決めた。同時にクラブの育成機関の充実を図る方針を打ち出した。イタリアではもともと、選手を売って稼ぐことを目的にした小クラブ以外は、下部組織に力を入れていない。が、近年はスターを派手に売り買いする資金がないため、自主栽培を見直す機運が出てきた。代表は育成に定評のあるプランデッリ新監督の下でスタートする。
「ただ、EU外選手の制限も、アルゼンチン人に国籍を与えるなどの操作は日常茶飯事なので、さほど効果はない」(現地のスポーツ記者)
2回目の優勝が期待されながらベスト16で敗退したイングランドは、イタリア人のカペロ監督の「続投」が決まった。90年代以降、自国人監督での低迷が続いており、外国人に委ねた路線を継ぐ。カペロ本人が意欲満々で、解任すれば十数億円規模の違約金が発生するという現実的な事情も大きい。
若手を起用しなかったチーム編成に疑問の声もあるが、それ以前に若手育成の問題を指摘する声は多い。サッカー協会はこれまで各クラブのアカデミー(育成組織を兼ねた学校)に任せていた育成方針を統一して「教科書」を作成。エリート少年を集めた「ナショナルフットボールセンター」を開校する。
敗退後、若手選手を中心にした「宴会」の模様が写った写真が新聞に掲載された。メディアの論調を集約すると、こうだ。
「ドイツ人の若手の半分の情熱もない。不適切なまでに高額な報酬を得る彼らは甘やかされてふやけている」
■マラドーナ「留任を」
南米では、今大会は、小国が輝いた。ベスト4になったウルグアイは、06年に就任したタバレス監督が20歳以下代表に力を入れて育成を強化した。
「タバレスは、90年代から選手の海外移籍や試合の放映権など、サッカー界全体に強い影響力を持ってきたエージェントの人物を排除した。この人物の息がかかった協会上層部が予選中に監督解任に動いたが、屈しなかった」(「ラ・レプブリカ」紙のリカルド・アセベド記者)
一方、スター監督のアルゼンチンとブラジルは、失速した。
「メッシをスターにする」
そう宣言したアルゼンチンのマラドーナ監督は、奇抜な言動で注目を集めたが、攻撃と守備を分業化する陣形をドイツに突かれた。が、選手の間からは留任を望む声がわき上がった。
「マラドーナは、自分がすべての注目を浴びて、選手がプレーに集中できるようにしていた」(サッカージャーナリストの西部謙司氏)
采配は天性の勘頼り。周囲が物を言えない雰囲気になっているが、協会がどう判断するか。
ブラジルのドゥンガ監督は、大会前半で、最大手紙「グロボ」の記者と口論。マスコミを敵に回してしまった。逆転負けしたオランダ戦では、いらいらした態度が選手に伝染した。大会後に解任された。
4年後は自国開催。ブラジルサッカー連盟のリカルド・テイシェイラ会長があげる次期監督の条件は、「地元優勝の重圧に負けない経験」「若返りを図れる」「20歳以下や23歳以下など若手育成も担当する」など。有力なのは、02年日韓大会の優勝監督スコラーリだ。グロボが実施した読者投票では、46%の支持を集めた。元鹿島アントラーズのレオナルドは7%。ACミラン監督を1年だけ務めたレオナルドは、「経験」という条件で不利だが、こう話す。
「経験がなくても、若くても、優勝する時は、優勝する。監督選びは賭けだ」
編集部 伊東武彦
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