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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100709-00000001-voice-pol
◇「おまえたちの国を応援するよ」◇
世界中でワールドカップが盛り上がっている。サッカーに関心のないとされてきた米国とて例外ではない。
米国チームが歴史的な引き分けによって、強豪イングランドから「勝ち点1」を奪ったというニュースは、全米のお茶の間にも「速報」として伝えられた。
6月、全米オープンゴルフの取材でカリフォルニアを訪れていた私は、愉快な光景を目の当たりにした。
ぺブルビーチGLのメディアセンターには、世界各国から数百人にのぼる記者たちが参集していた。それぞれがゴルフ取材そっちのけで、テレビモニターの前に集まってスポーツ観戦に興じているのだが、面白いことに映っている番組が、すべて違っているのだ。
全米オープンゴルフに6人の自国選手が参加している南アフリカ共和国の記者団は、朝から晩まで母国で開催されているワールドカップ・サッカーに釘づけとなっている。
一方、母国・米国の記者たちはNBAファイナルの試合に一喜一憂して、ところかまわず大歓声を上げている。
日本の記者たちは、インターネットの画面から米女子ゴルフで宮里藍選手が首位に立ち、優勝しそうだという情報を探し求めていた。
ヨーロッパからの記者たちが、もっとも悩ましかったかもしれない。現地ぺブルビーチでは、上位に欧州の選手が並び(結局、優勝は北アイルランド、準優勝はフランスのゴルファーだった)、サッカーの応援とゴルフの取材の狭間に立って、慢性的な寝不足に苦しむことになったからだ。
そんななか、フランス人ゴルフ記者の激しい怒りに触れて、驚いてしまった。
「とにかくドメネク監督は、過去の代表監督のなかで最低だ。代表選手もエゴイスティックで、奴らはみなフランスの恥だ。もはやフランスが予選を通過することはないだろう。おれはおまえたちの国を応援するよ」
そういって声を掛けられ応援されているのは、予選同組の南アフリカの記者である。
なぜ、こうもサッカーというスポーツは人を感情的にさせるのだろう。
◇読んで気持ちのよい批判記事◇
そんなことを考えながら、日本のサッカー報道のあり方について考えてみた。愛国心が先立つのは、他の国とさして変わりはない。だが、メディアセンターでさまざまな国の記者たちと話しているうちに、ある決定的な違いに気づいた。
それは、批判精神の欠如である。ついでにいえば、そうした傾向はスポーツ報道全般にわたっている。
「エゴの塊であるドメネク監督と、そしてそれを上回ったエゴイストたちである選手を笑い飛ばそう。仏代表史上最高のストライカーであるティエリ・アンリを出場させなかった監督の選択をばかにしよう。自分たちが優秀だと勘違いしているフランク・リベリやウィリアム・ガラス、ニコラ・アネルカら主だった選手たちを笑おう。無知に直結している彼らの傲慢さを楽しもう」(仏紙『レキップ』/読売新聞特約)
人によっては気分の悪くなるほどの気持ちのよい記事である。日本のスポーツジャーナリズムではまずお目にかかれない文章だが、世界のスポーツジャーナリズムでは、この程度の個人攻撃は日常茶飯事なのである。
伊紙『ガセッタ・デロ・スポルト』は、批判のみならず、各選手の試合の動きによって点数までつける。セリエAのシーズン中は必ず、それはワールドカップであろうと変わらない。つねに分析と批評がスポーツジャーナリズムの定めであるかのように、選手を批判するのである。
それを読んだ選手はどう反応するか。怒り狂う者もいれば、意気消沈する者もいる。しかし、それが真っ当な批判であれば、次の試合で「見返してやる」という発奮材料にもなるのだ。
その傾向は、サッカーだろうが、野球だろうが、バスケットボールだろうが、ゴルフだろうが変わりはない。万国共通のスポーツジャーナリズムのもつ役割でもある。
ところが日本では、その種の個人攻撃は「酷評」と称され、ほとんど行なわれたためしがない。せいぜい、会うこともないコメンテーターや評論家が、無責任な批判を繰り返しているだけだ。
それはスポーツにとっても、それを報じるジャーナリズムにとっても不幸なことである。
健全な批判は、アスリートやそのチームにとって得がたい情報であり、財産である。
日本のスポーツ報道が、とかく応援一辺倒になり、敗退したときの検証を怠ってきたことが、日本のスポーツが世界で通用しなくなっている一つの理由であることに、そろそろ気づいたらどうだろうか。
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