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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100705-00000304-newsweek-int
マサチューセッツ州の小学校コンドーム提供計画が批判されているが、看護師のカウンセリングつきで配れば無謀なセックスを避ける効果も期待できる──
ケート・デイリー
「幼稚園児にコンドームを」──新聞の見出しとしては確かに目を引く言葉だが、マサチューセッツ州プロビンスタウンの教育委員会が打ち出した計画の本質を言い表しているとは言いがたい。
このコンドーム提供計画は、子供の性行為感染症(STD)への感染と望まない妊娠を防ぐのが狙いだが、批判が殺到している。教育委員会は、意図的にコンドームの提供対象に制限を設けていない。性的行動をしようと思う子供は誰でも、学校の看護師に言えばコンドームをもらえる(親には連絡されない)。その際に看護師は、安易なセックスを自制するよう諭すなどのカウンセリングを行うものとされている。
実際の可能性はともかく、理屈の上では、6歳の子供が学校の保健室を訪ねてコンドームを受け取ることもありうる。「コンドームが何のためのものなのかも知らず、『SEX』という単語もつづれない1年生にコンドームを配るなんて、あまりにばかげている」と、マサチューセッツ家族研究所のクリス・ミノー所長は地元紙に語っている。
■セックス経験率が低下した例も
この批判は的外れだ。「SEX」のつづりを知らない1年生は、コンドームなど欲しがらない。それに、学校の保健室にコンドームを常備したところで、こういう幼い子供がいきなりセックスのことを考え始めるわけでもない。
数々の研究が明らかにしているように、子供たちにコンドームを提供しても、性行為を行う確率が高まることはない。子供たちが行う性行為の安全性が高まるだけだ。
むしろ、無償でコンドームを提供している学校では、子供たちが性行為を行う確率が低いという研究結果も一部にある。フィラデルフィアの複数の学校を対象にした調査によると、コンドームの提供を始めた学校では、性行為経験者の割合が64%から58%に減ったという。
コンドームが子供を性行為に走らせるわけではないのだ。セックスをしたい子供は、コンドームがあってもなくてもセックスをする。
性衝動に駆られてというより、ボーイフレンドやガールフレンドに強く迫られてセックスに同意したり、自分がもう子供ではないと実証するためにセックスをしたりする子供もいる。こういう子供たちが看護師のカウンセリングを受ければ、他人の時間割に従ってセックスをする必要などないのだと分かって、思いとどまるかもしれない。
では、コンドーム提供とカウンセリングの対象を中学生以上に限定してもいいのではないか。いや、10歳や12歳の子供がセックスと接点のない生活を送っていると思い込むのはおめでたすぎる。
ある中学校で行われた聞き取り調査によると、回答者の40%以上は2歳以上年齢が上の相手と交際していて、そういう生徒は性行為の経験率が平均の30倍に上っている。このような子供にこそ、大人のカウンセリングが必要だ。
■親に期待するのは非現実的
その「大人」が親であるべきだというのは立派な主張だが、現実的でない。セックスについて子供が親に相談する環境をつくるためには、日頃から親子の間にオープンで打ち解けた関係を築いておく必要がある。しかし米疾病対策センター(CDC)の調べによれば、安全なセックスについて親と話した経験がある若者は、18〜19歳の女性の48.5%、男性の35%にとどまる。
つまり、学校の看護師に専門的な訓練を受けさせた上で、子供たちに確実性の高い避妊の手段を提供し、安全なセックスについてカウンセリングを行わせるのは、子供たちにとって極めて有益な政策なのだ。プロビンスタウン教育委員会は、批判を受けて、計画の対象を小学5年生以上に限定することを検討している。実質的な効果はほとんど変わらないし、論争にこだわらずに子供の安全という実利を優先させた判断も賢明と言っていい。
しかしこの論争のせいで、同じような計画を打ち出してもバッシングを浴びるだけだと、ほかの地域の教育委員会が考えかねない。その意味で、プロビンスタウン教育委員会の計画が嘲笑を浴びたことは残念と言うほかない。
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