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列車の速度に合わせて先駆けるのは、紛うかたなき白虎張(張作霖)の白馬である。手綱をしごきながら、張は線路のきわまで馬を寄せると、皮大衣の背に負った長剣をすらりと抜いて肩口につがえた。
背筋を伸ばし、天地に響き渡る高らかな声で、張作霖は叫んだ。
「兄弟の健康を祝す。兵馬を壮揚せよ!」
あとに続くランパとパオトオル(張の配下の幹部たち)が、口々に唱えながら一斉に剣を引き抜いて肩につがえた。百万の東北軍を従えてもけっして将軍とも幕僚とも称することのできぬ、満州馬賊の騎馬儀仗であった。
その数はおよそ百を下らぬであろう。どの姿も剽悍な馬賊の盛装をこらしていた。
趙爾巽は立ち上がった。
「ヘンハオ。すばらしい。これで君の力のすべてがわかった。ありがとう!」
張作霖は答えた。
「辛苦了、再見!」
潔い満州の音を岡(日本人の新聞記者)は聴いた。つがえた剣を夕日に翻して馬の尻を叩くと、総タンパ(張作霖)は列車から離れた。
続いて車窓に並びかけてきたのは…(こうして百騎が次々とあいさつして行く)
【出所】浅田次郎『中原の虹4』
(ヤブ人)
趙爾巽は清朝の大官。東三省を制した馬賊の総ランパ・張作霖に追われた形で南方に落ちていく場面。この場面、送る方も送られる方も、ものすごうカッコえぐ、シビレてしもた。
張作霖は日本軍によって爆死させられたぐらいの知識しかねがったが、この小説でその一端を知った気すんな。小柄な男ながら胆力抜群、満州の梟雄(きょうゆう)、傑物のよう描かれておる。こんな場面、史実にはねえがもしんねえが次郎はんの魔術もまだてえしたもんだぜ。
・馬賊
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%AC%E8%B3%8A
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