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(回答先: 静かなる革命:2009年熱月30日一発の銃声もなく一滴の血を流すこともなく民主一票革命なる 投稿者 馬場英治 日時 2009 年 9 月 06 日 21:06:47)
【最終回】電子的実取引税システム導入の得失を心理学的に考察する(まとめ)
一般取引税を導入することにより既存の課税項目をすべて廃止し,公正で徴税コスト最小の理想的な税制を実現できる可能性がある.しかし,これまでに提案されてきたいくつかの一般取引税の類型(トービン税,APT税,ファタ議員法案など)にはそれぞれ解決困難な欠陥が存するため,今のところ近未来に実現される見通しは薄いように思われる.このような範疇の中で直ちに実現可能な具体案としては,唯一ここでご紹介した「電子的実取引税」しか存在しない.
電子的実取引税とは一般取引税の一種であり,国内の全金融機関を接続するオンライン為替決済システム上で一つの銀行口座から自行・他行口座への資金移動がなされたとき,その資金にある低率で固定の課税率を乗じた徴税金額を自動的に「源泉徴収」して即日国庫に納付する電子的課税制度である.これは100%取りはぐれのない全自動徴税方式であり,おそらく,これよりも効率的かつ網羅的な徴税方法は存在しない.その意味で究極の徴税方式と言える.このような徴税法は当然,金融機関を相互接続するオンライン・ネットワークが発達していることを前提とするので,実現の可能性があるのはG20加盟諸国などに限られると見られる.
幸いわが国には「全銀ネット」と呼ばれるネットワークシステムがすでに実稼動している.全銀ネットは日本銀行がオーバーサイトし,東京銀行協会が運営する電子的内国為替決済システムである.銀行系ATMはすべてこのネットワークに接続している.このシステム上に「電子的実取引税システム」を構築する上でのテクニカルな問題は存在しない.「電子的実取引税システム」は「アイディア」ではなくて「構想」であり,明日にでも実現可能な「政治課題」である.
電子的実取引税導入の条件が歳入中立(その税制を導入することによる税収の変化がないこと)であるとしよう.どっちみちトータルで同じ金額の税が徴収されるのだとしたら,その優劣はどこで判定されるのだろう?個人・企業を問わず,どの経済主体も「税を取られたくない」と一様に考えているとすれば,「公正であるか否か」がまず問われなくてはならないことは明らかだ.
電子的実取引税制度の課税ベースは消費税の課税ベースより10倍大きいので,1%の税率で20兆円の税収があり,税率5%なら100兆円に昇る税収を確保することができるから,国と地方自治体のすべての既存租税を全廃することも可能である.一般取引税の税率は消費税のようにむやみに高率にすることはできないので,5%というのはおそらく上限に近い.
以下では電子的実取引税税率3%で既存国税をすべて廃止する(地方税は存続)というモデルをベースに議論を進めることにする.電子的実取引税を実際に導入したらどうなるか?その得失を考えてみたい.まず,考察の対象となるモデルと適用原則を定式化しておこう.
【電子的実取引税の適用4大原則】
1.ライフサイズ:実物経済ベース:実取引税制は等身大の実物経済の上に構築される.
2.ゼロトレランス:例外を許さない:実取引税制ではいかなる例外,特例措置も認められない.
3.アノニミティ:匿名性:銀行は国に徴税額以外の個別トランザクション情報を渡さない.
4.モニタリングフリー:国民監視の禁止:中央銀行はシステムに監視装置を取り付けない.
【電子的実取引税税率3%モデル】
1.全銀ネット(内国為替制度)上のすべての資金移動に3%の取引税を課する.
納税義務者は資金の受取人とし,移動にかかる資金に0.03を乗じた金額を
即時オンラインで源泉徴収する.ATMからの送金も同様とする.
本人口座への預金と本人口座からの出金には課税しない.
2.外国銀行口座への送金,外国銀行口座からの入金にも課税する.
外国銀行口座への/からの送金/入金の納税義務者も資金の受取人である.
外国銀行本人口座への送金の場合も課税を免れない.
受取人が外国人である場合も課税を免れない.
外国銀行本人口座からの出金には課税しない.
3.現金取引には課税しない.
4.外国為替,手形,小切手,証券,債券などの公的クリアリングハウスには課税しない.
クレジット,電子マネー,ポイント,地域通貨などの私的クリアリングハウスには課税しない.
クリアリングハウスへの資金の持ち込み,持ち出しの時点で該入金口座に課税する.
5.銀行業務には課税しない(代りに破産時の救済も行わない).
6.銀行は国の徴税業務を無償で代行する.
銀行は電子的資金移動にかかわる手数料を(窓口業務を除き)徴収しない.
銀行は徴収した金額を毎日定時に中央銀行に送金し国庫に納付する.
7.銀行は年度末に徴税額総額を集計し証書を作成して口座名義人に送付する.
銀行は年度末(ないし各月末)に徴税統計を作成して監督官庁に提出する.
8.中央銀行は電子的実取引税システムを構築し,それを管理する.
9.すべての既存国税課目(所得税・法人税・相続税・・・)は撤廃される.
地方税は引き続き存続する.地方自治体は独自の税体系を持つ.
10.電子的実取引税税率は国家予算編成期に国会でこれを定める.
中央銀行は国会において取引税税率につき意見を述べることができる.
電子的実取引税には他の税制に比することのできない以下のような長所がある.
◆超安定なシステムである
実取引税システムの課税ベースは全銀ネット上の内国為替トランザクション(決済)である.これは国内における金融取引以外のほとんどすべての電子的決済(送金)を含むと考えられる.つまり,実物経済の循環系であり血流そのものである.生きているということがすべて何らかの経済活動であるとすれば,このネットワークは個々の国民・企業の経済活動の総体であり,我々日本国民が総体として生き続ける限り存続する国民経済共同体の永続ネットワークである.このネットワークのノード(結節点)は金融機関であり,金融機関には本来的な不安定さ(預かり金以上の金額を貸し出している,つまりすべての預金者が引き出しに来たときにはお金が足りない)が付き纏っているが,銀行間の貸し借りなどの不安定要因はこのネットワーク上には存在しない.電子的実取引システムの超安定性は税制の第一基本原則である「ライフサイズ原則」から導かれる.「カジノ経済」はこの原則によりシステムから完全に閉め出される.
◆限りなく公正である
すべての資金移動で「無差別」に同一税率が適用される.税制を歪めてきたすべての「特例」が廃止され,それに伴う業官の癒着が根絶される.給与から源泉徴収され捕捉率100%の給与生活者が自営業者をうらやむような国民の階層的不満,そねみは完全に解消する.国民の一部に負担を押し付け一部を優遇するような政策が「不可能」になる.つまり,経済に対し完全に中立・透明な税制が確立する.すべての国民・企業は公的扶助受給者を含め,例外なく「収入」に比例した租税を均等に負担する.「税制の公正」は無差別に適用されなくてはならない.「いかなる例外,特例措置も認められない」.これが実取引税制の「ゼロトレランス原則」である.この原則を崩すいかなる屁理屈・横車も許してはならない.
◆匿名性と捕捉率100%が両立する
脱税を防止するためにもっとも効果的な方法は,国民全員にユニークな番号を付け,銀行口座をその番号を用いて名寄せすることだが,国民総背番号制は思想統制などに悪用される危険性が高く国民からもっとも支持されない政策となっている.税制の公正を確立し最大限の安定歳入を確保するためには脱税を厳重に取り締まらなくてはならないが,現状では穴だらけでむしろ意図的にそうしているのではないかとさえ疑われる.基本的に「経済活動」つまり「生きる」ということは政治権力の干渉を受けない「自由な活動」でなくてはならない.実取引税制では国民の経済活動を監視したり干渉したりすることなく,市民生活の匿名性を守りながら捕捉率100%の完全な徴税を実現できる.徴税者はお金を直接,即時に徴収できるので,原理的に納税者の氏名を知る必要がない.これが実取引税制で保証する「アノニマス原則」である.
◆徴税コストがゼロになる
国税庁は2004年以降徴税コストを公表していない.国税庁が徴税コストを公表しなくなったのは長期不況で税滞納者が増大し徴税コストが公表できないレベルに達したためだろう.1990年から2003年の期間は100円につき0.90円から1.78円まで単調に増加しているので,現在2.0円を越えていることは間違いない.税収が50兆円,徴税コストが100円につき2円だとすると徴税コスト総額は1兆円だ!電子的実取引税の場合,好不況に関わりなく徴税コストはつねにゼロである.つまり,これだけで1兆円の経費削減が可能になる.銀行は無償で徴税業務を代行する義務を負うが,これは一種の「労務による納税」と考えられる.とは言え,それも全自動無人装置で実施されるのだからほとんどゼロと言って差し支えなかろう.
◆税の申告が不要になる
税の申告が不要になることを歓迎しない国民はいないだろう.もちろん,税の申告が不要になることは「経理」が不要になることを意味する訳ではないが,心理的解放感は大きいのではないだろうか?特に個人事業主の場合,脱税する意図はなかったとしても,申告の期日が迫ると頭の痛い日々が続いたことだろう.税の申告が終わった後も,納税するための資金を用意するのにまた一苦労することになる.電子的取引税では入金したときにすでに完納しているのだから,いつも清々しい気持ちで生活することができる.
これまで消費税の収集と納付は流通の各段階における企業に無償で押し付けられてきた.この負担は国税庁の徴税コストには反映されていないが,決して小さなものではない.企業はこれらのリソースをもっと生産的な部門に振り向けることができる.最終消費者が納付した消費税が業者の懐に入ってしまうという「益税」の問題も解消する.
◆脱税が不可能になる
個人・企業・団体を問わず,銀行口座を持ち通常の経済行為を行う経済主体はすべて徴税対象となるので,脱税を行うことが「原理的」に不可能になる.暴力団,宗教法人,風俗営業,性風俗特殊営業,政治家,投資家など合法・非合法に免税・脱税・租税回避を享受してきた企業・団体・個人にも均等な納税義務が発生する.脱税は犯罪であるが,脱税することが原理的に不可能になるのだから,経済犯罪が減少することは間違いない.罪があるから罰がある.罪が存在しないところに罰は存在しない.
◆マネーロンダリングができなくなる
電子的実取引税は資金の移動ごとに多重にかかってくるので,犯罪性資金のマネーロンダリング,トンネル会社,不動産の転がし,多重下請けなどの非生産的活動を抑制する効果があると考えられる.多重下請けなどの場合,徴税による損失を実際に仕事をする最下位レイヤーに転嫁するということが行われることが想像されるが,租税システムがクリーンになることは経済システム自体がクリーンになり,ひいては社会全体がクリーンになることを意味するから,次第に民主経済社会から駆逐されてゆくことになるだろう.
◆税制はシンプルで透明なものになる.
電子的実取引税の仕組みは誰にも理解できる.複雑怪奇な税法の特例措置は一切不要になる.税務署もマル査も不要である.政府機構内部の闇が少し薄れ,私企業経理の不透明度も少し晴れることで,世の中が少し明るくなるだろう.国家がつねに重税を国民に押し付け,国民はそれを可能な限り回避しようとする悪循環は断ち切られ,両者の緊張関係も和らぐに違いない.税がそれ自体経済(貨幣)循環の一部であるということがよく理解されるようになるだろう.
◆痛税感のほとんどない税制になる
税は私有物の国家による強制的徴収であるから「良い税」というのは原理的に有り得ない.イエスは「シーザーのものはシーザーに返しなさい」と説得したが,民衆はその説明に納得したのだろうか?納税という行為には多かれ少なかれ「痛み」が伴わざるを得ない.従って「痛税感」の少ない税制はそれだけでも「マシな税制」である.実際,先進国では軒並み所得税から間接税へのシフトが起こっている.直接税⇒間接税⇒一般取引税という遷移は必然である.
電子的実取引税はおそらくほとんど「痛税感」のない税になるだろう.実取引税ではお金が手に入る前に「源泉徴収」されるところにポイントがある.人は一度手にしたものを手放すことには苦痛を感じるが,手に入れる前に失うことに関しては比較的鈍感であるからだ.
電子的実取引税を実施したとき,起こり得る変化を予測してみよう.
◇国税庁は企画庁に吸収合併されるのだろうか?
人員整理は避け難いが,国民経済が活性化すれば能力を活用する場も増える.企画庁はより創造的な部門としてパワーアップされるだろう.より詳細・正確な統計がリアルタイムで公表され,経済活動にフィードバックされることにより,効率的でロスの少ない経済社会を構築することが可能になる.企画庁は国家規模の「カンバンシステム」のセンターになるかもしれない.
◇税理士が不要になる
税理士という職業も思えばパラドクサルなものであった.クライアントと税務当局の板挟みとも言える,ある意味で苦痛に満ちた職業だったのではないだろうか?経済が活性化することによって,会計に通暁した税理士の専門性を活かした職場・事業を見つけることは可能だろう.ただし,このモデルでは地方税が存続するとしているので,直ちに廃業する必要もないかもしれない.地方税は国税の申告所得をベースに課税することが多いので,もしその自治体が所得申告を要求するということになれば,手続き的にはこれまでと変化なしということも有り得る.
◇現金取引にシフトしてしまうのではないか?
そのような現象が過渡的に生ずることは避けられないかもしれない.しかし,このシステムでは電子マネーの普及が促進されることは間違いないと考えられることから,かなり早い時期にキャッシュレス時代に移行することになるのではないかと予想される.当初はコンビニエンスストアのような小売業者は他の業種に比べて税理的な利得を得ることになるが,それもそう長くは続かないと予想される.零細小売業,一次生産者などでは現金取引は引き続きかなり遅い時期まで続くと想定されるので,それなりの利得になるはずだ.
◇ネット上のビジネスが盛んになる
ネットは大きな可能性を持ったマーケットだが,現在の機構では小額決済ができないので伸び悩んでいる.送金手数料が無料になれば小資本のビジネスを立ち上げることが簡単にできるようになるので,爆発的に拡大する可能性がある.音楽を含むさまざまな著作物が現在ほとんど無料で配布されているのは,それ以外の方法で配布する合理的な手段が存在しないためである.10円を送金するために100円の手数料がかかるようでは創作ミュージックのネット販売のようなビジネスモデルは成立しない.駅のキオスクで新聞を買うようにコインで情報を入手することができるようになれば,新聞はもう一度復活できるかもしれない.もちろん,フリージャーナリストも生活の資を確保してよい仕事ができるようになるだろう.
◇交際費が際限なく使えるようになる
税務上無際限に交際費を使うことは認められなかった.これは交際費が経費として税額から控除されていたためである.その制限がなくなるとしたら当然交際費的な支出が増加すると考えるのが自然だ.銀座はかつての繁栄を取り戻すことになるのだろうか?少なくとも都市においてはかなり華やかな文化が拡がる可能性がある.このように交際費支出に歯止めがなくなった場合,事業に失敗して没落するケースの増加も予想される.かなり浮き沈みの早い経済になるのかもしれない.消費者の可処分所得が増えることによって,過疎の街も少しは活気を取り戻すのではないか?勤労者は仕事帰りに一杯の酎ハイを心置きなく飲めるようになるのだろうか?学齢の子どもを抱えて小さな店をやりくりするママさんのお客は戻ってくるだろうか?
◇将来国民監視ネットワークとして使われるようになるのではないか?
確かに,合衆国連邦政府はそのような意図を持って911以来さまざまなこと(Total Information Awarenessなど)を行っている.そのような政治的策謀を未然に防止するために,電子的実取引税システムでは第4基本原則で「モニタリングフリー」を謳っている.このネットワークは日銀によって管理されることになるが,「日銀」の活動を監視するのは我々日本国民・国会・政府の共同の任務である.我々は「電子的実取引税システム」を「防衛」しなくてはならない.財政破綻・経済危機・監視社会・戦争はすべて密接にリンクしている.超安定な税制を守ることは国民の生活を守ることであり国土を守ることであり「明るい社会」を守ることである.
◇電子マネーの市場が大きくなると実取引税の課税ベースを狭めることにならないか?
本エントリではクリアリングハウスを「参加者が持ち寄った資金を何らかの手続きによって再分配する機構ないしシステム」と定義する.電子マネーシステムは一種のクリアリングハウス(清算取引所)と見ることができる.電子マネーシステムの内部では擬似通貨(電子マネー)が通用し,擬似通貨と通貨が交換される時点で清算が行われる.現在は,
通貨[銀行口座]⇒〔電子マネー⇒商品・サービス購買〕⇒通貨[銀行口座]
のような単純なフローになっているから特に課税上の問題にはならないが(入口と出口で課税できる),システムが拡大して電子マネーが内部循環するような段階まで発達したときには,実取引税システムをおびやかす存在に変容する可能性がある.特に電子マネーが相互接続ないし異種マネーの交換ができるようになると通用領域は急速に拡大することになる.電子マネーシステムがある一定規模を超えて電子的実取引税の課税ベースを侵蝕する水準に達したときにはそのシステムで通用する擬似通貨の移動に課税する必要が生じるだろう.どれぐらいの規模でその措置が必要になるかは,政策判断の問題として研究を要する.
◇証券取引所などのクリアリングシステムはなぜ課税されないのか?
「電子的実取引税制は等身大の実物経済の上に構築する」という電子的実取引税システムのライフサイズ原則によって,証券取引所を含むすべての公的・私的クリアリングハウスには課税されない.一般にクリアリングハウス内で行われている経済は参加者が持ち寄った資金の再分配に過ぎず,「生産」,「流通」,「消費」のいずれのカテゴリにも入らない「非生産的行為」と考えられる.国家財政,特に歳入はこのような「非生産的行為」に依存すべきではない.仮にこのハウス内部の「勝者」に対し課税することを得たとしても,それは「敗者」の損失の上に立っているものである以上,「実物経済」にはなんら寄与するものではない.ましてやクリアリングシステムの「有力参加者」の「大負け」を国家(国民)が補填するようなことがあってはならない.この意味で,クリアリングハウスと国家財政の間には一線を引くべきである.
◇外国人口座への送金に対する課税は国際問題にならないか?
受取人が外国人であるような外国銀行口座への送金では受取人の国外の銀行口座から徴収するのではなく,内国為替システムから外国為替システムに「為替(送金指示書)」が転送される時点で源泉徴収を実施する.たとえば日本国内において発生した著作権所得を海外に送金するときには印紙税に相当する源泉徴収を行うという事例がある.外国人口座への送金に対する課税は日本の国家主権(徴税権)の行使にあたり,これは日本が各国と締結している租税条約に反するものではない.この税制が日本で成功すれば,諸外国も追随するのではないか?
◇取引税を回避するため企業合併・吸収が多発し独占が進むのではないか?
2つの会社を合併してしまえばその2社間の取引は内部勘定に転化するから,2社間の取引額が大きい場合には取引税を削減する大きな効果がある.この意味で,実取引税システムが企業の合併・統合を促進し,独占が進行する可能性は大いにあると考えられる.一般に独占はもっとも効率的な生産様式であると考えられるものの,競争を抑制して市場価格を支配するという意味では市場経済の原理に反する存在である.独占禁止法などの法令も存在するが必ずしも効果を上げ得ていない.独占によって企業の内部経済が拡大し電子取引税の課税ベースが空洞化する可能性がある.対抗措置としては(金融)資産課税,外形課税などが考えられる.テクニカルな次元では電子的実取引税は「銀行口座間の資金移動」に課税するものであるから,そのコングロマリットが複数の銀行口座を使っている限りは合併による節税効果はない.
◇日本がタックスヘイブンになる可能性があるのではないか?
外国為替取引,証券取引などが非課税となる上,法人税がないのだから,原理的にはケイマン諸島などのタックスヘイブンとまったく同等視されることは間違いないだろう.国外の超リッチな富裕層が日本国内に居住するなどの現象も考えられる.外国人居留者としてのマナーを守ってもらえるのなら特にそれを拒む理由もないが,地方政府はそれらの外国人に適度な地方税(たとえばリッチ税)を課して調整することも可能だ.
◇地方税が存続するモデルには道州制が適合するのではないか?
電子的実取引税で地方税収入をすべてカバーしようとするとおそらく税率は5%程度になると考えられる.電子的実取引税の適正税率のレンジは極めて狭いので,5%でもすでに十分高率である.たとえば,5%の税率で多段階に資金移動を行うと,100⇒95⇒90⇒86⇒81⇒77・・・のように資金が目減りしてゆき,5段階目で削減率は2割を超えてしまう.従って,地方税は電子的実取引税でカバーしないというデザイン(税率3%モデル)はかなり現実的なものであると考えられる.地方には地方の独自性・特殊性があり,それに適した税制もあるだろう.たとえば,観光が盛んな地域なら観光収入が主たる財源になるかもしれない.しかし,あまり小さい行政単位ごとに税制が異なるというのも不都合であるとすれば,道州制というオプションが浮上してくる.電子取引税3%モデルは道州制とかなり相性がよいように思われる.
まとめ:
電子的実取引税を導入することにより,既存税制を廃止し究極の理想的税制を構築することが可能である.導入には既存税制の一部たとえば消費税だけを廃止するなど段階を追って進めるのがよいだろう.完全に中央集権的な国家を作るのが望ましくないとすれば,電子的実取引税率は比較的低率に留めて地方税を残し,その徴収権を地方政府の全権に委ねるという方が理に適っているかもしれない.日本国内ではまだあまり一般取引税という概念は知られておらず,見るべき研究も存在しない.税制が変われば政治も変わる.この提案が真面目に討議さるべき議題として取り上げられ,実践のプロセスに乗る日の一日も早い到来を願って止まない.
2009年9月12日
〒366-0026埼玉県深谷市稲荷町1-3-72-2H
馬場研究所
馬場英治
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