日本郵政、広告発注に契約書なし 博報堂に368億円 http://www.asahi.com/national/update/1004/TKY200910030360.html2009年10月4日3時53分 日本郵政が民営化直後、グループ5社の広告・宣伝を大手広告会社「博報堂」(本社・東京)に一括して発注する独占契約を結びながら、同社との間で覚書や合意書などの契約書類を一切取り交わしていなかったことが、朝日新聞の調べで分かった。契約額は2年間で368億円にのぼる。総務省もずさんな手続きだと問題視しており、原口一博総務相は「事実関係を調査する」としている。 日本郵政は「かんぽの宿」の売却契約に伴う入札が不透明だとして業務改善命令を受けた。同省は独占契約を採用した今回の経緯にも関心を寄せており、契約書を作成しなかった理由などについて調べる。民主党政権が公約に掲げる郵政事業の見直し作業に影響を与えそうだ。 日本郵政は07年10月の民営・分社化後、案件ごとに入札で業者を選ぶ従来の方法から、「企業イメージの統一性を図る」などとして特定の1社に限定して契約する、国内では導入例が少ない方式に変更。同年11月に企画提案コンペを開き、大手広告会社4社の中から博報堂を選定した。 その結果、朝日新聞が入手した日本郵政作成の資料によると、郵政公社時代の06年度の契約額は電通が約51億円、博報堂が約19億円、大広が約2億円などだった。民営化に伴って全体の広告量が増えた07年度は、博報堂との独占契約で約146億円、08年度は約222億円にのぼった。 日本郵政側は「包括契約に基づいてグループ各社が個別案件ごとに交わした契約関連の書類はある」とするが、元となる包括契約時には一切の契約書類を取り交わさないまま、博報堂との契約を子会社4社に義務づける運用を続けていたという。 通常、包括契約時に交わす覚書や合意書には、契約期間、双方が履行する義務、契約を解除する場合の条項などが記される。双方の理解のずれや、これに起因するトラブルを回避するほか、取引の透明性を担保する目的もある。会社法でも業務の適正を確保するため、契約書類の保存や管理を要請している。 グループ子会社の幹部は「イベントや広告内容の質に疑義があっても業者を変更することができなかった。契約額が割高になっていた疑念もぬぐえない」と話している。 郵便割引制度悪用事件に絡んで博報堂子会社の幹部が逮捕されたことを受け、日本郵政は今年6月に契約を解除。郵政グループ各社が案件ごとに入札する形に移行した。 日本郵政コーポレート・コミュニケーション部の串馬佐知子グループリーダーは「業務に支障はなく、問題ないと考えている。しかし今後は、この発注方式を採用すべきか否かや、契約書類の作成についても社内で検討したい」としている。 〈原口総務相の話〉 日本郵政に内部監査機能や法令順守への姿勢が欠如している疑いがあり、「かんぽの宿」問題と同様の構図を想起させる。郵政は国民共有の財産であり、契約書類もない不透明な契約で、その財産が棄損されていないか確かめる必要がある。(砂押博雄、鈴木暁子) |