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NHK『坂の上の雲』映像化
―原作者の願いは生かされるのか―
仲築間卓蔵・元日本テレビプロデューサー
NHKが「総力を挙げて取り組む」というスペシャルドラマ『坂の上の雲』が、11月29日から放送されます。
『坂の上の雲』は、司馬遼太郎が1968年から1972年にかけて産経新聞に連載された近現代史がテーマの大河小説で、中曽根元首相などが最高の「
歴史書」と賞賛していたものです。題名は、「ひとひら輝く雲を見上げて坂を登った」明治の青年群像からきたものでしょう。
小説は日露戦争で終わります。司馬遼太郎は「映像化することによって文字で読む世界とは違い、好戦的な作品という誤解を受ける」と思っていたようで、映像化は禁じていたものですが、「海老沢勝二会長(当時)が関係者を口説き落として映像化の許可をもらった」(NHK関係者)といいます。
撮影開始は07年11月。国内各地・世界各国でのロケ・最新の特殊映像効果を駆使。「制作費は大河ドラマを超える予算」だそうです。
大河ドラマは、例年ですと年末まで放送されますが、ことしは早めに終了して、第一部を11月29日から90分枠で5回(「少年の国」「青雲」「国家鳴動」
「日清開戦」「留学生」。出演は、本木雅弘、阿部寛、香川照之、松たか子、西田敏行など)。第二部は来年秋に4回。第三部は再来年秋に4回という力の入れようです。
しかし、映像化の許可を得た01年というのは、いみじくも従軍慰安婦問題を扱った『ETV2001』が政治的圧力で改ざんされた年。『坂の上の雲』は、靖国派の歴史観におもねった企画とも受けとれます。
NHKは「09年は横浜開港150年。この3年間、近代日本の歩みをさまざまな角度・視点から扱う企画を準備中。『坂の上の雲』はそのなかの一つ」といいますが、一方、来年は日韓併合100年目。あらためて日韓関係を見直す年にもなります。
『坂の上の雲』がどのようなドラマになるのか。NHKの歴史認識が問われることになりそうです。
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