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放送番組を監視する常設機関の設置を唱えた総務相(醍醐聡のブログ)
http://www.asyura2.com/09/hihyo9/msg/477.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 8 月 05 日 10:21:14: twUjz/PjYItws
 

http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-5f11.html

放送番組を監視する常設機関の設置を唱えた総務相


昨日から今日にかけての深夜にNHKは次のようなニュースを伝えた。

総務相 、BPOと別機関を検討
08月05日00時12分

 佐藤総務大臣は閣議のあとの記者会見で、BPO=「放送倫理・番組向上機構」とは別に、放送番組を常に監視する新たな機関を放送法に基づいて設立することを検討したいという考えを示し、今後、放送事業者などと協議していきたいという考えを示しました。 BPO=「放送倫理・番組向上機構」は、放送倫理の向上などを目的にNHKと民放各社が設置する機関で、放送番組への苦情や倫理上の問題などについて、第三者の立場から対応しています。これについて、佐藤総務大臣は閣議のあとの記者会見で、「わたしは、BPOの活動は高く評価しているが、NHKと民放が設置した組織であることから、『いわゆるお手盛り的な運用になるのでないか』といった意見もある」と述べました。そのうえで、佐藤大臣は「放送事業者に対して、総務省が規制をすることになれば非常に圧力的な話になる。そこから少し離れた立場で、一定の権限を持った機関が常に放送番組を監視するというシステムがあってもいいと思っている。現在のBPOは法律上の根拠を持たないが、例えば、BPOとは別の新たな機関を放送法に基づいて設立するという選択肢があってもいいのではないか」と述べ、今後、放送事業者などと協議していきたいという考えを示しました。 


メディアに監視されるはずの公権力がメディアの監視に乗り出す本末転倒

 先月17日に、TBSの「情報7daysニュースキャスター」についてBPO(放送倫理・番組向上機構)が審理中に総務省がTBSに対し厳重注意をしたことについて放送倫理検証委員会が委員長名で重大な疑念を表明するとともに、総務省は放送界の自主的自律的機能を尊重すべきという談話を発表したばかりである。また、さる4月26日には、ETV2001の番組改編問題に関してBPOが格調の高い見解を発表したことにも注目が集まっていた。
 さらに、さる7月30日には、日本テレビの報道番組「真相報道バンキシャ!」が昨年11月に放送した番組――岐阜県の裏金問題を取り上げた番組――に偽証に頼った事実無根の内容があったとして、BPOが日本テレビに対し、検証番組の制作と放送を求める異例の勧告を行った矢先である。
 昨年起こった関西テレビの「発掘!あるある大事典II」における捏造の時もそうだが、総務省はまるで放送局の「不祥事」を奇貨とするかのように自己の規制権限強化の機会をうかがうのが常習になっている。こうした動きは、近年、BPOのプレゼンスが向上している現状に対する総務省のあせりのあらわれとみることもできよう。


オピニオン・ショッピング

 しかし、そもそも、総務省ほか各行政機構を含む公権力機関はメディアの監視を受ける対象である。その公権力機関が放送番組を監視する新たな機関の設置を唱えるのは主客転倒もはなはだしい。もっとも、佐藤総務相は総務省が規制をするとなると圧力的な話になるので、総務省から「少し離れた」立場で、一定の権限を持った機関が放送番組を監視するというシステムが望ましいといっている。問題は「少し離れた」機関の中身である。それが端的に試されるのは委員の人選であって、例外なく委員の選任は所管省庁に委ねられている。そのため、過半の委員が行政によってオピニオン・ショップされたメンバーで占められるのが常といってよい。そして、これら委員は行政が自分を選んだ理由、自分に何を期待し、何を期待していないかを誰よりも心得ている。だから、委員の顔ぶれが決まった時点で委員会の結論はほぼ決まっているのが常態である。
 

権力による監視と自己検閲は表裏一体

 ここで銘記しておく必要があるのは権力による放送の監視と放送人の自己検閲は対立するどころか、表裏の関係にあるということである。なぜなら、権力による監視が強まると、放送人による自己検閲が強まる関係にあるからである。これについて先頃刊行されたボブ・フランクリンほか著/門奈直樹監修『ジャーナリズム用語事典』(国書刊行会、2009年6月)に次のような解説がある。

 「自己検閲(self-censorship) ・・・・・自己検閲は欺瞞的なものである。なぜなら自分の仕事を発表し、仕事を確保しキャリアを積みたいジャーナリストたちは、ある政治的争点を詮索すべきでないことや、ニュース・ルーム内の支配的価値にしたがって仕事をすべきであることに気付いているからである。自己検閲は自己の利益への奉仕であり、直感の反映であり、浅薄で党派心の強いアプローチであり、客観主義と公正の概念かたはほど遠いものである。・・・・・
 圧政的な政府によって報道の自由が抑制されている国家では、ジャーナリストが政府の検閲を受け大変な目に遭いたくないと思うならば、国家によって科される刑罰を避けるため、自己検閲は欠くことのできないものとなる。・・・・・」(110〜111ページ)

 このような解説を念頭においていうと、BPO・放送倫理検証委員会がETV2001番組改編問題に関して公表した意見の中で記した、「・・・・内閣官房副長官である有力政治家からは公平・公正にと念を押されるなかで、幹部職員らは番組の質よりも安全を優先することを、おそらくは『自主的自律的』に選んでいった・・・」(20ページ) という指摘は、有力政治家の意向を忖度したNHK幹部職員による番組改編の指示が、自己検閲と呼ぶにふさわしいものだったことを再認識させるのである。



2009年8月 5日 (水) メディア  

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