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09.5.21
優れた携帯は家畜化のサイン
高橋清隆(森田塾塾生)
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4月上旬、花見で携帯をなくした。公園の管理事務所や立ち寄った居酒屋に聞いてみてもない。3週間以上たっても出てこないので、迷った末、新しいものを買った。
迷った訳は、身元が追跡されるのを警戒してのこと。私はたまに危ない記事を書く。小泉政権を批判した経済学者が痴漢で逮捕されたり、人工地震の可能性を指摘した大学教授が詐欺罪で起訴されているのを、他人事と思えない。携帯の保持者は電波で容易に見つけ出すことができる。
私が使っている携帯は8年前に買ったNTTドコモの「MOVA(ムーバ)」。B層の若者に笑われるが、外でメールをしたりワンセグを見る気のない私にはこれで十分だった。現在の「FOMA(フォーマ)」と呼ばれる機種は、GPS(全地球測位システム)が搭載されている。これが出てからは更新する気が完全にうせた。それだけに解約か新機種を持つか、決断できずにいた。
「気にしすぎだよ。あなたのような小者を監視するわけがない」
読者はそう言いたいかもしれない。しかし、監視されようとしているのは全員である。「人類家畜化計画」をご存じだろうか。英国の諜報機関MI6の高級将校だったジョン・コールマン博士が命がけで告発した内容によれば、国際金融資本家のトップでつくる「三百人委員会」は人類の頭にICチップを埋め込んで奴隷にしようと企てている。
「陰謀論」と笑うかもしれないが、われわれの前に展開する変化はこれに説得力を与えるばかりだ。
サブプライム問題に端を発した金融危機は、世界の基軸通貨ドルを崩壊に向かわせている。自然現象にみえるかもしれないが、米国債券の増刷を通じた世界のドル支配は、米国の貿易赤字が用意した。今回の暴落はそもそも、銀行に株を持たせたり、元金の30倍もの投機を促すレバレッジを認めたのが原因。皆、人為的な政策の結果である。
ドルが崩壊すれば、100兆円を超す米国債を持たされているわが国は、米国と心中しなければならない。
考えてみれば、戦争で負けながら技術や資源を手厚く提供されたのは、稼ぎを奪われるためではなかったのか。与えてただで去る戦勝国などない。プラザ合意も構造改革も米国の要求だった。日本人が働きバチとして利用されたのは、世界一優れた携帯を持たされていることと関係があるのではないか。財布も定期もメールもネットもついていて、すでに多くの人が手放せなくなっている。
現在、個人情報の集約がはかられている。住基ネットはほぼ完成し、「年金カード」構想が具体化しつつある。駅の改札を通るカードや銀行のキャッシュカードにも、ICチップが忍ばせてある。これらは事件を騒ぎ立てたり、「IT化」を礼賛することで登場した。
一方で、銃や刃物、インターネットへの規制は整い、民衆による反抗は不可能になりつつある。
マスコミが歴史上の惨劇を促してきたことを顧みれば、今後の筋書きも読みやすい。「不便」を問題にしてICチップを一元化したあと、「落とす人が多く犯罪を誘発している」などと宣伝して人体に埋め込む口実をつくるのだろう。その前にインフルエンザへの予防接種として、民衆を管理する公務員からナノチップを注射するつもりかもしれないが…。
FMラジオを聞いていたら、ドコモのコマーシャルが流れた。「MOVAは2012年に廃止されます。ドコモではFOMAへの切り替え割引を実施しています」。
私はぞっとした。FOMAはより高い精度で位置がわかるし、家畜化が実行されるのは2012年とされているからである。
とはいえ、いつまでも携帯なしでは人と会うのもままならない。公衆電話が撤去されているからだ。仕方なく電話屋へ行き、薦められるまま契約する。「FOMAはMOVAと電波がまったく違います」。茶髪の女性店員は誇らしげに携帯の蓋を開け、細かい銅線の張られたチップを見せた。
「FOMAカードと言います。あなたのものなので、機種変更する際も、別の端末をお使いになる場合も、これを大切に保管してください」
購入を済ませ外へ出ると、にぎやかな夕暮れ。街では相変わらずサラリーマンが酔っぱらい、大学生がだべっている。とても恐怖による国民弾圧が起きる気配はない。反面、この腑抜(ふぬ)けな状態では暴動も起こせまい。
「情勢が険しくなるまで、文明の利器を使うだけ使って、やばそうになったら寸前で手放せばいい」――そう忠告してくれた人がいた。しかし、奴隷化のための圧政を敷くとすれば、一気にやるはず。
私は新しい機器で早速友人に電話する。
「おお、高橋か。久し振り、復活したねえ!!」
威勢のいい友だちの声とは対照的に私の声は暗い。利便性と引き換えに、家畜になった気がしたからである。
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