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国連安全保障理事会は29日、常任理事国と日韓の計7カ国の専門家レベルで、2回目の核実験を強行した北朝鮮への非難決議案とりまとめを進めた。日本経済新聞は、「2006年に採択した安保理決議で定めた制裁措置のうち(1)大量破壊兵器に関連する資産の凍結(2)ぜいたく品の禁輸(3)渡航制限――などの対象をどこまで拡大するかが焦点となっている」と伝えた。「決議採択は来週半ば以降になる」(国連外交筋)との見通しも出ている、という。(JCJふらっしゅ:Y記者の「ニュースの検証」) CNNは29日、米国の衛星が北朝鮮のミサイル発射基地で過去48時間に、車両や物資の動きがあったのをとらえたと報じ、韓国の聯合ニュースは、韓国軍筋の話として朝鮮半島西側の黄海上で南北を分ける北方限界線(NLL)周辺海域で操業していた中国漁船が、28日から撤収を始めたと報じた(→日本経済新聞)。東亜日報は30日、北朝鮮が射程5000キロ以上の「大陸間弾道ミサイル(ICBM)」の発射準備をしていると報じた(→同)。そして29日、北朝鮮の労働党機関紙「労働新聞」は、<日本国内に「敵基地攻撃」能力を持つべきだとの意見があることに関して「日本が再侵略戦争を挑発すれば、日本の全領土が(北朝鮮の)報復打撃圏から逃れられなくなる」とする論評を掲載>(同)した。 この暴発ぶり、いったい北朝鮮でなにがおきているのだろうか。これまでの「瀬戸際外交」と趣が違うと感じているのは私ばかりではないだろう。ブッシュの「悪の枢軸」から「柔軟外交」(「核実験と非核化プロセス」)と比較して、オバマ政権との有利な「関係」を築けないできることだけが、北朝鮮に「背水の陣」から、次のステップである「飛び込むぞ」「身投げするぞ」の段階(「衛星と称したロケット打ち上げ〜「核実験」「ミサイル実験」)に走らせている理由とはいえないだろう。北朝鮮が、脅しの動機として自らの窮地を抱えているのは通例だが、経済的要因による瀬戸際外交と、政権をめぐる権力闘争の表出と思われる軍部の存在アピールのバランスがが、微妙に乱れだしている。軍部の存在感誇示は、軍部の権力拡大を示すのか、それとも相対的縮小を補おうとするために起こっているのか。 また、「核実験」が、それも世界で核廃絶の動きが高まるこの時期の「核実験」に、ロシアや中国が厳しく反応することさえ、北朝鮮指導部にわからなかったのだろうか。単なる「読み間違い」とは到底思えない。 「したたかな瀬戸際外交」を通じて事態を切り抜け、「海外支援」獲得のチャンスを手にしてきた北朝鮮だが、今回は「外交」だけでなく体制内の「混乱」があるように思えてならない。例の飛んでいるかどうかわからない「衛星」打ち上げを「成功」として、10万人も集めて祝ってしまったことも含めて、内部の求心力強化の必要が高まっている―。それはつまり、権力機構内部の求心力が急速に、著しく弱まっているか、これまでとは異なる権力闘争を内包するに至っていることを意味しているのではないか――。 これ以上付き合いきれない――。北朝鮮の外交姿勢は、これまでのレベルを越えていて、さらなる吐息をもって、そう語る外交関係者が増えているとの情報もある。 この北朝鮮の「挑発」をこえた動きに、日本の自民党筋からは、「敵基地攻撃能力」の保有や、集団的自衛権の解釈変更を求め、改憲を推し進める根拠とするような反応が出ている。対応とは呼べない、反応というべきであろう(国家間の関係からみて、中国、ロシアが北朝鮮の動きに示す「反応」の意味と、米日の「対応」のしかたは意味が異なってくる。韓国の「反応」と「対応」の意味の重さはいずれの国とも異なる)。こうした日本の反応は、ブッシュも見捨てるほど世界中の鼻つまみ者となった安倍政権の時代に顕著だったが、依然としてそうした体質を日本社会が、公権力の内部にかかえていることは、たいへん危険なことであり、愚かしいことである。 中国やロシアの動きはどうか。 朝日新聞によると中国人民解放軍の馬暁天・副総参謀長は30日、「北朝鮮の核実験に断固として反対する」と述べ、「我々は解決方法について関係国や国連安保理と協議を進めているところだ。どんな方法であっても国際社会と協議し、国連安保理決議の枠組みとともに行動する」と語った。また「北朝鮮を核保有国と認めない」とも述べている。北朝鮮に対する制裁強化問題については、「まだ議論していない」として明確なコメントを避けた。 またロシア政府は30日の声明で、日露首脳は、「(核実験は)国際的な安全保障に対する挑戦であり、真剣な対応が必要だ」という点で一致、国連安全保障理事会での新決議採択を前に、両国が対応策で「連携する」ことで合意したことを明らかにした。ただ今月、麻生首相は「北方領土はロシアに不法占拠されている」と国会で露骨な答弁をしており、麻生首相ご当人への信頼感のほどは心もとない。 毎日新聞は31日付の社説「安保理の対応中国巻き込み実効性を」で、「日米は新決議に、北朝鮮に出入りする貨物検査の義務化や資産凍結企業の拡大、核・ミサイル開発関連企業の銀行取引制限などを盛り込むよう求めている」が、「中国を巻き込まなければ実効ある制裁はできない」として、「中国がもし貨物検査や金融制裁に反対するなら、それに代わる効果的な措置を示すべきである」と提言している。 中国もロシアも、北朝鮮の核実験に断固反対している。これまでのような米日のみの視点、というより自公政権における靖国派の、北朝鮮の瀬戸際外交をテコに改憲・戦争志向に走ろうとする小児病的な対応で、この機会を逸するようなことがあってはならない。そういう時代を日本社会は、もう卒業していいはずだ。そういう意味でも、この毎日新聞社説の指摘には、説得力がある(同紙は6月1日付社説に「敵基地攻撃論 ムードに流れず冷静に」を掲げ、「地に足をつけた議論」を求めた)。 だが、自民党国防部会の防衛政策検討小委員会は、「敵基地攻撃能力の保有」などを盛り込んだ提言をまとめた。これは集団的自衛権行使を禁じる「憲法解釈の見直し」や「憲法改正」を提案する内容だ。 ――日本政府は、ブッシュ前米大統領が唱えた「先制攻撃」とは違うと強調するが、説得力はない。米英のイラク攻撃の結果はどうだったか。攻撃の理由にした大量破壊兵器はなかった。多くの民間人が犠牲になった。 自民党国防部会の「敵基地攻撃能力の保有」、集団的自衛権行使を禁じる「憲法解釈の見直し」、「憲法改定」を志向するだけの単純対決型の姿勢は、政府が今年末に策定する「新防衛計画の大綱」(2010年度から14年度)に絡んでいる。 すでに政府の中期防衛力整備計画(中期防、2005年―09年度)は、陸上自衛隊第一混成団(那覇、約2000人)の旅団化(約3000―4000人)を進め、旅団司令部庁舎など4施設の建設費が08年度予算で措置している。この「離島タイプの即応近代化旅団」を目指す陸自の動きに加え、航空自衛隊もこの3月に那覇基地の主力戦闘機をF4戦闘機からより高性能なF15戦闘機に交代していることを、同社説は指摘する。 空自幹部がこの動きについて、「朝鮮半島有事や急速に軍備を強化する中国への対応」と説明していることや、「新たな情勢にも適切に対応できるよう職務にまい進しなければならない」と訓示したりしていることについて、社説は、<発言からは、日中間がすでに「冷戦下」にあるかのような印象すら受ける>と述べて、<空自幹部が想定する「新たな情勢」とは何か。よもや「戦争」ではなかろう>と歯止めをかける。 ――提言で防衛政策検討小委は、敵基地攻撃能力の保有、憲法改正にも論及し、「専守防衛」の放棄、防衛産業への優遇税制の要求など「平和憲法」の精神をことごとく否定してもいる。 北朝鮮が瀬戸際外交で「ゴネ」れば、日本はいきりたって「突っ張る」。これでは国際社会における漫画でしかない。日本のアニメの水準からいけば、到底容認できないレベルのマンガである。北朝鮮の問題を、日本の核保有だの敵基地攻撃能力の保有だの改憲だのへと横道にそらしてしまう政治姿勢。これを政治と呼べるはずもない。「北が核なら、日本も核だ」――これでは外交とは到底いえまい。まして日本も軍備増強して核開発競争に乗り出すといわんばかりの前時代的な姿勢を示すものである以上、何が世界第2位の経済大国であろうかと笑われるのも無理はなくなってしまうのである。 自民党は、「人の振り見てわが身を直せ」という基礎的なところから、自分たちの打ち出しているズレた姿を問い直す必要があるのではないだろうか。少なくとも政治家と政治家が作る政党として、いつまでも後ろ向きで、社会にマイナスの資産(つまり結果として負債)ばかりを増やすだけの政治を、早急に停止すべきではないか。 ブッシュの戦争への追従から顕著に始まった弱肉強食政治の本質も、そこにある。戦争のできる国への改憲や、仮想敵への危機をあおって国民を管理統制しようとする政治姿勢も、同じ本質から出ている。ブッシュの戦争の破綻と同時に、ただでさえ世界は窮地に陥っている。マイナスの事態に対して、さらに輪をかけてマイナスの反応を積み上げるのは、政策とはいえないのである。一部の政治家や勢力や軍事関連企業などを潤すだけの、典型的な独りよがりにほかならない。 それを表面だけ威勢よくツッパってみせることで糊塗し、世論を扇動・誘導しようとして、あわよくば利益と利権を自らだけに引き寄せようとする。そのおこぼれに政治家の地盤を支える一族郎党や軍事関連企業など群がる。防衛省のトップなどがさらにそれにかもうとする。そうした古い体質が暴かれ、修正されてきたはずの日本社会だが、この見事な悪循環、ものの見事な非生産性と独りよがり(=弱肉強食の論理そのもの)は、まだいき続けようとするのである。そうした存在は米国追従・対米依存というより、米軍部に追従・従属しようとする方々、あるいはその方々にただ連なろうとする人々なのかもしれない。それではもはや政治家と呼ぶことさえ無理が出てこようというものである。 その政策とはいえない政策には、「事実の隠蔽」や、「他に目をそらす」「その場しのぎのアメをばらまく」などの手法があるようだが、そんなものがこの高度情報市民社会に通用するはずもない。また、情報操作、世論操作のたぐいをもって、そのような姑息な政治をまかり通らせるようなことがあってはならない。 少し気を許せば、世界も地域社会もあらぬ方向へともっていかれる大波が襲い掛かっている時代である。メディアが目先の情報に振り回され、大局を見ることをないがしろにし、いま伝え、いま論じるべき大切なことを見過ごしてしまいがちな劣化を放置することはできない。その意味でも、広範な市民によるメディアチェックが、いよいよ欠かせなくなっている。 (JCJふらっしゅ:Y記者の「ニュースの検証」=小鷲順造) |
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