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『官邸崩壊』長谷川幸洋 (講談社、2010年5月)
第一章 官邸連続ミステリー
・重大事件は夜起きる
・「法的根拠」が官僚との戦いの大砲
・政権発足2週間が最大のバトル
・財務官僚が議論にヤジ
・合理的説明がつかない国債発行枠
・味方になる人物に杭を打つ
・事業仕分けの功績者を邪魔者扱い
・財務省が官邸から遠ざけられる
・財務省の反乱?
・「フジイの辞表をもってこい」
・官邸をないがしろにした財務省人事
・財務省と藤井大臣のあうんの呼吸
・政権の向かう先は暴風雨
第二章 民主党抱き込み工作
・タイムスケジュールをおさえる
・財務省のゲームプランにはまった鳩山首相
・軌道修正した菅直人
・民主党を手の内に納める
・財務省の利権に組み替え
・霞ヶ関の縦割り秩序を最優先
・聖域予算を削減するなら民主党とは対決しない
・国家戦略大臣を羽交い絞めにする
・「どうぞ総理のご勝手に」
・行政刷新会議には強い法的根拠を
・内閣総務官室が書いた驚くべき法案
第三章 ドーナツ化する政権
・事業仕分けは公開の人民裁判?
・大臣がばらばらだから情報操作しやすい
・お得意の「ヘトヘト」作戦
・財務省に頼って母屋をのっとられる
・藤井財務相辞任の背景
・政策決定の主導権を市場に委ねる邪道
・戦略目標は「増税」
・マニフェストと閣議決定の板挟み
・どこにも居場所が無くなった藤井財務相
・鳩山ドーナツ政権
・数字が違う二つの経済見通し
第四章 操縦されるマスメディア
・まるで閣内に宣戦布告
・一回の電話で亀井に押し切られる
・勝主計局長が激怒
・メディアが飛びつく餌をまく
・日本郵政280兆円でせっせと国債を買う?
・国税と検察はスキャンダルを知っていた
・報道の裏側に視線が向く
・検察のポチに仕立て上げる四重基準
・「報道の自立」に自覚はあるか
・政治のリアルとイリュージョン
第五章 財政と天下りを分けるな
・財務相との関係修復
・民主党の成長戦略は専務理事政策の典型
・増税より公務員給与の削減が先
・財政危機と天下り問題は表裏一体
・自治労に「血を流せ」と言えるのか
・総理大臣が小沢の代理人
・「小沢さんはひも付きで判断しない」
・政治家、官僚、マスメディアを見る視点
・鳩山首相は政局優先
・天下りポスト拡大のための政策
・報道の背景を探れ
終章 新たな政界再編の幕が上がる
・参院選で民主党は勝てるのか
・政界再編の台風の目
・日銀の傲慢
はせがわ・ゆきひろ 東京新聞・中日新聞論説委員。1953年、千葉県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、中日新聞社に入社、ブリュッセル支局長などを経て現在に至る。ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)で国際公共政策修士。財政制度等審議会臨時委員、政府税制調査会委員などを歴任。
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遅ればせながら先週読了。読み終えて発行日を見ると5月20日であったが、正直なところ、菅政権発足後に書かれたのかと思った。
というのは2010年が明けるや突如始まった副首相兼財務相(当時)菅直人、行政刷新相(当時)仙谷由人が消費税増税発言を連発・加速、これに内閣副大臣(当時)大塚耕平(10%以上の消費税増税と法人税30%以下への引き下げ発言)が加わる。これが、財務省が完全に主導権を奪回する過程でもあったことを明らかにしている。
だから菅直人が総理大臣になった時点で、既に今日の混乱は必然であったのかもしれない。菅や仙谷にしてみれば、消費税増税は半年「も」前から主張していることであり、何より「変わり身の早さが菅という政治家の真骨頂でもあった。」(P142)から。
しかし「財務省の最終的な戦略目標が何かと言えば、増税」(P130)であり、「日本にとってギリシャ危機の教訓は「まず政府は天下り問題の解決や独法行政法人など行政のスリム化をしっかりやれ」ということなのだ。」(P194)
鳩山政権は「権力中枢が真空状態になっている『ドーナツ現象』」(P137)であった。「民主党にはそもそも「脱官僚依存」を実現していく具体的戦略が描けていなかったためだ。「国を作り替える」と大風呂敷を広げた割には、しっかりとした戦略的思考と工程表が無かったのである。」(P119-120)
しかし、それ以上に、官僚、特に財務省が、巧妙に政治家を洗脳し、マスメディアを操り、政策を骨抜きにし、主導権を握っていく様は、まさかここまでという驚きの連続で、空恐ろしくなる。
これを推測や伝聞ではなく、どのメディアでも報じられたニュースと筆者が独自に取材したエピソードを積み重ね、あぶりだしていく。すると斉藤次郎氏の日本郵政社長就任や藤井財務相辞任、日本郵政の今後などにも、別の意味合いが見えてくる。筆者の厳しい問題意識は、政治家、官僚だけでなく、当然のごとくメディアにも向けられる。その意味でもここにはジャーナリズムが存在する。
政治家の発言に一喜一憂せず、政治主導の実現を阻むものの正体をよりよく知るためにも、日々のニュースを読み解くためにも、参考になる点は多く、ご一読をお勧めする。
最後に、政治家についてのくだりだけ、長くなるが引用する。
政治を観察するとき、政治家の唱えている政策がどれくらい自分にあっているか、という基準はもちろん重要だが、それだけでは実際にその政策が実現するかどうかは分からない。政治家が党内政局を生き抜いていく力=政治力も重要である。
政局を生き抜く力のない政治家が唱える政策は極論すれば、書店に行けば売っているようなものかもしれない。冷たく突き放すようだが、それくらい割り切って考えるくらいで丁度いい。単なる理念型や理想論だけでは政策は実現しない。
一方、立派な政策を唱えていても、実は権力を握ることが本当の目的であるという政治家も多い。
(中略)
この政治家はいったい、本当のところは何が目的なのか。政策を実現することなのか、それとも権力を維持することなのか。それを見極めるのは重要だ。耳触りの良い政策を訴えていても、実は権力奪取ないし維持が目的なら、権力を握ったとたんに約束を破る事態は十分に考えられる。
政策を語るべき場面で、実は政局を念頭に置いて発言している場合もある。日本の政策議論がなかなか成熟していかないのは、政治家の中で政策論と政局論が渾然一体になっているからかもしれない。政策は政策として独立して語り、政局は政局として分けて考える。政治かも国民も、そうしたほうがそれぞれの問題点がはっきりしてくると思う。
(中略)
政治家の発言や行動の裏側にある「真の意図」に目を光らせなければならない。
確かに政策と政局はそう簡単に切り離せない。政策と政局を完全に切り離してしまうと、単なる書生論議になるか、生々しい権力闘争になるかのどちらかである。
そうは言っても、ときには自分が身につけた権力や地位をいったん捨てる覚悟をしても根本的には政策に生きる。私は日本の政治が成熟するためには、そういう政治家がもっと必要だと思う。
(P209−211)
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