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運動部へ左遷させられた道新デスクが「記者はポチ」と痛烈批判THE INCIDENTS インシデンツ 正式オープン準備版
筆者 - 寺澤有
2010年 7月 04日(日曜日) 04:10
2004年度の新聞協会賞を受賞した北海道新聞(以下、道新)取材班による北海道警察本部(以下、道警)の裏ガネづくりの報道を覚えている国民は多いだろう。新聞は最大のネタ元の警察を批判しないという暗黙の了解を破り、1年間で1000本の記事を掲載し、当初、全面否定していた道警に組織的な裏ガネづくりを認めさせた。
その取材班を率いていたのが高田昌幸デスク。しょせん会社員で自分の意見を外部へ表明したがらない新聞記者にしては珍しく、『追及・北海道警「裏金」疑惑』(講談社)、『日本警察と裏金』(同)、『警察幹部を逮捕せよ!』(旬報社)という書籍を世に出したり、講演やシンポジウムで発言したりしてきた。筆者も、記者クラブ問題を考えるパネルディスカッションで同席したことがあり、当時から記者会見や記者室をフリーランスにも開放するよう訴えていた。
一方、道警は道新に屈服したわけではなかった。2004年9月、元道新室蘭支社営業部次長を業務上横領容疑で逮捕したのをキッカケに、捜査の対象を元道新東京支社営業部長や道新役員らへ広げていく。また、道警が道新だけに情報提供しないために、道新だけが重要なニュースを報道できないという、いわゆる「特オチ」(特ダネの反対の意味)の状態も続いた。
とうとう道新も音をあげて、2005年7月、高田デスクを東京支社国際部へ異動させるなど、道警にすり寄る姿勢を見せはじめた。2006年1月には、道警の要求に応じ、一部の記事に関して、「記事の書き方や見出し、裏付け要素に不十分な点があり、全体として誤った印象を与える不適切な記事と判断しました。関係者と読者の皆さまにご迷惑をおかけしたことをおわびします」という社告を第1面に掲載した。これが原因で高田デスクはけん責処分を受けている。
同年5月31日、佐々木友善・元北海道警総務部長は、前出の『追及・北海道警「裏金」疑惑』『警察幹部を逮捕せよ!』の2冊に関し、「捏造記事を掲載されたことにより著しく名誉を毀損された」として、道新と高田デスク、出版社らに、謝罪記事の掲載と損害賠償600万円を求める訴訟を札幌地方裁判所に起こした。
この訴訟の過程で、実に不可解なことがあった。2008年7月14日の第10回口頭弁論で、佐々木元部長は提訴前に行われた道新との交渉が録音されたカセットテープ14本とそれらを文字に起こした「面談記録」「電話録取書」を提出したが、そこには、道新の新蔵博雅・編集局長(当時)と早坂実・編集局次長(同)が裏取引を持ちかけているとしか思えない内容が記録されていた。佐々木元部長に対して、道新の「公式顧問」就任を要請したり、「裁判は、形の上では主張するけど、基本的には和解しかないわけです」「提訴して、一定の時期が来たら和解するという事を今日中にお互いが合意する」「限定的な一定のルールの下でのこれは出来レース」などと発言したりしているのだ。
このような会社の動きを知らなかった高田デスクの驚きや怒り、あきれは察するに余りある。
2009年4月20日、札幌地裁(竹田光広裁判長)は高田デスクらに損害賠償72万円を支払うよう命じる判決を言い渡した。現在、札幌高等裁判所で控訴審が継続している。
今年4月、筆者も呼びかけ人の1人の「記者会見・記者室の完全開放を求める会」(以下、会見開放を求める会)が活動を開始したが、同会の設立に奔走したのが高田デスクだ。70人を超える呼びかけ人の社会的立場や主義主張は様々で(もっといえば、1対1にすると、即ケンカを始める組み合わせがいくつもある)、これを「記者会見・記者室の完全開放」という1点でまとめあげた熱意と手腕はすばらしい。
とはいえ、呼びかけ人で現役新聞記者は高田デスク、ただ1人。高田デスクは会社の垣根を越えて、見込みがありそうな現役新聞記者らを誘ったが、「最後は、みんな逃げていった」という。
先に《いまだに記者会見と記者室の開放に抵抗する記者クラブメディア》の記事でお伝えしたとおり、会見開放を求める会は全国231社の記者クラブメディアに対し、記者会見と記者室をフリーランスなどにも開放するよう申し入れ、その回答を求めた。しかし、回答率は23・8%と低く、いまだに記者会見や記者室を独占したいという記者クラブメディアの暗黙の意思が感じられた。道新は無回答だった。
会見開放を求める会の活動が呼び水となったのか、7月1日付けで高田デスクは道新札幌本社運動部へ異動させられた。本人が「駆け出し時代も含め、高校野球の予選すら取材したことのない、まったくのスポーツ音痴。原稿のてにをはを直すことぐらいしかできない」と言うほどだから、あからさまな左遷人事である。
高田デスクは東京から札幌へ引っ越す直前、ジャーナリストの岩上安身さんの2時間半を超えるインタビューに答え、それがインターネットでノーカット動画配信されている。
高田昌幸インタビュー(聞き手:岩上安身)
この中で高田デスクは「(新聞)記者はポチ。飼い主様のポチですから。会社の幹部、取材先のポチになろうとする」と刺激的な発言をしたうえで、「(新聞と権力は)いつも二人三脚で、いつもベタベタで、それを『記者クラブ』という名で囲って、外向きには、『権力の監視だ』なんてカッコいいこと言いながら、ウソばっかり」などと痛烈な記者クラブメディア批判を展開した。本記事で取り上げた道警裏ガネ問題の顛末も、自らの口で説明している。
記者クラブメディアの惨状が生々しく語られた貴重なインタビューである。ぜひとも視聴を勧めたい。
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