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7日、ゴルバチョフ元ソ連大統領が鳩山由紀夫首相を表敬訪問。時事通信によると、首相が「(マスコミなどから)批判されている」と弱音を吐くと、「それに耐えていくのが指導者の務めだ」と激励した、という。 毎日新聞が11日付の社説で取り上げているように、「鳩山政権発足以来、まだ3カ月もたたないのに、連立与党3党の関係がぎくしゃくしてきた」と伝えられている。連立内閣のぎくしゃくの要因として、09年度2次補正予算の規模をめぐる一件、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題の件があがっている。 (JCJふらっしゅ:Y記者のニュースの検証=小鷲順造)
同社説は、<普天間問題では社民党が連立離脱の可能性を示唆したことが、首相にとってかえって「渡りに船」だったようにも思える。首相は現行の辺野古以外に代替地を探すよう求めているが、残念ながら展望が開けているようには見えない。「連立維持のため」というのは、実は首相自身が結論を先送りする格好の口実となったのではないかということだ>と指摘して、<もはや八方美人ではいられない。首相が強い指導力を見せないと乗り切れない年末がやってきた>と結んでいる。 普天間基地をめぐっては外務、防衛両相を軸に政権内部、民主党内部の多様な意見の違いや揺れが表面化、それに福島瑞穂消費者・少子化担当相が連立のパートナ社民党党首としてグアム・硫黄島を移転先として掲げて釘をさし、連立離脱もちらつかせて同県名護市辺野古に移設する現行計画に反対。毎日新聞社説がいうように、<数のうえでは圧倒的に少数の社民党と国民新党が持論を強く主張し、これに民主党が振り回される>という構図が浮かび上がるなか、10日、米軍普天間飛行場を抱える沖縄県宜野湾市の伊波洋一市長は共産党の志位和夫委員長を党本部に訪ね、同飛行場の移設問題について「米側に無条件撤去を求めるべきだ」との認識で一致。 さらに民主党の小沢幹事長が大訪中団を率いて胡錦涛国家主席と会談、同じ日、民主党の渡部恒三前最高顧問や、岡田外務大臣、それに仙谷行政刷新担当大臣らが10日夜に会談し、沖縄のアメリカ軍普天間基地の移設問題など、難しい政治課題が山積するなかで、鳩山政権を協力して支えていくことを確認(→NHK)、と種々、輻輳した動きが出ている。 これに対して自民、公明の前政権与党からは「年内に結論を得るべきだ」「沖縄県民に対する裏切り行為だ」といった批判の声(→NHK)があがるが、与党及び共産党側から出てくる情報の厚みと迫力には遠く及ばない。朝日新聞も10日付の社説「普天間問題― 日米関係の危機にするな」で、日米合意を見直して再交渉すべきだという人が半数を超えた朝日新聞の最新世論調査の結果にふれて、<沖縄県民だけでなく、こうした世論の動向も軽視されるべきではない>と、ようやく書き込んだ。 沖縄の米軍基地の問題でぶよぶよ、ぷるぷるとゼリーのごとく揺れる民主党。そこに支軸を加えようとする社民党、財政問題で存在感を明確に示す国民新党。小沢大型訪中団(これも小沢氏の安全保障政策をめぐる持論についての議論をわきにおけば、時代に対応して米国との関係を再構築していく上で非常に重要な動きだ)に、共産党と沖縄県の地元の連携。こうした動きに超党派のシナリオが存在しているようには思えないが、強引に大局的に見ると、案外、オバマ米政権を取り巻く米軍産複合体筋から出てくる「沖縄基地は現在の計画どおり」とする「反撃」を懐柔する絶妙のコンビネーションのように見えないわけでもない。 鳩山由紀夫首相はインドネシアで開かれている「バリ民主主義フォーラム」で、「民主主義や人権など、普遍的な価値を重視する日本は、今回の会議を重視し、民主主義の普及に向けた取り組みに積極的に貢献していく」(NHK)と述べて、民主主義の普及を後押しする発言をおこない、「東アジア共同体構想」の実現に向けた決意を強調している。頼りない、八方美人、指導力不足を指摘されるなか、ぶよぶよ、ぷるぷるとゼリーのごとく揺れる政権と民主党をどこへいざなうか。米政権は国防総省や軍を軸として広がる戦争ビジネス推進勢力をいかに懐柔・攪拌しながら、ブッシュの戦争を終焉させつつ核廃絶への道を描き出せるか。そこに日本の新たな政治が欠かせないことは明白である。日本のメディアの旧態依然ほど、ようやく世界がたどり着いた反ブッシュ、反新自由主義時代の着実な足取りを脅かすものはない。 その担い手、導き手はもはやブッシュ米前政権にへばりついて戦争路線を歩んだ自公の勢力ではない。 AFPによると9日、米領グアムのフェリックス・カマチョ知事は、沖縄の米軍普天間飛行場のグアム移設の可能性について、こう語っている。 「普天間のすべてを受け入れるのは、限られた資源と収容能力の面から不可能だ」 こう語った上で、普天間問題をめぐって日米間の亀裂が深まっていることについて、問題は解決できると信じている、と語ったという。 北沢防衛相はグアム訪問をへて、グアムへの移設に否定的な考えを示した。この背景にカマチョ知事のような姿勢があるのだろうと思われるが、沖縄だって同じであることを忘れるわけにはいかないだろう。沖縄は、限られた資源と収容能力を超えて半世紀以上にわたって米軍基地を抱えさせられている。沖縄の資源と地域社会の福祉だけが、これ以上無制限にふみにじることが許される理由はない。連立与党の社民党は、防衛大臣のこの姿勢に対して「グアムに行ってみて、だめでしたといえば帳面が消えるかなと、そんなことを考えているんですかといいたい」(同党重野幹事長)と批判を強めている。 来年度予算案の概算要求の「事業仕分け」では、駐留米軍の経費「思いやり予算」についての見直しの方向が定まってきているが、その見直しの眼目を「基地で働く日本人の給与水準」の引き下げにおくようでは本末転倒としかいいようがない。密約まで結んで巨額の資金を投じて米軍の駐留財政をささえて、沖縄の資源と地域社会の福祉の向上に重く制限を加えてきた以上、地域社会が基地に依存するほかないいびつな財政構造を内包するようになるのは必然である。そうなることを地域社会が拒むのは当然だが、それを無理強いされてきた沖縄など駐留米軍を抱える地域社会を、さらに鞭打って、「思いやり予算」の削減と称することなど到底許されることではない。 宜野湾市の伊波市長との会談で、共産党の志位委員長は、「普天間基地のアメリカ軍海兵隊は、日本の安全や平和の『抑止力』ではなく、イラクやアフガニスタンで行ってきた戦争に出動した『侵略力』であり、日本にはまったく必要ない。普天間基地は無条件撤去が当然だ」(NHK)と語っているが、地域の資源と福祉の観点同様、この視点も重要だろう。資源と福祉の未来への可能性をふみにじられながら、さらに地域経済が基地に依存することを余儀なくされ、地域市民個々人の生活と労働がそこへ糾合される。それがそのまま「侵略戦争」に直結しているとなれば、地域社会はそのまま「侵略戦争」に加担することになり、心の中まで「侵略勢力」に侵食され続けることになる。 9日、鳩山首相は、普天間基地の移設問題について、「沖縄の皆さんの暮らしにかかわるたいへん大きなテーマであり、慎重に判断しなければならない。難しい局面だということは認識しているが解決策はある」(NHK)と語っている。そして翌日、米国側から、基地の移設問題は日米間で設置した作業部会こそが協議の場であり、COP15における日米首脳会談は現実的ではないとする姿勢が打ち出された。そのCOP15は途上国、新興国、先進国の対立が入り乱れて、全体会合が2日連続で中断する事態となっている。 米国に依存・従属してきた従来の自民党政治の延長政治から抜け出せず、政権に基地問題の「早期決着」を求めるトーンばかりが新聞や放送で目立っているが、民意は「日米合意を見直して再交渉すべき」にある。メディアの論調と民意の恐るべきずれについて、私たちはもっと自覚的であるべきだろう。市民とジャーナリストは連携して、この情報環境のゆがみを糾さねばならない。そのなかで週刊朝日12月11日号(1日発売)の「アメリカの本音はグアム移転 在日米軍撤退のシナリオ」の記事は群を抜いて光った。 鳩山首相の弱音に、「それに耐えていくのが指導者の務めだ」と言葉をかけたゴルバチョフ元ソ連大統領。鳩山首相は歴史を動かす首相となれるのか、それとも旧来型のただの日本の政治家の一人で終わるのか。それはこの政権交代を機に日本社会が蛸壺から脱して、世界にその存在感と存在価値を示すことができるかどうかと、奥深いところでかかわっているようにも思える。世界同時不況の第二波がおそいかかろうとしているいまこそ、核の問題、米軍基地の問題、人権の問題、環境の問題、地球上のあらゆる人々の生活と労働の問題に焦点を当て続ける必要がある。一歩間違えれば紛争と戦争が待ち構える暗闇の時代である。私たちは広く連帯を広げて、そこへ足を踏み入れてしまうことなく、現状を雄雄しく打破して、未来の創造にいそしむべきときを迎えている。 (こわし・じゅんぞう/ジャーナリスト会議会員) |