★阿修羅♪ > マスコミ・電通批評10 > 132.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
http://www.kinyobi.co.jp/backnum/antenna/antenna_kiji.php?no=839
映画や小説をそのまま現実の出来事ととらえる人は稀であろう。だが、そう思わない人が航空業界の一部に存在するようだ。 「一〇月二四日公開の映画『沈まぬ太陽』がマスコミでほとんど宣伝されません。渡辺謙主演、製作費二〇億円の大作だが、スポーツ紙も囲み記事扱い。テレビでも数十秒。日航がとりあげないようにマスコミへと圧力をかけているようです」(映画ライター) 原作は『不毛地帯』『華麗なる一族』で知られる山崎豊子氏。同作は、一九九四年から五年間にわたり『週刊新潮』で連載され、単行本は二〇〇万部を超すベストセラーとなった。 映画化にあたっては二〇〇〇年、徳間康快大映社長(故人)が東映との共作で乗り出すも頓挫。角川ヘラルド映画製作によって〇八年夏にも公開されるはずが一年以上も延びた。 「映画化への理解を求めるために角川歴彦会長、井上泰一社長らが直接日航に尋ねた。しかし、日航側との話し合いは折り合いを見せず、『原作のまま映画化すると、名誉毀損の恐れがある』と警告文が三度にわたって通達されるなど物別れのまま」(角川関係者) その原作の粗筋はこうだ。大手航空会社のエリート社員、恩地元(主演、渡辺)は組合委員長として会社と闘う。会社と対立したことで中東やアフリカといった海外へと一〇年近く配転させられ、帰国すると御巣鷹山のジャンボジェット墜落事故の遺族担当として駆け回る。人を人とも思わぬ厳しい仕打ちや政官との癒着、保身や隠蔽に走るトップの倫理観の欠如を厳しく追及した内容であった。 「恩地を引き立てるために経営陣が悪役として描かれている面もあるが、ドル先物買いやホテル買収の失敗についての経営陣の失態は当時から批判されていた。私腹を肥やし、社内抗争に明け暮れるダメな経営陣の姿が克明に描かれている。細部に至るまで取材が行き届き、フィクションながらも、これが日航の現実なのでは、と感じさせる力がある」(前述の映画ライター) 一八日、都内で「『沈まぬ太陽』の公開を成功させる応援団 総決起集会」が開かれた。会には三宅久之氏、高杉良氏、なかにし礼氏など著名人が並ぶ。その壇上で新潮社の松田宏常務は日航側の古典的な懐柔策を暴露した。 「連載をしていた当時、お酒やゴルフに誘われた」 しかし、連載を止めないと見るや一転し、 「『週刊新潮』は国際、国内線の機内サービスから外された。別のページで池田満寿夫さんの絵を掲載しており、芸術性の高いものであったが、『このようなエロチックなものをお客様にお見せできない』との理由を持ち出した」 余談だが、三谷幸喜監督の『ラヂオの時間』でも航空会社へおもねる描写がある。脚本を無視した役者が飛行機の墜落を語ってしまうと、唐沢寿明演じるプロデューサーが慌てふためき、墜落していなかったことにするシーンがある。ファッション雑誌の編集者は匿名を条件に語る。 「JALはとにかくうるさい。少しでも批判記事を書くとすぐに広報部長が『ご説明にあがります』と乗り込んでくる。記事のチェックも厳しくNG ワードは御巣鷹山と旧日本エアシステム出身者の冷遇ぶりにふれること。ただ、いまJALにはカネがないので雑誌広告はうってくれない。それでもこの先、業績が回復したことを考えてむげに出来ない」 JALは四月から六月までの四半期で九九〇億円の巨額の赤字を記録。今月一六日、株価は一〇〇円まで売られ、上場以来、最安値を更新した。破綻寸前まで追い込まれている中、水面下でこのような動きをしているようだ。「この映画をお茶の間で見せたくないようだ。映画上映から二年ほどでテレビ放映する。しかしすでに各民放へと『この放映権を買わないように』と根回しをしている」(民放のある幹部) 今の日航に、第二第三の恩地は居ないのだろうか。作家の高杉良氏はこう語る。 「そもそもマスコミがだらしない。恩地のような勇気ある決断ができないのか」 日本航空広報部は角川映画及び東宝に文書で三度にわたり制作・公開の中止を求めてきたとし、「作り話を加えて御巣鷹山事故を映像化し、商業的利益を得ようとする行為は、ご遺族の心情を顧みないものであると考えております」「尚、弊社よりマスコミに対して圧力をかけた事実はございません」などとしている。 岩崎大輔・ジャーナリスト |