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全国民必読 慶應医学部が「長寿500人追跡調査」で解き明かした 「100歳で元気ピンピンな人」の秘密
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35792
2013年05月19日(日)週刊現代 :現代ビジネス
百寿者人口が5万人を突破した日本。だが、優れた医療を後ろ盾にしても、100歳を元気な状態で迎えるのは難しい。そんな中、最新の研究で、ついに健康長寿の命運を握る「鍵」が解き明かされた。
■なぜ日本人は長生きか
「我々『百寿者研究チーム』は、100歳まで健康長寿を保つ秘訣と深くかかわる、あるホルモン物質をついに見出したのです」
こう語るのは、慶應義塾大学医学部老年内科学教室の新井康通医師。
日本の100歳以上の高齢者は、ついに5万人を突破した。なぜ100歳人口がこれほどまでに増えたのだろうか。そして、100歳まで元気に生きられる人と、その前に亡くなってしまう人の間には、どのような「違い」があるのだろうか―。
そのような素朴な疑問をきっかけに、新井医師が所属する慶大医学部老年内科と東京都健康長寿医療センターが、共同で100歳老人の健康調査に乗り出したのは'00年のことだった。当時はまだ、100歳以上の長寿者は全国でも1万人足らず。調査チームは、都内に住む百寿者約1200人をピックアップし、一軒一軒調査依頼書を郵送する地道な作業から、研究をスタートさせた。新井医師は、当時を振り返ってこう語る。
「1200人にお願いをして、直接話を聞くことができたのは、そのうちの300人でした。アンケート調査に協力してくれた方を含めれば、500人のデータを集めることができました。
調査では、食事や性格、病歴、生活習慣などの聞き取りと、血液検査をし、心電図をとりました。一人の調査に2時間近く費やし、調査がすべて終わるまでに丸4年かかりました。
当時、世間は'90年代の『きんさんぎんさん』ブームの余波が続いており、『100歳は元気』というイメージが広がっていました。そして、実際に調査をしてみると、なんと100歳以上の人たちの5人に一人が一人でお風呂に入ったり、自分で着替えをしたりと、完全に自立した生活を送っていることが分かったのです」
新井医師の共同研究者で、300人の訪問調査に同行した大阪大学大学院人間科学研究科の権藤恭之准教授は、百寿者たちの印象についてこう語る。
「百寿者の方たちは、皆さんとにかくポジティブ。あるお婆さんは、電動のカートが欲しいと言って、それに乗って畑へ行っていた。操作が結構難しいのに、自らチャレンジするんです。こんな元気ピンピンな人はもちろんですが、寝たきりの人も、驚くほど気持ちが前向きで明るいのです。たとえば、食事のとき以外はずっと布団で寝ているお爺さんがいました。『ずっと布団の中にいて、つまらなくないですか?』と質問したら、『自分が若い頃に作った歌を歌ったり、昔のことを思い返したり、いろんなことを考えたりしている。だから少しも退屈じゃないよ』という返事が返ってきました。歳をとると、若い頃は幸せと感じられない状況でも幸福感を得られるように、いわば心が噦進化器していくようなんです」
心穏やかで、ポジティブ。これが百寿者の共通点である。ただ、それだけでは寿命を左右するほどの決定打にはならなかった。
■「奇跡のホルモン」があった
成果を挙げたのは、身体面での調査だった。100歳ともなると持病を持つ人の割合は高く、病歴調査の結果、97%が何らかの慢性疾患を抱えていることが判明した。その内訳は高血圧62%、骨折46%、白内障46%、心臓疾患29%、呼吸器疾患21%、脳血管障害16%、がん10%。しかし、新井医師らはここである噦異変器に気付く。
「なぜか、糖尿病の罹患率だけは6%と極めて少なかったのです。日本は、成人の4人に一人が糖尿病予備軍といわれる糖尿病大国。70歳代の糖尿病罹患率は20~30%ですから、いかに6%という数字が少ないかは一目瞭然でした。さらに、110歳以上の超高齢者20人にいたっては、糖尿病はわずか一人しかいませんでした」(新井医師)
百寿者たちが、100歳まで生きることができた理由―。そこには、死亡リスクの高いがん、脳卒中、心臓病の発症を促す「万病の元」、糖尿病と無縁だったことが、大きくかかわっているのではないか。では、彼らが糖尿病にならない理由は一体どこにあるのだろうか。そう考えた研究チームが着目したのが、「アディポネクチン」というホルモン物質だった。新井医師が続ける。
「アディポネクチンには、インスリンの働きを良くし、糖代謝を活発にすることで糖尿病を予防したり、動脈硬化を防ぐ作用があることが、これまでの多くの実験で明らかになっていました。
そしてやはり、私たちが調査した百寿者の9割が、アディポネクチンの血中濃度が平均より高いという結果が出たのです。人体のアディポネクチンの血中濃度は通常5~10μg(マイクログラム)/mlですが、百寿者は、その倍以上の20μg/mlもありました。大量のアディポネクチンが分泌されていたから、彼らは糖尿病を免れ、結果的に大病にも罹らなかったのだという考えに至ったのです」
100歳まで生きられるかどうか、その命運を握る重要な物質であると分かったアディポネクチン。そこで気になってくるのが、今自分の体内でアディポネクチンはどれくらい分泌されているのか、ということだ。正確な値を知るには、病院で血液検査を受けるしかない。だが、アディポネクチン値が平均より高いか低いかということは、自己チェックでも知ることができる。糖尿病専門医で、アディポネクチン研究の第一人者である岡部クリニック院長・岡部正医師は言う。
「男性は20歳、女性は18歳までに、骨格、筋肉、その他、体のすべての機能が完成します。その後、普通の生活をしていて体重が増えた分は、ほとんどが脂肪の重さです。この増えた脂肪が、男性は10kg、女性は8kg以上になったら、アディポネクチンの分泌量は半分以下になってしまっていると考えてください」
■75歳が運命の分かれ目
もう一つの目安になるのは、ウエストのサイズだ。
「ウエストと身長の比率と、アディポネクチン値との関係を調べてみたところ、ウエストが身長の半分以上の値になると、アディポネクチンの分泌が少なくなるということがわかりました。
1400人のアディポネクチン量を測定した結果によれば、75歳以上から、アディポネクチン値が高い人の割合が増えるということも分かってきています。このことから、アディポネクチン値が平均より低いと、75歳まで生きられる確率が低い可能性が出てきているのです」
ただ、現時点で平均より低かったとしても、そこで長寿の夢を諦める必要はない。今からでも、アディポネクチンを増やすことはできると、岡部医師は語る。
「アディポネクチンは、脂肪細胞から分泌されるホルモン物質です。脂肪から出るのならば、太った方がたくさん分泌されるのではないか、と思われがちですが、それは逆です。内臓脂肪が増えれば増えるほど、アディポネクチンの分泌は減ってしまうのです。だから、もっとも大切なのは、太らないよう、特に内臓脂肪を燃やす運動を心がけることです」
また、運動だけでなく、食品でもアディポネクチンは増やせる。
「大豆に含まれるβ‐コングリシニンはアディポネクチンを増やす作用があるので、豆腐や納豆を積極的に摂取するといいでしょう。ただし、豆乳はβ-コングリシニンが含まれるおからの部分が除かれているため、あまり効果はありません。また、魚、特に青魚の脂肪に多く含まれるEPAも効果があります。代表的なものは、ウルメイワシ、アジ、サンマ、サバなどですね。ただし、高温で調理すると脂肪が溶け出してしまうため、揚げ物はEPAの摂取には向きません」
実際、健康な百寿者はどのような食事を摂っているのか。都内に住む中原せいさん(仮名)は、103歳。アディポネクチン値は、19μg/mlと非常に高い。
「昔は魚中心の食事でしたが、70歳から同居した息子夫婦の影響で肉も食べるようになり、今食べているメニューになりました」
右上の表は、彼女の1週間の夕食メニュー。先ほど紹介した、アディポネクチンを増やす食品ウルメイワシやアジなどの青魚や海藻を頻繁に摂取していることが分かる。やはり、長寿の人には、それなりの理由があるのだろう。
百寿者研究を終え、長寿とアディポネクチンの関係性を解き明かした慶大医学部老年内科は今、調査年齢をさらに引き上げ、105歳以上の長寿者を対象にした研究を進めている。
「現時点で500人ほど調査して分かったことは、110歳まで生きている人のほとんどは、100歳の時点では日常生活に不便のない、自立した生活を送っていたということです」(前出・新井医師)
■長生きする人の共通点
高齢化がますます進む日本において、個々人が最後まで自立して健康で生きることは一つの大きな課題となるだろう。なにより、いくらアディポネクチン値を高めて長生きしても、運動機能が弱まって寝たきりになったり、認知症になって周りのことが分からなくなってしまっては、元も子もない。そこで、順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授の白澤卓二医師に、今日からでも簡単に始められるボケない、寝たきりにならないコツを伝授してもらった。
「一番手軽に始められるのは、咀嚼運動でしょう。何を食べるにしても30回は噛む。顎を動かすと、記憶を司る脳の海馬付近、意思や思考の機能を担う前頭葉が活性化します。また、脳トレとして、2日前の献立を思い出す習慣作りもいいでしょう。食べ物では、羊の肉に含まれるカルニチンや、ウコンに含まれるクルクミンが認知症予防に有用です。ウコンはカレー粉に入っているので、カレー粉を薬味のように普段使いするのがお勧めです」
一方、寝たきりにならないためには、一にも二にも運動と、白澤医師は言う。
「筋肉というのは、何歳になっても鍛えることができます。無理のない筋トレで足、腰を鍛えましょう。ウォーキングをするなら、15分ずつ、早歩きとゆっくり歩きを繰り返す『インターバルウォーキング』が効果的です。ゆっくり、早く、ゆっくりの順で、全部で45分のウォーキングですが、ただ歩くより足腰への負担がかかり、効果的です」
さて、これら「100歳への準備運動」を無事に終えたら、いざ「元気ピンピン100歳人生」に突入だ。実際、元気な百寿者たちは、どのような生活を送っているのだろうか。彼らの話を聞いてみた。
今年で100歳を迎えた岡山に住む榊茂さん(仮名)は、「若い頃は随分もてた」と笑う往年のプレイボーイ。熟年離婚を経て、40年前から一人暮らしを続けている。
「独り身だからって、退屈したことはありません。町内会の若い衆を引き連れて年に何回も旅行に行っていますからね。若い、といっても70代だけどね(笑)。日帰りすることもあるし、1泊することもある。地元の名所はほとんど行き尽くしました。旅先では、愛用のデジカメで記念写真を撮ります。昔はライカだったんだけど、さすがに重くて、持ち運びが億劫になっちゃった。僕も歳ですねぇ(笑)」
埼玉県に住む前川トキさん(仮名)は、今年で御歳103歳。30代で夫をがんで亡くし、以来女手一つで3人の息子たちを育てあげてきた。現在は長男夫婦と同居しているが、食事は自分で作り、風呂も助けを借りずに入っている。
「私は一年中、着物しか着ませんよ。パンツなんて生まれて一度もはいたことはない。下は、腰巻きさ(笑)。でも、新しいものは大好きよ。新しいテレビ(液晶テレビ)が出たときは、すぐに『買ってくれ』と孫にせがみました(笑)」
慶大医学部の百寿者研究チームは、このような長寿者たちの性格についても調査し、男女ごとの性格に幾つか共通点があることを発見した。
調査結果によれば、「男性は飄々としたマイペースタイプで、凝り性でコレクションなどを好む」。女性は「一家の中心的な人物で、家族の世話を一生懸命することに生き甲斐を感じるタイプ」。また、男女ともに「依存心が少なく」「自分の人生を肯定的にとらえている」という点が共通していたという。まさしく、先に紹介した榊さん、前川さんはピタリとこれに当てはまった。
また、前出の権藤准教授は、「誠実性」も長寿と深く関係していると指摘する。
「誠実性とは、物事をきちんとこなし、自己鍛錬できる性格のことです。こういう人は、たとえ病気になってもきちんとお医者さんの言いつけを守り、薬も規則正しく飲む。体に悪いことはしないよう心がける。だから、誠実性が高い人は、死亡率が低い。これは世界的に認められています。我々の研究で明らかになった性格の特徴は、健康で長生きしたいと願うシニア世代に大いに参考にしていただければと思います」
百寿者研究が進み、長生きの秘訣が次々に解き明かされてきた。だが、人間にはまだまだ未知の部分が多い。本誌が取材を進める上で出会った超高齢者たちの中には、およそ体にいいとは思えぬ食習慣、生活習慣を続けながらも元気に生活を送っている驚くべき人々もいる。これを、右の表にまとめた。こういった特殊なケースについて、前出の岡部医師の見解はこうだ。
「このような生活を送っていても100歳近くまで生きていられるのは、生まれつき、アディポネクチン値が高い体質の方だからです。普通の人がこんな食生活をしていたら、とても長生きできませんよ」
こんなに無茶をしても長生き「100歳長寿」意外な生活習慣
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■夢の長寿薬が誕生する日
とはいえ、高齢者にとって、好きなことを我慢しないことも大切だ。ストレスは、免疫力を低下させる大きな要因となるからだ。あまりに度が過ぎれば問題になるが、彼らのように、結果的に健康にプラスの影響を与えるケースもあるということだろう。
では、アディポネクチンを大量に取り込めば、誰でも、彼らのような奔放な生活をしても100歳まで生きられるのだろうか。
「残念ながら、今はまだ薬として投与する方法がありません。アディポネクチンはタンパク質なので、たとえばサプリにして飲んでも、胃で分解されてしまうんです。また、アディポネクチンの血中濃度を高く保つためには、点滴で血管に直接投与しようとしても、ずっと点滴をしていないと効果がなくなってしまいます」(岡部医師)
だが、岡部医師によれば「今、世界の医薬品会社の間で、アディポネクチンを増やす新薬の研究開発競争が激化している」という。
「たとえば、iPS細胞から長寿の人の脂肪細胞を培養し、どのような成分がアディポネクチンの分泌を調整しているのかを研究すれば、アディポネクチンを増やす新薬の創造につながります」
もし将来、そのようなアディポネクチンの新薬が生まれた場合、我々はどのような恩恵を受けることができるのだろうか。
「その薬を投与すればアディポネクチンが増えるのだから、ダイエットや運動などで無理してやせる必要はなくなります。また、アディポネクチンは最近、抗がん作用も期待されているので、肥満と関連する大腸がん、乳がん、腎臓がんなどの予防効果も期待できます。なにより、遺伝的にアディポネクチンの少ない『低アディポネクチン血症』の人にとっては、これ以上の朗報はないでしょう。もし新薬が出来れば、そのインパクトはバイアグラが登場した時以上になると思いますよ。なにしろ、長生きを約束してくれる夢の薬なのですから」(岡部医師)
日本は世界一の長寿国だ。だがその反面、世界一寝たきり人口の多い国でもある。長寿ホルモン・アディポネクチンが、日本を本当の健康長寿国に導く未来は近いかもしれない。
「週刊現代」2013年5月11・18日号より
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