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研究 なぜ長野は日本一の長寿県になったのか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35599
2013年05月03日(金)週刊現代 :現代ビジネス
昔は脳卒中の死亡率No.1/がんセンターもなし/海がないから新鮮な魚は食べられない/それなのになぜ?
今年、厚労省が発表した平均寿命。長野県が初めて男女ともに1位に輝いた。なぜ「長寿県」になれたのか。我々が真似できることはないのか。アンチエイジングの第一人者・白澤卓二医師が伝授する。
■住めば身体が活性化する
そもそも長野県は、以前から長寿県だったわけではない。昭和40年の調査では、男性の平均寿命は68・45歳で全国9位、女性は72・81歳で26位。なかでも、当時は脳卒中の死亡率が全国1位だった。いったい、なぜ長野は寿命を延ばすことができたのか。
この謎を解明すべく、順天堂大学大学院教授の白澤卓二医師に話を聞いた。5年ほど前から毎月長野へ通い、長寿研究を続けている白澤医師は、近著『長寿県 長野の秘密』(しなのき書房)でも、その研究成果を披露している。
「長野が長寿の県として注目されてきたのは、ここ2~3年ですが、そのきっかけは50年ほど前にさかのぼります。当時、脳卒中の死亡率がトップクラスだったのは、長野県民の塩分摂取量の多さが大きな原因でした。長野は海に面しておらず、冬が厳しいため、食物を保存するために塩辛い食べものが多かった。それが高血圧を引き起こし、脳卒中につながっていたわけです。これをなんとかするために、昭和20年に長野に赴任した若月俊一先生という医師が、『予防医学』の考え方を広めていったのです」(白澤医師/以下同)
こうして、まずは塩分を控えるための取り組みが始まった。医師だけでなく、保健師による健康指導や、生活習慣病予防のための講座が積極的に開かれた。野沢菜や味噌汁の塩分濃度を減らすための運動が県ぐるみで行われていったのだ。
が、長寿のためには減塩すればいい―そんな単純な話ではない。長野には、さまざまな「長寿の秘訣」が潜んでいるという。
まず挙げられるのは、「環境」だ。長野は、日本アルプスや八ヶ岳など日本を代表する高山に囲まれており、長野にある農地はほとんどが標高300m以上に位置する。必然的に、平地よりも気圧は低くなる。それがどう影響するのか。
「細胞内にあるミトコンドリアの活性に関係してきます。ミトコンドリアは、ほとんどの生物の細胞内にある小器官ですが、酸素をつかって炭水化物などを分解し、エネルギーを生み出す重要な役割を担っています。
気圧の低いところでは、肺の中の酸素分圧が低くなり、血液中の酸素濃度が下がる。すると、全身の細胞への酸素供給量も低下します。そうなると、ミトコンドリアは少ない酸素で効率的にエネルギーを生成しようと、活性を上げるのです。これは、陸上選手が行う高地トレーニングと同じ理論です」
通常、歳を取るほどミトコンドリアの活性は下がるのだが、高地にいる長野の人は、日常生活を送りながら、トレーニングをしているのと同じ環境にあるといえる。
一見、厳しいように思える長野の環境は、人体だけでなく、そこで育つ植物にも良い影響を及ぼすという。
「高山村や茅野市、佐久市など多くの市町村では、冬の冷え込みが厳しいだけでなく、一日単位で見ても、昼夜の温度差がかなりあります。これが、野菜などの植物を強くするんです。
過酷な環境で栽培された植物ほど、抗酸化作用や免疫力を高める栄養素・フィトケミカルをより多く含んでいます。代表的なものには、ポリフェノールやカロテンなど。つまり、厳しい環境で育った野菜のほうが栄養価が高いのです」
野菜を選ぶときには、長野など寒暖差の大きい地域で育ったものを選ぶとより良いということになる。
環境的な要因で白澤医師がとくに注目しているのが、意外なことに「海がない」という点だという。従来、研究者の間では、海に囲まれた地域こそが健康長寿であると考えられてきた。魚の消費量が多いからだ。魚には、血液サラサラ効果で心臓病などの予防に良いオメガ3脂肪酸(EPA、DHAなど)が豊富に含まれており、健康によいとされている。
「長野には海がなく、魚の消費量も低い。なのに、心臓病の死亡率が低いんです。長野によって、長寿に海は必要ないということが示されたとも言える。
ただし、オメガ3に効果がないということではありません。我々が長野の人の血液を調べたところ、血中のオメガ3濃度は高かった。これは、魚だけでなくエゴマ油(しそ油)などにもオメガ3は含まれているので、長野の人はそうした野菜から摂取していると考えられるのです。
もうひとつの推測は、海の汚染が深刻になっていて、海に囲まれた地域の人の寿命を縮めているということ。魚を食べる人間に、悪影響が及んでいる可能性もあります。長野は、魚を食べないからその影響が小さいのかもしれません。きちんと調査しなければわかりませんが、事実、海に面した富山県民の毛髪ミネラルを調べると、水銀レベルが高いのです」
■なぜ沖縄は急落したか
昔は、海に囲まれて新鮮な魚をたくさん食べていた人が健康になれたが、環境が変動し、過去の常識が覆されてきている。
沖縄の「長寿神話」もその一つ。1970年代から30年近く、平均寿命の首位を守り続けていた沖縄だが、現在では女性は3位、男性に関しては30位と急落している。これには、ファーストフードなど食の欧米化が主な要因として挙げられるが、海洋汚染も、その一因となっているのかもしれない。
ちなみに、長野ではファーストフード店もコンビニも非常に少ない。需要がないからだ。
「たとえば高山村には、標高の一番低いところにコンビニが1軒あるだけです。代わりにあるのはお蕎麦屋さん。野菜や果物は自分たちで作って自給自足していますから、必要なものがあればたまに街に買い出しに行けばいいからです」
長寿の秘訣として、次に挙げられるのは「生きがい」だ。白澤医師も「生きがいがあるかないかが寿命に大きく影響する」と言うが、長野には、それを示す要素が数多くある。
次ページの表に、長野と平均寿命が最下位の青森県を比較した表を記した。青森の人には厳しい結果だが、これが現実と思って受け止めて欲しい。ここで注目すべきなのは、高齢者の就業率、公民館数、博物館数、ボランティア参加率、旅行・行楽に行く人の割合だ。長野ではすべて10位以内に入っている。
「毎日変化のある生活を送り、感動したりときめいたりすることで脳は若返ります。生きがいが意欲や好奇心の源になって、精神的にも明るくなっていくのですが、高齢者の場合はとくに『日々何かすることがある』という状況そのものが、いつまでも健康でいられる秘訣なんです」
■毎日、紫外線を浴びている
毎日外に出歩くことで、もうひとつ、良いことがある。紫外線を浴びることが、健康長寿につながるのだ。
紫外線はシミの原因になるだけでなく、皮膚がんにもつながるからよくないのでは、と思う人も多いだろう。だがそれは、誤った情報だと白澤医師は主張する。
「ヒトは、紫外線を皮膚に浴びることによって、ビタミンDを作りだすことができるので、日光には当たるべきなんです。ビタミンDが合成されれば、骨粗しょう症や乳がんなどのがん予防にもなることが証明されています。
紫外線で皮膚がんになる、という通説の根拠となっているのはオーストラリアの論文で、日本人にはほとんど当てはまりません。皮膚がんになるリスクよりも、紫外線を浴びずに、骨粗しょう症から寝たきりになったり、がんになったりするリスクのほうがずっと高い。その点で、長野の人は、毎日外へ出て畑や果樹園で仕事をしているから、病気にもなりにくいのです」
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長野の長寿の理由が、徐々に理解できてきただろうか。健康で長生きするには、長野に移住するのが一番いいのかもしれないが、なかなかそうはいかない。そこで、他県に住んでいても健康長寿に近づける方法を紹介していこう。
まず、もっとも始めやすいのは「食事」の習慣だ。
長野ではまず、野菜摂取量が日に379gと全国でもっとも多く、りんごやぶどうなどの果物摂取量も多い。また、食事にかける時間も、104分と非常に長い。これは、寿命を延ばす「長寿遺伝子」のスイッチをオンにするために、最適な習慣だという。
「長寿遺伝子であるサーチュイン遺伝子は、カロリー制限やポリフェノールの一種・レスベラトロールで活性化することがわかってきたのですが、長野では野菜中心の食事をゆっくり食べるため、カロリーが低くても満足できる食生活が浸透しています。さらに、長野で多く穫れるぶどうの皮にはポリフェノールが多く含まれています。果物を皮ごと食べることはアンチエイジングには最適なのです」
もうひとつ、注目すべきは発酵食品の味噌を食べる習慣だ。
「長野では、味噌の消費量が全国一。味噌には、その発酵過程で作られるアミノ酸の一種・GABAが豊富に含まれています。これは、神経を落ち着かせる効果があるので、味噌汁を飲むと、最終的には血圧の低下につながるのです。味噌汁の塩分を気にする人がいますが、飲みすぎたり、塩分の高い味噌を入れすぎたりしなければ、血圧が上がることはありません」
■病院の数は少ない
味噌のほかにも、長野では納豆や麹など発酵食品を食べる習慣が根付いている。発酵食品を意識して摂取することで、便通が改善して腸内環境が整い、大腸がんの予防など健康に大きく貢献する。塩分を控えるためにも、塩の代わりに塩麹を用いるのもお勧めだという。
最後に、長寿の大きな秘訣となる、長野県人の医療との向き合い方をお伝えする。表を見てもわかるように、長野県は高齢者(65歳以上)の医療費が44位とかなり低い。病院数も33位と少なく、一見環境が悪いように感じるが、これこそが長寿最大のポイントと言えるかもしれない。
「長野は、病気になる前に予防がきちんとできている、理想のモデルなんです。病院数が少ないだけでなく、ここには県立のがんセンターもない。でもがんでの死亡率は低い。
このことが何を示すか。それは、がん治療が寿命を延ばすことに貢献しているか、非常に疑わしいということです。早期発見されて死亡率が下がるがんは、胃がんなど種類が限られています。じつは、早期発見できないがん、早期で発見しても死亡率が下がらないがんが多いのです。
長野の人は、医療に頼りすぎずに自然と共存して生きてきたので、『自分の身体は自分で守る』という考えが定着しているのです」
病気になったとしても最先端の医療で治してくれる―こうした考えが、寿命を縮めている原因かもしれない。長野に倣えば、あなたも確実に、長寿に近づけるはずだ。
「週刊現代」2013年4月27日号より
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