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nikkei TRENDYnet 3月27日(水)12時2分配信
30代、40代のビジネスパーソンを中心に、生活習慣病やメタボ、皮膚トラブルなどについて専門家に解説をしてもらう連載。2013年2月より健康保険の適応が拡大されたピロリ菌の除菌について解説するシリーズ1回目は、「ピロリ菌とは何なのか?」についてです。日本ヘリコバクター学会・ピロリ菌感染症認定医である、マールクリニック横須賀水野靖大院長に解説してもらいます。
Q1 ピロリ菌ってなに?
ピロリ菌は細菌の一種で、正式名はヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)と言います。1983年にオーストラリアのウォレンとマーシャルという2人の医師が、胃からの分離、培養に成功しました。それ以前にも、人や犬の胃の中に鞭毛(べんもう)を持つ細菌を発見した研究者はいましたが、当時の技術では細菌を培養することができず、生きた菌の存在を直接証明することができなかったため、当時の研究者は口から入った菌がたまたま胃で発見されただけと考えていました。ウォレンとマーシャルの研究も失敗の連続でしたが、通常2日間に設定していた培養期間が、復活祭の休暇が重なったために偶然5日間にのびるという幸運に恵まれ、ピロリ菌のコロニー(菌の固まり)を発見できたのです。
病原性を証明するために菌を飲んだ!?
マーシャル医師らのピロリ菌にかける情熱は凄まじいもので、ピロリ菌と急性胃炎との関係を証明するために、マーシャル自らが菌液を飲むという実験を行いました。菌液を飲んでから10日目に胃の粘膜組織をとって調べてみると、急性胃炎が起こっていて、そこにはピロリ菌が存在していたのです。彼らの努力は報われ、胃潰瘍の原因にピロリ菌が関係していることを発見した功績で2005年にはノーベル生理学・医学賞を受賞します。
彼らがピロリ菌の存在を証明するまでは、胃の中には胃酸という強い酸があるため、食べ物が消化されるような環境で生存できる生物はいないと考えられていました。しかし、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という特殊な酵素を利用して胃粘膜中の尿素からアンモニアを発生させて胃酸を中和し、胃酸で消化されないように自分自身を守っていました。
ちなみに、ピロリ菌の名前の由来は胃幽門部(胃の出口の部分)に生息しているらせんの形をした細菌という意味からきています。
ヘリコ(Helico)=らせん・旋回
バクター(bacter)=バクテリア(細菌)
ピロリ(pylori)=胃幽門部(ピロルス)
Q2 どのようにしてピロリ菌に感染するの?
感染経路はまだはっきりとは分かっていませんが、口を介した感染(経口感染)が大部分と考えられており、主に胃酸分泌も十分でなく、免疫力が弱い乳幼児期に感染するといわれています。
日本では、上下水道が十分完備されていなかった時代に生まれた団塊の世代以前の世代(1940年以前)での感染率は約80%前後と高い割合ですが、その後、衛生環境が整ったことで、若い世代では感染率は年々低くなっています。1992年の調査では、日本でのピロリ菌の感染者は10歳までが5%程度、10代が20%程度、20代が25%程度、30代が25%程度、40歳以上で70〜80%というデータがあります。
Q3 ピロリ菌に感染するとどうなるの?
現在、60歳以上の人口とその感染率から考えると非常に多くの日本人がピロリ菌に感染していることになります。しかし、感染したすべての人に必ず自覚症状が出るわけではなく、約70%の人は普段の生活では無症状という報告があります。実際に当クリニックでも健康診断で胃カメラ検査を受けたら萎縮性胃炎があり、ピロリ菌に感染していたという人は多いのです。
ピロリ菌は多くの疾患の原因になります。例えば、胃・十二指腸潰瘍や萎縮性胃炎、胃がんのほかにも、胃に発生するリンパ腫で、「胃MALTリンパ腫」の患者の約90%がピロリ菌に感染していることがわかっています。さらに明らかな原因や疾患が特定できないのに、血小板が減少して出血しやすくなる病気、「特発性血小板減少性紫斑病」ではピロリ菌の感染率は60%程度あるなど、ピロリ菌が住みついている胃以外の全身疾患との関連も指摘されています。
Q4 ピロリ菌を除菌するだけで病気が改善!?
ピロリ菌によって引き起こされる疾患のなかには、ピロリ菌を除菌するだけで改善する疾患があります。胃MALTリンパ腫は、がんの一種ですが、抗がん剤を使わなくても、ピロリ菌を除菌するだけで60〜80%の患者が改善します。
急性特発性血小板減少性紫斑病は、通常は副腎皮質ステロイドという免疫抑制剤を使って長期にわたる治療が必要なのですが、ピロリ菌の除菌により患者の約半数で効果が報告されています。
また、胃・十二指腸潰瘍の患者の約90%がピロリ菌に感染しており、繰り返す潰瘍に悩まされていますが、ピロリ菌が除菌できた場合は潰瘍の再発が著しく抑えられることがわかっています。
Q5 ピロリ菌はどうやって、がんを引き起こすの?
ピロリ菌が病気を引き起こす原因の1つとして重要視されているのがCagA(キャグ エー)と呼ばれる病原因子です。これが、ピロリ菌が持つ特殊なタンパク質分泌装置(電子顕微鏡で拡大するとCagAを産生するピロリ菌はトゲの生えたような形をしている)を介して、人の細胞の中に直接注入され、さまざまな反応を引き起こし、潰瘍や胃がんにまで至らせます。すべてのピロリ菌がこの恐ろしいCagAを産生するわけではなく、なかには産生しない種類のピロリ菌もいて、これらはほとんど無害なのではないかという研究者もいます。しかし、残念ながら、欧米ではCagAを産生するピロリの割合が50%ほどなのに対して、日本でみられるピロリ菌のほとんどすべてがCagAを産生します。
Q6 ピロリ菌がいなければ胃がんにはならない!?
胃がんに関しては、ピロリ菌に感染している人(1246人)とピロリ菌に感染していない人(280人)を対象に10年間調査したところ、感染している人の2.9%が胃がんになったのに対して、感染していない人で胃がんになった人はいなかったという報告があります(Uemura N.: N. Engl. J. Med, 345, 784, 2001)。
他にも、早期胃がんで内視鏡治療を受けた患者に対して3年間、定期的にチェックを行ったところ、治療後にピロリ菌の除菌を行わなかった場合は9.6%の人に新たな胃がんが発生したが、除菌を行った場合はその約3分の1(3.5%)に発生を抑えることができたという報告があります(Fukase K.: Lancet 372, 392, 2008)。
WHO国際がん研究機関は1994年に「ピロリ菌をもっとも危険の高い発がん因子」と規定しています。ただし、非常に頻度は低いですがピロリ菌がいなくても胃がんになる人もいますので、胃の具合が悪い場合は必ず医師の診察を受けてください。
次回は、ピロリ菌の除菌療法や副作用、治療後の注意点について解説します。
(話/マールクリニック横須賀 水野靖大)
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