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2013年 4月 07日 12:52 JST 太っていたら罰金―米企業「アメ」より「ムチ」で医療費削減目指す 記事 原文(英語) smaller Larger facebook twitter mixi google plus hatena メール印刷 By LESLIE KWOH Bloomberg News ミシュラン米国法人では血圧が高かったり腹囲が一定のサイズを超える社員は「罰金」
腹囲が40インチ(約101センチメートル)以上の男性がいるとしよう。この男性がタイヤメーカーのミシュラン・ノースアメリカに就職したら、罰金の支払いを求められることになりそうだ。 同社では来年から、血圧が高かったり腹囲が一定のサイズを超えていたりする社員は医療費として他の社員より1000ドル多く負担しなければならなくなるかもしれない。 米国では医療費の増加や自主的な健康プログラムがめぼしい成果を上げていないことから、企業が血圧や腹囲などを基準に社員への罰則を定める動きが広がっている。企業はさらに、ボディマス指数(BMI)や体重、血糖値などの健康情報を報告するように求めており、報告しない場合は保険料か医療費の自己負担額を引き上げるとしている。 医療費の削減には社員の習慣を変えることが欠かせない、というのが企業幹部の言い分だ。人間は報酬といった期待利益より罰則などの潜在的な損失により効果的に反応するという行動経済学者の研究結果も企業幹部を後押ししている。 コンサルティング企業のタワーズワトソンの研究によると、今年、企業が負担する医療費は社員一人当たりの平均で1万2136ドル(約118万円)に達すると予想されており、罰則は今後、主流になるかもしれない。 健康状態の報告をしない従業員を罰するなどの厳しい措置は従業員にとっても、医療費の点でもプラスだと企業側は主張するかもしれない。しかし、こうした措置は将来的に、高血圧症などの慢性疾患によって解雇されたり昇進の道が閉ざされたりする事態を招く恐れがある。そもそも雇ってもらえないこともありそうだ。 ミシュランは最近まで、医療保険の自己負担分を補てんするために自動的に600ドルを付与していた。その上、健康評価調査に答えるか、強制力のない健康「アクションプラン」に参加した従業員には追加の支払いを行っていた。しかし、昨年、医療費が急増したことを受けて、同社はより厳しい政策の導入に踏み切った。 ミシュランは今後、血圧、グルコース、コレステロール、トリグリセリド、腹囲(女性は35インチ=約89センチ=未満、男性は40インチ未満)といった健康基準を満たした社員にだけ報酬を与える方針だ。このうち3つ以上の基準を満たした社員については医療費の年間自己負担額を最大で1000ドル引き下げる。基準を満たすことができなかった社員は健康アドバイスのプログラムを受講して、少額の補助金を受け取る。 権利擁護団体はこうした罰則は「法律上の差別」に等しいと指摘する。企業は罰則を健康奨励策としているが、職場での社員の権利を擁護する非営利団体ナショナル・ワークライツ・インスティテュート(ニュージャージー州プリンストン)の代表、ルー・モルトビー氏によると、基本的には減給と変わらないという。モルトビー氏は「名前でごまかしているだけだ。何百万という人が正当な理由なく給与を減らされているということだ」と話している。 企業側はもっと穏便な方法を既に試したと言うかもしれないが、多くの企業にはまだやれることがある、とモルトビー氏は言う。モルトビー氏は食堂での健康的な食事の提供やフィットネスセンターの設置、スポーツクラブの会費の助成を例として挙げた。「こうした措置なら企業が社員の私生活をコントロールすることができるようになるだけだ」とモルトビー氏は言う。 ミシュランはいかなる差別もしていないと主張し、社員は自主的に参加することになっていると述べた。このプログラムに参加しないということは、社員は報酬を手にすることはできないということだ。ミシュランの最高人事責任者のウェイン・カルバートソン氏は以前の奨励プログラムではあまり 変化がなかったと話す。カルバートソン氏によると、例えば、社員が「これから毎日ウォーキングする」と言っても、それを証明する必要はない。「社員の自由に任されていた。ただよい社員であるだけで600ドルが手に入っていた」 人材コンサルタント会社エーオンヒューイットが中規模・大規模企業800社を対象に行った最近の研究によると、10社中6社が今後数年のうちに、健康改善に取り組まない社員に対して罰則を設ける予定があると回答した。健康に関する企業団体のナショナル・ビジネス・グループ・オン・ヘルス(NBGH)とタワーズワトソンが行った研究では、罰則を科す予定の企業の割合は2014年には現在の倍の36%に達する可能性がある。 現行法では、企業は従業員の医療保険費用の20%を超えない範囲で健康関連の報酬や罰則を活用することができる。法律事務所バッツェル・ロング(デトロイト)で労働や雇用を担当するジョン・ハンコック氏によると、企業は健康問題を理由に従業員の給与を削減することは法律的に認められていないが、従業員の医療費と健康目標の到達度をリンクさせることは認められているという。健康目標を到達できない事情のある社員を免除すれば、あとは企業の自由だ。 薬局チェーンのCVSケアマークが先月、社員に対して、体脂肪率や血糖値、血圧、コレステロール値などの個人の健康情報を同社の保険会社に5月までに報告するように要求し、報告しない場合は600ドルの罰金を支払うよう求めたところ、社員や労働者権利団体から抗議が巻き起こった。 要求を断る余裕のある社員はほとんどいないが、納得していない社員もいる。フロリダ州の流通センターでフルタイムで働く26歳の男性社員は「会社はパンドラの箱を開けた。会社には関係ないことなのに」と語った。男性は自身の健康に問題はないが、自分の知らないところで健康情報が利用される可能性があることが心配だと話した。男性の医療保険には男性の妻と子どもも加入しているが、男性は医療保険を解約して、別のところで仕事を探すつもりだと語った。 航空電子部品大手のハネウェル・インターナショナルは先ごろ、セカンドオピニオンなどの新たな情報を求めずに膝や股関節の置換手術や腰の手術など特定の手術を受けることを決めた社員について、医療貯蓄口座から1000ドル差し引くという罰則を導入した。同社は以前から、手術を検討している社員に500ドル払ってデータを参照したり、セカンドオピニオンを得られるプログラムへの参加を呼び掛けていたが、参加率は20%に満たなかった。同社によると、罰則に切り替えたところ、参加率は90%を超えたという。 今のところ、企業はバランスを取りながらアメとムチの両方を使おうとしている。多くの企業は多少の金銭的な負担が長期的な変化につながるかどうかを確認しようとするだろう。デロイトの医療調査部門であるセンター・フォー・ヘルス・ソリューションのエクゼクティブ・ディレクター、ポール・ケクリー氏は「社員がどの程度の痛みを感じるのが適切なのか」と問いを投げかけた。「最終的には、社員が自然に行動を変えるようにする必要がある」と述べた。 |