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高齢者に学ぶ心配しないための秘訣：ネガティブな感情にとらわれず、今に目を向ける
2012年 8月 28日 15:23 JST
年齢とともに感情がどのように変化するかに関する最近の研究により、人々はより健康的に長生きできるヒントが得られると同時に、高齢者のうつ病の新たな治療法が生まれるかもしれない。
時とともに人々の肉体と同様、感情も変化する。複数の研究により、年齢の高い人々のほうがだいたいにおいて、若い人々よりも懸念やストレスといったマイナスの感情がずっと少ないことが示されている。
Universal/Everett Collection
映画などでは不機嫌なお年寄りが描かれることが多いが、実際は怒りなどのネガティブな感情は高齢者のほうが若者よりも少ない
研究によると、高齢者はネガティブな感情を払いのける方法を身につけており、将来よりも現在の楽しみをもたらす状況に注意を集中しているようだと指摘する。さらに、ポジティブな情報と比較して、ネガティブな情報についてはそれほど重視しない傾向があるようだ。
対照的に、楽しみや幸せといったポジティブな感情は、その人が若い時から高齢になるまでほとんど変化しない。
ドイツのハンブルク大学エッペンドルフメディカルセンターの研究者、ステファニー・ブラッセン氏は電子メールで、「年を取ると、精神的安定のためには、怒りとともに過去を振り返るのではなく、ポジティブな面に焦点を絞ることが非常に重要なようだ」と説明した。
高齢者でうつ状態にある人々は、高齢者に典型的にみられるある種の感情的制御を使用していないようだ、と指摘する研究もある。非営利団体の高齢者メンタルヘルス財団（GMHF）によると、米国では65歳以上の約600万人（約15％に相当）がうつ病の影響を受けており、これが高齢者の自殺率が最も高い大きな要因の1つだと考えられている。
ブラッセン博士率いる研究グループは、新たな治療方法を模索する研究のなかで、高齢者が生活環境にうまく採用できるストラテジーを実践するための訓練プログラムを開発している。ブラッセン博士は、目標は患者に「これまで人生で達成したことや、今も身につけているリソースや能力、さらに、近い将来に実現可能なポジティブな経験についてフォーカスさせることだ」と話す。
ただ、ポジティブなことや気分がいいと感じることに焦点を絞ることは、判断力の低下や高齢者が詐欺に遭いやすいといった問題にもつながり得る。スタンフォード大学の心理学の教授で、カリフォルニア州の長寿センターのディレクターを務めるローラ・カーステンセン氏は、ネガティブなことを言われたとき、それに感覚的に反応せずに、言われた内容についてしっかりと考える必要があると語る。
ある研究で、18〜85歳の34万人に対し、幸せやストレス、怒りといった感情を前日どの程度感じたかについて電話で聞き取り調査をした。20歳から60歳くらいの間では、年齢に応じてネガティブな感情に対するポジティブな感情の割合が徐々に高まったという。この調査を主導したニューヨークのストーニー・ブルック大学の精神医学・行動科学の教授、アーサー・ストーン氏が明らかにした。
ストーン博士は、幸せという感情については数十年にわたりほぼ同様だったが、「人々の年齢が高まるにつれてストレスや懸念の量は減少した」と話す。この研究は全米科学アカデミーの2010年の紀要で発表された。
スタンフォード大のカーステンセン博士は、人々が感情的に人生をいかにとらえるかはそれぞれの人生の目標の変化に影響される、と指摘する。若い人々は、長期的な目標を達成するためにリスクを探ったり、冒したりする必要もあり、その過程でストレスやいらだちを経験することもある。同博士によると、これとは対照的に、年齢を重ねた人々は時間の認識がもっと短く、たとえば孫と一緒に時間を過ごすといったポジティブな感情につながる目の前の目標に焦点を絞っている。
カーステンセン博士は、「こうした（より短期的な）目標に焦点を絞るにつれて、人生はよりよいものとなる」との見方を示す。昨年発表された研究で、同博士と研究チームは年齢が行くにつれてネガティブよりもポジティブな感情の割合が高まっている人々はより長生きする可能性も高いことを明らかにしている。この研究は10年間にわたり約200人の成人について調査を行った。
ブラッセン博士も、健康な高齢者はネガティブな感情を弱めることに役立つ対処策を用いているようだと指摘する。
同博士と研究チームは、若い人々と高齢者が後悔という感情にいかに反応するかをみる実験を行った。興味深いことに、うつ病の診断を受けている高齢者のグループは後悔について、同じような年代の人々よりも、若者のグループとよく似た反応をすることが分かった。この研究は5月に米科学誌「サイエンス」で発表された。
記者: Shirley S. Wang
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毎日を幸せに過ごしたい−必要なのは「自分に優しくすること」
2012年 8月 28日 20:05 JST
ドナ・タラリコさん（34）がある朝、パソコンの前に座り画面を見つめたとき、パスワードを――またしても――忘れたことに気づいた。
当時、タラリコさんは経済的に苦しかったため、気分を盛り立て、自信をつけるために自己救済本を読んでいた。これらの本には前向きな自己肯定の力について書かれてあり、そこでタラリコさんはひらめいた。様々なパスワードを自分に対するプライベートなメッセージにすることにしたのだ。例えば「imawe$some1（私はすば＄らしい１）」、「dogoodworktoday（きょうは良い仕事をしよう）」といった具合だ。
画像を拡大する
Illustrations by Jim Haynes
毎日を幸せに過ごす自己救済法
ペンシルベニア州のエリザベスタウン・カレッジでマーケティング・マネジャーを務めるタラリコさんは「とても単純なことだ」と話す。「自分は良い人間だという気持ちを強めてくれる。何につけ自分がやろうとしていることがうまくできる」とタラリコさん。
ストレスを感じているときは親しい友人に恵まれている人でさえも、たった一人きりだと感じることがある。われわれはよく「元気を出せ」とか「（たいてい聞いてくれる）誰かに話しなさい」とか、薬を飲むようにといったアドバイスを受ける。だが、自分で自分を慰め、自己救済する方法を学ぶことも理にかなうことではないだろうか。
自分が自分の親友になる、もしくは専属コーチになると想定し、自分にとって一番有効な励ましや愛のムチを繰り出すのだ。結局、自分のことを一番よくわかっているのは自分自身なのだから。ばかげているように聞こえるなら、チョコレートや酒や中国人の友人に助けを求めるより効果的であることを覚えておくといい。
専門家らは、気分を良くするためには自分に優しくし――これを「自己憐憫（れんびん）」という――楽観的になることでポジティブな面に集中する必要があると指摘する。自己憐憫的な人は大事な人間関係の終わりから車のカギをなくしたということまで、日常のすべてに対する取り組みが上手だという研究結果が出ている。こういった人たちは、すべての不幸な事故や過ちについて自らを責めることによって、自分たちの惨めさを一層ひどくするようなことはしない。車が壊れたとしよう。もちろん気がめいるが、だからといってこれで自分がバカになるわけじゃない。
過去7年の間に行われた15の研究で、デューク大学の心理学と神経科学を教えるマーク・リアリー教授は自己憐憫的な人はより幸福感を感じていることを見つけた。近々公表される予定の3つの研究は、自己憐憫心が65歳を超える人たちにどう影響するかを調べたものだ。調査結果によると、記憶力の衰えや関節炎といった加齢による困難さを受け入れている人や、大変な日を過ごしたときはとりわけ自分に優しく接している人は、より前向きな感情を持ち、年老いていく過程にも上手に取り組んでいることがわかった。
専門家らは実地訓練で自己憐憫法を学ぶことができると言う。「グラスに半分しか水が入っていない」と必ず思ってしまう人であっても、ポジティブな面に集中するよう脳を訓練することは可能だという。人の考え方やものの見方は遺伝的要素や経験、それに「認知バイアス」に影響される。遺伝的要素や経験を変えることはできないが、認知バイアス（過去に起こったことの説明の仕方）を変えることはできる、と専門家は言う。
では家でできることは何か。その日起こったネガティブなこととポジティブなことを日記に書くことだ。昔の友人にばったり会ったことかもしれないし、バスに乗り遅れたことかもしれない。ポイントは、1つのネガティブなことに対して、4つのポジティブなことを書くことだ。そうすると悪いことだと思っていたことにも、良い面を見つけようと脳が訓練される、と英オックスフォード大学の客員研究教授、エレイン・フォックス博士は言う。
記者: Elizabeth Bernstein
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